第2節 始まった持続可能な社会づくり

1 高齢者と助け合いながら創る社会

岡山県津山市では、退職した高齢者を中心とするボランティアグループ「木こりの会」と森林所有者である市が協力し、荒廃した里山を再生するための取組を行っています。また、地元の小学生、保護者を対象に自然観察会や間伐材を利用した炭焼き、きのこの植菌などの野外体験、植樹を通じた環境教育を開催しています。
このような取組の結果、高齢者の健康・生きがいづくり活動に大きな効果が出るほか、この地域では最近見かけなくなっていたラン科の山野草やトンボなどの昆虫などが戻ってきたという環境へのプラスの効果が見られます。

写真 「木こりの会」による炭焼き


2 環境技術の継承

退職した技術者が中心となって設立されたSCE・Net(シニア・ケミカル・エンジニアズ・ネットワーク)では、退職したベテラン技術者を経験別にデータベース化し、企業等の現場から寄せられた排水処理技術やISO14001などの取得に関する課題に対して指導・助言を行っています。また、大学の一般公開講座において、30〜40代を中心とした現役世代向けに、PRTR制度などの環境分野の経験・技術について講義を行うほか、講義の内容をまとめた教材を作成し、現役時代に培った経験や技術を一般化する取組も進められています。

3 里地里山地域における環境保全の取組

イノシシ、サル、シカによる鳥獣被害が深刻化していた滋賀県の東近江地域では、農業改良普及センターがコーディネーター役となってプロジェクトチームを結成して、総合的な鳥獣被害対策に取り組んでいます。対策に取り組んでいる地域では、捕獲、侵入防止等の従来型の対応策だけでなく、地域ぐるみで鳥獣が農地に侵入する原因となる未収穫農作物の除去や鳥獣が農地に近づかないよう人と鳥獣の間の緩衝地帯の設置、家畜放牧を行う等の総合的な対策を実施しています。その結果、鳥獣被害が著しく減少するなどの高い効果を生んでいます。

写真 サル・イノシシの侵入防止網(おうみ猿落・猪ドメ君)の設置


4 持続可能で快適な都市空間の創出

成熟社会を迎えた欧州では、いち早く持続可能な都市(サスティナブル・シティ)の実現に向けた取組が進められています。
社会福祉先進国であるデンマークの首都コペンハーゲン市では、ノーマライゼーションの考えに基づき、また、家族が住みやすいまちづくりやヨーロッパの環境首都を目標にした取組を進めています。具体的には、5 本の近郊電車(Sバーン)を5本の指に見立て、このSバーン沿いに市街地を展開しており、それ以外の地域では土地利用の規制を強めつつ、大規模な緑地を確保し、コンパクト化による地域熱供給システムの導入を図るフィンガープランと呼ばれる施策を実施しています。この結果、市街地に隣接して大規模な緑地空間が保全されることとなり、環境への効果のみならず、市民の憩いの場としても機能しています。

写真 自然エネルギーを活用したコンパクトシティー(コペンハーゲン)

わが国でも、持続可能なまちづくりを進める機運が高まる中、行政やコミュニティなど、さまざまな主体によるまちづくりが始まっています。
富山県富山市では、「街の顔」となる中心市街地の再生と車に過度に頼らない、歩いて暮らせるまちづくりを目標として、まちなか居住を促進するための公的補助、空き店舗の活用をはじめとする中心市街地の再生事業を行うとともに、高齢者等の交通弱者にもやさしいLRT(Light Rail Transit)と呼ばれる路面電車の導入をはじめとした公共交通機関の充実により、まちの再生・活性化を図っています。このような取組には、中心商店街の活性化のみならず、コンパクトな都市構造による省エネルギーなど、環境負荷を低減する効果が期待されます。

写真 バリアフリーの超低床車両

持続可能なまち、持続可能な社会は、決して簡単に構築されるものではなく、現段階では構想に過ぎません。この実現のために社会の仕組みを改め、同時に、私たちのライフスタイルを変えていかなければなりませんが、多様な取組がうまく組み合わさり、互いに支え合い強め合えば、急速に具体化されていく可能性があります。そして、行政をはじめとした各主体の果たすべき役割はますます大きいものとなってきます。
環境省では、(独)国立環境研究所とも連携して、2050年までに脱温暖化を実現するための将来予測とバックキャスティングに基づいた対策を検討する「脱温暖化2050プロジェクト」を実施しており、また、同じく2050年といった超長期の将来展望やそれを踏まえた現在から超長期にわたる対応策やライフスタイルや社会システムの見直しのあり方を明らかにすることを目指した「環境政策の超長期ビジョン」の検討を開始しました。
持続可能な社会のためのさまざまな取組を促進し、その効果を最大化するためには、以上のような長期的視野に立った政策をさらに進めていくことが重要です。


前ページ 目次 次ページ