環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第3節 生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理

第3節 生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理

1 生態系ネットワークの形成

優れた自然環境を有する地域を核として、これらを有機的につなぐことにより、生物の生息・生育空間のつながりや適切な配置を確保する生態系ネットワーク(エコロジカル・ネットワーク)の形成を推進するとともに、重要地域の保全や自然再生に取り組み、私たちの暮らしを支える森・里・川・海のつながりを確保することが重要です。

森・里・川・海の恵みを将来にわたって享受し、安全で豊かな国づくりを行うため、環境省と有識者からなる「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトを立ち上げ、2015年度に全国約50か所で開催したリレーフォーラムにおける参加者の意見等を踏まえ、2016年9月には「森里川海をつなぎ、支えていくために(提言)」を公表しました(図2-3-1)。

図2-3-1 森里川海をつなぎ、支えていくために(提言)と地域循環共生圏のイメージ

本提言の下、多様な資源がその地域の中で循環し、相互に支え合う「地域循環共生圏」の構築に向け、森・里・川・海の保全及び再生に取り組む10の実証地域を選定し、2019年2月には、成果についてのシンポジウムを開催しました。また、2019年度は、全国10か所のフォローアップを図っているところです。多様な主体によるプラットフォームづくり、自立のための経済的仕組みづくり、人材育成等に向けた地域の活動を支援しました。

2018年度に制作した読本「森里川海大好き!」や、流域単位で河川の恵みを認識・共有する「≪森里川海ふるさと絵本≫ありがとう あらかわ─秩父市─」、「≪森里川海ふるさと絵本≫ありがとう あらかわ─荒川区─」を活用した普及・啓発、2019年度には読本「森里川海大好き」を全国約2万校の学校図書館へ寄贈し、読書感想文コンクールの開催及び自然体験プログラムの実施など、森・里・川・海の恵みや自然体験の大切さを子供や保護者等に伝えました。さらに、「つなげよう、支えよう森里川海アンバサダー」と連携した情報発信等を通して、国民一人一人が森・里・川・海の恵みを支える社会の実現に向けて、ライフスタイルを変革していくことの重要性について普及啓発しました(写真2-3-1)。

写真2-3-1 「つなげよう、支えよう森里川海アンバサダー」と連携したイベントの開催
(1)水田や水路、ため池等

水田や水路、ため池等の水と生態系のネットワークの保全のため、地域住民の理解・参画を得ながら、生物多様性保全の視点を取り入れた農業生産基盤の整備を推進しました。また、生態系の保全に配慮しながら生活環境の整備等を総合的に行う事業等に助成し、農業の有する多面的機能の発揮や魅力ある田園空間の形成を促進しました。さらに、農村地域の生物や生息環境の情報を調査し、生態系に配慮した水田や水路等の整備手法を検討するなど、生物多様性を確保するための取組を進めました。

生物多様性等の豊かな地域資源を活かし、農山漁村を教育、観光等の場として活用する集落ぐるみの取組を支援しました。

(2)森林

生態系ネットワークの根幹として豊かな生物多様性を構成している森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるため、森林整備事業による適切な造林や間伐等の施業を実施するとともに、自然条件等に応じて、針広混交林化や複層林化を図るなど、多様で健全な森林づくりを推進しました。また、森林の有する公益的機能の発揮及び森林の保全を確保するため、保安林制度・林地開発許可制度等の適正な運用を図るとともに、治山事業においては、周辺の生態系に配慮しつつ、荒廃山地の復旧整備、機能の低下した森林の整備等を計画的に推進しました。さらに、松くい虫など病害虫や野生鳥獣による森林の被害対策の総合的な実施、林野火災予防対策を推進しました。

森林内での様々な体験活動等を通じて、森林と人々の生活や環境との関係についての理解と関心を深める森林環境教育や、市民やボランティア団体等による里山林の保全・利用活動等、森林の多様な利用及びこれらに対応した整備を推進しました。また、企業、森林ボランティアなど、多様な主体による森林づくり活動への支援や緑化行事の推進により、国民参加の森林づくりを進めました。

モントリオール・プロセスでの報告等への活用を図るため、森林資源のモニタリングを引き続き実施するとともに、時系列的なデータを用いた解析手法の開発を行いました。

国家戦略及び農林水産省生物多様性戦略(2012年2月改定)に基づき、森林生態系の調査など、森林における生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けた施策を推進しました。国有林野においては、原生的な森林生態系を有する森林や希少な野生生物の生育・生息する場となる森林である「保護林」や、これらを中心としたネットワークを形成して野生生物の移動経路となる「緑の回廊」において、モニタリング調査等を行いながら適切な保全・管理を推進しました。

国有林野において、育成複層林や天然生林へ導くための施業の推進、広葉樹の積極的な導入等を図るなど、自然環境の維持・形成に配慮した多様な森林施業を推進しました。また、優れた自然環境を有する森林の保全・管理や国有林野を活用して民間団体等が行う自然再生活動を積極的に推進しました。さらに、森林における野生鳥獣被害防止のため、地域等と連携し、広域的かつ計画的な捕獲と効果的な防除等を実施しました。

(3)河川

河川の保全等に当たっては、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境等の保全・創出するための「多自然川づくり」を全ての川づくりにおいて推進しました。

多様な主体と連携して、河川を軸とした広域的な生態系ネットワークを形成するため、湿地等の保全・再生や魚道整備等の自然再生事業を推進するとともに、流域一体となった生態系ネットワークのより一層の推進を目的として「水辺からはじまる生態系ネットワーク全国フォーラム」を開催しました。

さらに、災害復旧事業においても、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、河川環境の保全・復元の目的を徹底しました。

河川やダム湖等における生物の生息・生育状況の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を実施し、結果を河川環境データベースとして公表しています。また、世界最大規模の実験河川を有する国立研究開発法人土木研究所自然共生研究センターにおいて、河川や湖沼の自然環境保全・復元のための研究を進めました。加えて、生態学的な観点より河川を理解し、川の在るべき姿を探るために、河川生態学術研究を進めました。

(4)湿地

湿原や干潟等の湿地は、多様な動植物の生息・生育地等として重要な場です。しかし、これらの湿地は全国的に減少・劣化の傾向にあるため、その保全の強化と、既に失われてしまった湿地の再生・修復の手立てを講じることが必要です。2016年4月に公表した「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」について、湿地とその周辺における生物多様性への配慮の必要性を普及啓発しました。

多様な主体と連携して、河川を軸とした広域的な生態系ネットワークを形成するため、湿地等の保全・再生や魚道整備等の自然再生事業を推進しました。

(5)山麓斜面等

山麓斜面に市街地が接している都市において、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を保全・創出するために、市街地に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして一連の樹林帯の形成を図りました。また、生物の良好な生息・生育環境を有する渓流や里山等を保全・再生するため、NPO等と連携した山腹工等を実施しました。土砂災害防止施設の整備に当たり良好な自然環境の保全・創出に努めています。

2 重要地域の保全

(1)自然環境保全地域等

自然環境保全法(昭和47年法律第85号)に基づく保護地域には、国が指定する原生自然環境保全地域、自然環境保全地域及び沖合海底自然環境保全地域、都道府県が条例により指定する都道府県自然環境保全地域があります。これらの地域は、極力自然環境をそのまま維持しようとする地域であり、我が国の生物多様性の保全にとって重要な役割を担っています。

これらの自然環境保全地域等において、自然環境の現況把握や標識の整備等を実施し、適正な保全管理に努めています(表2-3-1)。沖合海底自然環境保全地域に関しては、第2章第4節1を参照。

表2-3-1 数値で見る重要地域の状況
(2)自然公園
ア 公園区域及び公園計画の見直し

自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づいて指定される自然公園(国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園)は、国土の14.8%を占めており(図2-3-2)、国立・国定公園にあっては、適正な保護及び利用の増進を図るため、公園を取り巻く社会条件等の変化に応じ、公園区域及び公園計画の見直しを行っています。

図2-3-2 国立公園及び国定公園の配置図

2019年度は、中央アルプス国定公園を新規指定し、また、知床国立公園、奄美群島国立公園、やんばる国立公園及び京都丹波高原国定公園の合計4公園の公園区域を変更し、それらの公園に加えて富士箱根伊豆国立公園、阿蘇くじゅう国立公園及び西表石垣国立公園の合計7公園の公園計画を見直しました。特に、中央アルプス国定公園については、希少かつ特徴的な氷河地形や貴重な高山植生等を有し、傑出性が高い風景地を有していることが評価され、新規指定を行いました。

イ 自然公園の管理の充実

国立公園の管理運営については、地域の関係者との協働を推進するため、協働型管理運営の具体的な内容や手順についてまとめた「国立公園における協働型管理運営の推進のための手引書」に沿って、2020年3月時点で、総合型協議会が12の国立公園の13地域に設置されています。また、自然公園法に基づく公園管理団体は国立公園で5団体と国定公園で2団体が指定されています。

国立公園等の貴重な自然環境を有する地域において、自然や社会状況を熟知した地元住民等によって構成される民間事業者等を活用し、環境美化、オオハンゴンソウ等の外来種の駆除、景観対策としての展望地の再整備、登山道の補修等の作業を行いました。

生態系維持回復事業計画は、9国立公園において10計画が策定されており、各事業計画に基づき、シカや外来種による生態系被害に対する総合的かつ順応的な対策を実施しました。また、生物多様性保全上、特に対策を要する小笠原国立公園及び西表石垣国立公園において、グリーンアノールや外来カエル類の防除事業及び生態系被害状況の調査を重点的に実施し、外来種の密度を減少させ本来の生態系の維持・回復を図る取組を推進しました。加えて、2015年に策定した国立・国定公園の特別地域において採取等を規制する植物(以下「指定植物」という。)の選定方針に基づき、19の国立公園において指定植物の見直し作業を進めました。

国立・国定公園内の植生や自然環境の復元等を目的とし、釧路湿原国立公園等において、植生復元施設や自然再生施設等の整備を推進しました。また、アクティブ・レンジャーを全国に配置し、現場管理の充実に努めました。

ウ 自然公園における適正な利用の推進

自動車乗り入れの増大により、植生への悪影響、快適・安全な公園利用の阻害等に対処するため、「国立公園内における自動車利用適正化要綱」に基づき、2019年度は、19国立公園の26地区において、地域関係機関との協力の下、自家用車に代わるバス運行等の対策を実施しました。

国立公園等の山岳地域において、山岳環境の保全及び利用者の安全確保等を図るため、山小屋事業者等が公衆トイレとしてのサービスを補完する環境配慮型トイレ等の整備や、利用者から排出された廃棄物の処理施設整備を行う場合に、その経費の一部を補助しており、2019年度は中部山岳国立公園において焼却炉(3箇所)の整備を支援しました。

(3)鳥獣保護区

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護管理法」という。)に基づき、鳥獣の保護を図るため、国際的又は全国的な見地から特に重要な区域を国指定鳥獣保護区に指定しています(表2-3-1)。

(4)生息地等保護区

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づき、国内希少野生動植物種の生息・生育地として重要な地域を生息地等保護区に指定しています(表2-3-1)。

(5)名勝(自然的なもの)、天然記念物

文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づき、日本の峡谷、海浜等の名勝地で観賞上価値の高いものを名勝(自然的なもの)に、動植物及び地質鉱物で学術上価値が高く我が国の自然を記念するものを天然記念物に指定しています(表2-3-1)。さらに、天然記念物の衰退に対処するため関係地方公共団体と連携して、天然記念物再生事業38件(2020年3月末時点)について再生事業を実施しました。

(6)国有林野における保護林及び緑の回廊

原生的な森林生態系を有する森林や希少な野生生物の生育・生息の場となる森林である「保護林」や、これらを中心としたネットワークを形成して野生生物の移動経路となる「緑の回廊」において、モニタリング調査等を行いながら、適切な保全・管理を推進しました(表2-3-1)。

(7)保安林

我が国の森林のうち、水源の涵(かん)養や災害の防備のほか、良好な環境の保全による保健休養の場の提供等の公益的機能を特に発揮させる森林を、保安林として計画的に指定し、適正な管理を行いました(表2-3-1)。

(8)特別緑地保全地区・近郊緑地特別保全地区等

都市緑地法(昭和48年法律第72号)等に基づき、都市における生物の生息・生育地の核等として、生物の多様性を確保する観点から特別緑地保全地区等の都市における良好な自然的環境の確保に資する地域の指定による緑地の保全等の取組の推進を図りました。2018年3月時点で全国の特別緑地保全地区等は607地区、2,774haとなっています。

(9)ラムサール条約湿地

第2章第7節9(5)を参照。

(10)世界自然遺産

我が国では、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)に基づき、屋久島、白神山地、知床及び小笠原諸島の4地域が自然遺産として世界遺産一覧表に記載されています。これらの世界自然遺産については、遺産地域ごとに関係省庁・地方公共団体・地元関係者からなる地域連絡会議と専門家による科学委員会を開催しており、関係者の連携によって適正な保全・管理を実施しました。

世界自然遺産の候補地である奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島については、2018年5月に世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合から登録延期勧告を受け、推薦を一旦取り下げましたが、必要な推薦書の修正等を行い、2019年2月に世界遺産一覧表へ記載するための推薦書を世界遺産センターへ提出しました。

(11)生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)

「生物圏保存地域(Biosphere Reserves、国内呼称はユネスコエコパーク)」は、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「人間と生物圏(Man and the Biosphere(MAB))計画」の枠組みに基づいて国際的に認定された地域です。各地域では、「保存機能(生物多様性の保全)」、「学術的研究支援」及び「経済と社会の発展」の三つの機能により、生態系の保全のみならず持続可能な地域資源の利活用の調和を図る活動を行うこととされています。

現在の認定総数は124か国、701地域(2019年6月時点)であり、国内においては、2019年6月に甲武信ユネスコエコパークの登録が新たに認められました。既存の只見、志賀高原、南アルプス、白山、大台ヶ原・大峯山・大杉谷、綾、屋久島・口永良部島、みなかみ及び祖母・傾・大崩と併せて、国内では10地域が認定されており、豊かな自然環境の保全と、それぞれの自然や文化の特徴を活かした持続的な地域づくりが進められています。

(12)ジオパーク

「ユネスコ世界ジオパーク」は、UNESCOの「国際地質科学ジオパーク計画(International Geoscience and Geoparks Program)」の枠組みに基づいて国際的に認定された地域で、地層、岩石、地形、火山、断層など、地質学的な遺産を保護し、研究に活用するとともに、自然と人間との関わりを理解する場所として整備し、科学教育や防災教育の場とするほか、新たな観光資源として地域の振興に活かすことを目的としています。

2020年3月時点で日本からは洞爺湖有珠山、アポイ岳、糸魚川、伊豆半島、山陰海岸、隠岐、室戸、島原半島、阿蘇の9地域がユネスコ世界ジオパークとして認定されています。ユネスコ世界ジオパークにおいて、国立公園や日本ジオパークの取組と連携して、公園施設の整備、シンポジウムの開催、学習教材・プログラムづくり、エコツアーガイド養成等が行われています。

(13)世界農業遺産及び日本農業遺産

農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性等が相互に関連して一体となった農林水産業システムを認定する制度であり、国連食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産と、農林水産大臣が認定する日本農業遺産があります。認定された地域では、保全計画に基づき、農林水産業システムに関わる生物多様性の保全等に取り組んでいます。我が国では、2019年12月時点で、世界農業遺産が11地域、日本農業遺産が15地域認定されています。

3 自然再生

自然再生推進法(平成14年法律第148号)に基づく自然再生協議会は、2020年3月末時点で全国で26か所となっています。このうち25か所の協議会で自然再生全体構想が作成され、うち21か所で自然再生事業実施計画が作成されています。

2019年度は、国立公園における直轄事業6地区、自然環境整備交付金で地方公共団体を支援する事業4地区の計10地区で自然再生事業を実施しました(図2-3-3)。

図2-3-3 環境省の自然再生事業(実施箇所)の全国位置図

これらの地区では、生態系調査や事業計画の作成、事業の実施、自然再生を通じた自然環境学習等を行いました。このほか、国立公園など生物多様性の保全上重要な地域と密接に関連する地域において都道府県が実施する生態系の保全・回復のための事業を支援するため、生物多様性保全回復施設整備交付金により、熊本県による球磨川流域における取組、京都府による桂川流域における取組等、4件を支援しました。

4 里地里山の保全活用

里地里山は、集落を取り巻く二次林と人工林、農地、ため池、草原等を構成要素としており、人為による適度なかく乱によって特有の環境が形成・維持され、固有種を含む多くの野生生物を育む地域となっています。

このような里地里山の環境は、人々の暮らしに必要な燃料、食料、資材、肥料等の多くを自然から得るために人が手を加えることで形成され、維持されてきました。しかし、戦後のエネルギー革命や営農形態の変化等に伴う森林や農地の利用の低下に加え、農林水産業の担い手の減少や高齢化の進行により里地里山における人間活動が急速に縮小し、その自然の恵みは利用されず、生物の生息・生育環境の悪化や衰退が進んでいます。こうした背景を踏まえ、環境省ウェブサイト等において地域や活動団体の参考となる里地里山の特徴的な取組事例や重要里地里山500「生物多様性保全上重要な里地里山」について情報を発信し、他の地域への取組の波及を図りました。

特別緑地保全地区等に含まれる里地里山については、土地所有者と地方公共団体等との管理協定の締結による持続的な管理や市民への公開等の取組を推進しました。

また、貴重な国民的財産である棚田を保全し、棚田地域の有する多面にわたる機能の維持増進を図るため、棚田地域振興法(令和元年法律第42号)が2019年6月に成立、同年8月に施行されました。

文化財保護法では、棚田や里山といった「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」を文化的景観と定義し、文化的景観のうち、地方公共団体が保存の措置を講じ、特に重要であるものを重要文化的景観に選定しています。重要文化的景観の保存と活用を図るために地方公共団体が行う調査、保存計画策定、整備、普及・啓発事業に要する経費に対する補助を実施しました。

5 木質バイオマス資源の持続的活用

森林等に賦存するバイオマス資源の持続的な活用を支援し、地域の低炭素化と里山等の保全・再生を図りました。

6 都市の生物多様性の確保

(1)都市公園の整備

都市における緑とオープンスペースを確保し、水と緑が豊かで美しい都市生活空間等の形成を実現するため、都市公園の整備、緑地の保全、民有緑地の公開に必要な施設整備等を支援する「都市公園・緑地等事業」を実施しました。

(2)地方公共団体における生物多様性に配慮した都市づくりの支援

緑豊かで良好な都市環境の形成を図るため、都市緑地法に基づく特別緑地保全地区の指定を推進するとともに、地方公共団体等による土地の買入れなどを推進しました。また、首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)に基づき指定された近郊緑地保全区域において、地方公共団体等による土地の買入れ等を推進しました。

「都市の生物多様性指標」に基づき、都市における生物多様性保全の取組の進捗状況を地方公共団体が把握・評価し、将来の施策立案等に活用されるよう普及を図りました。

(3)都市緑化等

都市緑化に関しては、緑が不足している市街地等において、緑化地域制度や地区計画等緑化率条例制度等の活用により建築物の敷地内の空地や屋上等の民有地における緑化を推進するとともに、市民緑地契約や緑地協定の締結や、2017年の都市緑地法改正において創設された「市民緑地認定制度」により、民間主体による緑化を推進しました。さらに、風致に富むまちづくり推進の観点から、風致地区の指定を推進しました。緑化推進連絡会議を中心に、国土の緑化に関し、全国的な幅広い緑化推進運動の展開を図りました。また、都市緑化の推進として、「春季における都市緑化推進運動(4月~6月)」、「都市緑化月間(10月)」を中心に、普及啓発活動を実施しました。

都市における多様な生物の生息・生育地となるせせらぎ水路の整備や下水処理水の再利用等による水辺の保全・再生・創出を図りました。