第1部 平成15年度循環型社会の形成の状況に関する年次報告



序章
 循環型社会構築の障害とその克服に向けて −不法投棄の現状と対策について−

 はじめに

 平成16年3月、岐阜市椿洞において、産業廃棄物処理業者による52万m3以上にも及ぶと見積もられる廃プラスチックや木くず等建設廃材の不法投棄事案が発覚しました。同事案は、豊島不法投棄事案や青森・岩手県境不法投棄事案に比類するような産業廃棄物の大規模不法投棄事案となると想定されており、昨年6月に成立した産廃特措法により青森・岩手県境不法投棄事案に係る対策事業が本格的に動き出した矢先の出来事でした。
 また、上記ほど大規模なものでなくとも、不法投棄問題については新聞等により日常的に報道されるなど全国で多発しており、問題の深刻さを物語っています。
 現在、循環型社会形成推進基本法廃棄物処理法、各種リサイクル法など関連法等に基づき、リデュース(排出抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)といった物質の循環利用を積極的に推進しているところですが、循環利用の出口である適正処分が確保されないことには、循環型社会の構築はおぼつきません。
本年の白書では、喫緊の課題であり、循環型社会構築の障害となっている廃棄物の不法投棄問題に焦点を当て、その現状と影響及び対策について見ていきたいと思います。

 第1節 不法投棄の現状

 現在、我が国においては、生ごみ、生活用品、家電製品、机、椅子、タンス、ベット、自転車やバイク、自動車、果てはプレジャーボートに至るまで個人の生活や娯楽に使用された物や事業活動に伴って排出された木くず、紙くず、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸・廃アルカリ、金属くず、廃プラスチック、シュレッダーダスト、注射針や点滴チューブ等の医療廃棄物など実に様々な廃棄物が不法投棄されています。
 不法投棄というと、すぐに豊島不法投棄事案や青森・岩手県境不法投棄事案に見られるような大規模な産業廃棄物の不法投棄を想像しますが、不法にごみを捨てるという行為は我々の身近なところで毎日のように起きています。
 本節では、まず始めに我々の身近で起きている日常生活に伴う不法投棄の実態について触れ、その後にテレビ等の家電リサイクル法指定4品目、使用済自動車、廃船、産業廃棄物、硫酸ピッチに係る不法投棄の状況について見ていきたいと思います。

1. 日常生活に伴う不法投棄

 たばこや空き缶のポイ捨ては我々が日常よく目にする光景であり、また家庭ごみの収集ルールを守らない行為もよく目にします。ごみ収集車による収集が終わった後や指定外の日にごみを出したり、有料シールを貼らずに粗大ごみを捨てる人がいます。また、駅周辺のごみ集積所に曜日に関係なくごみを捨てる人もいます。
 市区町村のごみ集積所に不法投棄される粗大ごみ等は、12月に増加する傾向があります。これは、大掃除に伴い発生した不要な物を、市区町村の粗大ごみ回収手続が面倒、引取料金を支払いたくない等の理由により、手近なごみ集積所に捨てるためだと思われます(序-1-1図)。

ごみ集積所に不法に捨てられた粗大ごみの月別推移(某市区町村)

 ごみ集積所以外でも、コンビニやスーパー、駅、公園のごみ箱の周りや、河川、道路等に、投棄の形態(レジ袋に入った生ごみや電気ストーブ1個と掃除機1台など)から見て明らかに個人によるものと思われる不法投棄が常時発生し、家庭ごみや数多くの粗大ごみなどが捨てられています。高速道路のパーキングエリアやサービスエリアでは夜間にごみ箱周辺のほか駐車場や園地の植え込みの間にごみが捨てられたり、河川では専用道路の際や川原、人目につかない橋の下にごみが捨てられています。
 また、公害等調整委員会の調査によると、廃棄物の不法投棄に関する苦情件数は年々増加しており、平成14年度の苦情件数は約1万4千件に上っています。このうち一般廃棄物に係るものが全体の約74%を占めており、苦情件数では産業廃棄物を大きく上回っていました。一般廃棄物には飲食店から排出される生ごみなど事業系の廃棄物も含まれていますが、その多くは家庭から排出されるものであり、個人による不法投棄の数の多さを示しています(序-1-2図)。
不法投棄された廃棄物の種類別苦情件数の推移

2. 家電リサイクル法指定4品目の不法投棄

 家電リサイクル法指定4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機)の不法投棄には、1.で述べたような日常生活に伴い行われるもの(故障や買い換え、大掃除、引っ越し等で不要になった場合に、リサイクル料金を惜しんだり、小売店への持ち込みや粗大ごみ回収に係る市区町村手続の手間を惜しむために行われるもの等)と(3)の事例のように事業者によって行われるものとがあります。

廃家電の不法投棄

(1)不法投棄台数
 環境省の調査によると、平成14年度に新たに確認できた家電リサイクル法指定4品目の不法投棄台数は、エアコン約1万8千台、テレビ約8万3千台、冷蔵庫等約3万6千台、洗濯機約2万9千台の合計約16万6千台でした(序-1-3図)。
 また、平成13年度と14年度両方のデータを有している2,743地方公共団体(総人口の約90%)で比較すると、平成14年度の不法投棄台数は約15万3千台で、前年度(12万7千台)に比べ約20%増加していました。

(2)不法投棄の場所
 平成15年の環境省調査によると、市区町村が回収した不法投棄場所(複数回答)は、山林、田畑等(民有地を除く。)が約59%、道路上、道路高架下等の公道が約58%、ごみステーション等ごみの収集場所が約55%、河川敷等の河川用地内が約44%、公園、港湾等の道路、河川以外の公共用地が約32%、小売店以外の民有地が約26%、小売店の敷地が約5%、その他が約10%でした。
(3)事業者による不法投棄の事例
 札幌市内の家電小売店から廃家電の処理委託を受けた古物商が、平成14年7月下旬から10月上旬にかけて、テレビ、冷蔵庫など家電リサイクル法指定4品目約160台を厚田村の山中に不法投棄する事案が発生しました。なお、同事案では廃家電とあわせて木くずなどの一般廃棄物約500kgも不法投棄されていました。
家電リサイクル法指定4品目の不法投棄台数の推移

(4)事業者による不法投棄の背景
 (3)のような事例が生じる背景には、廃家電のリサイクルに係る消費者と小売店及びこの関係を悪用する事業者の存在があります。
 家電リサイクル法では、廃家電のリサイクル費用と指定引取場所までの運搬費用を消費者が負担することになっており、消費者が廃家電を小売店に持ち込む場合、消費者はその費用を小売店を通して支払うことになります。
 ほとんどの消費者は廃家電の処理費用をきちんと支払っていますが、少しでも費用負担を抑えたいために、無料又は安価に引き取ってくれる小売店を選択しようとする消費者が一部に存在します。
 また、売上げを伸ばしたい一部の小売店について、本来消費者が負担すべきリサイクル費用ではあっても、値引きすることにより見た目にリサイクル料金が無料又は安価であるかのように装い、また、費用負担を出来るだけ抑えるため、中古品として無料あるいは安価で引取る旨申し出る事業者に廃家電を引き渡すケースが見受けられます。
 事業者は、小売店から引き取った廃家電を売却し利益を得ますが、売却できないものについてはリサイクル費用の負担を不正な手段で回避しようとする者が存在し、不法投棄につながっている場合があります(序-1-4図)。

家電小売店に持ち込まれた廃家電の不法投棄の流れの例

3. 使用済自動車の不法投棄

 使用済自動車の不法投棄も、自動車ユーザーによるものと事業者によるものとがあります。
 自動車ユーザーが不法投棄を行うケースとしては、処分費用の支払いを逃れるため路上に乗り捨てし、そのまま放置する路上放置がその典型です。
 自動車の解体業者や整備業者など事業者が行う典型的なケースは、事業者が自社の敷地や借地にうずたかく廃車を積み上げる、いわゆる野積みと言われるもので、不法投棄あるいは保管基準違反に当たります。
 なお、路上放置の期間が長くなるにつれ、エンジンやバンパーが抜き取られたり、ホイールだけ抜き取られたタイヤが転がったりと、ぼろぼろになっていく放置自動車をよく見かけますが、その多くは価値のある部品だけを持ち去って使用又は売却しようとする者によって行われています。

野積みされた使用済自動車/放置された使用済自動車

(1)事業者による不法投棄の事例
 沖縄県豊見城市において、廃棄物処理法の収集運搬業の許可を得ていない自動車解体業者が、平成11年2月頃から使用済自動車約4千台を農地に持ち込み大量に野積みする事案が発生しました。その後、解体業者は農地法、農振法、廃棄物処理法違反で検挙され、平成13年12月に有罪(懲役一年、執行猶予三年)が確定しています。
 本件については、執行猶予期間中の平成15年4月に、周辺住民から「解体業者が廃自動車を受け入れ、処理している」旨の苦情があり、現地調査を実施したところ受け入れ事実が判明しました。その後、行政による指導がなされ、使用済自動車の受入中止及び当該解体業者による撤去作業が進められています。

(2)不法投棄等又は違法保管状態にある使用済自動車の台数
 環境省の調査によると、平成15年3月時点において確認された不法投棄等又は違法な保管状態にある使用済自動車の台数は約16万9千台でした。その内訳は、野積み等の保管基準違反によるものが約12万3千台、山林等への不法投棄や路上放置が約4万6千台でした。
 また、使用済自動車の不法投棄の特徴として、離島(本土、沖縄本島及びこれらと橋で結ばれている島以外の島)の占める割合が著しく高いことがあげられます。離島の占める割合は全国の約12.2%(保管基準違反が約7千台。不法投棄等が約1万3千台)と全体の約8分の1にも上っています(序-1-5図)。

(3)支障除去等の措置の状況
ア 路上放棄車処理協力会の寄付制度による支障除去等の措置
 路上放置車に係る生活環境保全上の支障除去等の措置に対する支援制度としては、路上放棄車処理協力会(構成員:(社)日本自動車工業会、(社)日本自動車販売協会連合会、(社)全国軽自動車協会連合会及び日本自動車輸入組合)の寄付制度があります。同制度は市町村が行う路上放置車の処理に対し、当該市町村の協力要請に基づき路上放棄車処理協力会が当該処理に要する費用(離島等の場合は別途協議)を寄付する制度です。同制度は平成3年から実施されており、平成14年は約1万7千台、制度開始からの累計で約16万台を処理しています。

イ 沖縄県の放置自動車撤去事業による支障除去等の措置
 沖縄県では、放置自動車の発生防止条例を制定する市町村に対して、沖縄特別振興対象事業を活用した放置自動車撤去事業を平成13〜14年度にかけて実施しました。同事業により市町村が撤去した放置自動車は、平成13年度で約1万1千台(平良市、石垣市など23市町村)、平成14年度で約5千8百台(国頭村など38市町村)に上ります。
不法投棄又は違法な保管状態にある使用済自動車の台数(平成15年3月現在)

(4)不法投棄の背景
 使用済自動車の不法投棄が増加した原因の一つとして、使用済自動車の逆有償化の問題があります。使用済自動車は1980年代前半までは、ほとんど全てのケースについて価値のあるものとして自動車ディーラーや整備業者が代金を払ってユーザーから買い取ってくれていました。ところが、1980年代後半から使用済自動車の価値が次第に減少し、逆にユーザーが処理費用を支払わないと自動車ディーラーや整備業者が使用済自動車を引き取ってくれないケースが増加してきました。
 このような逆有償化が起きた背景を理解するには、使用済自動車が自動車ディーラー等に引き取られてから最終処分されるまでの一連の流れを理解する必要があります。ここで、使用済自動車処理の一般的な流れを概観すると、1)ユーザーから自動車ディーラーや整備業者に使用済自動車が引き渡されます。2)次に解体業者に引き渡され、ここでエンジンや廃タイヤなどが取外されます(取外し後の状態のものを一般に廃車ガラと呼びます)。3)さらに、廃車ガラがシュレッダー業者に引き渡され、シュレッダー機で破砕後、鉄や銅、アルミなどが回収されます。4)残った廃プラスチックやガラスくず等はシュレッダーダストとして処分されます(序-1-6図)。

使用済自動車処理の主な流れ(現状)

 1980年代前半までは、シュレッダー業者は回収した鉄等の有価物を売却することにより利益を得ていましたが、1980年代後半以降は、1)鉄スクラップ価格の下落、2)シュレッダーダスト処理費用の高騰などの理由により、次第に処理費用をもらわなければシュレッダー業者が利益を上げることができなくなっていきました。
 使用済自動車の価値が有償から逆有償に転じたことにより、処理費用の負担を避けようとする自動車ユーザーによる路上放置や引き取った使用済自動車を適正処理せずに安く処理しようとする業者による野積み等が増加しています。また、安価で引き取る業者に持ち込む自動車ユーザーも不法投棄を助長していると言えるでしょう。
 また、離島の場合、1)島内の処理体制が不十分であり、使用済自動車の処理費用が他地域に比べ割高であること、2)島外へ運び出す場合には海上運送費が必要なこと、等の理由により不法投棄が特に多発しています。

4. 廃船の不法投棄

 マリンレジャーの普及に伴いモーターボート等プレジャーボートの数が年々増加している一方で、こうしたプレジャーボートに加えて、漁船などが廃船として全国の沿岸海域に不法に投棄される事案が数多く発生しています。これらの廃船は、地域の景観を損ねるばかりか、船舶交通や海で余暇を楽しむ人たちの障害となったり、場合によっては廃船から油などが流出し海洋汚染の原因となることもあります。

(1)不法投棄の事例
 平成15年、岡山県東部海域の沿岸で、不法に投棄された廃船10隻が、玉野海上保安部によって確認されました。同保安部では、投棄者10名のうち悪質な者2名を海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反で送致し、残りの8名については警告処分としました。なお、10隻すべてが同保安部指導のもと、投棄者によって適正に撤去されています。
 また、佐世保市周辺の沿岸では、不法に投棄された廃船47隻が、佐世保海上保安部により確認されており、撤去指導に応じなかった2隻の投棄者2名が送致され、その他の45隻の投棄者40名については、撤去指導に応じたため警告処分としました。

護岸に不法投棄された廃船(干潮時)

(2)不法投棄された廃船の隻数
 海上保安庁により毎年新たに確認される不法投棄廃船の数は、平成11年の1,198隻をピークにその後は減少傾向にありましたが、平成15年には884隻が新たに確認され、前年(630隻)と比べ約40%増加しました(序-1-7図)。

廃船の不法投棄隻数の推移

(3)不法投棄された廃船の種類別の隻数
 海上保安庁により平成15年に新たに確認された不法投棄廃船(884隻)を用途別に見ると、プレジャーボートが全体の約55%(487隻)を占めており、次いで漁船が約38%(333隻)、その他が約7%(64隻)を占めています。
 また、不法投棄廃船を材質別に見ると、不法投棄されやすい小型船の多くがFRP(Fiber reinforced plastic:ガラス繊維強化プラスチック)製であるため、こうしたFRP船が全体の約78%(686隻)を占めており、木造船その他の船は約22%(198隻)でした(序-1-8図)。
この傾向は特にプレジャーボートに顕著で、不法投棄されたプレジャーボート(487隻)の約93%(452隻)がFRP船でした(序-1-9図)。

不法投棄された廃船(平成15年に新たに確認されたもの)の種類別隻数

不法投棄されたプレジャーボート及び漁船(平成15年に新たに確認されたもの)におけるFRP船の割合

(4)支障除去等の措置の状況
 平成14年に撤去できなかったものを含め、平成15年に確認された不法投棄廃船1,582隻のうち、15年中に撤去されたものは全体の約55%(867隻)に過ぎず、一方、撤去に至らなかったものが約45%(715隻)を占めていました(序-1-10図)。
 支障除去等の措置の実施者の内訳を見ると、海上保安庁の廃船指導票等による撤去指導に基づき原因者が撤去したものが、処理隻数(867隻)の約68%(588隻)を占め、それ以外は地方公共団体等により撤去されました。
不法投棄廃船に係る支障除去等の措置の状況(平成15年)

5. 産業廃棄物の不法投棄

 近年、排出事業者や無許可の業者、許可を受けた処理業者による産業廃棄物の組織的計画的な不法投棄事案が多発しています。
 産業廃棄物の不法投棄は構造が複雑で関係者も多様です。不法投棄の流れを説明する前に、正規の処理ルートについて簡単に触れておきます。排出事業者(食品、製紙、電気機器等のメーカーや建築物の解体を請け負った建築解体業者など)から排出された産業廃棄物は、排出事業者自ら若しくは収集運搬の許可業者の手によって集められ、直接又は中間処理施設を経由して最終処分場で埋め立てられます。中間処理施設では破砕、脱水、焼却等による廃棄物の減量化等が行われています。
 産業廃棄物の不法投棄には、排出事業者自らが不法投棄するもののほか、排出事業者から無許可業者に渡され不法投棄されるもの、排出事業者が許可業者(収集運搬、中間処理、最終処分)に委託したものが当該許可業者によって不法投棄されるもの、許可業者から他の許可業者や無許可業者に渡り不法投棄されるものなど様々なケースが存在します。
 処理能力を超えた量の産業廃棄物を受託した収集運搬業者や中間処理業者が、積み替え保管施設や中間処理施設敷地内に産業廃棄物を過剰に積み上げたあげく、行き場を失った産業廃棄物が不法投棄されたり、最終処分業者が処分場の延命化を図るため、搬入した産業廃棄物を不法投棄するケースもあります。
 また、許可を有しない者が他社の産業廃棄物を自社物と称して自社内に搬入、保管した後に不法投棄を行うケースも不法投棄の典型的なケースの一つです(序-1-11図)。

不法投棄の流れ

産業廃棄物の不法投棄

(1)不法投棄の事例
事例1〔排出事業者(解体業者)による不法投棄〕
 長崎県の家屋解体業者が、平成14年10月、県内の借地山林内に家屋解体により排出したコンクリート殻等約25tを不法投棄し、さらに、同所に穴を堀り、木くず等約30tを焼却しました。平成15年5月に2名が逮捕されました。

事例2〔無許可業者(ブローカーら)による不法投棄〕
 東京都のブローカーらが、「土地屋」、「ダンプ屋」、「穴屋」等によるグループを組織し、平成14年8〜9月の間、長野県富士見町の山林等に、埼玉県内の廃棄物中間処理業者から委託を受けた廃プラスチック類等約2千m3を不法投棄しました。平成15年11月までに暴力団幹部ブローカーら17名(うち13名を逮捕)が検挙されました。
※ブローカー:仲介業者、土地屋:不法投棄の適地を斡旋する者、ダンプ屋:廃棄物を運搬して不法投棄する者、穴屋:不法投棄用の穴を重機等で掘り廃棄物を埋め立てる者

事例3〔許可業者による不法投棄〕
 静岡県及び横浜市の産業廃棄物収集運搬業の許可を有する静岡県の業者が、神奈川県内の解体業者から収集した産業廃棄物約7千m3を静岡県三島市の山中に不法投棄しました。その方法は、深夜見張り役を配置し、埋立投棄した廃棄物の上に残土を被せて隠蔽するなど悪質な広域事犯でありました。平成15年2月、不法投棄行為者である経営者ら6名が現行犯逮捕され、さらに処分委託した解体業者ら10名(うち6名を逮捕)が検挙されました。

(2)不法投棄の件数及び投棄量
 毎年、全国で新たに確認される産業廃棄物の不法投棄の状況を見ると、投棄量については、ここ数年40万t前後で推移していましたが、平成13年度に約24万tといったん大幅に減少した後、14年度に約32万tと再び増加しました。投棄件数で見るとここ数年千件を超えていましたが平成14年度は934件と5年ぶりに千件を切りました(序-1-12図)。

産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量の推移

 平成14年度に新たに確認された不法投棄を規模別に見ると、1件当たりの投棄量が50t未満の事案は、投棄件数で見ると全体の約60%(556件)を占めていますが、投棄量で見ると全体の約4%(約1万2千t)を占めているに過ぎませんでした。一方、1件当たりの投棄量が5千t以上の事案は、投棄件数で見ると全体の約1%(9件)に過ぎませんが、投棄量で見ると全体の約57%(約18万t)を占めており、大規模事案による不法投棄量がいかに膨大なものであるかがうかがえます(序-1-13図)。

産業廃棄物の不法投棄規模別の投棄件数と投棄量(平成14年度)

 豊島不法投棄事案の47万m3(汚染土壌を含むと56万m3)や青森・岩手県境不法投棄事案の88万m3には達しないものの、平成14年度においても以下のとおり大規模な不法投棄事案が新たに確認されています。なお、以下の括弧内の1)は投棄量、2)は投棄された産業廃棄物の種類、3)は投棄場所、4)は投棄実行者を表しています。
・沖縄県具志川市(1)約5万9千t2)シュレッダーダスト、汚泥等3)最終処分場4)許可業者)
・熊本県高森町(1)約2万3千t2)汚泥3)農地4)許可業者)
・北海道函館市(1)約2万1千t2)建設系木くず、がれき類、金属くず、建設系廃プラスチック類3)自社敷地内4)許可業者)
・山口県周南市(1)約2万1千t2)建設系木くず、建設系廃プラスチック、がれき類3)山林4)無許可業者(元処分業者))
・愛知県岡崎市(1)約2万t2)建設系廃棄物、廃プラスチック等3)山林・農地4)許可業者)
・千葉県若葉区(1)約1万2千t2)建設系混合廃棄物3)山林4)複数(ブローカー))
・宮城県岩出山町(1)約1万t2)建設系木くず3)自社敷地内4)無許可業者(解体業者))
・千葉県山田町(1)約6千3百t2)廃プラスチック、がれき類、建設系木くず3)山林4)無許可業者)
・北海道上士幌町(1)約5千5百t2)有機汚泥3)河川4)許可業者)

(3)不法投棄された産業廃棄物の種類
 平成14年度に新たに確認された不法投棄を産業廃棄物の種類別に見ると、がれき類、木くずなど建設廃棄物が投棄件数の約70%(651件)、投棄量の約61%(約19万t)を占めており、建設廃棄物の占めるウェイトは引き続き高いものとなっています。次いで、廃プラスチック類が投棄件数で約7%(69件)、投棄量で約15%(約4万8千t)を占めています。また、汚泥は投棄量で約16%(約5万2千t)を占めています。このほか、金属くず、ゴムくず、燃え殻、動物の糞尿、動植物性残渣、廃油、ガラス・陶磁器くず、鉱さい、特別管理産業廃棄物(廃油、廃酸・廃アルカリ、感染性産業廃棄物、硫酸ピッチ等)等が不法投棄されていました(序-1-14図)。

不法投棄された産業廃棄物の種類(平成14年度)

(4)不法投棄の実行者
 平成14年度に新たに確認された不法投棄事案の実行者の内訳は、投棄件数で見ると、排出事業者によるものが全体の約48%(444件)と最も多く、次いで無許可業者によるものが約15%(137件)、許可業者によるものが約7%(64件)を占めているほか、投棄者不明のものが約29%(271件)に及んでいました。投棄量で見ると、許可業者によるものが約45%(約14万t)と最も多く、次いで無許可業者によるものが約26%(約8万3千t)、排出事業者によるものが約15%(約4万8千t)を占めていました。また、投棄者不明のものが約6%(約2万t)ありました(序-1-15図)。

産業廃棄物の不法投棄実行者(平成14年度)

(5)不法投棄の場所
 平成14年度に新たに確認された不法投棄を地目別に見ると、山林が投棄件数の約29%(272件)、投棄量の約28%(約8万8千t)を占め、次いで農地が投棄件数の約20%(190件)、投棄量の約21%(約6万8千t)、宅地が投棄件数の約12%(114件)、投棄量の約4%(約1万2千t)、河川・海岸が投棄件数の約2%(19件)、投棄量の約2%(約6千t)を占めていました(序-1-16図)。以上のように山林や農地といった人家が疎らで人目につきにくい場所が不法投棄の格好のターゲットとなっています。

地目別に見た産業廃棄物の不法投棄場所(平成14年度)

 これを都道府県別に見ると、投棄件数では茨城県(159件)、千葉県(150件)が圧倒的に多く、次いで栃木県(53件)、群馬県(40件)、青森県(40件)と続いています。投棄量で見ると沖縄県(約6万1千t)、千葉県(約3万6千t)、北海道(約2万9千t)、熊本県(約2万6千t)、山口県(約2万2千t)、茨城県(約2万2千t)、愛知県(約2万t)の順となっています。
 平成5〜14年度の投棄量の累計を都道府県別に見ると、東京都や神奈川県は少なく、その隣接県や地方圏の道府県に多い傾向が見られ、大都市で発生した産業廃棄物が地方で不法投棄されている事実が読み取れます(序-1-17図)。

平成5〜14年度の間に確認された不法投棄産業廃棄物の都道府県別投棄量

(6)支障除去等の措置の状況
 平成14年度に新たに確認された不法投棄(934件、約32万t)のうち、14年度中に生活環境保全上の支障除去等の措置に着手した事案は、投棄件数で約69%(644件)、投棄量で約74%(約24万t)でした。投棄者不明、行方不明・連絡不通、資力不足等の理由により平成14年度中に支障除去等の措置に着手されなかった事案は、投棄件数の約31%(290件)、投棄量の約26%(約8万1千t)でした(序-1-18図)。

不法投棄された産業廃棄物に係る支障除去等の措置の状況(平成14年度)

 支障除去等の措置の実施者の内訳を見ると、支障除去等着手事案(644件、約24万t)のうち、投棄実行者によるものが件数で約73%(468件)、投棄量で約81%(約19万t)を占めていました。このほか、土地所有者等によるものが件数で約11%(73件)、投棄量で約2%(約4千6百t)、排出事業者(実行者以外)によるものが件数で約2%(15件)、投棄量で約9%(約2万1千t)、地方公共団体によるものが件数で約8%(53件)、投棄量で約2%(約4千5百t)を占めていました(序-1-19図)。

不法投棄された産業廃棄物に係る支障除去等の措置の実行者(平成14年度)

(注)(2)〜(6)の調査は、環境省が、都道府県、保健所設置市の協力を得て毎年とりまとめているもので、都道府県等が毎年度新たに確認した新規の不法投棄事案を対象としており、不法投棄の発生時期そのものではありません。
 また、同調査は、特別管理産業廃棄物事案はすべての事案を対象としていますが、他の産業廃棄物については1件当たりの投棄量が10t未満の小規模な事案は調査対象としていません。

(7)不法投棄の残存量
 環境省の調査によると、全国の都道府県、保健所設置市が把握している平成15年4月1日時点における産業廃棄物不法投棄等の不適正処分事案の残存件数は2,505件でした。そのうち廃棄物の残存量が分かっているものは2,285件で、残存量の合計は約1,096万tでした(序-1-20図)。

不法投棄等産業廃棄物の都道府県別残存量(平成15年4月1日現在)

(8)検挙数
 近年、廃棄物処理法違反によって検挙される産業廃棄物の不法投棄事犯が増加しています。平成15年に廃棄物処理法違反で警察が検挙した産業廃棄物不法投棄事犯は900件、880名でした(序-1-21図)。

(9)不法投棄の背景
 産業廃棄物処理の世界も、通常の製品の生産・流通・販売の世界と同様に市場原理が働いています。通常の製品は製造工場から卸売業者、小売業者、消費者へと品物が渡らないことには商売が成り立ち得ませんが、廃棄物の場合は送り先である廃棄物処理施設に廃棄物が届かなくても排出事業者の生産活動に直接的なダメージはありません。加えて廃棄物は排出者にとって不要なものであることから、その処理のために適正なコストを負担しようという動機付けが働きにくく、市場原理の下、処理業者間の価格競争により、他社より安く請け負う業者に顧客(排出事業者)が流れる傾向にあります。このため、安かろう悪かろうの処理が行われがちとなり、その結果、不法投棄が多発しています。
 さらに、近年の廃棄物処理施設立地の困難化等を背景とした廃棄物処理の適正費用の高騰、バブル崩壊以降の景気低迷とが相まって、この傾向が助長されています。
廃棄物不法投棄事犯検挙件数の推移

コラム 1  豊島不法投棄事案

 平成2年11月、兵庫県警は、香川県豊島の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。
 同社は、昭和50年代後半から平成2年にかけて、シュレッダーダストや廃油、汚泥等の産業廃棄物を有価物と称して同社が管理する処分地に大量に持込み、野焼きや埋立てを繰り返し、約47万m3の産業廃棄物を不法投棄しました。不法投棄された廃棄物の最深部は地表より約18mにも達しており、鉛、総クロム、カドミウム等の重金属に加えPCBやダイオキシン類等の有害物質が含まれていたほか、組成的にもシュレッダーダスト、燃え殻、鉱さいに加え、布きれ、ウレタンシート、木片等雑多なものが混入していました。
 その後、香川県により、産業廃棄物処理業の許可の取消し、産業廃棄物の撤去等の措置命令、措置命令履行に係る行政指導などが再三繰り返し行われましたが、廃棄物の撤去はほとんど進みませんでした。
 平成5年11月には、豊島住民により、香川県、産業廃棄物処理業者、排出事業者等を相手とした公害調停が申請されました。その後、公害等調整委員会調停委員会による調停が進められ、平成9年7月に中間合意が、また、平成12年6月に最終調停が成立しました。なお、同社はこの間の平成9年3月に破産しています。
 調停条項に基づき、排出事業者19社が合計約3億7,800万円の解決金を支払う(住民が1/2、香川県が1/2を受領)とともに、香川県は廃棄物等の処理、汚染された地下水や浸出水等の漏出防止措置等を実施することとなりした。計画では平成24年度までに約447億円の巨費を投じて汚染土壌を含む廃棄物等約56万m3を豊島から隣接する直島へ海上輸送、溶融処理し、発生する溶融スラグや飛灰などの副成物を香川県の公共事業で有効利用することとしています。


コラム 2  青森・岩手県境不法投棄事案

 平成11年11月、青森県警及び岩手県警は、青森県八戸市に本社を置く産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。
 本事案は、同社が埼玉県の産業廃棄物処理業者と共謀し、青森県田子町及び岩手県二戸市にまたがる同社事業場敷地内に、ごみ固形化物(廃プラスチック類、紙くず等を圧縮したもの)、たい肥様物、鶏糞、燃え殻、セメント固形物、有機溶剤入りドラム缶、医療廃棄物など合計約88万m3(青森県側約67万m3、岩手県側約21万m3)を不法投棄したもので、それまで我が国最大と考えられていた香川県の豊島不法投棄事案の規模を上回るものでした。
 マニフェストや帳簿類等の取引状況に関する資料の調査結果から、同社に持ち込まれた廃棄物の排出事業者は23都道府県に所在する約10,600社であることが判明しています(平成15年8月現在)。排出事業者の所在地の約9割が首都圏(1都7県)、2/3が東京圏(1都3県)であり、大都市圏で発生した産業廃棄物が地方圏に持ち込まれ不法投棄されたものでした。
 青森県及び岩手県は、不法投棄の行為者等に対する責任追及と併せ、排出事業者に対しても委託基準違反や注意義務違反等の認められた者に対して責任追及を行っており、平成15年9月時点において7社に支障除去等の措置命令等を発し履行させています。なお、同社は平成13年6月に解散、埼玉県の産業廃棄物処理業者は12年10月に破産しています。
 今後、青森、岩手両県は、産廃特措法の実施計画に基づき平成15〜24年度の10年の月日と約655億円の巨費を投じて生活環境保全上の支障除去等の措置を講じていくこととしています。


コラム 3  岐阜市 椿 洞 の産業廃棄物不法投棄事案

 平成16年3月10日、岐阜県警は、岐阜市椿洞の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。
 上記産業廃棄物処理業者は、同社所有の処理施設に隣接する谷地に、廃プラスチックや木くず等の建設廃材を大量に不法投棄しました。岐阜県警によるとその規模は52万m3、縦横130m×200m、深さ20mを超えるものと推定されています。
 3月19日、岐阜市は記者会見を行い、対策本部の設置など今後の対応策のほか、岐阜市が平成元年以降、繰り返し立入検査や改善指導等を実施してきたものの行政処分は行っていない事実を発表しました。
 環境省は、3月19日に職員を現地に派遣するとともに、26日には岐阜市を含む8県市(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、奈良県、名古屋市)を招集し、情報収集についての協力要請を行いました。また、4月2日には、岐阜市に対し、投棄量等調査、環境影響調査、不法投棄の行為者や排出事業者等に対する責任追及、事案の経過や市の対応状況、市が事案を防止・早期対応できなかった理由の検証など同事案に係る当面の対応について助言を行っています。同事案については、今もなお、今日に至る経過の検証等の作業が続けられています。


6. 硫酸ピッチの不法投棄

 近年、硫酸ピッチの不法投棄、不適正保管事案が急増しています。硫酸ピッチは不正軽油(軽油引取税の脱税を目的として製造される軽油)を密造する際に不正軽油の原料であるA重油や灯油に濃硫酸処理を施すことにより副産物として発生することが多く、油分1.9〜28%、硫酸イオン12.5〜63.4%、タール分等を主成分とする強酸性(pH2.0以下のものがほとんど)、腐食性を呈する混合物です。雨水と反応すると亜硫酸ガスが発生するほか、直接触れると皮膚が焼けただれることもある有害な物質です。
 このような有害な硫酸ピッチが、近年、脱税を意図した不正軽油密造の過程で副産物として大量に生成され、密造業者やブローカー等によって不法投棄等されています。

硫酸ピッチの不適正保管

(1)不法投棄等の事例
 石川県の石油精製業者らが暴力団幹部ブローカーらと共謀して、平成13年12月から、特別管理産業廃棄物である硫酸ピッチ等(ドラム缶561本、フレコンバック88袋)を石川県門前町及び志賀町の山中に埋立て不法投棄しました。加えて同ケースでは、暴力団ブローカーらが、大量の木くず等の産業廃棄物約9千7百m3を県内3か所の山林等に不法投棄しました。平成15年8月までに石油精製業者、暴力団幹部ブローカーら22名(うち15名を逮捕)が検挙されました。

(2)不法投棄等の件数及び量
 環境省の調査によると、平成11〜15年度上半期の間に確認された硫酸ピッチの不法投棄等は、投棄件数が114件、投棄量がドラム缶(200リットル容量)換算で約3万5千本でした。
 これを年度別に見ると、投棄件数では、11年度と12年度を合わせた件数が14件、13年度が38件、14年度が35件、15年度上半期が27件でした。投棄量では、11年度と12年度を合わせた投棄量がドラム缶換算で約3千本、13年度が約5千5百本、14年度が約1万5千本、15年度上半期が約1万2千本と年々増加しています(序-1-22図)。
硫酸ピッチの不適正処分件数及び量の推移

(3)不法投棄等の形態
 硫酸ピッチの不法投棄等は、人目につかない山中等に硫酸ピッチ入りドラム缶を放置あるいは埋設する不法投棄のケースと、市街地の資材置場や倉庫等に油の保管を装って放置する不適正保管のケースとがあります。
 (2)で記載した不法投棄等を形態別に見ると、投棄件数では、不法投棄が約55%(62件)、不適正保管が約40%(46件)を占めていました。投棄量では、不法投棄が約33%(約1万2千本)、不適正保管が約54%(約1万9千本)を占めていました(序-1-23図)。

硫酸ピッチの不適正処分の形態(平成11年度〜15年度上半期)

(4)支障除去等の措置の状況
 平成11〜15年度上半期の間に確認された硫酸ピッチの不法投棄等(114件、約3万5千本)のうち、15年9月末までに生活環境保全上の支障除去等の措置が実施されたものは、投棄件数の約56%(63件)、投棄量の約36%(約1万3千本)に過ぎませんでした。一方、投棄者不明、行方不明・連絡不通、資力不足等の理由により支障除去等の措置が未実施のものが、投棄件数の約40%(46件)、投棄量の約64%(約2万3千本)を占めていました(序-1-24図)。

硫酸ピッチに係る支障除去等の措置の状況(平成15年9月末現在)

 支障除去等の措置の実施者の内訳を見ると、支障除去等実施事案[一部実施の5件を含む。](68件、約1万3千本)のうち、行政代執行によるものが件数で約38%(26件)、処分量で約36%(約4千6百本)を占めていました。このほか、県・市・町等が道路管理等の一環として処理したものが件数で約13%(9件)、処分量で約4%(約563本)を占めていました(序-1-25図)。

硫酸ピッチに係る支障除去等の措置の実行者

(5)不法投棄等の背景
 近年の硫酸ピッチの不法投棄等の急増の背景には、脱税を目的とした不正軽油の密造問題が存在します。軽油は通常卸売業者が小売業者へ販売する際に1リットル当たり32円10銭(平成16年3月現在)が課税されていますが、不正軽油の原料であるA重油や灯油には軽油引取税が課せられていない上に引火点等性状が軽油に近く、A重油と灯油を混和することにより軽油を不正に製造することが容易であることから、軽油引取税の脱税を目的とした不正軽油の密造が近年頻発しています。
 このため、軽油引取税の脱税防止を目的として、平成3年からA重油と灯油に識別剤としてクマリン(紫外線照射により発光)が添加されており、公道での車両燃料の抜取検査等でクマリン反応の有無により不正軽油の迅速かつ簡便な摘発が可能となりました。
 しかしながら、近年、抜取検査等による摘発を逃れることを目的に、不正軽油製造時にクマリン除去のための濃硫酸処理が施されることにより、副産物として発生する硫酸ピッチの不法投棄事案が全国各地で多発するようになりました(序-1-26図)。

硫酸ピッチの製造及び不法投棄の構図

 第2節 不法投棄の影響

1. 環境への影響

 廃棄物の不法投棄は、環境汚染等を通じて人々の健康や暮らしに様々な影響を及ぼします。
(水質汚濁、土壌汚染)
 不法投棄された廃棄物に重金属や有機塩素系化合物等の有害物質が含まれている場合には、降雨に伴いそれらの有害物質や廃棄物中の有機性成分が浸み出し、地下水や河川等の水質汚濁や土壌汚染を引き起こします。豊島不法投棄事案では、不法投棄地の廃棄物や汚染土壌から「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令」の特別管理産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準値を超過した重金属(鉛)、有機塩素系化合物(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)、PCBが検出されており、廃棄物下層の土壌や地下水が汚染され、汚染された地下水が海域に漏出したと考えられています。
 また、固化した硫酸ピッチが雨水と接触すると、硫酸が生成され、水源等の汚染や土壌汚染を引き起こします。
(火災、悪臭、大気汚染など)
 廃タイヤや木くず等可燃性の廃棄物が大量に堆積された現場では、堆積した廃棄物から火災が発生する事例が後を絶たず、隣接する家屋等への延焼のおそれ、火災に伴う悪臭、ばい煙が発生します。

可燃性廃棄物(木材チップ)の火災

 また、廃棄物に含まれる有機性成分が嫌気状態で腐敗することにより硫化水素やアンモニアが発生し、周辺に悪臭を発生させます。
 硫酸ピッチが投棄された現場では、腐食したドラム缶から漏出した硫酸ピッチが雨水と接触することにより亜硫酸ガス(これまでの例では最高で36,000ppm)が発生します。放置されたドラム缶のふたを開けて高濃度の亜硫酸ガスを吸うと呼吸困難等重い呼吸器障害を引き起こす危険性があります。また、硫酸ピッチは強酸性(pH2.0以下が大部分)であるため直接触れると肌が焼けただれることもあります。静岡県富士宮市では周辺住民を一時避難させる事態が発生したほか、栃木県宇都宮市では付近の工場従業員が目や喉の痛みを訴え病院で診察を受けたり、隣接する民家の植木や水田の稲が一部枯れるという被害が発生しました。

硫酸ピッチの不適正保管現場の立入検査

(衛生)
 廃タイヤや使用済自動車が野積みされた現場では、廃タイヤ等が雨水の受け皿となり、夏場に蚊の大量発生を引き起こすことがあります。
(景観、風紀、崩壊など)
 不法投棄された廃棄物の種類によっては、有害物質等による大気、水、土壌の汚染や悪臭、火災等の問題を生じないものも多く存在しますが、そもそも他人の土地や公共用地に廃棄物を投棄することは重大な犯罪です。また見た目が悪く人々に不快感を与えるとともに、当該地域の景観や風紀を著しく損ねます。また、うずたかく積まれた廃棄物は常に倒壊の危険をはらむとともに周辺住民に不安感を与えます。
 さらに、一つの不法投棄は他の不法投棄を呼びます。例えば、路上放置自動車は、交通の妨げになるだけでなく、その場所の風紀を乱し、他の放置自動車や他の廃棄物の不法投棄を誘発します。

様々な廃棄物の不法投棄

コラム 4  ラブ・キャナル事件

 1970年代後半、アメリカ、ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市のラブ・キャナルにおいて、過去に投棄された廃棄物による地下水や土壌の汚染により周辺住民に健康被害が相次ぐという事件が表面化しました。
 この事件の発端は、地元の化学品メーカーが、建設途中で計画が中止された運河ラブ・キャナルを購入し、1942〜1952年にかけて、その当時は適法な許可に基づき様々な化学物質(酸、塩化物、メルカプタン、フェノール類、トルエン、農薬、クロロベンゼン、硫化物など)を含む2万1千トンを超える廃棄物をラブ・キャナルに投棄したことにあります。その後、運河は埋め立てられ、市に1ドルで売却された後、跡地には小学校や住宅が建てられましたが、大雨が降るたびに、ラブ・キャナル周辺では悪臭が漂い、汚水が染み出すようになり、周辺住民の間で流産や奇形児、ガン患者が増加しました。1978年の調査では、82種類の有害化学物質が検出され、ニューヨーク州が土地の買い上げを発表するとともに、カーター大統領は買い上げに係る緊急財政支援を承認しました。1980年には、カーター大統領が非常事態宣言を発令しました。本事件により移転を余儀なくされた住民は約900家族に上りました。
 1980年、この事件をきっかけに、アメリカでは有害物質により汚染された土地を浄化し、人の健康と環境を保護する目的でスーパーファンド法(包括的環境対処・補償・責任法)が制定されました。


2. 経済的損失

 不法投棄は環境へ悪影響を及ぼすのみならず、経済的にも大きな負担を及ぼしています。投棄された廃棄物や汚染された土壌を完全に撤去し、現場を元どおりに戻すには多額の費用が発生します。
 不法投棄廃棄物に係る生活環境保全上の支障の除去等は、本来、不法投棄の原因者や注意義務を怠った排出事業者等の負担によって行われるべきものでありますが、現に生活環境保全上の支障が生じていて原因者不明や資力不足等の事由により地方公共団体が原因者に替わって支障除去等の措置を実施せざるを得ないケースがあります。そのような場合には、原因者からの費用求償が困難であり、結果的に公費で負担せざるを得ない場合が多く、国民一人ひとりが経済的に大きなしわ寄せを被ることになります。
 また、不法投棄現場の環境保全を図るには、単に不法投棄された廃棄物を運搬、処理する費用のみならず、汚染の実態把握や周辺環境への影響調査に始まり、汚染された土壌の処理、汚染の拡散防止対策等が必要となることから、本来適正に処理されていれば必要なかった多額の費用が発生します。さらに、数字としては表に出にくいのですが、不法投棄事案には、それに係る捜査や立入検査など危険な現場に晒される職員の人件費や調査費等の各種経費が発生しており、警察や環境部局等の行政コストも、つまるところ国民によって負担されています。

(1)産業廃棄物適正処理推進センター基金等を活用した支障除去等の措置費用
 都道府県等が行う産業廃棄物に起因する支障除去等の措置に対しては、第3節1.(1)イ(31ページ)で後述しますが、国の制度による支援の仕組みが存在します。
 平成11〜14年度の間に産業廃棄物適正処理推進センター基金を活用して行政代執行を行った事案19件の総事業費は約13億円(うち基金からの支援額は約10億円)でした。
 また、平成10〜14年度の間に国の補正予算を活用して行政代執行を行った事案28件の総事業費は約69億円(うち補正予算からの支援額は約23億円)でした。
 上記2つを合わせた総事業費約82億円のうち、16年3月までに原因者等から回収できた金額はわずか約6,200万円に留まっています。

(2)路上放棄車処理協力会の寄付金制度及び沖縄県放置自動車撤去事業による支障除去等の措置費用
 路上放棄車処理協力会の寄付金制度による支障除去等の措置費用は、平成14年が約2億1千万円(約1万7千台)で、平成3年の制度開始時から平成14年までの累計金額は約19億円(約16万台)に上ります。
 沖縄県の放置自動車撤去事業による支障除去等の措置費用は、平成13年度が約2億円(約1万1千台)、14年度が約1億1千万円(約5千8百台)でした。

(3)豊島不法投棄事案における支障除去等の措置費用
 豊島不法投棄事案では、不法投棄された廃棄物約47万m3、不法投棄によって汚染された土壌約9万m3、計約56万m3の廃棄物等を近隣の直島に海上輸送し、焼却・溶融方式によって処理するとともに、溶融スラグ等の副成物の有効利用を図ることとしており、その費用(見積もり)は総額約447億円)に上ります。その措置の内容は以下のとおりです。
・ダイオキシン類を高温分解する回転式表面溶融炉等を備えた中間処理施設の設置、管理
・廃棄物等の掘削や運搬、海上輸送作業
・掘削現場から運ばれた廃棄物等を一時保管し、コンテナダンプトラックに積み込むための中間保管・梱包施設、大きな岩石や金属、ホース等の長尺物等の前処理に必要な特殊前処理物処理施設の設置や管理等
・効率的な作業を確保するための道路や桟橋等のインフラ整備
・豊島から廃棄物等を完全に撤去するまでの間の暫定的な環境保全措置として、汚染された地下水や浸出水の海域への流出防止のための遮水壁や高度排水処理施設の設置や管理、廃棄物等の飛散の防止、雨水の流入防止のための遮水シートの敷設等
 なお、上記447億円とは別に、本事案の発覚後に、公害等調整委員会調停委員会が平成6年12月〜7年7月にかけて、汚染実態及び周辺環境への影響を把握するための調査(基礎調査(処分地の地歴や周辺概況)、廃棄物調査(廃棄物の埋立状況及び性状)、地下水調査(地質構成、地下水分布、地下水の水質と挙動)、周辺環境調査(廃棄物による地表水及び周辺海域への影響)を実施しており、約2億4千万円が費やされています。

(4)青森・岩手県境不法投棄事案における支障除去等の措置費用
 青森・岩手県境不法投棄事案における生活環境保全上の支障除去等の措置に要する費用(見積もり)は、総額約655億円に上ります。投棄された廃棄物約88万m3の掘削、積み込み、運搬、処理に要する費用に約466億円、不法投棄によって汚染された土壌約8万4千tの処理に約54億円を見込んでいます。
 また、上記廃棄物、汚染土壌の処理に係る直接的な費用とは別に、以下のような様々な対策が必要であり、その費用は約135億円に上ります。
・汚染拡散防止対策として、汚染水による周辺環境への影響の防止と水処理の効率化を図るための遮水壁の設置や浸出水処理施設等の設置、管理
・本格的な汚染拡散防止対策が講じられるまでの間の緊急的対策として、仮設浄化プラントの設置、管理、雨水と廃棄物の接触を防止するための表面遮水シートの設置、雨水と浸出水を分離するための排水路の整備等
・効率的な作業を確保するために必要となる場内道路等のインフラ整備や多種多様な廃棄物の選別施設や保管施設の設置、管理
・周辺環境のモニタリングや廃棄物等の除去完了後の覆土、地形整備や地盤改良等

コラム 5  海外への廃棄物の不法輸出

 平成11年12月、栃木県の産業廃棄物処理業者が、古紙と称してフィリピンに輸出した貨物の中から、廃プラスチック等に混じって注射針、点滴用のチューブ、使用済紙おむつ等が発見され、フィリピン政府がバーゼル条約に基づき我が国に対し30日以内の回収を要請するという事件が発生しました。日本政府は輸出を行った処理業者に対し回収等の措置命令を発出しましたが、期限までに履行されなかったため、国が行政代執行により2千tを超える廃棄物を速やかに日本に持ち帰り処理しました。
 国が行政代執行に要した費用は、総額約2億8千万円(回収費用約6千万円、処理費用等約2億2千万円)に上りました。
 この事件を契機に、廃棄物の不法輸出の再発を防止し、適正な処理を推進するため、廃棄物の不法輸出防止に係る関係省庁連絡会議が平成12年1月に設置されました。
 同会議では、廃棄物の不法輸出の再発防止策をとりまとめるとともに、万が一不法輸出が行われた場合やその疑いがある事案に対し、的確かつ迅速に対処するため、情報交換を行っています。


3. 社会的影響

(1)廃棄物処理に対する国民の不安感、不信感の増大
 廃棄物の不法投棄は、不適正処理の問題(安定型最終処分場への許可対象外廃棄物の投入、中間処理施設及び積替え保管施設等における施設能力を超えた過剰搬入や処理、廃棄物処理施設からの汚染物質の流出等)などと相まって、廃棄物処理に対する不信感の象徴として扱われ、廃棄物処理に関する悪いイメージを作り出す要因となっています。
 廃棄物処理許可業者のうち、不法投棄等の不心得な行為を行う業者は一部に過ぎませんが、豊島不法投棄事案や青森・岩手県境不法投棄事案など許可業者が関与した不法投棄事案等が多発した結果、廃棄物処理全体に対する漠然とした不安感、不信感が国民の中に増大しています。

(2)廃棄物処理施設の設置の困難化
 廃棄物処理に対する国民の不安感、不信感が増大する中、地域住民にとって自己の生活との直接の関連が薄い廃棄物処理施設は、他人にとって不要なものを自分の地域で処理することに対する忌避観念を背景として、立地に際し地域住民とのトラブルが生じ、訴訟が頻発するなど年々設置が困難な状況になっています。廃棄物処理施設の設置が進まなければ、適正な処理体制の確保が困難となり、あふれた廃棄物が不法投棄等に回るという悪循環を引き起こすおそれが生じています(序-2-1図)。

(3)訴訟の続発とコミュニティの破壊
 廃棄物処理施設の立地に係るトラブルは、設置事業者と住民間だけの問題でなく、設置事業者や住民、市町村、都道府県それぞれの間にも生じます。住民が廃棄物処理施設の許可権者である都道府県等を相手取り訴訟を起こすケースや、市町村、都道府県の行政間の対立を引き起こすケースもあります。住民とのトラブルを事前に防ぐため設置者に住民同意を取得することを求める行政指導が昭和50年頃から行われるようになりましたが、施設設置の同意に際して金銭授受をめぐる問題も指摘されるようになり、廃棄物処理施設の立地に係るトラブルが地域のコミュニティを破壊する原因にもなっています。
最終処分場等の新規許可施設数の推移

(4)地方圏の地方公共団体による産業廃棄物の流入抑制
 産業廃棄物は、大都市圏から処理コストの低い地方圏に移動するものが多く、その際に不適正な処理が行われることがあり、大規模な不法投棄事案も発生しています。不法投棄等の不適正処理事案については、第一義的には不法投棄等が行われた場所の地方公共団体が対応することとなり、行政コストや原因者不明等の場合の生活環境保全上の支障除去等の措置に要する費用は不法投棄された地域の地方公共団体つまりはそこに住む住民の負担で対応することになります。このことが廃棄物の発生場所である大都市圏と処理場所である地方圏の地方公共団体間の立場の違いや県民感情として産業廃棄物の安易な受け入れを許さない状況を生じさせており、地方公共団体によっては県外産業廃棄物の県内搬入に係る事前協議制度や流入抑制措置が講じられるようになっています。

 第3節 各主体の取組

1. 国の取組

(1)法制度の整備
ア 廃棄物処理法等
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、行政による監視や暴力団等の悪質業者の排除、不法投棄に関与した者に対するペナルティ、排出事業者責任の徹底等により不法投棄の抑止を図るとともに、現に不法投棄が行われた場合には原因者等に措置命令等を課すことにより不法投棄現場の生活環境保全上の支障の除去等を図っています。具体的には、不法投棄の禁止、行政による立入検査、廃棄物処理業及び廃棄物処理施設の許可に係る欠格要件、無許可業者への委託禁止、無許可業者の受託禁止、産業廃棄物管理票制度いわゆるマニフェスト制度等の規定、支障除去等の措置を命ずる措置命令及びこれらに違反した場合の許可の取消しや罰則規定等の諸規定を定めています。これらの規定は、不法投棄問題が年々深刻化、悪質化、巧妙化していくことに対応し、廃棄物処理法の制定以来、逐次、創設、強化が図られてきています(序-3-1表)。

不法投棄等の行為者や排出事業者等に対する規制強化の変遷

 最近の廃棄物処理法改正によって創設又は強化された規定のうち主なものを取り上げると以下のとおりです。
(ア)国の関与の強化
・産業廃棄物に関し、緊急時には環境大臣が報告徴収及び立入検査を行えることとしました(平成15年改正)。
・国が広域的見地から地方公共団体事務の調整を行うとともに職員の派遣等の必要な措置を講ずることを国の責務として明確化しました(平成15年改正)。
・産業廃棄物に関し、緊急時には環境大臣が関係都道府県等に対し必要な指示を行うことができることとしました(平成16年改正)。
(イ)都道府県等の調査権限の拡充
・廃棄物である疑いがあるものについても報告徴収、立入検査が行えるよう措置しました。それまでは廃棄物ではないと抗弁し立入検査を拒む者もいました(平成15年改正)。
(ウ)悪質な処理業者に係る許可取消しの義務化
・特に悪質な業者(欠格要件等に該当する廃棄物処理業者等)については、許可権者が必ず許可を取り消さなければいけないこととしました(従前は許可権者に判断が委ねられていました。)(平成15年改正)。
(エ)マニフェスト制度の強化
・産業廃棄物の排出時から最終処分まで一貫した把握・管理が可能となるよう、排出事業者が最終処分終了の確認ができるような仕組みとしました(平成12年改正)。
(オ)支障除去等の措置命令の対象拡大
・不適正処分に関与した土地所有者やブローカー、マニフェストの写しの送付を受けていない場合に適切な措置を講ずべき義務に違反した者、適正な対価を負担していなかったり、不適正処分が行われることを知っていた又は知ることができた排出事業者で一定要件を満たす場合などを生活環境保全上の支障除去等の措置命令の対象に追加しました(平成12年改正)。
(カ)不法投棄等に係る未遂罪の創設
・既遂に至らない行為(既存の不法投棄現場等で、廃棄物を捨てようとしてトラックの荷台を傾ける等)についても処罰できるようにしました(平成15年改正)。
(キ)不法投棄等に係る準備罪の創設
・不法投棄等の目的で廃棄物の収集又は運搬した者(現に不法投棄が実行されている現場で不法投棄の順番待ちのために廃棄物を積載した車両を持ち込んだり、繰り返し不法焼却が行われている現場に着火剤とともに廃棄物を搬入した者等)を処罰できるようにしました(平成16年改正)。
(ク)指定有害廃棄物の処理の禁止
・人の健康又は生活環境に重大な被害を有するおそれのある性状を有する指定有害廃棄物(硫酸ピッチを指定予定)に係る処理(保管、収集、運搬、処分)基準を定め、不適正な処理を直罰をもって禁止することとしました(平成16年改正)。
 また、使用済自動車については、使用済自動車の再資源化等に関する法律の完全施行(平成17年1月1日)以降はすべて廃棄物とみなされ、有価なものであっても廃棄物処理法による規制等が行われることから有価物と称した不適正保管はできなくなります。同法の施行により、1)リサイクル料金の預託により使用済自動車が有価で取引されることが期待されること、2)電子マニフェスト制度により車両一台ごとに一環した管理が行われること、3)自動車重量税の還付制度が新たに設けられること等により不法投棄等の抑制が見込まれます。
 海域への不法投棄については、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法)等に基づいた規制、取締り等によっても不法投棄の未然防止を図るとともに、不法投棄原因者に対する行政指導等により原状回復を図っています。
 海上保安庁では、情報収集や分析能力の向上、関係機関との連携の強化、不法投棄されるおそれの高い海域への巡視船艇や航空機の重点的な投入を図ることにより、海防法等に基づく海域への不法投棄の未然防止と監視取締体制のより一層の強化に努めています。

イ 産廃特措法等による支障除去等の措置の支援
 不法投棄現場の生活環境保全上の支障除去等については、地方公共団体が原因者等に対し行政指導を行ったり廃棄物処理法に基づく措置命令をかけることにより、原因者等による支障の除去等を実施させることが基本です。しかし、原因者不明等の事由により原因者等による支障の除去等が見込めない場合には、行政代執行により地方公共団体が支障除去等の措置を実施する場合もあります。この場合は、引き続き原因者等の解明を行い、支障除去等の措置に要した費用を原因者等に求償することとなります(序-3-2図)。

不法投棄された産業廃棄物に係る支障除去等の流れ

 不法投棄廃棄物に係る支障の除去等は、本来、不法投棄の原因者の負担によってなされるべき性格のものでありますが、上述した事由により地方公共団体が原因者に代わって支障除去等の措置を講じざるを得ない状況が全国各地で発生しています。
 このため、平成9年の廃棄物処理法の改正により、産業廃棄物適正処理推進センター制度が創設され、産業界の自主的な拠出と国庫補助による基金(産業廃棄物適正処理推進センター基金)の造成が行われています。改正法の施行日(平成10年6月17日)以後の産業廃棄物の不法投棄事案について地方公共団体が支障除去等の措置を行う場合には、同基金による資金協力(支障除去等の措置に要する経費の3/4を補助)が行われています。
 一方、平成10年6月16日以前の産業廃棄物の不法投棄事案については、平成10年度以降、補正予算により地方公共団体への資金協力を行ってきましたが地方公共団体の費用負担が大きいこと等から不法投棄廃棄物に係る支障の除去等が進んでいませんでした。このため、平成15年に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)」が制定され、平成10年6月16日以前の産業廃棄物の不法投棄事案に係る生活環境保全上の支障の除去等を、平成24年までの10年間で集中的に行うこととしています。産廃特措法では環境大臣が策定した基本方針に即して地方公共団体が実施計画を策定し、当該実施計画に基づき支障除去等を実施する場合に国庫補助(支障除去等の措置に要する経費の1/3を補助(有害物は1/2))を行うとともに、地方公共団体の負担分については地方債の特例を認めています(序-3-3図)。

不法投棄された産業廃棄物に係る支障除去等に対する財政支援の仕組み

(2)その他の国の取組
ア 地方公共団体への支援
 環境省では、都道府県等が実施する不法投棄防止のための監視や不法投棄事案への対応強化を図るための支援を行っているほか、環境省が技術開発した不法投棄監視システムの都道府県等への普及を進めています。
(ア)廃棄物適正処理監視等推進事業費補助(平成7年度〜、15年度:2億1千万円)
 監視パトロール、不法投棄監視連絡員(警察OBなどに委嘱)の設置、ヘリコプターによる地上監視、監視カメラの設置、携帯情報端末等IT機器を活用した監視システムの整備など都道府県等が行う産業廃棄物不法投棄防止のための監視体制整備や普及啓発の強化に対して補助を行っています。
(イ)不法投棄事案対応支援事業(平成15年度〜:15年度:2千8百万円)
 現場調査や関係法令等に精通した専門家からなる支援チームを都道府県等に派遣し、地方公共団体が行う調査(不法投棄事案の解明、支障除去等の措置に係る手法の検討)を現場で支援するとともに、地方公共団体職員のスキルアップを図っています。

イ 監視の強化等
 不法投棄の早期発見、拡大防止を図るため、監視等の役割は非常に重要です。
 全国9ブロックの環境省地方環境対策調査官事務所では、平成13年度から携帯情報端末を活用した不法投棄現場情報伝達システムを整備したほか、他省庁の支分部局、都道府県等関係機関との連携の下、不法投棄等に係る現地情報の収集を実施しています。また、地方環境対策調査官事務所の役割を強化し、平成15年12月からは緊急時における環境大臣の立入検査等を本省と共同で実施します。
 このほか、環境省では、平成12年度から人工衛星やIT機器を活用した不法投棄監視システムの技術開発を進めています。

ウ 行政の的確な執行
 不法投棄等の不適正処理を未然に防ぎ、また、拡大を阻止するために、行政が法制度等を的確に執行するのは当たり前の話ですが、敢えてそのことについて触れなければならない現実があります。
 豊島不法投棄事案や青森・岩手県境不法投棄事案に見られるように、行政がある時点で的確な行政措置を講じていれば、かなり初期の段階で不法投棄の継続や拡大が防げた事案が散見されます。特に社会的に問題となる大規模な事案に関しては、そうしたことが言えるでしょう。したがって、不法投棄事案への対処に当たっては、これまでの行政対応を厳しく検証し、今後に活かしていかなければなりません。
 そのような観点から、産廃特措法においても、都道府県等が講じる不法投棄に係る支障除去等の措置に関して、当該都道府県等に実施計画を策定させ、その中で立入検査など当該事案に関して行った行政措置や行政責任の所在など行政対応を厳しく検証し、その内容を明らかにさせることとしています。
 環境省としても、地方環境対策調査官事務所による情報収集や他省庁の支分部局、都道府県等関係機関との連携強化を通じて、行政による法制度等の的確な執行の確保に努めていきます。

エ 電子マニフェストの促進
 平成9年の廃棄物処理法の改正により従来の紙のマニフェストに加え電子マニフェストの仕組みが導入されました。電子マニフェストは紙のマニフェストに比べ、排出事業者や処理業者の情報管理の合理化に資するとともに、産業廃棄物の移動(発生場所→処分場所)の把握など行政の監視業務の有効な手段にもなります。また、ネットワーク上にデータが保持されるため、不法投棄関係者によるマニフェストの隠滅(青森・岩手県境不法投棄事案では不法投棄の実行者である産業廃棄物処理業者が廃棄物の搬入状況や排出事業者情報を把握する重要な書類であるマニフェストを焼却)もできなくなります。
 一方で、電子マニフェストは、1)排出事業者、収集運搬業者、処分業者のすべてが社内管理体制を電子化対応に切り替える必要があること、2)中小・零細の排出事業者の場合は排出量やマニフェスト件数が少なく、電子化による管理コスト削減等のメリットが少ないことから普及が進んでいません(電子マニフェストの利用はマニフェスト全体の2%弱(平成16年2月末現在))。このため、環境省では、特定地域等でのモデル事業の実施、電子マニフェストのシステム改善の検討等を行っています。

コラム 6  マニフェスト

 産業廃棄物管理票制度いわゆるマニフェスト制度とは、簡単に言うと宅配便に添付される宅配伝票システムの産業廃棄物版と考えてもらうとイメージが容易になるかもしれません。
 排出事業者が産業廃棄物を収集運搬業者に委託する際や、収集運搬業者が処分業者に産業廃棄物を渡す際などに、産業廃棄物の種類や数量、排出事業者名、収集運搬業者名、処分業者名を記載した管理票に、収集運搬業者の受領印、運搬終了の確認、処分業者の受領印、処分終了の確認等を収集運搬業者や処分業者が各段階ごとにそれぞれ記載し、その管理票の写しを排出事業者等に回付するというシステムです。
 回付された管理票により、いつ(○年○月○日)、誰が(◎◎運送)、誰に(××処理センター)、どのような廃棄物(△△ごみを□t)を渡したか等、産業廃棄物の処理状況を排出事業者が管理することができます。
 マニフェスト制度は、排出事業者サイドのチェック体制を強化することにより、産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理を未然に防止しようとするもので、平成3年の廃棄物処理法の改正により創設されました(序-3-1図)。

マニフェスト制度


2. 地方公共団体の取組

(1)行政部局による取組
 地方公共団体では、不法投棄を未然に防ぐため、不法投棄常習地域等での巡回パトロールや監視カメラの設置等の監視活動、不法投棄されやすい場所での柵や杭等の設置、事業場への立入検査や関係者への行政指導等を実施しています。また、不法投棄場所を発見した場合には、不法投棄現場や周辺状況の調査、現場に残された証拠資料の収集、分析等による不法投棄実行者や排出元など関係者の特定等を実施しています。さらに、不法投棄原因者等に対する行政指導や措置命令、行政代執行により不法投棄現場の環境保全を図っています。
 監視活動については地方公共団体において様々な取組がなされています。代表的なものとしては、巡回パトロール、監視カメラの設置、不法投棄対策に係るネットワークの整備があげられます(序-3-2表)。

地方公共団体における廃棄物適正処理監視等推進事業(平成15年度)

 パトロールについては、行政部局や警察が行うもののほか、警備会社等への外部委託や住民から募った監視員、ボランティア監視員によるパトロールのほか、監視協定等による郵便局やタクシー業者、宅配業者、警備業者等による監視活動が実施されており、夜間・休日を含めた監視活動の強化が図られています。また、ヘリコプターによる空からの監視を実施している地方公共団体もあります。不法投棄箇所を調査、地図に書き込み、不法投棄の監視や投棄された廃棄物の撤去に役立てる「ごみマップ事業」も広く実施されています。
 不法投棄対策に係るネットワークの整備については、連絡協議会等の組織(行政機関によるもの、自治会や地域住民等を含むもの等その形態は様々)を設置し、関係者間の情報交換を図るとともに住民ボランティア等との連携による監視活動や不法投棄110番等の設置、普及啓発活動、研修会を実施しています。
 このほか、独自に以下のような取組が行われています。
1)携帯情報端末現場監視システムの導入(栃木県、千葉県、静岡県)
 GPS(全地球測位システム)・デジタルカメラに対応したPDA(携帯情報端末)の活用により、不法投棄現場の位置情報、デジタル画像情報及び文字情報をリアルタイムで送信することが可能です。広域的な情報の収集・活用ネットワークシステムを構築することにより、不法投棄の監視・指導体制の強化を図っています。
2)適正処理過程追跡実証実験委託(香川県)
 廃棄物運搬車両にGPSを取り付け、運搬車両が適正なルートをたどり、排出現場から処理場まで積載・運行され、中間・最終現場において適正に廃棄物が処理されているかを画像で確認するシステムの実証実験を行っています。
3)GPS端末の産業廃棄物への投げ込み追跡実験(栃木県)
 耐水・耐衝撃性のあるGPS端末を産業廃棄物に投入し、運搬車両の経路をインターネット上で確認できるシステムの実証実験を行っています。
4)収集運搬登録車両へのステッカー表示の義務付け(千葉県)
 収集運搬許可車両等と違法に運搬処分を受託する車両を外見上容易に見分けるため、収集運搬業登録車両へのステッカー表示を条例により義務付けています。
5)不法投棄通報報奨金制度(群馬県桐生市など)
 情報提供により不法投棄者が判明した場合に情報提供者に報奨金を支給しています。
6)産業廃棄物処理業者の格付け及び保証金制度(岩手県)
 岩手県では、平成14年12月に条例を制定し、優良な産業廃棄物処理業者を育成するため、産業廃棄物処理業者の申請に基づき優良業者の格付け審査を行い公表することとしています。当該審査は条例で指定した(社)岩手県産業廃棄物協会が行います。また、不適正処理や倒産等により生活環境保全上の支障除去等の措置が必要となった場合の対応のため、あらかじめ産業廃棄物処理業者から保証金を預かることとしています。

(2)警察による取締り及び環境部局との連携の強化
 警察では環境を破壊する悪質な行為を環境犯罪と捉え、特に産業廃棄物の不法投棄事犯等に重点を置いた取締りを推進しています。平成14年4月に千葉県警察に「環境犯罪課」が新設されたのを皮切りに、同年10月に警視庁、15年2月に京都府警の3都府県に環境犯罪捜査担当課を新設したほか、他府県においても対策室等を設置するなど環境犯罪捜査に対する体制の強化を図っています。
 廃棄物処理、特に産業廃棄物処理の分野には、暴力団が介入する実態がみられ、組織的な不法投棄を行うなど悪質な違反行為を引き起こしています。平成15年3月に警察庁が第一線の警察官を対象に行ったアンケート調査結果によると、暴力団が進出している表の経済活動職業の第2位に「産業廃棄物等収集、運搬、処分」がランクされています(序-3-4図)。また、平成15年に廃棄物処理法違反で警察が検挙した事犯で暴力団によるものが239件260名(うち産業廃棄物事犯は198件208名)に上ります(序-3-5図)。

最近、暴力団が進出している表の経済活動(第一線の警察官へのアンケート調査)

廃棄物処理法違反(暴力団事犯)検挙数の推移

 平成9年及び12年の廃棄物処理法の改正により、産業廃棄物処理業の欠格要件を強化し暴力団の産業廃棄物業界からの排除を進めていますが、暴力団関係者については行政部局のみの対応では自ずと限界があります。
 このため、すべての都道府県と約40の市や町の環境行政部局において警察から現職警察官約100名を出向させているほか警察OBを配置するなど警察と環境行政部局の連携の強化を図っており、業者への立入検査や指導、警察との連絡調整など不法投棄事犯等の効果的な取締りを行っています。

3. その他の主体の取組

(1)排出事業者の取組
 排出事業者が外部に処理委託した産業廃棄物が、収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者へと渡っていく過程で、不法投棄が行われる場合があります。
 排出事業者が自己の排出した産業廃棄物の処理状況を把握・管理する方策としてマニフェスト制度が平成5年4月に導入されていますが、不法投棄の増加を背景に、未然防止策の一つとして排出事業者責任の強化が図られてきました。平成12年の廃棄物処理法改正では、マニフェストの写しの送付を受けていない場合に適切な措置を講ずべき義務に違反した者、適正な対価を負担していなかったり、不適正処分が行われることを知っていた、または知ることができた排出事業者で一定要件を満たす場合などを生活環境保全上の支障除去等の措置命令の対象に追加するなど、排出事業者責任の一層の強化が図られました。
 このような状況変化を背景に、近年、排出事業者により様々な取組が講じられるようになってきました。
1)産業廃棄物画像管理システムの導入
 電機産業のM社では、電子マニフェストにGPS(全地球測位システム)とデジタル画像を利用し、廃棄物の排出現場から最終処分場までの運搬経路や中間処理場での積込・荷下ろし画像をインターネットで確認するなど廃棄物の徹底管理を図っています。
2)産業廃棄物処理業者選定ルールの作成
 情報機器等製造のKグループでは、産業廃棄物処理業者の選定に係るグループ統一ルール(新規業者の選定に係る現地調査の義務付け、継続業者を利用する場合の定期的な現地訪問、業者評価表の作成)を作成、適用することにより、工場ごとの判断のばらつきを抑え、廃棄物関係でのトラブルを事前に回避しています。

3)リサイクル委託業務の分離、後払い方式の採用
 事務用コピー機等製造のF社では、使用済機器のリサイクルに係る委託業務を、解体業務と再資源化業務とに分離し、各々の業者に別々に委託し、業務終了後に委託料を支払う後払い方式を採用することにより、処理内容や料金の透明性を確保し、不法投棄や不適正処理を防止しています。

(2)住民等の取組
 地域の環境を保全する上で当該地域に住む住民の果たす役割には大きなものがあります。不法投棄を未然に防止するため地方公共団体が日夜監視パトロールを実施していますが、地域住民が行う監視パトロールも不法投棄の未然防止には大きな役割を果たしています。自治会が中心となって実施するものから、ボランティア団体によるもの、警察や環境部局と連携をとりつつ実施するものなど様々な監視活動が行われています。官民合同で不法投棄パトロール隊を結成し、定期的に監視パトロールを実施している事例もあります。最近では、カメラ付き携帯電話やGPS(全地球測位システム)を使用した監視パトロールや不法投棄マップ作成の取組も行われるようになってきました。
 住民等の監視活動により不法投棄の抑止効果が働くとともに、不法投棄現場から捜し出した証拠資料は不法投棄原因者の特定や検挙に貢献しています。

コラム 7  ITを活用した廃棄物の不法投棄防止システムの構築〜環境ガードシステム〜

 ITを活用した不法投棄防止システムについては、地方公共団体や排出事業者による取組が始められていますが、産業廃棄物処理業界が主導的にアクションを起こした事例として、O社が開発した「環境ガードシステム」があります。
 環境ガードシステムは、ICタグやGPS(全地球測位システム)、携帯端末やインターネット等のITを活用して、産業廃棄物の排出事業者における積込みから、収集運搬、処分に至るまでの全行程において産業廃棄物情報を関係者にリアルタイムで配信することにより、産業廃棄物の流れをガラス張りにして、不法投棄が入り込む隙間を無くそうとするものです。
 同システムでは、排出事業者からの産業廃棄物の積込み時において、排出事業者、収集運搬業者立ち会いの下、それぞれの登録認証カード、産業廃棄物の容器等に取り付けたICタグ情報を携帯端末に装着した専用装置により読み取り、排出事業者情報、収集運搬業者情報、産業廃棄物の種類、量、積み込み日時等の情報を携帯電話で送信し、システム管理主体である管理センターを介して瞬時に排出事業者、収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者に配信します。収集運搬業者→中間処理業者、中間処理業者→収集運搬業者、収集運搬業者→最終処分業者の間においても同様のことが行われ、産業廃棄物情報の徹底管理が行われます。
 この産業廃棄物情報の関係者へのリアルタイムでの発信機能により、排出事業者による産業廃棄物の現状把握が容易となり、紙マニフェストでは困難な中間処理施設等での滞留日数の長期化など不法投棄が疑われる事態を容易に察知することが可能となるほか、中間処理業者や最終処分業者に事前に産業廃棄物情報が通知されることにより排出事業者契約業者と異なる処理業者への持込みや契約と異なる産業廃棄物の持込を防ぐことができます。また、情報の共有化による監視作用が働き抑止効果も見込まれます。なお、マニフェスト伝票の返却管理等も行っており、電子マニフェストとの将来的なリンクも視野に入れ研究を進めているとのことです。
 さらに、産業廃棄物の容器等に取り付けられたICタグをGPSシステムで追跡することにより、産業廃棄物の積み込みから処理施設に至るまでの運搬状況をリアルタイムで確認でき、不法投棄を防止することができます。必要に応じて運行管理表の提供も行ってるとのことです。
 同システムに加入する産業廃棄物処理業者は、その行動が管理システムにより管理されるとともに同システム加入時に登録認証審査が必要であることから、システム加入の有無が排出事業者が処理業者を選ぶ際の選択基準の一つとなり、産業廃棄物処理業界の優良化につながることも期待されます。
 なお、同システムは中立的な立場から運営を行う必要があることから、その管理運営を産業廃棄物処理業界主導で行うのではなく、産業廃棄物処理業界、学識経験者や住民などで構成するNPO法人に委ねています。同システムは平成15年8月にスタートし、同年12月時点において排出事業者2,400社で試験導入を実施しています。福岡県は平成16年2月に「具体的な運用上の課題の検証と同システムの普及促進に向けて課題解決を図る普及促進検討会を設置する」旨発表しています(序-3-6図)。

環境ガードシステム


4. 硫酸ピッチ対策

 近年の硫酸ピッチの不法投棄等の急増は、脱税を目的とした不正軽油の密造に伴うものであり、不正軽油密造の防止の観点から、警察、税務、消防、石油流通、環境等関係部局が一体となって対策を進めていく必要があります。平成15年12月に政府が策定した「犯罪に強い社会を実現するための行動計画」にもその旨を明記しています。
 また、不正軽油の密造は脱税を目的として組織的に行われることが多いことから取締りや捜査が難しく、さらに、多くのペーパーカンパニー等を経由して製造・流通されることが多く、その構造も複雑で、加えて建設廃棄物等の事案に比べ証拠物件が少ないこと等から、排出元(排出事業者)の特定が難しいことも硫酸ピッチ不法投棄事案の特徴です。

(1)国の取組
 国は、地方公共団体の関係部局を通じてそれぞれ地方税法、消防法、揮発油等の品質の確保等に関する法律、廃棄物処理法等関連法に基づく規制や監視、取締り等の徹底を図っているほか、平成15年8月には警察庁、総務省、消防庁、資源エネルギー庁、環境省の5省庁で硫酸ピッチ不適正処分事案関係連絡省庁会議を設置し、情報の共有化を強めるなど関係省庁の連携を強化しています。
 このほか、平成16年3月に地方税法が改正され、脱税に関する罪の引き上げのほか、軽油の製造承認義務違反や不正軽油の譲受け等に関する罰則の強化が図られました(平成16年6月1日施行)。また、同年4月に廃棄物処理法が改正され、人の健康又は生活環境に重大な被害を有するおそれのある性状を有する指定有害廃棄物(硫酸ピッチを指定予定)について処理(保管、収集、運搬、処分)基準を定め、不適正な処理を直罰をもって禁止しました。

(2)地方公共団体の取組
 都道府県等では、警察、税務、消防、石油流通、環境部局が連携を図りながら、関係法令に基づく規制や監視、取締り等を実施しています。
(警察)
・関係行政部局の行う立入検査等と連動した取締りを実施するとともに、捜査を通じて得られた不法投棄の状況、投棄者、排出事業者等に関する情報を関係行政部局へ提供し、行政措置の早期発動による環境破壊の拡大防止及び早期回復に資するように努めています。
(税務)
・路上での抜取検査、ガソリンスタンド、運送会社に対する抜取検査を実施しています。
・「不正軽油110番」を設置するなどにより、不正軽油製造同業者の通報や住民の苦情等をもとに関係都道府県等が連携して不正事案の調査を実施しています。
・平成12年11月から順次不正軽油対策協議会等(関係行政機関(税務、消防、警察、環境等)、石油業界、バス業界、トラック業界、建設業界等が構成員)を設置し、情報交換や不正軽油を使用しないよう軽油の使用者に呼びかけるなど啓発活動を実施しています。
・平成15年4月には、軽油引取税の事務処理に関し、都道府県間の緊密な連絡と協力を図り、もって軽油引取税の賦課徴収の適正化を一層推進するため「軽油引取税全国協議会」を設置し、全国一斉路上軽油抜取調査等を実施しています。
・東京都では、低硫黄軽油(50ppm以下)が平成15年4月より全国的に供給されたことから硫黄分析を導入しています。不正軽油の硫黄濃度は約410ppm前後であることから、クマリンを除去した場合でも不正軽油の摘発が可能です。
(消防)
・消防法に基づく施設設置の許可、定期的な立入検査を実施しています。
(石油流通)
・「揮発油等の品質の確保等に関する法律」に基づく立入検査や試買分析を実施しています。不正軽油が見つかった場合には、総務省及び各都道府県の税務部局と連携し不正軽油の流通を防止しています。
(環境)
・不法投棄の未然防止や早期発見のためのパトロールや排出源情報を入手した場合の立入検査など廃棄物処理法に基づく規制の徹底、監視を実施しています。
・三重県では、条例を制定し、硫酸ピッチ等を生じる工場等の設置に関して事前の届出義務を課しています。届出施設に対しては監視や定期的な立入検査を実施しています。
・京都府では、硫酸ピッチの生成及び保管の禁止を内容とする条例を制定しています。

 おわりに

 本章では、家庭ごみの収集ルール違反など日常生活に伴う問題から始まり、廃家電や使用済自動車、廃船、産業廃棄物の大規模不法投棄や硫酸ピッチの事例など多様な不法投棄の現状と影響、その対策について述べてきました。不法投棄が発生する原因は、廃棄物の種類や個別ケースごとに異なり、不法投棄の原因者等も一個人から排出事業者、許可、無許可の廃棄物処理業者まで様々ですが、その根底には、廃棄物はそれを排出する者にとっては不要なものであるため、その処理に適正な費用や労力をかけるインセンティブが働きにくいことにあります。このため、廃棄物処理の世界は、適正処理を行う業者が敬遠され、安価に請負い不法投棄等の安易な手段に走る業者に顧客が流れがちとなる、いわゆる「悪貨が良貨を駆逐する」構造になりやすく、安かろう悪かろうの処理が行われやすい実態があります。
 不法投棄の背景にあるこうした構造を改善するには、国民一人ひとりや企業など廃棄物を出す側が廃棄物の適正処理には一定の費用負担が必要なことやその適正処理に責任を負っていることを認識し、意識の向上を図ることに加え、不法投棄等の原因者に対する規制や取締りを徹底する必要があります。また、不法投棄の原因者だけを罰するのではなく、不法投棄につながる可能性を明確に又は漠然と認識しつつ対応策を講じない排出者に対しても厳正な対応が必要す。さらに、行政措置の遅れなど行政側の不十分な対応により不法投棄が継続、拡大されるケースも多く、不法投棄原因者に対する行政の厳格な対応が必要です。また適正処分の受け皿である廃棄物処理施設を整備するとともに、行政処分情報の公開等により排出側が優良な処理業者を選択することを通じた悪質業者の淘汰、優良業者の育成を図ることも重要です。
 また、不法投棄を無くすには、これまで述べてきたようないかにして廃棄物の適正処理を確保するかといった観点からの取組に加え、そもそも廃棄物の発生そのものを抑制したり、廃棄物を資源として有効利用するといった観点からの取組も必要です。従来の我が国の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会活動様式を改め、行政、企業、国民等がそれぞれの役割と責任をしっかりと認識し、一体となって循環型社会の構築に向け取組を進めていくことが求められています。