環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第3章>第4節 適正処理の更なる推進と環境再生

第4節 適正処理の更なる推進と環境再生

1 適正処理の更なる推進

食品廃棄物の不適正処理事案等を踏まえ、排出事業者が自らの事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で処理すべきことや、処理業者への委託時にその根幹的内容を自らの責任で決定すべきものであることなどの排出事業者責任の重要性について、2017年3月21日に通知を発出したほか、同年6月20日には排出事業者向けのチェックリストを作成しており、引き続き自治体の他排出事業者等に対して周知徹底を図ります。

一般廃棄物の適正処理については、当該処理業が専ら自由競争に委ねられるべき性格のものではなく、継続性と安定性の確保が考慮されるべきとの最高裁判所判決(2014年1月)や、市町村が処理委託した一般廃棄物に関する不適正処理事案の状況を踏まえ、2014年10月8日に通知を発出しており、市町村の統括的責任の所在、市町村が策定する一般廃棄物処理計画を踏まえた廃棄物処理法の適正な運用について、引き続き周知徹底を図ります。また、一般廃棄物処理に関するコスト分析方法、有料化の進め方、標準的な分別収集区分等を示す「一般廃棄物会計基準」、「一般廃棄物処理有料化の手引き」、「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」の三つのガイドラインについて、更なる普及促進に努めます。

高齢化世帯の増加にも対応した廃棄物収集運搬システムの在り方の検討を行います。また、IoT及びAIの活用による適正処理工程の監視の高度化及び省力化等の技術情報の収集等を進めます。

人口減少等の社会状況の変化を考慮した上で、IT技術等を活用した高度化、広域化・集約化、長寿命化等のストックマネジメントを行い、効率的な廃棄物処理を推進するとともに、地域のエネルギーセンターや防災拠点としての役割を担うなど、関係者と連携し、地域の活性化等にも貢献する一般廃棄物処理の中核をなす処理施設の整備を図ります。

一般廃棄物の最終処分場に関しては、ごみのリサイクルや減量化を推進した上でなお残る廃棄物を適切に処分するため、最終処分場の設置又は改造、既埋立物の減容化等による一般廃棄物の最終処分場の整備を図ります。このため、循環型社会形成推進交付金等による、市町村への一般廃棄物処理施設の整備等の支援を継続するとともに、必要に応じて、交付対象事業の見直し等を検討します。

最終処分場の延命化・確保のためにも3Rの取組を進展させることにより、最終処分量の一層の削減を進めます。

廃棄物処理法及びその政省令の改正を踏まえて、廃棄物の不適正処理への対応強化を進めます。

不法投棄の撲滅に向けて、早期発見による未然防止及び早期対応による拡大防止を進めます。

優良産廃処理業者の育成、優良認定制度の活用や電子マニフェストの普及拡大、排出事業者の意識改革等により、良貨が悪貨を駆逐する競争環境の整備に取り組み、循環分野における環境産業全体の健全化及び振興を図ります。

各種手続等の廃棄物に関する情報の電子化の検討を進めるとともに、廃棄物分野において電子化された、電子マニフェストを含む各種情報の活用の検討を進めます。

アスベスト、残留性有機汚染物質(POPs)廃棄物、水銀廃棄物、埋設農薬等については、製造、使用、廃棄の各段階を通じた化学物質対策全体の視点も踏まえつつ、水質汚濁・大気汚染・土壌汚染等の防止対策と連携するとともに、当該物質やそれらを含む廃棄物に関する情報を関係者間で共有し、適正に回収・処理を進めます。

ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物について、2018年度には最初の計画的処理完了期限を迎えることを踏まえ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「PCB特別措置法」という。)及び閣議決定されたポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に基づきその一日も早い達成に向けて、関係者が一丸となって取組を推進します。

リサイクル原料への有害物質の混入について、有害物質規制の強化等の国際的動向も踏まえ、上流側の化学物質対策等と連携し、ライフサイクル全体を通じたリスクを削減します。

2 廃棄物等からの環境再生

マイクロプラスチックを含む海洋ごみや散乱ごみに関して、国際的な連携の推進とともに、実態把握や発生抑制を進めます。

生活環境保全上の支障等がある廃棄物の不法投棄等について支障の除去等を進めます。

放置艇の沈船化による海域汚染を防止するため、係留・保管能力の向上と規制措置を両輪とした放置艇対策を推進します。

3 東日本大震災からの環境再生

東日本大震災の被災地の環境再生のため、放射性物質により汚染された廃棄物の適正処理及び除去土壌等の減容・再生利用等を地方公共団体等の関係者と連携しつつ、政府一体となって着実に進めます。

(1)放射性物質に汚染された土壌等の除染等の措置等

平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき、必要な土壌等の除染等の措置及び除去土壌の保管等を適切に実施します。また、仮置場の早期解消に向けて、原状回復の手法等を整理したガイドラインを策定・公表し、仮置場の原状回復を進めていきます。さらに、福島県外の除去土壌の処分方法の策定に向け、除去土壌の埋立処分の実証事業を実施します。

(2)中間貯蔵施設の整備

福島県内の除染に伴い発生した土壌や廃棄物等を福島県外で最終処分するまでの間、安全かつ集中的に管理・保管するための中間貯蔵施設については、2017年11月に公表した「2018年度の中間貯蔵施設事業の方針」に基づき、用地取得に取り組むとともに、施設の整備と除去土壌等の輸送を進めていきます。また、中間貯蔵開始後30年以内の福島県外での最終処分に向けては、2016年4月に取りまとめた「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」及び「工程表」に基づき、除去土壌等の減容・再生利用に関する技術開発や国民理解の醸成に向けた取組等を着実に進めていきます。

(3)放射性物質に汚染された廃棄物の処理

福島県内の汚染廃棄物対策地域では、対策地域内廃棄物処理計画(2013年12月一部改定)等に基づき着実に処理を進めていきます。指定廃棄物の処理については、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針において、当該指定廃棄物が発生した都道府県内において行うこととされており、引き続き各都県ごとに早期の処理に向け取り組んでいきます。

(4)帰還困難区域の特定復興再生拠点区域における環境再生の取組

帰還困難区域については、2017年5月に改正した福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)に基づき、各市町村の認定特定復興再生拠点区域復興再生計画に沿って、特定復興再生拠点区域における土壌等の除染等の措置等とインフラ整備等を一体的かつ効率的に進めます。

(5)放射性物質による環境汚染対策についての検討

放射性物質による環境汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律において放射性物質に係る適用除外規定の削除が行われなかった廃棄物処理法、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)その他の法律の取扱いについて、放射性物質汚染対処特措法の施行状況の点検結果を踏まえて検討します。