環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第2節 国内における取組

第2節 国内における取組

1 「質」にも着目した循環型社会の形成

(1)2Rの取組がより進む社会経済システムの構築

環境保全を前提とした循環型社会の形成を推進すべく、リサイクルより優先順位の高い、2Rの取組がより進む社会経済システムの構築を目指し、国民・事業者が行うべき具体的な2Rの取組を制度的に位置付けるため、2017年度は、サービサイジング、リマニュファクチャリング、シェアリング等の新たな取組を行う事業者からヒアリングを行い、取組状況や課題の把握、事業者のニーズ等について整理を行いました。

市町村等による一般廃棄物の適正処理・3Rの推進に向けた取組を支援するため、市町村の統括的な処理責任や一般廃棄物処理計画の適正な策定及び運用等について引き続き周知徹底を図るとともに、一般廃棄物処理に関するコスト分析方法、有料化の進め方、標準的な分別収集区分等を示す「一般廃棄物会計基準」、「一般廃棄物処理有料化の手引き」、「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」の三つのガイドラインについて、引き続き普及促進を行いました。

容器包装の3R推進に関しては、産業構造審議会及び中央環境審議会において、3R推進団体連絡会による「容器包装3Rのための第二次自主行動計画」(2011年度~2015年度)に基づいて実施されたリデュースに係る取組の状況について、フォローアップが実施されました。包装の環境配慮設計について共通の考え方として、包装の環境配慮設計に関する規格(JIS Z 0130群)が制定され、事業者が包装の設計・製造をする際の手順書等として活用できる手引と消費者が事業者の包装の環境配慮設計の取組を理解し商品選択の際に活用できる事例集を作成し、その活用を推進しました。一方で、2Rの中でも特にリユースを主要な循環産業の一つとして位置付け、リユース品が広く活用されるとともに、リユースに係る健全なビジネス市場の形成につなげるため、リユースびん規格統一化に向けた実態調査・支援やプラスチック搬送用箱の適切な運用・管理に向けた実態調査・支援等を行いました。

食品廃棄物については、フードチェーン全体の改善に向けて、食品関連75業種のうち31業種について食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の発生抑制の目標値を設定し、その発生の抑制に取り組んでいます。また、国全体の食品ロスの発生量について推計を実施し、2014年度における国全体の食品ロス発生量の推計値(約621万トン)を2017年4月に公表するとともに、食品ロスの発生量の推計精度向上のため、市町村による食品ロスの発生量調査の財政的・技術的支援を行いました。

2017年10月には、長野県松本市及び全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会の主催、環境省を始めとした関係省庁の共催により「第1回食品ロス削減全国大会」を松本市で開催し、食品ロスの削減に向けて関係者間の連携を図りました。

長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックを形成するため、長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)に基づき、長期優良住宅の建築・維持保全に関する計画を所管行政庁が認定する制度を運用しています。この認定を受けた住宅については、税制上の特例措置を実施しています。なお、制度の運用開始以来、累計で約81万戸(2017年3月末時点)が認定されており、新築住宅着工戸数に占める新築認定戸数の割合は11.2%(2016年度実績)となっています。

国自らが率先して、3R製品等を調達することも重要であり、環境ラベルに関する情報を提供する「環境ラベル等データベース」に関しては、その掲載情報を随時更新しました。

無許可の廃棄物回収の違法性に関する普及啓発については、第2節6(1)を参照。

ウェブサイト「Re-Style」については、第2節7(1)を参照。

(2)使用済製品からの有用金属の回収

廃棄物の適正処理及び資源の有効利用の確保を図ることが求められている中、小型電子機器等が使用済みとなった場合には、鉄やアルミニウム等の一部の金属を除く金や銅等の金属は、大部分が廃棄物としてリサイクルされずに市町村により埋立処分されていました。こうした背景を踏まえ、小型家電リサイクル法が2013年4月から施行されました。

2016年度に小型家電リサイクル法の下で処理された使用済小型電子機器等は、約6.8万トンでした。そのうち、国に認定された再資源化事業者が処理した使用済小型電子機器等は約5.8万トンであり、そこから再資源化された金属の重量は約3万トンでした。再資源化された金属を種類別に見ると、鉄が約2.7万トン、アルミが約2,000トン、銅が約1,600トン、金が約180kg、銀が約2,300kgでした。

このような中で、使用済製品に含まれる有用金属の更なる利用促進を図り、もって資源確保と天然資源の消費の抑制に資するため、レアメタル等を含む主要製品全般について、回収量の確保やリサイクルの効率性の向上を図る必要があります。このため、低炭素製品普及に向けた3R体制構築支援事業において、車載用リチウムイオン電池から、リチウムやコバルト等の有用金属を回収する実証的な取組等を支援しました。

使用済製品のより広域でのリサイクルを行うため、広域的な実施によって、廃棄物の減量化や適正処理の確保に資するとして環境大臣の認定を受けた者については、地方公共団体ごとに要求される廃棄物処理業の許可を不要とする制度(以下「広域認定制度」という。)の適切な運用を図り、情報処理機器や各種電池等の製造事業者等が行う高度な再生処理によって、有用金属の分別回収を推進しました。

環境研究総合推進費による研究・開発支援として、2016年度に、レアメタル等の有用金属資源の効率的な再資源化のための破砕・選別・分離技術に係る研究・開発と効果的な回収のための社会システムの研究として2件を採択しました。

(3)水平リサイクル等の高度なリサイクルの推進

これまで進んできたリサイクルの量に着目した取組に加えて、社会的費用を減少させつつ、高度で高付加価値な水平リサイクル等を社会に定着させる必要があります。このため、まず循環資源を原材料として用いた製品の需要拡大を目指し、循環資源を供給する産業と循環資源を活用する産業との連携を促進しています。食品リサイクルに関しては、食品リサイクル法の再生利用事業計画(食品関連事業者から排出される食品廃棄物等を用いて製造された肥料・飼料等を利用して作られた農畜水産物を食品関連事業者が利用する仕組み。以下「食品リサイクルループ」という。)認定事業の形成支援を通じて、食品循環資源の廃棄物等の発生抑制・再生利用の取組を促進しました。また、バイオマス活用推進基本計画における食品廃棄物の利用率の目標達成に向け、市町村等による廃棄物系バイオマスの利活用を促進するために、説明会を開催し、2017年3月に策定した「廃棄物系バイオマス利活用導入マニュアル」等の周知を図りました。

食品関連事業者、再生利用事業者、農林漁業者、地方自治体のマッチングの強化や、地方自治体の理解促進等による食品リサイクルループ形成の促進のため、長崎市、豊橋市、千葉市の3か所において、「食品リサイクル推進マッチングセミナー」を開催しました。

リサイクルに関する新技術の開発・普及を目指し、2017年度の環境研究総合推進費による研究・開発支援においては、行政が特に提案を求める重点研究テーマとして「廃プラスチックのリサイクル工程の適正化によるリサイクルの質の向上についての研究」を示し、テーマに合致する研究として2件を採択しました。

中国が2017年12月末から廃プラスチックの輸入を禁止したことを受けて、日本国内の廃プラスチックのリサイクル体制の整備を後押しすべく、プラスチックリサイクルの高度化に資する設備の導入を補助する「プラスチックリサイクル高度化設備緊急導入事業」を実施しました。

ペットボトルに関しては、コンビニエンスストア等における使用済ペットボトルの店頭回収の有効性の検証、社会システム化に伴う環境負荷低減効果、社会的費用の効率化効果について検証しました。

3R推進月間(毎年10月)においては、3R促進ポスター展示、ごみ分別施設見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを行うとともに、「選ぼう!3Rキャンペーン」や3R活動推進フォーラムと共同で実施した「環境にやさしい買い物キャンペーン」を通じ、消費者向けの普及啓発を行いました。

「資源循環ハンドブック2017」等の3R普及啓発、3R推進月間の取組については、第2節7(1)を参照。

(4)有害物質を含む廃棄物等の適正処理システムの構築

安全・安心がしっかりと確保された循環型社会を形成するため、有害物質を含むものについては、適正な管理・処理が確保されるよう、その体制の充実を図る必要があります。

石綿に関しては、その適正な処理体制を確保するため、廃棄物処理法に基づき、引き続き石綿含有廃棄物の無害化処理認定に係る事業者からの相談等に対応しました。

高濃度PCB廃棄物については、JESCO全国5か所のPCB処理事業所にて各地元関係者のご理解とご協力の下、処理が進められています。また、低濃度PCB廃棄物については、廃棄物処理法に基づき、無害化処理認定を受けている事業者及び都道府県知事の許可を受けている事業者により処理が進められています。

その他のPOPs廃棄物については、技術的留意事項の周知や分解実証試験の実施等により、その適正処理を推進しています。また、2016年度よりPOPs廃棄物の制度的措置について具体的な検討を行っています。

化学物質を含有する廃棄物等の有害性の評価や、適正処理に関する技術の開発・普及を目指し、2016年度の環境研究総合推進費による研究・開発支援においては、行政が特に提案を求める重点研究テーマとして「廃水銀処理物の地上管理における長期安定性の検証及び管理基準に関する研究」を示し、水銀等の有害廃棄物の適正管理に関する研究を1件採択しました。

埋設農薬に関しては、計画的かつ着実に処理するため、農薬が埋設されている県における、処理計画の策定等や環境調査に対する支援を引き続き実施しました。

有害物質情報については、国際的動向を含めて情報収集を行うとともに、関係者間での情報共有・意思疎通が図られるよう、リスクコミュニケーションを的確に実施する必要があります。このため、化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)対象物質について、毒性等の情報を分かりやすく簡潔にまとめた「化学物質ファクトシート」を引き続き公表しています。また、市民、労働者、事業者、行政、学識経験者等の様々な主体が、化学物質と環境に関して意見交換を行い、政策提言を目指す場である「化学物質と環境に関する政策対話」を開催し、化学物質に関する国民の安全・安心の確保に向けたリスクコミュニケーションの取組を推進しました。そのほか、化学物質アドバイザー制度を運営し、自治体や事業者が実施する化学物質に係るリスクコミュニケーションの活動を支援しました。

(5)災害時の廃棄物処理システムの強化

2017年は6月下旬から10月にかけて、梅雨前線や台風等により、全国各地で水害が数多く発生しました。これらの水害によって生じた災害廃棄物の迅速かつ適正な処理のため、被害の程度に応じて、環境省の職員や災害廃棄物処理支援ネットワーク(以下「D.Waste-Net」という。)の専門家の現地派遣、(公社)全国都市清掃会議の協力による県内外の自治体等からのごみ収集車や人員の派遣、地方環境事務所によるきめ細かい技術的支援、災害廃棄物処理や施設復旧のための財政支援等を実施しました。

2016年熊本地震による災害廃棄物については、昨年度に引き続き、九州地方環境事務所が中心になって熊本県や被災市町村に対して技術的・財政的支援を実施しました。熊本県が策定した災害廃棄物処理実行計画に基づき、損壊家屋の解体の体制構築、災害廃棄物の広域処理の実施及び熊本県が設置した二次仮置場の稼働等により、着実に処理が進められました。

東日本大震災や近年の災害における経験・教訓により、事前の備えや、大規模災害時においても適正かつ迅速に処理を行うための措置を一層推進する必要性が改めて認識されました。環境省では、災害廃棄物対策推進検討会を開催し、近年の災害廃棄物処理実績の蓄積・検証を実施しています。その成果を活用し、災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための必要事項を整理した災害廃棄物対策指針を改訂しました。さらに、災害廃棄物処理計画の策定や研修等を支援するため、自治体向けのモデル事業を実施しました。

県域を越えブロック全体で相互に連携して取り組むべき課題の解決を図るため、地方環境事務所が中心となって都道府県、市区町村、環境省以外の国の地方支分部局、専門家等で構成される地域ブロック協議会を全国8か所で開催し、地域ブロックごとに広域連携を促進するため、災害廃棄物対策行動計画の策定や共同訓練等を実施しました。さらに、全国規模で災害廃棄物対応力を向上させるため、D.Waste-Netの体制強化や、災害廃棄物対策における技術・システムや災害時の廃棄物処理を見据えた地域間協調の在り方の検討、災害廃棄物対策に係る自治体支援等について、継続的に実施しています。

2 低炭素社会、自然共生社会づくりとの統合的取組

循環型社会の形成推進に当たり、消費の抑制を図る「天然資源」には化石燃料も当然含まれています。循環型社会の形成は、低炭素社会の実現にもつながります。

直近のデータによれば、2014年度の廃棄物由来の温室効果ガスの排出量は、約3,740万トンCO2(2000年度約4,670万トンCO2)であり、2000年度の排出量と比較すると、約20%減少しています。その一方で、2014年度の廃棄物として排出されたものを原燃料への再資源化や廃棄物発電等に活用したことにより廃棄物部門以外で削減された温室効果ガス排出量は、約1,940万トンCO2となっており、2000年度の排出量と比較すると、約2.3倍と着実に増加したと推計され、廃棄物の再資源化や廃棄物発電等への活用が進んでいることが分かりました。2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」や2016年5月に閣議決定した地球温暖化対策計画を踏まえ、廃棄物処理分野からの排出削減を着実に実行するため、各地域のバイオマス系循環資源のエネルギー利用等により自立・分散型エネルギーによる地域づくりを進めるとともに、廃棄物焼却施設等が熱や電気等のエネルギー供給センターとしての役割を果たすようになることで、化石燃料など枯渇性資源の使用量を最小化する循環型社会の形成を目指すこととしています。その観点から3Rの取組を進めながら、なお残る廃棄物等について廃棄物発電の導入等による熱回収を徹底し、廃棄物部門由来の温室効果ガスの一層の削減とエネルギー供給の拡充を図る必要があります。

3Rの取組が温室効果ガスの排出削減につながる例としては、金属資源等を積極的にリサイクルした場合を挙げることができます。例えば、アルミ缶を製造するに当たっては、バージン原料を用いた場合に比べ、リサイクル原料を使った方が製造に要するエネルギーを大幅に節約できることが分かっています。同様に、鉄くずや銅くず、アルミニウムくず等をリサイクルすることによっても、バージン材料を使った場合に比べて温室効果ガスの排出削減が図られるという結果が、環境省の調査によって示されました。これらのことから、リサイクル原料の使用に加え、リデュースやリユースといった、3Rの取組を進めることによって、原材料等の使用が抑制され、結果として温室効果ガスの更なる排出削減に貢献することが期待できます。ただし、こうしたマテリアルリサイクルやリデュース・リユースによる温室効果ガス排出削減効果については、引き続き調査が必要であるともされており、これらの取組を一層進める一方で、継続的に調査を実施し、資源循環と社会の低炭素化における取組について、より高度な統合を図っていくことが必要です。

化石系資源の使用量を抑制するため、低炭素型廃棄物処理支援事業を実施しています。自治体や民間団体(自治体と連携し、廃棄物の3Rを検討する者)に対して、地域資源循環の高度化及び低炭素化に資するFS調査や事業計画策定を支援しました。また、リチウムイオン電池や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の低炭素製品のリユース・リサイクル技術の実証を行う「低炭素製品普及に向けた3R体制構築支援事業」や、高度なリサイクルを行いながらリサイクルプロセスの省CO2化を図る設備の導入支援を行う「省CO2型リサイクル高度化設備導入促進事業」を実施しました。

一般廃棄物処理に関しては、循環型社会形成の推進に加え、災害時における廃棄物処理システムの強靱化、地球温暖化対策の強化という観点から、循環型社会形成推進交付金等により、市町村等が行う一般廃棄物処理施設の整備等に対する支援を実施しました。また、廃棄物焼却施設から排出される余熱等の地域での利活用を促進させるため、「廃棄物焼却施設の余熱等を利用した地域低炭素化モデル事業」を実施しました。さらに、市町村等への技術的支援として、廃棄物エネルギーの高度利用に必要な方策や先進事例を整理した「廃棄物エネルギー利用高度化マニュアル」、市町村等による廃棄物系バイオマスの利活用を促進するための「廃棄物系バイオマス利活用導入マニュアル」等の周知を図りました。加えて、余熱利用がほとんど行われていない処理能力100トン/日未満の中小廃棄物処理施設において廃棄物エネルギーの有効活用を促進するため、先導的な廃棄物処理システム化技術等に係る評価・検証事業を実施しました。

使用済再生可能エネルギー設備(太陽光発電設備、太陽熱利用システム及び風力発電設備)のリユース・リサイクル・適正処分に関しては、2014年度に有識者検討会においてリサイクルを含む適正処理の推進に向けたロードマップを策定し、2015年度にリユース・リサイクルや適正処理に関する技術的な留意事項をまとめたガイドラインを策定しました。また、2014年度から太陽電池モジュールの低コストリサイクル技術の開発を実施し、2015年度からリユース・リサイクルの推進に向けて実証事業や回収網構築モデル事業等を実施しています。また、2017年度から、FIT認定事業者による廃棄等費用の積立てを担保するために必要な施策について、検討を開始しました。

農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりに向けた取組について推進すると同時に、「森林・林業基本計画」等に基づき、森林の適切な整備・保全や木材利用の推進に取り組みました。

海洋環境等については、その負荷を低減させるため、今後も循環型社会を支えるための水産廃棄物等処理施設の整備を推進しました。

港湾整備により発生した浚渫(しゅんせつ)土砂等を有効活用し、深掘り跡の埋戻し等を実施し、水質改善や生物多様性の確保等、良好な海域環境の保全・再生・創出を推進しています。

エコタウン等に関する取組については、第2節3を参照。

下水汚泥資源化施設の整備の支援等については、第2節4を参照。

モーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業については、第2節5(2)を参照。

3 地域循環圏の高度化

地域循環圏の形成に向けては、これまで循環資源の種類に応じて、適正な規模で循環させることができる仕組みづくりを進めてきたところであり、今後はこれらの取組を拡充、発展させ、地域循環圏づくりを具体化させていく必要があります。

地域循環圏構築の先進事例とも言えるエコタウンに関しては、最初の承認から20年が経過したことも踏まえ、それぞれのエコタウン地域におけるこれまでの取組を総括し、主に海外への周知を念頭に置きつつ、情報の収集と整理を行いました。エコタウン承認自治体との間では、情報交換や課題共有のためのネットワークを維持し、各エコタウン自治体による、20年分の経験と資本・人材ストックを活かした先進課題への挑戦を引き続き支援しています。また、地域循環圏の形成に取り組む自治体・民間団体や、エコタウン等において3R事業に取り組む自治体・民間団体を対象に、地域資源の循環利用及び低炭素化に資するモデル的な取組を進めるための実現可能性調査及び同調査を踏まえた事業化計画策定に対する補助事業を実施しました。

浄化槽に関する取組としては、[1]個人が設置する浄化槽設置費用の一部を市町村が助成する事業(浄化槽設置整備事業)及び[2]市町村が個人の敷地内等に浄化槽を設置し、市町村営浄化槽として維持管理を行う事業(浄化槽市町村整備推進事業)に対して財政支援を行いました。特に環境配慮型浄化槽を推進し、単独転換促進施策及び防災まちづくりの施策と組み合わせて総合的に推進する事業(環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備推進事業)や地方公共団体が所有する単独処理浄化槽を集中的に撤去し、合併処理浄化槽への転換を促進する事業(公的施設単独処理浄化槽集中転換事業)を重点的に実施しました。また、浄化槽の整備促進のための民間活用導入や、適正管理に向けた調査検討、浄化槽システムの強靱化に関する調査検討を行いました。

下水道の分野では、下水道革新的技術実証事業において、2015年度に採択されたバイオガスの活用技術1件、2016年度に採択された下水汚泥の肥料化・燃料化技術2件及び2017年度に採択された地産地消エネルギー活用技術1件の実証を行いました。

バイオマスエネルギーの普及に向けた実装については、地球温暖化対策計画に掲げる温室効果ガス排出削減目標の達成に資するため、地方公共団体等に対して、バイオマスを含む再生可能エネルギーの設備導入等を支援する「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」を2016年度から実施しています。加えて、2017年7月に農林水産省と経済産業省による「木質バイオマスの利用促進に向けた共同研究会」の報告書を公表し、森林資源をマテリアルやエネルギーとして地域内で持続的に活用するため、担い手確保から発電・熱利用に至るまでの「地域内エコシステム」の構築に向け、新たな施策の展開を検討していくこととしました。また、バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業においては、バイオマスエネルギー導入に係る技術指針・導入要件の調査を実施し、木質系、湿潤系、都市型系、それぞれのバイオマス産業が地域でビジネスとして健全に自立するための技術指針・導入要件を策定しました。あわせて、実証事業に向けたステージゲート審査において事業性評価を行い、通過した事業については、地域自立システム化に向けた実証事業を行うとともに、バイオマスエネルギー導入に係る技術指針・導入要件への事業性評価や実証事業での知見の反映と国内外の調査を引続き行っています。

製品系循環資源や枯渇性資源を含む循環資源については、より広域での循環のため、廃棄物処理法によって定められた制度等を適切に活用する必要があります。2016年度においては、廃棄物の再生利用で一定の基準に適合しているとして、環境大臣の認定を受けた者について廃棄物処理業や廃棄物処理施設の設置許可を不要とする制度(以下「再生利用認定制度」という。)と広域認定制度に関して、適切な運用を図りました。この結果、産業廃棄物については、2017年3月末時点で、再生利用認定制度では41件、広域認定制度では204件が認定を受けています(広域認定制度については、第2節1(2)を参照)。

「食品リサイクル推進マッチングセミナー」については、第2節1(3)を参照。

農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりについては、第2節2第2節4を参照。

4 循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用

東日本大震災以降、分散型電源であり、かつ、安定供給が見込める循環資源や、バイオマス資源の熱回収や燃料化等によるエネルギー供給が果たす役割は、一層大きくなっています。

このような中で、主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策を推し進めるため、2010年度の廃棄物処理法の改正により創設された、廃棄物熱回収施設設置者認定制度の普及を図るとともに、低炭素型廃棄物処理支援事業を実施しています。2017年度は民間事業者に対して、3件の高効率な廃棄物熱回収施設及び5件の廃棄物燃料製造施設の整備を支援しました。

未利用間伐材等の木質バイオマスの供給・利用を推進するため、ペレット製造設備や木質ペレットボイラー等の整備を支援しました。また、未利用木質バイオマスを利用した発電、熱供給又は熱電併給の推進のために必要な調査を行うとともに、全国各地の木質バイオマス関連施設の円滑な導入に向けた相談窓口・サポート体制の確立に向けた支援を実施したほか、木質チップの乾燥技術の開発・実証など、木質バイオマスの利用拡大に資する技術開発等への支援を6件実施しました。同時に、これらの取組に資する技術の研究開発を進めることも重要です。このため、農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした、地域づくりに向けた取組を支援しました。

これらの取組に資する技術の研究開発を進めることも重要です。ビジネスとして成立するバイオマスエネルギー利用技術の開発を行う、戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(実用化技術開発)においては、草本系固形燃料(ペレット化)(2013年度採択:1件)について、多原料混合での効率的なペレット化技術の開発を実施しました。

廃食油等から作成されたバイオディーゼル燃料の一体的・先進的な流通システムや、技術課題に取り組む地域の主体を支援する「地域バイオディーゼル流通システム実証事業費補助金」において、流通インフラの整備による流通経路の確保、自治体等との連携によるバイオディーゼル燃料利用拡大等を継続し、その規模を拡大していきました。

セルロース系バイオマスからのエタノール製造技術開発に取り組む、セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業において、セルロース系エタノール一貫生産システムの構築のため、前処理・糖化と発酵プロセスの最適な組合せを検証し、パイロットプラントを建設、実証試験を実施しています。エタノール生産技術の開発を行う、バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業においては、燃料用バイオマス高生産植物の評価・改良技術、土壌選別等の植栽技術等を用いた収量アップ等の基盤技術研究、高収率エタノール生産技術開発のための有用微生物の改良及び設計・建設したパイロット設備の稼動による各種スケールアップファクターの把握、安価かつ高活性な酵素生産技術開発のための高活性酵素生産菌の改良及び設計・建設したパイロット設備を用いた各種生産パラメーターの取得を行いました。

あわせて、微細藻類や木くず等のバイオマス原料からのバイオジェット燃料製造技術開発に取り組む、バイオジェット燃料生産技術開発事業において、バイオジェット燃料一貫生産プロセスの開発のため、パイロット規模の設備設計及び建設に着手しました。

下水処理場に生ごみや刈草等の地域のバイオマスを集約して効率的なエネルギー回収を行う取組の推進に向け、2016年3月に策定した下水処理場における地域バイオマスの利活用手法に関するマニュアルを地方公共団体等に周知したほか、下水汚泥資源化施設の整備の支援、下水道資源の循環利用に係る計画策定の推進(社会資本整備総合交付金)、下水道資源の再生利用・エネルギー利用に係る技術実証(下水道革新的技術実証事業におけるバイオガスの活用技術1件、下水汚泥の肥料化・燃料化技術2件、地産地消エネルギー活用技術1件の実証)を実施しました。また、下水道由来肥料等により作られた農作物の愛称を「じゅんかん育ち」として2017年4月に決定し、利用促進を図るとともに、優良取組・効果等を発信するなど、食と下水道の連携に向けた「BISTRO下水道」を推進しました。

循環型社会形成推進交付金、低炭素型廃棄物処理支援事業、廃棄物焼却施設の余熱等を利用した地域低炭素化モデル事業については、第2節2を参照。

5 循環産業の育成

(1)廃棄物等の有効活用を図る優良産廃処理業者の育成

優良事業者が社会的に評価され、不法投棄や不適正処理を行う事業者が淘(とう)汰される環境をつくるために、優良処理業者に優遇措置を講じる、優良性評価制度を2005年度に創設しました。2011年4月からは、更に優良処理業者へのインセンティブを改善した優良産廃処理業者認定制度を運用しています。また、2015年度、2016年度は、産業廃棄物の排出事業者と優良産廃処理業者の参加するフォーラムを開催し、これらの事業者間の連携・協働に向けたきっかけの場を創設するとともに、優良産廃処理業者の情報発信サイト「優良さんぱいナビ」の利便性向上のためのシステム改良を引き続き実施しました。2013年度に国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という。)に類型追加された「産業廃棄物の処理に係る契約」では、優良産廃処理業者が産廃処理委託契約で有利になる仕組みとなっています。環境配慮契約の実施割合は、2013年度が11.7%、2014年度が31.7%、2015年度が39.8%、2016年度が37.2%と推移しています。優良認定業者数については2011年4月の制度開始以降増加しており、2016年度末で1,107事業者となっています。

環境省では、産業廃棄物処理業者が廃棄物の適正処理等の社会的責任を果たしつつ、それ以外にも、地域経済の活性化・雇用の創出等の地方創生に貢献することとなるよう、2017年度に「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」(産業廃棄物処理業の振興方策に関する検討会)を公表しました。同提言においては、労働力人口の減少や環境制約顕在化等の社会経済動向の変化により「悪貨が良貨を駆逐する業界」に後戻りするリスクの高まりを指摘し、それらに対応して産業廃棄物処理業が持続的な発展を遂げるために、処理業者における成長と底上げ戦略の確立と、処理業者を支援するための関係者による方策として[1]先進的優良企業の育成(優良産廃処理業者認定制度の強化と有効活用等)、[2]排出事業者の意識改革(排出事業者責任についての周知等)、[3]意欲ある企業の支援体制整備(環境に配慮した契約・調達の促進等)、[4]優良先進事例のPR・情報発信(産業廃棄物処理業者による地域貢献のサポート等)が掲げられています。

各事業者における、環境マネジメントシステムの導入、環境報告書や環境会計の作成・公表等の取組の促進のため、ISO14001の改定等を踏まえ、中小企業向け環境マネジメントシステムである「エコアクション21」のガイドライン改訂を行い2017年5月に公表しました。また、CO2の排出量算定・排出量削減と環境マネジメントシステムに取り組む中小企業の裾野を拡大するため、「中小企業向け環境経営体制構築支援」の事業を開始しました。さらに、環境報告書の更なる利用促進を図り、企業と投資家等の対話を支援するため、環境情報開示基盤の整備事業を推進するとともに、情報開示の世界的潮流や企業を取り巻くガバナンスの在り方の変容を踏まえ、環境報告等ガイドラインの改定に関する検討会を開催し、環境報告ガイドライン改定案を作成しました。

特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金又は必要経費算入の特例、廃棄物処理施設に係る課税標準の特例及び廃棄物処理事業の用に供する軽油に係る課税免除の特例といった税制措置を活用することにより、廃棄物処理施設の整備及び維持管理を推進しました。

ペットボトルの高度なリサイクル、プラスチック製容器包装廃棄物を原料とした材料リサイクルによる再生品については、第2節1(3)を参照。

(2)静脈物流システムの構築

静脈物流に係る更なる環境負荷低減と輸送コスト削減を目指し、モーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業を実施しています。2017年度は、海上輸送による低炭素型静脈物流システムを構築する事業を3件採択しました。

これまでに22の港湾を静脈物流の拠点となる「リサイクルポート」に指定し、広域的なリサイクル関連施設の臨海部への立地の推進等を行いました。さらに、首都圏の建設発生土を全国の港湾の用地造成等に用いる港湾建設資源の広域利用促進システム(スーパーフェニックス)を推進しており、小名浜港等において建設発生土の受入れを実施しました。

6 廃棄物の適正な処理

(1)不法投棄・不適正処理対策

不法投棄等の未然防止・拡大防止対策としては、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインを運用するとともに、産業廃棄物の実務や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等の現場へ派遣し、不法投棄等に関与した者の究明や責任追及方法、支障除去の手法の検討等の助言等を行うことにより、都道府県等の取組を支援しました。さらに、毎年5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)までを「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」として設定するとともに、国と都道府県等とが連携して、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動、新規及び継続の不法投棄等の監視、海洋環境保全等の取組を一斉に実施しています。2016年度は、全国で4,383件の普及啓発活動や監視活動等が実施されました。

不法投棄等の残存事案対策として、1997年の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成9年法律第85号。以下「廃棄物処理法平成9年改正法」という。)の施行(1998年6月17日)前の産業廃棄物の不法投棄等については、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(平成15年法律第98号。以下「産廃特措法」という。)に基づき、2017年度は12事案の支障除去等事業に対する財政支援を行いました。その他にも廃棄物処理法平成9年改正法の施行以降の産業廃棄物の不法投棄等については、廃棄物処理法に基づく基金からの財政支援を実施しております。

一般廃棄物の適正処理については、当該処理業が専ら自由競争に委ねられるべき性格のものではなく、継続性と安定性の確保が考慮されるべきとの最高裁判所判決(2014年1月)や、市町村が処理委託した一般廃棄物に関する不適正処理事案の状況を踏まえ、2014年10月8日に通知を発出し、市町村の統括的責任の所在、市町村が策定する一般廃棄物処理計画を踏まえた廃棄物処理法の適正な運用について、周知徹底を図っています。

2016年1月に発覚した食品廃棄物の不正転売事案については、食に対する消費者の不安を招く大きな社会問題となったことから、事案発覚時より食品安全行政に関する関係府省庁連絡会議を通して政府全体で取り組んできました。環境省では、2017年6月に、不適正保管されていた食品廃棄物の撤去等が完了し、事案の全容がおおむね明らかになったことを踏まえ、有識者の協力を得て「食品廃棄物の不正転売事案について(総括)」を取りまとめ、公表しました。この中で位置付けた、マニフェスト制度の強化、電子マニフェストシステムの不正防止機能の強化、廃棄物処理業者への対策として監視体制の強化など、排出事業者への対策として排出事業者責任の周知を行い、食品廃棄物の転売防止対策の強化に取り組んでいます。

この食品廃棄物の不正転売事案等を受け、排出事業者が自らの事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で処理すべきことや、処理業者への委託時にその根幹的内容を自らの責任で決定すべきものであることなどの排出事業者責任の重要性について、2017年3月21日に通知を発出したほか、同年6月20日には排出事業者向けのチェックリストを作成し、自治体の他排出事業者等に対して広く周知しました。

産業廃棄物が適正に運搬され、処理されたことを確認するための管理票システムであるマニフェスト制度の電子化の普及に向け、電子マニフェストの普及率50%を目標とした、「電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ」に基づき、研修会、操作講習会を開催したほか、利便性の向上のためのシステム改修等を実施した結果、2017年9月に電子マニフェストの普及率が50.3%となり、目標値を達成しました。

また、廃棄物の不適正処理事案の発生や雑品スクラップの保管等による生活環境保全上の支障の発生等を受け、廃棄物の不適正処理への対応の強化(許可を取り消された者等に対する措置の強化、マニフェスト制度の強化)、有害使用済機器の適正な保管等の義務付けなどを盛り込んだ廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律第61号)が、第193回国会において成立し、2018年4月から一部施行されることになりました。

家庭等の不用品を無許可で回収し、不適正処理・輸出等を行う違法な不用品回収業者、輸出業者等の対策として、自治体職員の知見向上のため、「自治体職員向け違法な廃棄物回収業者対策セミナー」を全国4か所で開催しました。

海洋ごみ対策については、第4章第7節を参照。

船舶の航行に支障を来さないよう、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海・八代海等の閉鎖性海域での漂流ごみの回収を行うとともに、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)等にのっとり、船舶の事故等により発生した浮流油について、油回収装置及び航走拡散等により油の防除を行っています。また、油及び有害液体物質の流出への対処能力強化を推進するため、資機材の整備、現場職員の訓練及び研修を実施したほか、関係機関との合同訓練を実施するなど、連携強化を図り、迅速かつ的確な対処に努めています。そのほか、2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(シップ・リサイクル条約)の条約締結に向けた国内法制化のため、2018年3月に船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案を閣議決定しました。また、条約の早期発効に向け、主要解体国であるインドの早期締結を促す取組として、2017年9月に開催された日印首脳会議において、インドのシップ・リサイクル施設改善プロジェクトへのODAの供与を決定するとともに、両国首脳が条約の早期締結の意思を再確認しました。

全国において「FRP(繊維強化プラスチック)船リサイクルシステム」について廃棄物処理法に基づく広域認定を取得し、2005年度から運用を開始しています。また、全国ブロックごとに地方運輸局、地方整備局、都道府県等で組織する地方廃船処理協議会を開催し、不法投棄された廃FRP船対策やFRP船リサイクルの促進を図るために、情報提供及び意見交換等を実施しました。

(2)最終処分場の確保等

一般廃棄物の最終処分に関しては、ごみのリサイクルや減量化を推進した上でなお残る廃棄物を適切に処分するため、最終処分場の設置又は改造、既埋立物の減容化等による一般廃棄物の最終処分場の整備を、引き続き循環型社会形成推進交付金の交付対象事業としました。また、産業廃棄物の最終処分に関しても、課題対応型産業廃棄物処理施設運用支援事業の補助制度により、2017年度は、廃棄物処理センターが管理型最終処分場を整備する3事業に対して支援することで、公共関与型産業廃棄物処理施設の整備を促進し、産業廃棄物の適正な処理の確保を図りました。

同時に海面処分場に関しては、港湾整備により発生する浚渫(しゅんせつ)土砂や内陸部での最終処分場の確保が困難な廃棄物を受け入れるために、事業の優先順位を踏まえ、東京港等で海面処分場を計画的に整備しました。

陸上で発生する廃棄物及び船舶等から発生する廃油については、海洋投入処分が原則禁止されていることを踏まえ、海洋投入処分量の削減を図るとともに適切に廃油を受け入れる施設を確保する必要があります。「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」を担保する海洋汚染等防止法において、廃棄物の海洋投入処分を原則禁止とし、2007年4月から廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度を導入しました。当該許可制度の適切な運用による海洋投入処分量のより一層の削減に取り組みました。

また、船舶から発生する廃油についても同様に海洋投入処分が原則禁止されていることを踏まえ、廃油処理事業を行おうとする者に対し、廃油処理事業の事業計画及び当該事業者の事業遂行能力等について、引き続き適正な審査を実施しました。

7 循環型社会に向けた的確な情報共有・普及啓発

(1)3Rに関する積極的な情報発信による行動喚起の促進

循環型社会の構築には、企業活動や国民のライフスタイルにおいて3Rの取組が浸透し、恒常的な活動や行動として定着していく必要があります。そのため、国や地方公共団体、民間企業等が密接に連携し、社会や国民に向けて3Rの意識醸成、行動喚起を促す継続的な情報発信等の活動が不可欠です(表3-2-1表3-2-2)。

表3-2-1 3R全般に関する意識の変化
表3-2-2 3Rに関する主要な具体的行動例の変化

これに向けて、第三次循環基本計画で循環型社会形成に向けた状況把握のための指標として設定された、物質フロー指標及び取組指標について、2015年度のデータを取りまとめました。また、各指標の増減要因についても検討を行いました。

国民に向けた直接的なアプローチとしては、「限りある資源を未来につなぐ。今、僕らにできること。」をキーメッセージとしたウェブサイト「Re-Style」を年間を通じて運用しています(図3-2-1)。同サイトでは、循環型社会のライフスタイルを「Re-Style」として提唱し、コアターゲットである若年層を中心に、資源の重要性や3Rの取組を多くの方々に知ってもらい、行動へ結びつけるため、歌やダンス、アニメや動画等と連携した新たなコンテンツを発信しました。また、同サイトと連動して、3Rの認知向上・行動喚起を促進するイベント「Re-Style FES!」を全国7か所で開催したほか、「3R推進月間」(毎年10月)を中心に、多数の企業等と連携した3Rの認知向上・行動喚起を促進する消費者キャンペーン「選ぼう!3Rキャンペーン」を全国のスーパーやドラッグストア等で展開しました。また、企業との新しい連携体制として、同サイトを通じて、相互に連携しながら恒常的に3R等の情報発信・行動喚起を促進する「Re-Styleパートナー企業」を構築しました。

図3-2-1 Re-Styleロゴマーク

3Rに関する法制度やその動向をまとめた冊子「資源循環ハンドブック2017」を4,500部作成し、関係機関に配布したほか、3Rに関する環境教育に活用するなど、一般の求めに応じて配布を行いました。同時に、3R政策に関するウェブサイトにおいて、取組事例や関係法令の紹介、各種調査報告書の提供を行うとともに、普及啓発用DVDの貸出等を実施しました。

国土交通省、地方公共団体、関係業界団体により構成される建設リサイクル広報推進会議は、建設リサイクルの推進に有用な技術情報等の周知・伝達、技術開発の促進、一般社会に向けた建設リサイクル活動のPRを目的として、建設リサイクル技術発表会・技術展示会を毎年実施しており、2017年度は新潟県で開催しました。

我が国は、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)の連携の下、国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、毎年10月を「3R推進月間」と定めており、広く国民に向けて普及啓発活動を実施しました。

3R推進月間には、様々な表彰を行っています。3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰(以下「3R表彰」という。)」(主催:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会)の開催を引き続き後援しました。経済産業省は、リサイクル製品の製造や、生産活動における3Rの取組として1件の経済産業大臣賞を贈りました。国土交通省は、建設工事で顕著な実績を挙げている3Rの取組6件に対して国土交通大臣賞を贈りました。文部科学省は、学校等の教育分野における3Rの優れた取組1件に対して文部科学大臣賞を贈りました。そのほか、製薬企業の事業所等に対しても、1992年度以降、内閣総理大臣賞1件、厚生労働大臣賞19件、3R推進協議会会長賞21件を贈っており、製薬業界においても確実に3Rの取組が定着しています。

環境省は、市民・事業者・行政のパートナーシップを活用した3Rの優れた取組1件に対して環境大臣賞を贈りました。

循環型社会の形成の推進に資することを目的として、2006年度から循環型社会形成推進功労者表彰を実施しています。2017年度の受賞者数は、1個人、5団体、10企業の計16件であり、「第11回3R推進全国大会」式典において、表彰式を行いました。さらに、新たな資源循環ビジネスの創出を支援している「資源循環技術・システム表彰」(主催:一般社団法人産業環境管理協会、後援:経済産業省)においては、経済産業大臣賞1件を表彰しました。これらに加えて、農林水産省は「食品産業もったいない大賞」を通じ、農林水産業・食品関連産業における3R活動、地球温暖化・省エネルギー対策等の意識啓発に取り組みました。

各種表彰以外にも、3R推進ポスター展示、リサイクルプラント見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを3R推進月間中に行いました。同期間内には、「選ぼう!3Rキャンペーン」も実施し、都道府県や流通事業者・小売事業者の協力を得て、環境に配慮した商品の購入、マイバッグ持参など、3R行動の実践を呼び掛けました。

2017年10月には「第12回3R推進全国大会」を沖縄県及び3R活動推進フォーラムと共催し、イベントを通じて3R施策の普及啓発を行いました。同大会式典で環境大臣表彰を行う、3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から約8,700点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しました。

個別分野の取組として、容器包装リサイクルに関しては、国の施策や取組等に係る研修を行い、容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)の活動を支援しました。