環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第4節 土壌環境の保全

第4節 土壌環境の保全

1 土壌環境の現状

土壌汚染については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づき、有害物質使用特定施設の使用の廃止時、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるときのほか、自主的にも土壌汚染状況調査が行われています。さらには、土壌汚染対策法には基づかないものの、売却の際や環境管理等の一環として自主的な汚染調査が行われています。

都道府県等が把握している調査結果では、2018年度に土壌の汚染に係る環境基準(以下「土壌環境基準」という。)又は土壌汚染対策法の土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超える汚染が判明した事例は960件となっており、都道府県等の条例や同法に基づき必要な対策が講じられています(図4-4-1)。なお、事例を有害物質の項目別で見ると、ふっ素、鉛、砒(ひ)素等による汚染が多く見られます。

図4-4-1 年度別の土壌汚染判明事例件数

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)に定める特定有害物質(カドミウム、銅及び砒(ひ)素)による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、2018年度は5地域79.1haにおいて調査が実施されました。これまでに基準値以上の特定有害物質(カドミウム、銅及び砒(ひ)素)が検出された、又は検出されるおそれが著しい地域(以下「基準値以上検出等地域」という。)は、2018年度末時点で累計134地域7,592haとなっており、同法に基づく対策等が講じられています。

ダイオキシン類については第5章第1節4を参照。

2 環境基準等の見直し

土壌環境基準については、土壌環境機能のうち、地下水等の摂取に係る健康影響を防止する観点と、食料を生産する機能を保全する観点から設定されており、既往の知見や関連する諸基準等に即し、現在29項目について設定されています。

2018年度には、中央環境審議会において1,2-ジクロロエチレンの環境基準及び土壌溶出量基準等について審議が行われ、2018年6月に、「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直しその他法の運用に関し必要な事項について(第3次答申)」が答申されました。この答申を踏まえた1,2-ジクロロエチレンの環境基準及び土壌溶出量基準等の改正に係る政省令等は、2019年4月に施行されました。

3 市街地等の土壌汚染対策

土壌汚染対策法に基づき、2018年度には、有害物質使用特定施設が廃止された土地の調査243件、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認め実施された調査460件、土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査0件、自主調査348件の合計1,051件行われ、同法施行以降の調査件数は、2018年度までに8,370件となりました。調査の結果、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過しており、かつ土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため汚染の除去等の措置が必要な地域(以下「要措置区域」という。)として、2018年度末までに660件指定されています(660件のうち426件は解除)。また、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過したものの、土壌汚染の摂取経路がなく、汚染の除去等の措置が不要な地域(形質変更時要届出区域)として、3,561件指定されています(3,561件のうち1,329件は解除)(図4-4-2)。

図4-4-2 土壌汚染対策法の施行状況

要措置区域においては、都道府県知事が汚染の除去等の措置を講ずべきことを指示することとされており、形質変更時要届出区域においては、土地の形質の変更を行う場合には、都道府県知事への届出が行われることとされています。また、汚染土壌を搬出する場合には、都道府県等へ届出が行われた上で、汚染土壌処理施設への搬出が行われることとされており、これらにより、汚染された土地や土壌の適切な管理がなされるよう推進しました。

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査を適確に実施するため、調査を実施する機関は環境大臣又は都道府県知事の指定を受ける必要がありますが、2020年3月末時点で721件がこの指定を受けています。また、指定調査機関には、技術管理者の設置が義務付けられており、その資格取得のための土壌汚染調査技術管理者試験を2019年11月に実施しました。そのほか、低コスト・低負荷型の調査・対策技術の普及を促進するための実証試験等を行いました。

土壌汚染対策法は、土壌汚染に関する適切なリスク管理を推進するため、土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成29年法律第33号)により改正され、改正土壌汚染対策法が2019年4月1日に全面施行されました。改正土壌汚染対策法の着実な施行のため、2019年度は都道府県等を対象とした説明会を実施するなど、普及・啓発を行いました。

4 農用地の土壌汚染対策

農用地の土壌汚染対策は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づいて実施されています。基準値以上検出等地域の累計面積のうち、対策地域の指定がなされた地域の累計面積は2018年度末時点で6,609ha、対策事業等(県単独事業、転用を含む)が完了している地域の面積は7,111haであり、基準値以上検出等地域の面積の93.7%になります。