総説2 環境問題の原点 水俣病の50年
平成18年は、行政が水俣病を公式に確認してから50年目の年にあたります。
被害を受けた地域では、被害者への救済、地域再生の取組が行われている一方、今でも多くの者が「公害健康被害の補償等に関する法律」(以下「公健法」という)に基づく水俣病の認定申請をしたり、損害賠償請求訴訟を起こしたりするなど、水俣病問題は現在進行形です。
本総説では、水俣病のような問題を二度と起こさないためにどうすればよいのかを、50年を機会に私達がもう一度考えるきっかけとなるよう、水俣病問題の経緯や現状を記述していきます。

第1節 水俣病とは
水俣病は、熊本県水俣市の新日本窒素肥料(株)(後のチッソ(株)。以下「チッソ」という)の工場及び新潟県鹿瀬町の昭和電工(株)(以下「昭和電工」という)の工場から排出されたメチル水銀化合物に汚染された魚介類を食べることによって起こった中毒性の神経系疾患です。
その主な症候としては、感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄(きょうさく)、聴力障害等が認められます。また、母親が妊娠中にメチル水銀のばく露を受けたことにより起こった胎児性水俣病等では、成人のものと異なった病像を示す場合があります。

図 水俣病発生地域



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