平成16年度循環型社会の形成の状況


序章 循環型社会の構築に向けたごみの3Rの推進−“もったいない”を地域に、そして世界に−


はじめに

 平成16年6月に米国・シーアイランドで開催された主要国首脳会議(G8サミット)において、小泉首相が提唱した3Rの国際会議(3Rイニシアティブ閣僚会合)が本年4月に東京で開催され、我が国、そして世界で、リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)という、いわゆる「3R」を推進し、循環型社会の構築を推進しようとする気運が高まっています。
 ひるがえって、我が国のごみ(一般廃棄物)をめぐる状況をみると、近年、排出量の減少は進んでおらず、3R対策、特にリデュース・リユース対策は、その重要性に照らして必ずしも十分な成果を挙げてきたとはいえない状況にあり、現在、その3Rをいかにして進めていくかが喫緊の課題となっています。3Rを進める上で、我々の日常生活から発生するごみをどうしていくかは、全ての国民に共通する最も身近な問題であり、いわば、循環型社会づくりの基礎となるものです。
 平成17年2月に、平成16年のノーベル平和賞受賞者でケニア環境副大臣のワンガリー・マータイ氏が来日し、我が国の「もったいない」という言葉に感銘を受け、国連の「女性の地位向上委員会」閣僚級会合等でこれを紹介しました。「もったいない」に表された、我が国の「限られた資源を無駄にせず、効率的に活用する」という考え方は、世界で脚光を浴びています。この「もったいない」の考え方は、現在の懸案であるごみの3Rの推進そのものにつながるものです。
 本年度の白書では、我が国に根付いたこの「もったいない」の取組を地域に、そして世界に発信していくことを目指し、「ごみの3R推進」に焦点を当てて、循環型社会の構築に向けた取組の現状と今後の取組の方向性について、重点的に考えていきたいと思います。
 まず、ごみ処理の有料化等を通じたごみのリデュース対策について検討を進めます。また、パソコン等のリユースに向けた新たな動きの分析や、サッカースタジアム等でのリユースカップの一層の普及に向けた検討も行っています。さらに、リサイクル対策についても、廃プラスチックのサーマルリサイクルの是非やごみの標準的な分別収集方法等についても検討しています。

第1節 我が国のごみをめぐる状況


 循環型社会の構築に向け、我が国では、平成12年に制定された循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)において、廃棄物・リサイクル対策の優先順位を明確にしています。具体的には、最初に廃棄物の発生を抑制(Reduce:リデュース)し、第二に廃棄物を再使用(Reuse:リユース)し、第三に廃棄物を再生利用(Recycle:リサイクル)し、第四に熱回収を行い、最後にどうしても循環利用できない廃棄物を適正に処分することとしています。最初の3つの対策のアルファベットの頭文字が「R」であることから、これらを併せて「3R」と呼んでいます(序-1図)。


序-1図 循環型社会に向けた処理の優先順位


 ごみ対策というと、初めにリサイクルの推進を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、循環型社会の構築を進めるには、まず廃棄物をできる限りリデュースすることが最重要であることを忘れてはなりません。また、リユースもこれからますます重要となっています。リサイクルは有効な取組ですが、リサイクル製品に加工する過程等で環境負荷が生じるといった問題があるのも事実です。このため、「リサイクルするからごみを捨ててもかまわない」という考え方は誤りです。循環型社会とは、私たち一人ひとりが、まず、「いかにごみの発生を抑制するか」をしっかり考え、かつ行動する社会でなくてはならないのです。
 しかしながら、ごみの排出量はここ数年横ばい傾向にあるなど、3R、特にリデュースとリユースは必ずしも十分に進んでいない状況にあります。
 本節では、ごみの3Rの状況と課題を見ていく上で、まず、始めに、ごみの排出・処理の状況やごみに対する国民の意識、ごみ問題への国と地方の一体となった取組など、我が国のごみをめぐる状況について見ていきたいと思います。



コラム 1 3Rの起源

 3R(廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))は、1980年代中頃に米国が使用したのが始まりのようです。
 ちなみに、同じ頃にカナダはこの3Rに“回収”(Recover)を加えた4Rを提唱していたようですし、この他にも、NGOなどには、ごみになるものは受け取らない”(Refuse)を加えて4Rが重要と主張する者もありました。また、“修理・修繕”(Repair)を加えた4Rが重要という意見もあるようです。
 ところで、この「3R」ですが、聞いたことはあるけれど、その意味を詳しく知らないという人も多いかと思います。
 1.廃棄物の発生抑制(Reduce)
   「ごみを出さない」、つまりごみの発生、排出の抑制をするということです。3つのRの中で最も効果的で重要なのがこのリデュースです。
 2.再使用(Reuse)
   製品とか部品の再利用、つまり使えるものは繰り返し使いましょうということです。
 3.再生利用(Recycle)
   再び資源として利用しましょうということです。

 リサイクルは日本でもお馴染みの言葉ですが、リユースが混同して理解されることが多いようです。
 3Rを始めいろいろな取組がありますが、一番大事なことは一人ひとりが“ごみの排出者”であり、自分の問題であるという意識を持つことです。できることから始め、自分なりの“R”を実践してみましょう。



1. 廃棄物の区分

 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)では、廃棄物は、大きく一般廃棄物と産業廃棄物の2つに区別されています。一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物を指し、し尿のほか主に家庭から発生する家庭系ごみであり、オフィスや飲食店などから発生する事業系ごみも含んでいます。一方で、産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律で定められた20種類のものと輸入された廃棄物をいいます。これらの廃棄物の区分については、以下のとおりとなっています(序-1-1図)。
 本章においては、一般廃棄物は我々が身近に考えている「ごみ」とほぼ同じものであることから、特段の断りがない限り「一般廃棄物」を「ごみ」と表記することとします。

序-1-1図 廃棄物の区分


2. ごみの排出・処理の現状

 ごみの総排出量及び1人1日当たりの排出量は、第二次石油危機の昭和54年度以降にやや減少傾向が見られた後、昭和60年度前後から急激に増加し、平成2年度からは横ばいないし微増傾向が続いてきましたが、平成13年度からは2年連続でわずかに減少しています。
 平成14年度におけるごみの総排出量*1は5,161万t(前年度比0.9%減)、1人1日当たりのごみ排出量は1,111g(前年度比1.2%減)となっています(序-1-2図)。

序-1-2図 ごみ総排出量及び1人1日当たりのごみ排出量の推移


*1 「ごみ総排出量」=「収集ごみ量+直接搬入ごみ量+自家処理量」である。
 廃棄物処理法に基づく「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」における一般廃棄物の排出量は、「ごみ総排出量」から「自家処理量」を差し引き、資源ごみの「集団回収量」を加算したものとしており、その場合の平成14年度の排出量は、5,420万tである。

 これらのごみのうち、生活系ごみと事業系ごみの排出割合を見ると、生活系ごみが 3,453万t(約67%)、事業系ごみが 1,708万t(約33%)となっています(序-1-3図)。

序-1-3図 生活系ごみと事業系ごみの排出割合(平成14年度)


 ごみは、直接あるいは中間処理を行って資源化されるもの、焼却などによって減量化されるもの、処理せずに直接埋め立てられるものに大別されます。
 ごみの総処理量のうち、中間処理されるごみは全体の処理量の約91%に当たる4,689万tとなっています。中間処理施設としては、焼却施設のほか、資源化を行うための施設(資源化施設)、堆肥を作る施設(高速堆肥化施設)、飼料を作る施設(飼料化施設)、メタンガスを回収する施設(メタン回収施設)などがあります。中間処理施設に搬入されたごみは、処理の結果、350万tが再生利用され、直接資源化されたものや集団回収されたものと合わせると、総資源化量は864万tになります。ごみの総処理量に対する割合(リサイクル率)は、平成2年度の5.3%から平成14年度の15.9%に大きく増加しています。中間処理量のうち、直接焼却されるごみの量は4,031万t(全体処理量の78.4%:直接焼却率)であり、焼却を始めとした中間処理によって減量されるごみの量は3,658万t(全体処理量の71.1%)にもなります。また、焼却施設には、発電施設や熱供給施設などが併設されて、発電、熱利用等有効利用が行われている事例も増加しています。
 一方、直接埋め立てられる廃棄物、焼却残さ(ばいじんや焼却灰)、焼却以外の中間処理施設の処理残さを合わせたものが最終処分場に埋め立てられる量になります。直接埋め立てられるごみの量は約223万t(平成13年度275万t)で、総排出量の4.3%(平成13年度5.3%)となっており、直接埋立量の割合は年々減少しています。また、ごみ処理施設から排出される焼却灰などの処理残さを合わせた埋立総量は903万t(平成13年度995万t)であり、こちらも年々減少しています(序-1-4図)。

序-1-4図 全国のごみ処理のフロー(平成14年度)


 ごみ処理方法の推移を見ると、ごみの処理方法については、直接焼却されるごみの割合が年々上昇しており、平成14年度は78.4%となっています。一方、資源化されるごみの割合も着実に増加しています(序-1-5図)。

序-1-5図 ごみ処理方法の推移


 また、これらのごみ処理にかかる経費の総額は、2兆3,956億円であり、国民1人当たりに換算すると、1万8,800円となり、前年度より1,700円減少しています(序-1-6図)。

序-1-6図 ごみ処理事業経費の推移


3. ごみ問題に係る公害苦情件数

 ごみは身近な環境問題の原因となっており、平成15年度の公害等調整委員会「公害苦情調査結果報告書」によると、廃棄物(一般廃棄物と産業廃棄物の両方を含む)の不法投棄に係る苦情件数は、平成10年度には5,049件でしたが、平成15年度には、1万5,911件であり、この数年で約3倍に急増しています。また、この数値は、典型7公害(大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭)以外の苦情件数の48.0%を占めています(序-1-7図)。

序-1-7図 公害苦情件数の推移


 また、これらの不法投棄に関する苦情の中でも、ごみの不法投棄の苦情がその大部分を占める77.3%(1万2,298件)となっており、ごみ問題に対する国民の不安の大きさを裏付ける結果となっています(序-1-8図)。

序-1-8図 廃棄物の不法投棄の種類別苦情件数の推移


4. ごみ問題に係る意識

 ごみ問題に対する国民の意識については、内閣府、環境省により、アンケート調査がなされています。

(1) 内閣府「国民生活モニター調査」*2
 1) ごみ問題の原因として考えられることについては、「無関心な消費者がまだ多い」(59.0%)ことが最大の要因として挙げられています(序-1-9図)。

序-1-9図 ごみ問題の原因


 2) 逆に、ごみ問題と消費生活との関係にどの程度の関心があるかという問いには、「非常に関心がある」(29.8%)、「ある程度関心がある」(64.8%)と答えた人の合計は、94.6%に上っており、ごみ問題に対する関心の高まりを表しています(序-1-10図)。

序-1-10図 ごみ問題と消費者生活との関係


 3) また、実際の取組としては、ごみや一度使ったものがリユース(繰り返し使う)、リサイクル(再び資源として利用する)されやすいように、心がけていることとしては、「家庭で出たごみは、きちんと分別して定められた場所に出している」(94.3%)。と答えた人の割合が特に高くなっています(序-1-11図)。

序-1-11図 リユース・リサイクルへの心がけ


*2「国民生活モニター調査」
 1)調査期間 平成16年12月8日〜平成16年12月22日
 2)調査対象者 2,113人
 3)有効回答数 1,993人(回収率94.3%)

(2) 環境省「環境にやさしいライフスタイル実態調査」*3
 1) 現在関心のある環境問題として、「不法投棄など廃棄物の不適切な処理」(57%)が挙げられています(序-1-12図)。

序-1-12図 環境問題の関心(全体、時系列:複数回答)


 2) 環境問題についての考え方として、特に廃棄物関係で9割以上の人が肯定的な意見を持っていたものとしては、「環境のことを考えて、使い捨てはやめ、リユース、リサイクルを進めるべきだ」(92.7%)、「大量消費・大量廃棄型の生活様式を改めるべきだ」(90.7%)となっており、3Rの推進について、相当部分の国民が意識を持っていることが表れています(序-1-13図)。

序-1-13図 環境問題に対する考え方(全体、時系列)(「大変そう思う」「ややそう思う」比率の合計)


 3) 日常生活におけるごみの処理の際の意識としては、「環境保全や資源節約のために良いことだと思う」「地域に制度があれば従うのは当然だ」と考える人(「大変そう思う」と「ややそう思う」の合計)がそれぞれ95.0%、89.0%となっています(序-1-14図)。

序-1-14図 ごみの分別における意識(全体)


 4) 一方で、「これら具体的な行動をとる」に関連する質問への肯定の回答は、24%〜58%となっており、必ずしも行動に結びついていない実態が表れています(序-1-15図)。

序-1-15図 具体的な行動


 これらの調査からは、国民の日々のごみ問題に関する意識は非常に高い(関心がある)ものの、意識の高さが実際の行動に必ずしも結びついていないとの結果が表れています。このため、今後も普及啓発等を通じ、国民の自主的な活動への参加を促していくことが課題となっています。

*3「環境にやさしいライフスタイル実態調査」
 1)調査期間 平成16年6月4日〜平成16年7月5日
 2)調査対象者 3,000人(全国20歳以上の男女から無作為抽出)
 3)有効回答数 1,267人(回収率42.2%)



コラム 2 もったいないと思う心

 環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア環境副大臣、ワンガリ・マータイ氏が、ニューヨークの国連本部で開かれた「国連婦人の地位向上委員会」で演説し、先だって来日した際に日本語の「もったいない」という言葉を知ったと話し、これをキーワードに「女性たちによる世界的『もったいない』キャンペーンを展開し、資源を有効的に利用しましょう」と訴えました。
 その演説の中で「もったいない」は、英語でうまく言い表す言葉が見つからない日本語であり、日本固有の生活文化、日本人の心・生き方そのものと言え、日本人は古来よりものを大切にする生活を実践し、心豊かに生きてきたと紹介されました。しかし、私たちは今日の大量生産・消費型の社会経済システムにおいて、物質的な豊かさと引き替えに、天然資源枯渇等の懸念等の地球的規模の環境影響の問題とともに、日常生活の中での本当の豊かさというものを見失いつつあるとも言えます。
 そのような中、岐阜県の「もったいない・ぎふ県民運動」では、先人の「もったいない」という知恵を見つめ直し、この運動を通して「日本一住みよいふるさと岐阜県」を目指そうという取組がなされています。この運動に先立ち、古来より日本人が持っていた「もったいない」という言葉、行動に関する意識アンケートを行った結果、回答者の88%が日常生活の中で「もったいない」という言葉を使っており、90%以上が日常生活の中で「もったいない」と思うことがあるとしたものの、若い世代ではその割合は低く、逆にあまり思うことがないとの回答が10%を占めるなど、年齢により意識に差が出ています。これを受け、運動の一環として、県内の小中学校を対象とした「もったいない!ごみぜろコンテスト」を開催しました。これは町や学校などで出るごみの実態調査を通じ改善策を考え、ゴミゼロを目指す報告書と壁新聞を応募するもので、取組を通して有意義にごみの減量がなされています。
 「もったいない」という言葉を世界へ。私たちは、「もったいない」という言葉のもつ意味をもう一度考え直すことで、現在のライフスタイルを変革することができるのではないでしょうか。



5. ごみ問題への国と地方の一体となった対応

 これまで、我が国のごみ問題の現状を見てきましたが、3Rの推進のためには、国民、事業者、地方公共団体や国等の行政が、このような現状に対応して、適切な役割分担の下で取組を進めていくことが必要です。その中でも、国と地方が協働して広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設の整備を進めていくことが重要な課題となっています。
 このような認識の下、国際的な動向も視野に入れつつ、平成17年度に、広域的な観点から循環型社会の形成を図るための新たな制度として、「循環型社会形成推進交付金」が創設されました。
 この交付金は、市町村が、国や都道府県と構想段階から協働して3Rの推進等に関する戦略的な目標とそれを達成するために必要な廃棄物処理やリサイクルに係る施設整備・関連する計画支援等の事業を内容とする循環型社会形成推進地域計画を策定することとし、この計画に基づいて実施される事業の費用を支援するものです。その際、地方の実情に即した柔軟な計画策定と予算配分ができるよう配慮するとともに、3R推進の目標の達成状況を事後的に評価し、公表することとしています。
 今後も、国と地方の新たな連携の下で、地方の自主性・裁量性を重視しながら、我が国全体として最適な循環型社会づくりを一層進めていくことが期待されています。


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