環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保
ア 多数国間の枠組みによる連携

(ア)国連や国際機関を通じた取組

a 国連持続可能な開発会議(リオ+20)等における取組

2012年の国連持続可能な開発会議(以下「リオ+20」という。)において立上げが合意されたSDGsに関するオープン・ワーキンググループ(OWG)は、2013年1月から計13回開催され、SDGs報告書が2014年7月に公表されました。同報告書を踏まえ、2015年9月の国連サミットにおいてSDGsを核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsの17の目標には、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等、多くの環境関連の目標が含まれました。

2017年7月の国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)では、自発的国家レビュー(VNR)において我が国のSDGs達成に向けた取組を発表し、「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会の実現に向けた日本の取組を紹介しました。また、環境省は、外務省、国連開発計画(UNDP)、タイ政府及びマレーシア政府との共催により、サイドイベント「持続可能な未来に向けたアジア太平洋地域からのイニシアティブ」を開催し、持続可能な開発目標の達成に不可欠なパートナーシップの促進のためにアジア各国政府及び民間企業等のステークホルダーからの取組事例の発表・共有を行い、SDGsに取り組むアジアの一体感を醸成するとともに、環境分野における日本の優れた取組を海外へ発信しました。

また、持続可能な消費と生産パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、リオ+20で合意された「持続可能な消費と生産10年計画枠組み」が2014年から本格的に始まりました。本枠組みの6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイル及び教育」プログラムの共同リード国として、アジアを始めとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を実施しています。

b 国連環境計画(UNEP)における活動

我が国は、国連環境計画(UNEP)の環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。2017年12月には、第3回国連環境総会(UNEA)が開催され、環境に関する様々な決議が採択されました。

大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。更に関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。

UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築した「世界適応ネットワーク(GAN)」及びアジア太平洋地域の活動を担う「アジア太平洋適応ネットワーク(APAN)」への拠出金等により、各地域の適応行動を関係者で共有するためのフォーラム、脆弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。

c 経済協力開発機構(OECD)における取組

我が国は、2012年1月から経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に参加してきました。OECDは、2017年7月にドイツ・ハンブルクで開催されたG20サミットに向け、「気候への投資、成長への投資」と題する報告書を公表し、気候変動対策と経済成長の同時達成という考えを打ち込みました。

d 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より連続して理事国を務めています。具体的には、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、IRENAとの共催により、国際ワークショップ及び訪日研修を実施しました。

(イ)主要国首脳会議(G7サミット)及びG7環境大臣会合における取組

2017年6月、イタリアを議長国としてG7タオルミーナサミットが開催されました。G7タオルミーナ首脳コミュニケでは、気候変動や開発等が取り上げられました。気候変動分野では、米国が気候変動及びパリ協定に関する自国の政策を見直すプロセスにあるため、これらの議題についてコンセンサスに参加する立場にないとし、米国を除くG7各国は、米国の立場を理解し、伊勢志摩サミットにおいても表明されたとおり、パリ協定を迅速に実施するとの強固なコミットメントを再確認しました。

G7タオルミーナサミット後に開催されたG7ボローニャ環境大臣会合では、気候変動分野のほか、資源効率性・3Rや海ごみ等様々な議題を扱い、7か国が合意したコミュニケを採択しました。気候変動分野については、米国を除くG7各国が、パリ協定を迅速に、かつ効果的に実施するという、強固なコミットメントを再確認し、パリ協定の実施において、全ての締約国と引き続き協力する用意があることについて一致しました。また、米国はコミュニケの注釈で、CO2排出量削減に引き続き取り組んでいくとともに、強い経済と良好な環境の両方を確保するという国内の優先順位と整合する形で、重要な国際的パートナーと引き続き関わっていくことを言及しました。

資源効率性・3Rについては、2015年のエルマウ・サミット、2016年の伊勢志摩サミット及び富山物質循環フレームワークの成果に基づき、資源効率性に関する共通の活動の推進を目指す「ボローニャ・5ヶ年ロードマップ」を採択しました。海洋ごみについては、海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画を通じて行われた価値ある作業を認識し、G7行動計画を更に実施する決意を表明しました。とりわけプラスチックごみ及びマイクロプラスチックに対する懸念を改めて表明し、モニタリング及び評価のための科学に基づく指標及び方法の調和、海洋環境へのプラスチックの流出を避けるための、マイクロビーズを含む使い捨てプラスチックやマイクロプラスチックの漸進的削減等の取組を進めることに合意しました。

これらの成果は、2018年のG7議長国であるカナダに引き継がれました。

(ウ)アジア太平洋地域における取組

a 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

2017年8月に韓国水原において第19回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM19。以下、日中韓三カ国環境大臣会合を「TEMM」という。)が開催され、三カ国の国内環境政策の進捗状況の紹介及びそれらに基づく意見交換を行うとともに、ヒアリ等を始めとした侵略的外来種、海洋ごみ、大気汚染、SDGsについて率直な意見交換を行い、共同コミュニケを採択しました。

個別分野においては、大気汚染問題について、PM2.5等に関する政策及び技術について情報交換を実施しました。今後、PM2.5等の主な原因物質である揮発性有機化合物(VOC)の排出削減対策等に関する日本の知見・技術の提供を通じて、地域の対策を促進していきます。海洋ごみに関する政策及び関連研究に係わる各国の情報交換を促進しました。TEMM18において新たに立ち上げた、中国を始めとする環境技術のニーズと日本等が持つ環境技術のマッチングを促進する「技術ネットワーク」について、韓国で第1回環境技術展及び環境技術セミナーを実施し、先進的な環境技術について情報交換をしました。

b ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合

2017年9月に、ブルネイ・バンダルスリブガワンにおいて第15回ASEAN+3環境大臣会合が開催されました。この会合で、廃棄物・リサイクル分野を始めとする様々な環境分野での協力を抜本的に強化するための「日ASEAN環境協力イニシアティブ」を提案するとともに、会合及び二国間のバイ会談において「環境インフラ海外展開基本戦略」に基づく二国間協力の推進を呼びかけ、ASEAN諸国から幅広い支持を得ました。

(エ)アジア太平洋地域における分野別の協力

自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年より様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。

a アジアEST地域フォーラム

2017年3月にラオスのビエンチャンにおいて第10回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを開催し、アジア地域各国等から参加した代表と、持続可能な発展に向けた交通システム等に関する政策、先進事例等の共有を図りました。

b 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

2017年11月に、カンボジアのシェムリアップにおいて第19回政府間会合が開催され、途上国における能力構築活動や普及啓発活動の強化を含む2018年のEANET作業計画が承認されるとともに、EANETとWMOとのデータ共有に関する文書がおおむね合意されました。

c アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)

アジア太平洋地域の大気環境改善に向けた効率良い活動を促進するために必要なプラットホームとして、2014年度からアジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)を立ち上げました。また、APCAPの下に設置した科学パネルにおいて、アジア太平洋地域の大気汚染への科学に基づく解決策をまとめた報告書の作成作業が進められました(2018年に公表予定)。また、2018年3月にアジア太平洋地域の大気汚染に関する各国代表者等が一同に会する第2回合同フォーラムが開催され、アジア太平洋地域の大気環境改善に向けた具体的な活動等を確認しました。

d アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

2017年9月にインドネシアにおいて第13回年次会合及び国際ワークショップを開催し、各国の産業排水管理に関する課題の解決に向けて、意見交換を行いました。

e アジア水環境改善モデル事業

我が国企業による海外での事業展開を通じ、アジア等の水環境の改善を図ることを目的に、2011年度よりアジア水環境改善モデル事業を実施しています。2017年度は、過年度に実施可能性調査を実施した4件(ベトナム(2件)、インドネシア、ミャンマー)の現地実証試験を実施したほか、新たに公募により選定された民間事業者が、ベトナム(高濃度廃液の減量・浄化による水環境改善事業)、インドネシア(既設セプティックタンクを活用した生活排水処理の高度化事業)の事業の実施可能性調査を実施しました。

f アジア・コベネフィット・パートナーシップ

2010年の創設以来、アジアの途上国における環境改善と温室効果ガス排出削減に同時に資するコベネフィット・アプローチの普及啓発活動に参画してきましたが、2017年度はウェブサイトの充実やコベネフィット白書の出版等に取り組みました。

g 分散型汚水処理システム

2017年12月に第5回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを開催し、分散型汚水処理システムの適正な普及に関する課題の解決に向けて議論を行い、今後取り組むべき課題や方向性について共通認識を得るとともに、各国分散型汚水処理関係者とのネットワーク構築や連携強化を図りました。

h 持続可能な都市ハイレベルセミナー

2010年からASEAN各国との間で、「持続可能な都市ハイレベルセミナー」を毎年開催し、環境的に持続可能な都市づくりを目指した課題と解決策について議論を行っています。2018年3月には第9回会合をカンボジアで開催しました。

i 気候変動に関する取組

環境省は、外務省、フィジー政府、オーストラリア外務・貿易省との共催により、2017年9月に、フィジー・スバにおいて「アジア・太平洋地域におけるCOP23準備ワークショップ(第26回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー)」を開催し、アジア太平洋地域(13か国)、国際機関及び研究機関等(9機関)から、約50名の気候変動に関する担当官や専門家等がこれに参加しました。本セミナーでは、適応計画の策定及び実施、2020年以降の透明性の枠組(各国の取組の報告・レビューの仕組み)等について活発な議論が行われました。特に、適応計画を実施していく上でのリスク評価や進捗管理(M&E)に関する現状と課題が認識されるとともに、パリ協定の下での透明性制度の在り方を検討する上で各国が抱える課題が共有されました。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

a 米国

2016年5月のG7富山環境大臣会合及び2017年6月のG7ボローニャ環境大臣会合の際に、大臣級で会談を行い、水銀、大気環境管理、環境教育等の分野で二国間の協力を推進することを確認しました。

b フランス

2015年12月に両国大臣間で、両国間の友好関係の強化と、国際及び国内レベルにおける低炭素社会の構築を目指した環境協力の覚書への署名が行われました。2016年12月に、上記覚書に基づき第1回年次会合を、2018年3月には、第2回年次会合を開催し、気候変動対策、低炭素シナリオに関する共同研究、SDGs、循環経済、自治体連携等について、両国の政策や課題、二国間連携の進捗状況について意見交換を行い、今後のさらなる連携協力について合意しました。

c ドイツ

2016年5月、両国環境大臣は、脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する共同声明への署名を行いました。共同声明に基づき、2017年6月に、日独協力第1回年次会合を開催しました。また、再生可能エネルギーの普及に向けた自治体間連携を推進するための国際会議や、ワークショップ等を開催しました。

(イ)開発途上国との連携

a 中国

日中経済パートナーシップ協議や日中高級事務レベル海洋協議を開催するなど、これまで様々な機会を捉えて、日中それぞれの環境政策及び大気汚染、海洋汚染、気候変動対応、廃棄物、生物多様性等における環境協力を推進しました。

気候変動については、2017年9月に、気候変動対策に関する研究面からの知見について両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が、中国エネルギー研究所(能源研)と協力して「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」を北京で開催しました。日本及び中国の気候変動政策の現況、長期戦略の検討状況、2020年以降の透明性枠組みやグローバルストックテイクの在り方、低炭素都市構築に向けた日中韓共同研究等について、活発な意見交換を行いました。

大気分野については、日中間の都市間連携において、モデル的なVOC削減技術の導入やPM2.5発生源解析に関する共同研究等の協力を進めました。

b インド

2017年12月、気候変動対策に関する研究・実務面からの知見について、両国の研究者が意見交換を行うため、環境省がインドエネルギー資源研究所(TERI)と協力して、「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」をニューデリーで開催しました。

日本及びインドの気候変動政策の現況、国別削減目標(NDC)とSDGsのつながり、二国間協力、取組の野心度を引き上げるための国際枠組み等について活発な議論が行われました。

c インドネシア

2017年4月、環境省とインドネシア共和国環境林業省の間の協力覚書を結びました。本協力覚書をベースに、包括的かつ効果的な協力を実施しています。これは2012年12月に先方旧環境省との間で署名した協力覚書に続き2回目の包括的協力覚書です。

d イラン

2017年2月に、第3回日本・イラン環境政策対話をイラン・テヘランで開催し、気候変動対策及び廃棄物管理について意見交換を行いました。また、政策対話のフォローアップとして、イラン環境庁の職員及び専門家を対象に、2018年2月には、テヘランでテクニカルセミナーを開催し、気候変動緩和・廃棄物管理についてイラン環境庁の職員の人材育成に貢献するとともに、イラン政府からの要請により、砂塵嵐の共同モニタリングを開始しました。

e 韓国

日韓環境保護協力協定に基づき、これまでに19回の日韓環境保護協力合同委員会を開催し、両国間での環境協力に関して幅広い意見交換等を行っています。前回は2017年6月に日本で開催しており、第20回は2018年に韓国で開催することで合意しています。

f モンゴル

2015年5月に署名した両国間の「環境分野での協力に関する協力覚書」に基づき、包括的な協力を実施してきています。2017年12月、第11回日本・モンゴル環境政策対話を東京で開催し、水銀管理、廃棄物管理、気候変動(適応)、大気汚染対策等に関して意見交換を行い、モンゴルでの環境改善のために両省間での協力事業を推進していくことに合意しました。

g フィリピン

2015年10月、マニラで、廃棄物管理に関する環境対話を開催し、フィリピンが抱える廃棄物管理の課題解決に向け、今後の協力について協議しました。また、2017年1月に、安倍内閣総理大臣とドゥテルテ大統領の立会いの下で二国間オフセット・クレジット制度(JCM)に関する二国間文書への署名が行われたことを踏まえ、2018年2月にJCMに関する日・フィリピン間の第1回合同委員会が開催され、各種規程・ガイドライン類の採択等が行われ,JCM実施のための基盤が整いました。

h シンガポール

2014年3月に署名した「日本国環境省とシンガポール共和国国家環境庁との環境協力に関する同意書」に基づき、2017年6月には東京で第4回日本・シンガポール環境政策対話を開催し、今後の協力の方向性について協議するなど、両国間の協力関係を強化しています。

i ベトナム

我が国が有する知見を活用し環境保護法改正を支援するため、環境法の専門家派遣等を実施しました。2018年3月には、第4回日本・ベトナム環境政策対話を開催しました。

j ミャンマー

「ジャパン環境ウィーク」の初の取組として、環境省とミャンマー天然資源・環境保全省は、2018年1月に「日本・ミャンマー環境ウィーク」を開催し、ミャンマー政府との政策対話、廃棄物管理ワークショップ、環境インフラ技術セミナー等を通じて、環境技術を広くミャンマー国の政府、自治体、民間企業に紹介しました。

ウ 環境インフラの海外展開基本戦略

「インフラシステム輸出戦略(平成29年度改訂版)」において、従来からの気候変動の緩和分野に加え、廃棄物分野が位置付けられたのを踏まえ、環境インフラの海外展開戦略を策定されました。本戦略では、「ジャパン環境ウィーク」を含むトップセールス及び制度から資金支援までのパッケージ支援を、民間企業、自治体、他省庁や国内外の援助機関等と連携して行うこととしています。

エ 開発途上国の適応支援

我が国の「気候変動の影響への適応計画」(2015年11月閣議決定)に基づき、インドネシア、フィリピン、モンゴル、太平洋の島嶼(しょ)国等における気候変動の影響評価や適応計画策定に関連する支援を行っています。また、2018年1月に、フィリピン・マニラにおいて「アジア太平洋地域における気候変動影響評価・適応計画の能力向上に関するワークショップ」を開催し、アジア太平洋地域(16か国)から参加した政府関係者、国際機関、研究機関及びNGO等が、同地域における適応計画の策定プロセス及び適応行動の実施に関する事例から得られる経験や教訓についての共有、活発な意見交換を行い、互いに理解を深めました。

アジア太平洋地域の気候リスクや適応策に関して、科学的知見に基づいた情報基盤となる「アジア太平洋適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」を2020年までに構築するべく準備を進めています。

オ 環境と貿易

2013年7月から我が国として正式に交渉に参加している環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、2017年1月の米国による離脱表明を受けて、米国以外の11か国の間で協定妥結に向けた交渉を継続した結果、同年11月のベトナムのダナンで行われたTPP閣僚会合において11か国によるTPP交渉の大筋合意が確認され、2018年3月にチリのサンティアゴにおいて環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が署名されました。同協定においては、「環境」章を設け、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと、環境規制を貿易・投資障壁として利用しないことなどを盛り込んでいます。また、2017年12月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉が妥結しました。この協定においては、「貿易と持続可能な開発」章を設け、TPP協定同様、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないことなどに加え、パリ協定や生物多様性条約等の多国間環境協定等国際約束の重要性の確認等についても規定しています。そのほか、中国・韓国、カナダ、コロンビア等とのEPA/自由貿易協定(FTA)交渉において、適切かつ戦略的な環境配慮を確保すべく交渉を進めました。

カ 海外広報の推進

海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、英語版広報誌や環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版の刊行など、海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。

(2)開発途上地域の環境の保全

我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年2月に改定された「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靭(じん)な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇など、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

ア 技術協力

独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクトなど、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。

例えば、JICA課題別研修「島嶼水環境の保全と管理」、「産業環境対策」等を始め、40か国以上の途上国からの研修員を受け入れ、環境管理に関する講義等の協力を行いました。

イ 無償資金協力

無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において実施されています。

また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

ウ 有償資金協力

有償資金協力(円借款・海外投融資)は経済・社会インフラへの援助等を通じ、開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対しても、JICAを通じて、積極的に円借款・海外投融資を供与しています。

エ 国際機関を通じた協力

我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組むためのプロジェクトに対して、主に無償資金を提供する多国間基金です。我が国はGEFの主要ドナー国として、意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しています。また、途上国における温室効果ガス削減対策の透明性に関する能力開発支援を行うため、パリ協定を契機にGEFに設置することが決定された透明性に関する能力開発イニシアティブ(CBIT:Capacity Building Initiative for Transparency)に我が国からも500 万ドルの資金拠出を行いました。

2015年5月、我が国において、開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)への拠出を可能にするための法律が成立し、15億ドルの拠出取決めに署名しました。これにより、GCFは途上国支援を開始するために必要な条件が充足されたことから稼働しました。同年11月には、GCF理事会において最初の支援案件となる8件が採択され、2017年12月までに53件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国はGCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2017年度に約218万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、WMOにおけるGAW計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、GCOS、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合(GEO)においては、2005年の設立から2008年11月まで、また2009年11月以降執行委員会のメンバー国を務めるとともに、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」の後継枠組みである「GEO戦略計画2016-2025」の策定作業部会の共同議長及び執筆委員を務めるなど、104の国とEC、126の国際機関(2018年3月末時点)が参加するGEOの活動を主導しています。また、GCOSの地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象機関と連携して推進しました。

気象庁は、WMOの地区気候センター(RCC)を運営し、アジア太平洋地域の気象機関に対し基礎資料となる気候情報やウェブベースの気候解析ツールを引き続き提供しました。さらに、アジア太平洋地域の気象機関を対象にした研修を実施するなど、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。

温室効果ガス等の観測・監視に関し、WMO温室効果ガス世界資料センターとして全世界の温室効果ガスのデータ収集・管理・提供業務を、WMO品質保証科学センターとしてアジア・南西太平洋地域における観測データの品質向上に関する業務を、さらにWMO全球大気監視較正センターとしてメタン等の観測基準(準器)の維持を図る業務を引き続き実施しました。超長基線電波干渉法(VLBI)や全世界的衛星測位システム(GNSS)を用いた国際観測に参画するとともに、験潮、絶対重力観測等と組み合わせて、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しました。

東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のため、これら地域の国々と連携して環境モニタリングを実施しました。また、水俣条約の有効性の評価に資する水銀モニタリングに関する国際コンサルテーション会合を米国環境保護庁(EPA)等と連携して開催し、水俣条約暫定事務局への提案を取りまとめました。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実・強化

低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)では、2017年9月に英国のコヴェントリにおいて、第9回年次会合が開催され、低炭素社会を実現するための研究成果が共有された。また、パリ協定の合意内容を着実に実施していくため、各国がどう長期ビジョンに取組、各国研究者がどういった共同研究に着手するかが議論されました。

世界適応ネットワーク(GAN)及びその地域ネットワークの一つであるアジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を他の国際機関等との連携により支援しました。2018年3月にアラブ首長国連邦のアブダビにおいて「第2回世界適応フォーラム」が開催され、各国の政府関係者、事業者、研究者等を招いて適応に関する知見共有が行われました。

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)を支援し、気候変動、生物多様性など各分野横断型研究に関する国際共同研究及びワークショップが開催され、アジア太平洋地域内の途上国を中心とする研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。

気候変動問題の解決に向けて世界の産官学のリーダーがイノベーションの創出に向けた議論を行い、協力を促進するための国際的プラットフォームである「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の第4回年次総会を2017年10月に開催しました。

3 民間団体等による活動の推進

(1)SDGsに関する取組の推進

SDGsの環境的側面における各主体の取組を促進するため、環境省では2016年から「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催しています。これは、先行してSDGsに取り組む企業、市民団体、研究者や各省庁が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、更には広く国民への広報を行う公開の場です。先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促していくことを目的としています。2017年は、全3回会議を実施しました。うち1回では、取組が国際的に評価されているグローバル企業のトップ層を招き、意見交換を行いました。

SDGsの達成に向けて,優れた取組を行う企業・団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」が創設されました。この表彰制度は、企業・団体等によるSDGs達成に向けた活動が加速度的に拡大している中,企業・団体等の優れた取組を政府全体として表彰することにより,こうした潮流を更に後押ししていくため実施するものです。2017年12月に第1回目の表彰が行われ、「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)表彰」に北海道下川町が選ばれました。また、「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」(2017年12月閣議決定)において、地方創生の一層の推進に当たっては、SDGsの主流化を図り、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、経済、社会、環境の統合的向上等の要素を最大限反映するとし、SDGsの達成に向けた取組の推進が位置付けられました。内閣府では2018年2月から3月にかけて、地方公共団体(都道府県及び市区町村)によるSDGsの達成に向けた取組を公募しました。また、都道府県及び市区町村におけるSDGs達成に向けた取組の割合を、2020年に30%とすることを目標とし、普及促進活動を進めます。

(2)都市間連携等を活用した協力の推進

低炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方自治体等の協力の下、アジア各国の都市との間で、都市間連携を活用し、低炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた低炭素技術の普及支援を実施しました。2017年度は、福島市、富山市、川崎市、横浜市、神奈川県、大阪市、北九州市による18件の取組を支援しました。