環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第6節 持続可能な利用

第6節 持続可能な利用

1 持続可能な農林水産業

国家戦略及び農林水産省生物多様性戦略に基づき、[1]田園地域・里地里山の保全(環境保全型農業直接支払による生物多様性保全に効果の高い営農活動に対する直接支援等)、[2]森林の保全(適切な間伐等)、[3]里海・海洋の保全(生態系全体の生産力の底上げを目指した漁場の整備等)など、農林水産分野における生物多様性の保全や持続可能な利用を推進しました。

企業等による生物多様性保全活動への支援等について取りまとめた農林漁業者及び企業等向け手引及びパンフレットを活用し、農林水産分野における生物多様性保全活動を推進しました。

(1)農業

持続可能な農業生産を支える取組の推進を図るため、化学肥料、化学合成農薬の使用を原則5割以上低減する取組と併せて行う地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業者の組織する団体等を支援する環境保全型農業直接支払を実施しました。

環境と調和の取れた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着や、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の普及推進、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づく有機農業の推進に関する基本的な方針の下で生産技術力の強化、産地の販売企画力の強化、販路拡大等に関する支援を引き続き行いました。

(2)林業

森林・林業においては、持続可能な森林経営及び森林の有する公益的機能の発揮を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を実施するとともに、多様な森林づくりのための適正な維持管理に努めるほか、関係省庁の連携の下、木材利用の促進を図りました。

また、森林所有者や境界が不明で整備が進まない森林も見られることから、意欲ある者による施業の集約化の促進を図るため、所有者の特定や境界確認等に対する支援を行いました。これに加えて、適切な経営管理が行われていない森林について市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者をつなぐ森林経営管理法(平成30年法律第35号)が2018年5月に国会で成立しました。

(3)水産業

水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流等による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理措置等を内容とする資源管理計画に基づく取組を支援しました。さらに、沿岸域の藻場・干潟の造成等生育環境の改善を実施しました。また、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進しました。

水産資源の保護管理については第2章第4節2を参照。

2 エコツーリズムの推進

エコツーリズム推進法(平成19年法律第105号)に基づき、エコツーリズムに取り組む地域への支援、全体構想の認定・周知、技術的助言、情報の収集、普及啓発、広報活動等を総合的に実施しました。同法に基づくエコツーリズム全体構想については、2019年3月時点において全国で合計15件が認定されています。また、全国のエコツーリズムに関連する活動の向上や関係者の連帯感の醸成を図ることを目的として、第14回エコツーリズム大賞により取組の優れた団体への表彰を実施し、特定非営利活動法人飛騨小坂200滝が大賞を受賞しました。

エコツーリズムに取り組む地域への支援として、12の地域協議会に対して交付金を交付し、魅力あるプログラムの開発、ルール作り、推進体制の構築等を支援するとともに、有識者をアドバイザーとして地域に派遣したほか、地域におけるガイドやコーディネーター等の人材育成事業等を実施しました。

エコツーリズムの推進・普及を図るため、全体構想認定地域等のエコツーリズムに取り組む地域や関係者による意見交換を行い、課題や取組状況等を共有しました。

3 遺伝資源へのアクセスと利益配分

(1)遺伝資源の利用と保存

医薬品の開発や農作物の品種改良など、遺伝資源の価値は拡大する一方、世界的に見れば森林の減少や砂漠化の進行等により、多様な遺伝資源が減少・消失の危機に瀕(ひん)しており、貴重な遺伝資源を収集・保存し、次世代に引き継ぐとともに、これを積極的に活用していくことが重要となっています。

農林水産分野では、農業生物資源ジーンバンク事業等により、関係機関が連携して、動植物、微生物、DNA、林木、水産生物等の国内外の遺伝資源の収集、保存、評価等を行っており、植物遺伝資源22万点をはじめ、世界有数のジーンバンクとして利用者への配布・情報提供を行いました。また、海外から研究者を受け入れ、遺伝資源の取引・運用制度に関する理解促進や保護と利用のための研修等支援を行いました。

新品種の開発に必要な海外遺伝資源の取得や利用を円滑に進めるため、遺伝資源保有国における遺伝資源に係る制度等を調査するとともに、入手した各国の最新情報等について、我が国の遺伝資源利用者に対し周知活動等を実施しました。

ライフサイエンス研究の基盤となる研究用動植物等の生物遺伝資源について、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」により、大学・研究機関等において戦略的・体系的な収集・保存・提供等を行いました。また、途絶えると二度と復元できない実験途上の貴重な生物遺伝資源を広域災害等から保護するための体制強化に資する、「大学連携バイオバックアッププロジェクト」も実施しています。

(2)微生物資源の利用と保存

独立行政法人製品評価技術基盤機構を通じた資源保有国との生物多様性条約の精神にのっとった国際的取組として、資源保有国への技術移転、我が国の企業への海外の微生物資源の利用機会の提供等を行いました。

我が国の微生物等に関する中核的な生物遺伝資源機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(NBRC)において、生物遺伝資源の収集、保存等を行うとともに、これらの資源に関する情報(分類、塩基配列、遺伝子機能等に関する情報)を整備し、生物遺伝資源と併せて提供しました。