環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第6章>第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

1 リスクコミュニケーション等を通じた放射線に係る住民の健康管理・健康不安対策

2014年12月に取りまとめられた「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議中間取りまとめ」を踏まえ、2015年2月に「環境省における当面の施策の方向性」として、[1]リスクコミュニケーション事業の継続・充実、[2]福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実、[3]福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握、[4]事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進が掲げられています。本方向性に基づき、放射線リスクコミュニケーション相談員支援センターによる支援、福島県の県民健康調査の支援、放射線の健康影響調査研究及び被ばく線量の評価等の取組を進めます。

2 健康被害の救済及び予防

(1)被害者の救済
ア 公害健康被害補償

公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号。以下「公害健康被害補償法」という。)に基づき、汚染者負担の原則を踏まえつつ、認定患者に対する補償給付や公害保健福祉事業を安定的に行い、その迅速かつ公正な救済を図ります。

イ 水俣病対策の推進

水俣病対策については、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(平成21年法律第81号)等に基づく救済措置のみで終わるものではなく、引き続き、その解決に向けて、公害健康被害補償法に基づく認定患者の方の補償に万全を期すとともに、高齢化が進む胎児性患者やその家族の方等関係の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるよう、水俣病発生地域における医療・福祉対策の充実を図りつつ、水俣病問題解決のために地域のきずなを修復する再生・融和(もやい直し)や、環境保全を通じた地域の振興等の取組を加速させていきます。

ウ 石綿健康被害の救済

石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号。以下「石綿健康被害救済法」という。)に基づき、被害者及びその遺族の迅速な救済を図ります。また、2016年12月に取りまとめられた中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会の報告書を踏まえ、石綿健康被害救済制度の運用に必要な調査や更なる制度周知等の措置を講じます。

(2)被害等の予防

大気汚染による健康被害の未然防止を図るため、環境保健サーベイランス調査を実施します。また、独立行政法人環境再生保全機構に設けられた基金により、調査研究等の公害健康被害予防事業を実施します。さらに、環境を経由した健康影響を防止・軽減するため、熱中症、花粉症、黄砂、電磁界及び紫外線等について予防方法等の情報提供及び普及啓発を実施します。

3 公害紛争処理等

(1)公害紛争処理

近年の公害紛争の多様化・増加に鑑み、公害に係る紛争の一層の迅速かつ適正な解決に努めるため、公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)に基づき、あっせん、調停、仲裁及び裁定を適切に実施します。

(2)公害苦情処理

住民の生活環境を保全し、将来の公害紛争を未然に防止するため、公害紛争処理法に基づく地方公共団体の公害苦情処理が適切に運営されるよう、適切な処理のための指導や情報提供を行います。

4 環境犯罪対策

産業廃棄物の不法投棄を始めとする環境犯罪に対する取締りの実効性を更に向上させるよう、その体制を整備するとともに、社会情勢の変化に応じて法令の見直しを図るほか、環境犯罪を事前に抑止するための施策を推進します。