環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第4章>第2節 水環境の保全

第2節 水環境の保全

1 環境基準の設定、排水管理の実施等

水質汚濁に係る環境基準については、水環境中での存在状況や有害性情報等の知見の収集・集積を引き続き行い、必要な見直し等を実施します。また、国が類型指定を行う水域について、新たに生活環境項目環境基準に設定された底層溶存酸素量に関する情報を収集し、類型指定を進めるとともに、改善対策の推進を図ります。さらに、新たな衛生微生物指標等に着目した環境基準等の目標について調査検討を行い、指標の充実を図ります。

水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)に基づき、国及び地方公共団体は、公共用水域及び地下水の水質について、放射性物質を含め、引き続き常時監視を行います。また、要監視項目についても、地域の実情に応じて水質測定を行います。

工場・事業場については適切な排水規制を行うとともに、水質汚濁に係る環境基準の見直し等の状況に応じ必要な対策等の検討を進めます。また、各業種の排水実態等を適切に把握しつつ、特に経過措置として一部の業種に対して期限付きで設定されている暫定排水基準については、随時必要な見直しを行います。

2 湖沼

湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)に基づく湖沼水質保全計画が策定されている11の指定湖沼について、同計画に基づき、各種規制措置のほか、下水道及び浄化槽の整備、その他の事業を総合的・計画的に推進します。

浄化の機能及び生物多様性の保全及び回復の観点から、湖辺の植生や水生生物の保全など湖辺環境の保全を図ります。

琵琶湖の保全及び再生に関する法律(平成27年法律第75号)に基づき主務大臣が定めた「琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針」及び滋賀県が策定した「琵琶湖保全再生施策に関する計画」等を踏まえ、関係機関と連携して各種施策を推進します。

3 閉鎖性海域

閉鎖性海域については、流域からの負荷削減の取組が進んでいるものの、底質環境の悪化や内部生産の影響により貧酸素水塊が発生するなど依然として問題が生じています。このため、引き続き必要な負荷削減に取り組むとともに、浄化機能及び生物多様性の確保の観点から、自然海岸、干潟、藻場等について、適切な保全を図り、干潟・海浜、藻場等の再生、覆砂等による底質環境の改善、貧酸素水塊が発生する原因の一つである深堀跡について埋戻し等の対策、失われた生態系の機能を補完する環境配慮型構造物等の導入など健全な生態系の保全・再生・創出に向けた取組を推進します。その際、「里海」づくりの考え方を取り入れつつ、流域全体を視野に入れて、官民で連携した総合的施策を推進します。また、漂流ごみや流出油の円滑な回収・処理に努めます。

瀬戸内海については、「きれいで豊かな海」を目指し、湾・灘ごと、季節ごとの地域の実情に応じた施策の検討・実施を図ります。また、有明海及び八代海等については、再生に係る評価及び基本方針に基づく再生のための施策を推進します。

4 汚水処理施設の整備

水質環境基準等の達成、維持を図るため、工場・事業場排水、生活排水、市街地・農地等の非特定汚染源からの排水等の発生形態に応じ、水質汚濁防止法等に基づく排水規制、水質総量削減、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づく農薬の規制、下水道、農業集落排水施設及び浄化槽等の生活排水処理施設の整備等の汚濁負荷対策を推進します。

関係機関が連携して水環境の保全を進めるとの考えの下、生活排水処理を進めるに当たっては、人口減少など社会構造の変化等を踏まえつつ、地域の実情に応じて、より効率的な汚水処理施設の整備や既存施設の計画的な更新や再構築を進めるとともに、河川水を取水、利用した後の排水については、地域の特性に応じて見直しを含めた取排水系統の検討を行います。

5 地下水

地下水の水質については、有機塩素化合物等の有害物質による汚染が引き続き確認されていることから、水質汚濁防止法に基づく有害物質の地下浸透規制や、有害物質を貯蔵する施設の構造等に関する基準の遵守及び定期点検等により、地下水汚染の未然防止の取組を進めます。また、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染対策について、地域における取組支援の事例等を地方公共団体に提供するなど、負荷低減対策の促進方策に関する検討を進めます。