7 地球環境の保全

 第2章第2節で述べた地球温暖化の問題以外にも、地球規模で起こる環境問題で人類社会の存続を危うくしている地球環境問題がいくつかあります。私たちは、地球環境という共有の財産を良好な状態で保持していくため、国際的取組を積極的に進めていかなければなりません。
 ア オゾン層の保護
 成層圏に存在するオゾン層は、太陽光に含まれる有害な紫外線の大部分を吸収して、地球上の生物を保護しています。このオゾン層が冷蔵庫やエアコンなどの冷媒として広く用いられてきたフロンの影響により破壊されており、毎年南極上空に巨大なオゾンホールが発生しています。オゾン層の破壊は皮膚ガンや白内障など人の健康にも悪影響を及ぼすおそれがあり、早急な対応が求められます。このため、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に基づき、先進国、途上国いずれにおいてもオゾン層破壊物質からの完全な脱却のための努力を続ける必要があります。

オゾンホールの規模の推移

 イ 酸性雨の防止
 酸性雨については、北米、ヨーロッパ、中国をはじめ多くの地域で観測されています。石炭、石油などの化石燃料の燃焼によって発生する硫黄酸化物、窒素酸化物がその原因と考えられます。酸性雨は局地的にとどまらず、気流などによって発生源から500~1000kmも離れた地点で観測されるなど国境を越えた問題となっています。わが国は、東アジア地域での監視・観測網を構築するとともに、原因物質の発生抑制のための技術移転など国際協力を進めています。

降水中のpH分布図

 ウ 海洋汚染の防止
 世界的な海洋汚染の状況を見ると、北海、バルト海、地中海などの閉鎖性海域においては、赤潮発生の拡大、重金属などの有害物質による汚染が広がっています。一方、大型タンカーの航行、海底油田の開発などに伴う海洋汚染の危険も存在しています。
 わが国は、国内では海洋汚染防止法などに基づく規制を実施するとともに、国連海洋法条約などに対応した国際協力を行っています。

海上環境関係法令違反装置件数の推移

 エ 有害廃棄物の越境移動
 1970年代から80年代にかけて、有害廃棄物が欧米の先進諸国からアフリカや南米の諸国に輸出され、不適切な処分や不法な投棄により環境汚染が生じるなどの事件が多発しました。このような問題に対処するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択されました。
 わが国においては、バーゼル条約の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の的確かつ円滑な施行により、有害廃棄物の不適正な越境移動の防止に取り組んでいます。

有害廃棄物の種類

 オ 森林の保全
 森林は、世界の陸地(グリーンランド及び南極を除く。)の約4分の1を占めていますが、途上国の熱帯林を中心に日本の本州の約半分に相当する面積が毎年失われています。
 わが国は、森林原則宣言、アジェンダ21、「森林に関する政府間パネル」行動提案及び「森林に関する政府間フォーラム」行動提案の実施を基本とし、国連、G8などを通じた国際的な検討に参画しています。また、国際木材機関などを通じて森林保全に関する国際協力を進めています。

世界の森林面積の動向

 カ 生物多様性の保全
生物多様性の減少は、地球規模でも急激に進行しています。IUCN(世界自然保護連合)の「レッドデータブック」によると、絶滅のおそれのある種が多数存在することがわかります。
わが国は、生物多様性条約を踏まえ策定された「生物多様性国家戦略」に基づき生物多様性の保全や持続可能な利用に努めています。

●生物多様性が熱帯地域で急激に減少
絶滅のおそれのある種の現状

 キ 砂漠化への対処
砂漠化は、土地の乾燥化にとどまらず、広く土地の浸食や塩類集積も含みます。その原因は干ばつや家畜の放牧、過度の耕作、不適切な灌漑などが考えられます。砂漠化の影響は、世界の広い地域に生じています。
わが国は、砂漠化対処条約に基づき総合的な砂漠化対策に関する調査、検討を進め、影響を受けている国々の対策へを支援しています。

●土壌劣化や砂漠化が乾燥地域で進行
砂漠化の現状
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