第3節 社会をつなぐ環づくり


1 基盤としての環境情報

 環境情報には、情報を受け取ることにより環境問題に興味・関心を持つきっかけを与え、環境意識を高める効果と、環境保全行動を促進する効果があります。
 また、環境情報を発信すること自体が、自らの環境保全行動を促進します。例えば、自らの事業に伴う環境負荷の現状を把握することにより、効果的な環境管理を行うことができます。また、環境情報を公表することで、他社と比較して自社の環境保全活動を評価することも可能となり、環境負荷をさらに削減しようという動機付けになります。
 さらに、双方向で環境情報をやり取りすることにより、相互の理解が深まり、より良い改善案が生まれることで、一方向で情報を受発信する以上の環境保全効果をもたらすことができます。ある企業では、環境報告書を題材に一般市民と対話する場を設けています。
 政府や企業、市民団体などの各主体が、白書やパンフレット、インターネットなどを通じてさまざまな環境情報を発信しています。公的機関等が発信している環境情報のうち、インターネット上の環境情報を分野ごとにまとめたものが、次の表です。

インターネット上の環境情報(リンク付きテーブル掲載)
分野
内容・URL
発信者
情報の使い方
探す
学ぶ
行動
総合 環境政策一般 環境省    
http://www.env.go.jp/
環境政策一般 経済産業省
   
http://www.meti.go.jp/policy/environment/
環境統計集 環境省
   
http://www.env.go.jp/doc/toukei/
環境情報一般 (独)国立環境研究所
http://www.eic.or.jp/
環境情報一般 環境goo
http://eco.goo.ne.jp/
環境パートナーシップ 地球環境パートナーシッププラザ
 
http://www.geic.or.jp/geic/
環境配慮型のくらし 環のくらし 環境省  
http://www.wanokurashi.ne.jp/
Re-style 環境省
http://www.re-style.jp/
グリーン購入 グリーン購入ネットワーク  
http://www.gpn.jp/
環境教育 環境教育に関する情報 文部科学省、環境省
http://www.eeel.jp/
企業 環境報告書 環境省
   
http://www.kankyohokoku.jp/
地球温暖化 地球温暖化一般 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
http://www.jccca.org/
省エネルギーに関する情報 (財)省エネルギーセンター
http://www.eccj.or.jp/
新エネルギーに関する情報 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
   
http://www.nedo.go.jp/
ごみ・リサイクル ごみ・リサイクル一般 (財)クリーンジャパンセンター
 
http://www.cjc.or.jp/
大気 大気環境・ぜん息 (独)環境再生保全機構
 
http://www.erca.go.jp/
自然環境 インターネット自然研究所 環境省
 
http://www.sizenken.biodic.go.jp/

注)探す:関連情報の検索を主目的としたページがある
  学ぶ:関連情報をより詳しく解説し、学習や研究に役立てることを主目的としたページがある
  行動:家庭や地域での環境保全活動をするための情報発信を主目的としたページがある
資料:環境省


2 環境パートナーシップの構築

 環境パートナーシップは、地域や社会における環境問題の解決という共通の目的の下に、各主体が適切に役割分担しつつ、対等の立場において相互に協力して活動に取り組むことです。こうした取組が「環境の国づくり」の原動力となります。
 環境パートナーシップでは、参加する主体が「支援」や「一方的な協力」の関係ではなく、適切な役割分担により「対等」の関係を構築することが重要です。対等な環境パートナーシップを築くためには、協働によって何を目指すのか、それぞれにどのようなメリットがあるのかについて、事前に認識を共有することが重要です。また、各主体の持つ機能や資源、得意分野・ノウハウの違いを認識し、それを生かすこと、補い合うことで、より大きな相乗効果が得られます。さらに、相互に尊重しながら活動するためには、各主体がまず自分たちの活動の目的や理念を確認し、独自の活動を充実させることが不可欠です。独自の活動があって初めて、それらの成果やノウハウ等について相手に何かを提供することができ、さらに、相互の信頼関係を向上させます。

(1)パートナーシップ活動推進の基盤づくり
 パートナーシップのより良い関係の構築のためには、パートナーを探し、結びつけ、コミュニケーション(相互理解)を促進するための情報提供・交換、コーディネーター、拠点・場の整備が必要と考えられます。
 環境パートナーシップの拠点施設として、環境省では、平成8年から東京・青山で国連大学と共同で「地球環境パートナーシッププラザ」を運営していますが、これに加えて、地域の拠点と国の拠点とを結ぶ広域型拠点として、「地方環境パートナーシップオフィス」について、大阪、広島、名古屋をはじめ各地で開設を進めています。また、地域における拠点施設の整備は、必ずしも新設される必要はなく、地域で独自に設けられている環境学習施設や学校、公民館等の既存の文教施設を活用することが考えられます。その他、拠点機能には、「場」としての拠点だけでなく、各主体の役割や手法を調整し、主体同士をつなぐ「機能」としての拠点も重要です。参加している各主体の立場や分野を超えて、顔の見える信頼関係を構築し、各主体の活動情報や資源・ニーズなどの環境情報を交換・共有することでパートナーシップの機会を拡大したり、各主体の円滑な活動を促進していく「中間支援組織」の活躍が期待されます。

(2)パートナーシップの広がり
 これまで見てきたパートナーシップの構築のためのツールをうまく生かしながら、パートナーシップを効果的に成功させ、また、さらなる広がりをみせる取組が各地で始まっています。
 東京都大田区では、毎年、区内の小学校を会場として環境啓発イベント「エコフェスタ ワンダーランド」を開催しています。このイベントは大田区内の学校、企業、NPO、行政等の各種団体の協働によって開催され、環境学習発表会、エコクッキング、エネルギーの実験など、学校や企業・市民団体等が取り組んでいる環境保全活動の紹介を通じて、区民が環境について楽しみながら学ぶことができる場として活用されています。また、参加企業のある大手企業は、このイベントによって築かれた連携を生かして、地元NPOや行政等と協働した環境教育イベントを企画・実施し始めています。こうした学校を核とした取組から、地域の行政、企業、市民団体等の各主体によるパートナーシップが構築されるなど、さらなる発展を見せています。

写真 環境学習発表会 東京都大田区提供


 今後、各地において、地域コミュニティの中枢機能を担う学校を活用し、環境保全の拠点として親子や地域住民の交流を図ることにより、環境パートナーシップが地域全体に広がることが期待されます。
 伊万里はちがめプラン(「はちがめ」は、カブトガニの佐賀県伊万里地方での呼び名。)は、生ごみや廃食油を捨てる側の料飲店組合・旅館組合を中心に、自分たちで出した生ごみを資源として有効活用させることを目指して平成4年に作られたNPOです。調査や研究段階では、佐賀大学、商工会議所などのさまざまな機関の協力を得て、12年に生ごみの堆肥化実験プラントの設置を実現させました。年々、参画する団体は増え、現在では生ごみの回収先も事業者だけではなく、一般家庭、保育園等、地域全体に及んでいます。作られた有機堆肥は、地域の農家に提供され、その堆肥を使った付加価値の高い有機農産物は、地域の飲食店、家庭などで食されています。(http://www6.ocn.ne.jp/~hatigame/

写真 たい肥づくり実習 NPO法人伊万里はちがめプラン提供


 環境パートナーシップは、各主体の連携や協働を生み、持続可能な社会の実現につながります。例えば、環境保全を通じた市民活動を活発にし、「環境を核としたまちづくり」の推進をはじめとする地域の活性化を図る原動力となります。また、地域のニーズをくみ上げ、市民との協働により意思決定をし、市民とともに実行・運営していくことは、より適切な環境政策を決定するだけでなく、市民が環境保全行動に自発的に取り組む社会を実現することにもなります。
 今後、日本発の活動が世界各地に広がっていくことや、既に地球規模の活動を行っている環境協力、政策提言などの国際的なパートナーシップが活発になり、さらに発展していくことにより、世界中で持続可能な社会が実現されることが期待されます。


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