環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 地球温暖化等に関する国内対策

第3節 地球温暖化等に関する国内対策

COP19等において、全ての国に対し、COP21に十分先立ち(準備できる国は2015年第1四半期までに)2020年以降のINDCを示すことが招請されました。我が国としても2020年以降の温室効果ガス削減目標の検討を加速化するため、2014年10月に、中央環境審議会地球環境部会2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同専門家会合を立ち上げて検討を行い、2015年4月にはINDCの要綱案を同合同専門家会合において示しました。同年6月には地球温暖化対策推進本部を開催し、INDCの政府原案を取りまとめ、パブリックコメントを経て、同年7月に開催した地球温暖化対策推進本部において、2030年度の我が国の温室効果ガス削減目標を、2013年度比で26.0%削減(2005年度比で25.4%削減)とするとの内容を含む「日本の約束草案」を決定し、同日付で気候変動枠組条約事務局に提出しました。

COP21におけるパリ協定の採択を踏まえ、同年12月に地球温暖化対策推進本部を開催し、「パリ協定を踏まえた地球温暖化対策の取組方針について」を決定しました。その後、同方針の下、2016年5月13日に地球温暖化対策計画を閣議決定しました。約束草案やパリ協定等を踏まえて策定された同計画では、2030年度削減目標の達成に向けて着実に取り組むことに加え、「パリ協定を踏まえ、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。このような大幅な排出削減は、従来の取組の延長では実現が困難である。したがって、抜本的排出削減を可能とする革新的技術の開発・普及などイノベーションによる解決を最大限に追求するとともに、国内投資を促し、国際競争力を高め、国民に広く知恵を求めつつ、長期的、戦略的な取組の中で大幅な排出削減を目指し、また、世界全体での削減にも貢献していく」こととしています。

パリ協定等で2020年までに、今世紀半ばの長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略を提出することが招請されていることなどから、環境省では中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会において、2050年及びそれ以降の低炭素社会に向けた長期的なビジョンについて審議を行い、2017年3月に中央環境審議会地球環境部会において長期低炭素ビジョンを取りまとめました。また、2018年3月には、「技術」のイノベーションはもとより、技術を普及させる「経済社会システム」のイノベーションや、施策を「今」から講じ2040年頃までに大幅削減の基礎を確立することが重要であるといった、長期大幅削減の鍵となるメッセージをまとめた「長期大幅削減に向けた基本的考え方」を環境省として取りまとめました。また、経済産業省では、「長期地球温暖化対策プラットフォーム」を開催し、長期の温室効果ガス削減に向けて、論点を整理し、経済成長と両立する地球温暖化対策の在り方を検討し、2017年4月に長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書として取りまとめました。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進
ア 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

2013年度以降の産業界の地球温暖化対策の中心的な取組である「低炭素社会実行計画」の2016年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施しました。具体的には、[1]目標達成の蓋然性を確保するため、2016年度に実施した取組を中心に各業種の進捗状況を点検し、2020年、2030年の目標達成に向けて着実に対策が実施されていることを確認しました。また、[2]足下の実績や取組だけでなく、業界や部門の枠組みを超えた主体間連携による削減貢献、優れた技術や素材の普及等を通じた国際貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、こうした削減貢献を可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を行いました。2018年3月末までに113業種が2030年を目標年限とする計画を策定しており、自主的取組に参画する業種の日本のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は5割となりました。2016年5月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」においても、低炭素社会実行計画を産業界における対策の中心的役割と位置付けており、2030年度削減目標の達成に向けて引き続き自主的な取組を進め、温室効果ガスのグローバルな排出削減をより一層推進していきます。

産業分野等の事業者に対して、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャル診断の実施、既存ストックからCO2削減効果の高い設備へ更新するための補助、L2-Tech(先導的低炭素技術)情報の収集とリスト化等の取組を行いました。

中小企業におけるCO2排出削減対策の強化のため、低炭素機器導入における資金面の公的支援の一層の充実や、中小企業等の省エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証し、低炭素社会実行計画の目標達成等のために活用するJ-クレジット制度の運営、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、世界で初めて策定した建設機械の燃費基準値を基に、この燃費基準値を達成した建設機械63型式を燃費基準達成型建設機械として認定しました。

農林水産分野においては、2017年3月に策定した農林水産省地球温暖化対策計画に基づき、緩和策として施設園芸等における省エネルギー対策、農地土壌に関連する温室効果ガス排出削減対策、バイオマスの活用の推進、我が国の技術を活用した国際協力等を実施しました。

(イ)業務その他部門の取組

エネルギー消費量が増加傾向にある住宅・ビルにおける省エネ対策を推進するため、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)におけるトップランナー制度に基づき、断熱材・窓(サッシ、複層ガラス)等の建築材料の性能向上を図っています。また、大幅な省エネ性能を実現した上で、再エネの活用により、年間で消費するエネルギー量をまかなうことを目指したビル(ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を進めるため、ZEB設計ガイドラインの作成等を目的とした実証事業を行っています。2015年7月には、大規模非住宅建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務や表示制度等を措置した、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)が公布されました。また、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)、省エネルギー性能に特化した指標である建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の充実・普及を行いました。さらに、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援のほか、環境不動産の形成を促進するための官民ファンドの設置等を行いました。

トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、基準の見直しや対象機器の追加について検討を行い、2017年2月には新たにショーケースに関する基準等を策定しました。また、高効率照明の普及を促進し、その他の照明器具等を含めた更なる効率工場を図るため、電球類及び照明器具に関する基準の検討を進め、2017年3月に総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会照明器具等判断基準ワーキンググループにおいて基準案が取りまとめられました。さらに、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャル診断の実施、既存ストックからCO2削減効果の高い設備へ更新するための補助、L2-Tech情報の収集とリスト化等の取組を行いました。

政府実行計画に基づく取組に当たっては、2007年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施しました。

(ウ)家庭部門の取組

消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及を実施しました。大幅な省エネを実現した上で、再エネにより、年間で消費するエネルギー量をまかなうことを目指し、省エネ性能と住み心地を兼ね備えた住宅(ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及や、省エネリフォームの普及、低炭素型の賃貸住宅の新築、改修を支援しました。また、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第48号)に基づく、低炭素建築物の認定基準の普及・促進を図りました。加えて、2011年度より、各家庭のCO2排出実態やライフスタイルに合わせた、きめ細やかなアドバイスを行う家庭エコ診断制度の創設に向けた基盤整備を行い、2014年度の制度の運営開始以降、2017年度までに約9.1万件の診断を行いました。2015年7月には、住宅の表示制度等を措置した建築物省エネ法が公布されました。

国民一人一人に配慮した無理のない行動変容を促進し、低炭素社会にふさわしいライフスタイルの自発的な変革を創出することを目的として、ナッジを含む行動科学の知見に基づく新たな政策手法の検証を開始しました。具体的には、家庭部門に加え運輸部門や業務部門、また、学校教育や医療・健康等の現場を対象に、電気、ガス、灯油、自動車燃料等の使用に伴うCO2排出実態に係るデータを収集、解析し、省エネアドバイス等の情報をパーソナライズして個別にフィードバックし、低炭素型の行動変容を促しました。また、2017年4月には産学官連携の日本版ナッジ・ユニット(BEST)を発足し、連絡会議を開催して関係者間での議論を行いました。

(エ)運輸部門の取組

自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行いました。また、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する「賢く使う」取組等の交通流対策やLED道路照明灯の整備を行いました。さらに、改正された流通業務の総合化及び効率化に関する法律(物流総合効率化法)(平成17年法律第85号)に基づく総合効率化計画の認定等を活用し、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築を促進しました。そして、共同輸配送、モーダルシフト、大型CNGトラック導入、物流拠点の低炭素化、旅客鉄道を利用した新たな物流システムの構築等の取組について支援を行いました。加えて、港湾の最適な選択による貨物の陸上輸送距離の削減、港湾における総合的な低炭素化等を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主や物流事業者等の連携による優良事業の表彰や普及啓発を行いました。

海運分野については、国際的枠組みづくりと技術研究開発・新技術の普及促進を一体的に推進するため、国際海事機関(IMO)において船舶の燃費規制(2011年7月採択、2013年1月発効)の段階的強化及び燃料消費実績報告制度(2016年10月採択)等の議論を主導するとともに、船舶の省エネ技術の開発支援や省エネ船等の普及促進に取り組みました。さらに、2018年4月に国際海運における温室効果ガス削減戦略を策定するため、温室効果ガスの排出削減目標等の議論を主導するなど、積極的に国際交渉を行いました。

航空分野については、国際民間航空機関(ICAO)において国際航空分野の温室効果ガス排出削減に向けた国際的枠組みづくりの議論を主導するとともに、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や地上動力装置(GPU)の利用促進等の環境に優しい空港(エコエアポート)の推進等を行いました。

(オ)エネルギー転換部門の取組

太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、ガスコージェネレーションやヒートポンプ、燃料電池等、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。さらに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施しました。

電気事業分野における地球温暖化対策については、2016年2月に環境大臣・経済産業大臣が合意し、電力業界の自主的枠組みの実効性・透明性の向上等を促すとともに、省エネ法やエネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)(平成21年法律第72号)に基づく基準の設定・運用の強化等により、2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する2030年度に排出係数0.37kg-CO2/kWhという目標を確実に達成していくために、電力業界全体の取組の実効性を確保していくこととしています。また、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価し、目標が達成できないと判断される場合には、施策の見直し等について検討することとしています。これを受けて、2017年12月、政府としては、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会資源・エネルギーワーキンググループを開催し、電力業界の自主的枠組みの評価・検証を行いました。また、環境省は、2018年3月、電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の2017年度の評価結果を公表しました。さらに、省エネ法に基づく見直し後の電力供給業におけるベンチマーク指標が2017年度に初めて定期報告されたことから、総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会火力発電に係る判断基準ワーキンググループを開催し、事業者の取組状況を確認するとともに、今後の検討課題に係る詳細制度の検討を進めています。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進により化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化や、一酸化二窒素の排出の少ない焼却炉及び下水汚泥固形燃料化施設の普及、下水道革新的技術実証事業における温室効果ガス削減を考慮した汚泥焼却技術の実証を実施しました。

(3)代替フロン等4ガスに関する対策の推進

代替フロン等4ガス(HFC、PFC、SF6、NF3)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象(NF3については2013年からの第二約束期間にて追加)とされています。その排出量の削減に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)に基づき、フロン類の回収及び再生・破壊を進めました。また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。代替フロン等4ガスの中でも、HFCについては、冷凍空調機器の冷媒用途を中心に、CFC、HCFCからHFCへの転換が進行していることから、排出量が増加傾向にあります。また、冷凍空調機器の廃棄時のみではなく、使用中においても経年劣化等により冷媒フロン類が機器から漏えいするため、今後は代替フロン等4ガスの排出量が、冷媒HFCを中心に急増すると見込まれています(図1-3-1)。

図1-3-1 代替フロン等4ガス(京都議定書対象)の排出量推移

このため、2013年3月の中央環境審議会・産業構造審議会の合同会議報告「今後のフロン類等対策の方向性について」において、フロン類の製造から製品への使用、回収、再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制に取り組むことが必要とされたことを踏まえ、従前の特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)を同年6月に改正し、法律名称をフロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)と改め、2015年4月に施行されました。

同改正では、新たにフロン類製造・輸入業者に対するフロン類の転換・再生利用等、フロン類使用製品(冷凍空調機器等)の製造・輸入業者に対するノンフロン又は低GWP(温室効果)の製品への転換を求めるとともに、業務用の冷凍空調機器ユーザーに対しては、定期点検等によるフロン類の漏えい防止等を求めています。また、冷媒の充塡について、登録された業者による適正な実施を求めるとともに、フロン類の再生業を導入しています(図1-3-2)。

図1-3-2 フロン排出抑制法の概要

2017年度は、昨年度に引き続き全国で説明会を実施し、2016年度から始まったフロン類算定漏えい量報告・公表制度等の周知及び結果の公表を行いました。また、廃棄時回収率が10年以上3割程度に低迷していることを踏まえ、中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会・産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策WG合同会議において、フロン類対策のフォローアップを行いました。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)については、京都議定書第二約束期間のルールに則して、森林経営等の対象活動による吸収量について目標を定めています。具体的には、地球温暖化対策計画に基づき、森林吸収源対策により、2020年度に約3,800万トンCO2以上、2030年度に約2,780万トンCO2、都市緑化等の推進により、2020年度に約120万トンCO2、2030年度に約120万トンCO2、農地土壌炭素吸収源対策により、2020年度に708〜828万トンCO2、2030年度に696〜890万トンCO2の吸収量を確保することとしています。

この目標を達成するため、森林吸収源対策として、森林・林業基本計画等に基づき、多様な政策手法を活用しながら、適切な間伐や造林等を通じた健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全、効率的かつ安定的な林業経営の育成に向けた取組、国民参加の森林づくり、木材及び木質バイオマスの利用等を推進しました。また、森林吸収源対策の着実な推進に向けた財源確保について引き続き検討し、市町村が実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、都市・地方を通じて、国民一人一人が等しく負担を分かち合って、国民皆で、温室効果ガス吸収源等としての重要な役割を担う森林を支える仕組みとして、平成30年度税制改正の大綱において、「平成31年度税制改正において、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)を創設する」こととされました。

都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。

2 横断的施策

(1)低炭素型の都市・地域構造及び社会経済システムの形成

都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)に基づく低炭素まちづくり計画策定支援をこれまで16都市に行いました。計画に基づく都市機能の集約を図るための拠点となる地域の整備を都市再生整備事業で行うことにより、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

低炭素なまちづくりの一層の普及のため、温室効果ガスの大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆け的な取組にチャレンジする23都市を環境モデル都市(表1-3-1)として選定しており、各自治体の2016年度の取組評価及び2015年度の温室効果ガス排出量等のフォローアップを行いました。

表1-3-1 環境モデル都市一覧

都市の低炭素化をベースに、環境・超高齢化等を解決する成功事例を都市で創出し、国内外に展開して経済成長につなげることを目的として、2011年度に被災地域6都市を含む11都市を環境未来都市(表1-3-2)として選定しており、それぞれが掲げる未来都市計画につき、2016年度の進捗状況等の評価及び5年間の取組総括を行いました。さらに、地域特性・資源を踏まえた低炭素で災害に強い地域に向けた地域の防災拠点への自立・分散型エネルギーの導入支援を行いました。

表1-3-2 環境未来都市一覧

2017年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金により、工場や家庭等が有する蓄電池や発電設備、ディマンドリスポンス等のエネルギーリソースをIoT技術により統合制御し、電力の需給調整に活用する、いわゆるバーチャルパワープラントの構築に向けた実証事業を行いました。また、2017年度地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金により、工場の未利用排熱、地下水熱等の再生可能エネルギー熱といった地域のエネルギーをその地域で活用する、地産地消型エネルギーシステムの構築支援(事業計画の策定やシステム構築等の支援)を実施し、再生可能エネルギーの更なる普及やエネルギーの効率的な利用を推進しました。

交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する「賢く使う」取組等、交通流対策等を行いました。

再生可能エネルギーの導入に関して、2013年10月から国内初の本格的な2MWの浮体式洋上風力発電の運転を開始し、本格的な運転データ、環境影響・漁業影響の検証、安全性・信頼性に関する情報を収集し、事業性の検証を行いました。2016年度からは、洋上風力発電の事業化を促進するため、施工の低コスト化・低炭素化や効率化等の手法の確立及び効率的かつ正確な海域動物・海底地質等の調査手法の確立に取り組んでいます。

再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業により、地方公共団体等の積極的な参画・関与を通じて各種の課題に適切に対応する再生可能エネルギーの導入を行いました。また、公共施設等先進的CO2排出削減対策モデル事業により、複数の公共施設等が存在する地区内で再エネ設備を導入し、自営線等を整備、電力を融通する自立・分散型のエネルギーシステムを複数構築し、システム間において自己託送等で電力を融通することにより、地区を超えた地域全体でCO2排出削減に取り組む事業の構築を支援しました。

(2)地方公共団体における対策の促進

地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づき、都道府県及び市町村は、地球温暖化対策計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとされ、特に施行時特例市以上の地方公共団体には、地域における再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの推進等盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられています。

このため、地方公共団体実行計画策定マニュアルの改定や地方公共団体職員向けの説明会等を実施するなどして、より多くの地方公共団体が実効的な計画を策定・実施するよう取り組んでおり、2017年10月時点で、施行時特例市以上では100%、施行時特例市未満では25.7%の地方公共団体が計画を策定しました。

全ての都道府県及び市町村は、自らの事務・事業に伴い発生する温室効果ガスの排出削減等に関する地方公共団体実行計画(事務事業編)の策定が義務付けられており、2017年10月時点で83.9%の都道府県・市区町村が計画を策定しました。

これらの地域の計画推進を後押しするため、「地方公共団体実行計画策定支援サイト」や地方公共団体職員向けの掲示板、地方公共団体メーリングリスト等を活用した情報発信を行いました。

2016年度からは、地球温暖化対策計画に掲げる温室効果ガス削減目標の達成に資する再生可能エネルギー設備導入等を補助する「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」と事務事業編に基づくPDCA体制の強化・拡充及び省エネルギー設備導入等を補助する「地方公共団体カーボン・マネジメント強化事業」を実施しました。

「地域における都市機能の集約及びレジリエンス強化を両立するモデル構築事業」により、都市機能の集約による地域の低炭素化と気候変動による影響を加味した防災・減災等のレジリエンス強化を両立させる取組のモデル事例を構築することを目的として、当該取組を実施しようとする地方公共団体を対象に、排出削減に関連する行政計画との整合を図りつつ、地方公共団体実行計画に位置付ける具体的施策について事業計画の策定や実現可能性調査を支援しました。

(3)水素社会の実現

水素は、利用時にCO2を排出せず、製造段階に再生可能エネルギーやCCSを活用することで、トータルでCO2フリーなエネルギー源となり得ることから、脱炭素社会実現の重要なエネルギーとして期待されています。また、水素は再生可能エネルギーを含め多種多様なエネルギー源から製造し、貯蔵・運搬することができるため、一次エネルギー供給構造を多様化させることができ、一次エネルギーのほぼ全てを海外の化石燃料に依存する我が国において、エネルギー安全保障の確保と温室効果ガスの排出削減の課題を同時並行で解決していくことにも大いに貢献するものです。

水素利用については、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車(FCV)の普及が先行しており、導入拡大に向けた支援を行いました。また、水素の供給インフラについても、商用水素ステーションが全国約100か所(2018年3月末時点)、再エネ由来の水素を活用する比較的規模の小さなステーションが全国22か所(2018年3月末時点)で開所するなど、世界に先駆けて整備が進んでいます。さらに、燃料電池バス・燃料電池フォークリフト等の産業車両への導入支援や水素発電の技術開発実証など、水素需要の更なる拡大に向けた取組を進めました。

水素の本格的な利活用に向けては、水素をより安価で大量に調達することが必要です。このため、海外の褐炭等の未利用エネルギーから水素を製造し、国内に水素を輸送する国際水素サプライチェーン構築実証を行いました。また、製造時にもCO2を排出しない、トータルでCO2フリーな水素の利活用拡大に向けては、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の安定化に資する技術として、太陽光発電といった自然変動電源の出力変動を吸収し、水素に変換・貯蔵するPower-to-gas技術の実証や、未利用となっている国内の地域資源(再生可能エネルギー、副生水素、使用済みプラスチック、家畜ふん尿等)から製造した水素を地域で利用する低炭素な水素サプライチェーン構築の実証等を行いました。

一方、水素社会の実現には、技術面、コスト面、インフラ面等でいまだ多くの課題が存在しており、官民一体となった取組を進めていくことが重要です。そのため、2017年12月に開催された第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議にて、水素社会実現に向けて官民が共有すべき方向性・ビジョンを示した、「水素基本戦略」を決定しました。今後、本戦略に沿って、水素社会実現に向けた取組を官民連携の下進めていきます。

(4)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度により、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に、毎年度、排出量を国に報告することを義務付け、国が報告されたデータを集計・公表しています。

全国の1万2,521事業者(1万5,027事業所)及び1,352の輸送事業者から報告された2014年度の排出量を集計し、2017年6月に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は7億1,294万トンCO2で、我が国の2014年度排出量の約5割に相当します。

(5)排出抑制等指針

地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を事業者が行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされています。こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した、排出抑制等指針を策定・公表することとされており、これまでに産業部門(製造業)、業務部門、上水道・工業用水道部門、下水道部門、廃棄物処理部門、日常生活部門において策定しました。

(6)国民運動の展開

2015年度から実施している国民運動「COOL CHOICE」では、賛同企業・団体等の協力を得て、全国津々浦々に低炭素型の「製品」、「サービス」、「ライフスタイル」など、温暖化対策に資する「賢い選択」を促しました。

2016年5月に「COOL CHOICE」をより効果的に展開するため、環境大臣がチーム長となり、経済界、地方公共団体、消費者団体、メディア、NPO、関係省庁等をメンバーとして設置された「COOL CHOICE推進チーム」において、普及啓発の進め方や基本的な方針、実施計画、その他国民の消費生活やライフスタイル転換のための取組について様々なアイディアやアドバイスをいただきました。

また、チームの下に設置された作業グループ(「省エネ家電」、「省エネ住宅」、「エコカー」、「低炭素物流」、「ライフスタイル」)において、各分野ごとの普及啓発の推進について検討し、機動的に活動しました。

夏期には、冷房時の室温を28℃で快適に過ごすライフスタイル「クールビズ」を推奨しました。また、クールビズの一環として、一人一台のエアコン使用をやめ、涼しい場所をみんなで共有する「クールシェア」も呼び掛けました。

冬期には、暖房時の室温を20℃で快適に過ごすライフスタイル「ウォームビズ」を推奨しました。また、家族やご近所同士が一つの部屋や場所に集まったり、気軽に立ち寄りみんなであたたかく過ごせる公共施設等を利用することで、暖房使用によるエネルギー消費を削減する「ウォームシェア」も呼び掛けました。

さらに、通年の取組として、よりCO2排出量の少ない「移動」に取り組む「smart move(スマートムーブ)」を推進し、「エコ」だけでなく、便利で快適なライフスタイルを呼び掛けました。

加えて、CO2削減につながる環境負荷の軽減に配慮した自動車利用への取組として「エコドライブ」も推進しました。自動車業界団体と連携し、自動車販売店向けのエコドライブ教習会を行うなど、環境にもやさしく、安全運転にもつながるエコドライブへの取組を呼び掛けました。

これらの取組のほか、2017年6月21日から7月7日までの間に「ライトダウンキャンペーン」として、全国のライトアップ施設や家庭等の照明を消し、地球のことや未来のことを考えるよう呼び掛けました。特に夏至、七夕(クールアース・デー)を特別実施日とし、多くのライトアップ施設がライトダウンを行いました。

(7)「見える化」等の推進

温室効果ガス排出量の「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、民間事業として実施されている「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」と連携し、「カーボンフットプリントを活用したカーボン・オフセット制度」の運用を通じて温室効果ガス排出量の見える化を促進しています。なお、2018年2月末時点でカーボンフットプリントコミュニケーションプログラムの製品カテゴリールール(PCR)の累計数は108、認定商品数は累計で1,487となっています。また、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄等サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の「見える化」及び削減を促進するため、事業者向けセミナーの開催・個社別算定支援等を行いました。さらに、前述した家庭エコ診断等において、家庭におけるCO2排出量の「見える化」を推進しています。

日本企業の環境性能の高い製品やサービス等が、グローバル市場に導入され、普及することによる世界全体の排出削減貢献の見える化を促進しています。具体的には、「グローバル・バリューチェーン貢献研究会」を立ち上げ、2018年3月に、製品・サービス等の温室効果ガスの削減貢献量を見える化するための基本的な考え方を示した「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン」を策定しました。引き続き、企業活動のグローバル・バリューチェーンを通じた排出削減貢献の取組の透明性向上と取組の更なる拡充を進めていきます。

(8)公的機関の率先的取組

政府における取組として、地球温暖化対策推進法に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」を2016年5月に閣議決定しました。この計画では、2016年度から2030年度までの期間を対象としており、2013年度を基準として、政府全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに40%、中間目標として2020年度までに10%削減するという目標を設定し、LED照明の率先導入等の措置を講ずることとしています。

各府省庁は温室効果ガスの削減に取り組み、2016年度は基準年度である2013年度に比べ4.6%の削減を達成しています。

地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。

(9)税制のグリーン化

環境関連税制等のグリーン化については、低炭素化の促進を始めとする地球温暖化対策のための重要な施策です。

我が国では、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、2012年10月に「地球温暖化対策のための税」が導入されました。具体的には、我が国の温室効果ガス排出量の約9割を占めるエネルギー起源CO2の排出削減を図るため、全化石燃料に対してCO2排出量に応じた税率(289円/トンCO2)を石油石炭税に上乗せするものです。急激な負担増を避けるため、税率は3年半かけて段階的に引き上げることとされ、2016年4月に最終段階への引き上げが完了しました。この課税による税収は、エネルギー起源CO2の排出削減を図るため、省エネルギー対策・再生可能エネルギーの導入に充当されています。

車体課税については、自動車重量税及び自動車取得税におけるエコカー減税や、自動車税及び軽自動車税におけるグリーン化特例(軽課)といった環境性能に優れた車に対する軽減措置が設けられています。

(10)国内排出量取引制度

国内排出量取引制度については、2005年度から2013年度まで、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験を蓄積するため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、2008年度から2013年度まで「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」における試行排出量取引スキームを実施しました。

2010年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度について、地球温暖化対策の柱としつつ、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組等)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

その後、2016年5月に策定された地球温暖化対策計画では、国内排出量取引制度について、「我が国産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組等)の運用評価等を見極め、慎重に検討を行う」とされており、これを踏まえて、海外における制度の動向やその効果等について調査し、検討を行いました。

(11)J-クレジット、カーボン・オフセット

国内の多様な主体による省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用等による排出削減対策及び適切な森林管理による吸収源対策を引き続き積極的に推進していくため、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセット等に活用できるクレジットを認証するJ-クレジット制度を着実に実施しました。また、J-クレジットの対象となるプロジェクトの拡充や認証プロセスの効率化により、制度の円滑な運営を図るとともに、認証に係る事業者等への支援やクレジットの売り手と買い手のマッチング機会を提供するなど制度活用を促進するための取組を強化しました。2018年1月末時点で、J-クレジット制度の対象となる方法論は61種類あり、これまで26回の認証委員会を開催し、太陽光発電設備の導入や森林の整備に関するプロジェクトを中心に415件のプロジェクトを承認しました。J-クレジット制度の活用により、中小企業や農林業等の地域におけるプロジェクトにカーボン・オフセットの資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興が一体的に図られました。

「カーボン・オフセット」とは、市民、企業等が、自らの温室効果ガスの排出量を他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量(クレジット)の購入や、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動の実施等により、排出量の全部又は一部を埋め合わせる仕組みです。また、「カーボン・ニュートラル」は、カーボン・オフセットの深化版として、より広い範囲の排出量を対象とし、排出量の全部を埋め合わせる仕組みです。適切なカーボン・オフセットの普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(2014年3月)に基づき、以下を含む様々な取組を行っています。

(12)金融のグリーン化

温室効果ガスの大幅削減を実現し、低炭素社会を創出していくには、必要な温室効果ガス削減対策に的確に民間資金が供給されることが必要です。このため、金融を通じて環境への配慮に適切なインセンティブを与え、資金の流れをグリーン経済の形成に寄与するものにしていくための取組(金融のグリーン化)を進めることが重要です。

詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(以下「インベントリ」という。)の報告書を作成し、排出量・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関して、条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善等について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

地球温暖化の防止に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進しました。

農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策計画及び農林水産省気候変動適応計画に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を推進しました。

この一環として、2017年8月から、農業分野の温室効果ガス排出削減等に関する研究ネットワークであるグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA)の議長国となり、GRA理事会等を我が国で開催し、海外の研究者とのネットワーク強化を推進しました。

温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、農地土壌等の吸収機能向上技術の開発を推進しました。

農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した栽培・飼養管理技術を推進しました。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種・育種素材の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

気候変動に関する科学的知見を充実させ、最新の知見に基づいた政策を展開するため、引き続き、環境研究総合推進費等の研究資金を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。

気候変動対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、2009年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」(第6章第3節2(1)を参照)は、設計寿命を超えた後も観測を続けており、その観測データの解析により、全球の温室効果ガス濃度分布、排出・吸収量の推定結果、濃度の三次元分布推定データの一般提供を続けています。地球全体の平均温室効果ガス濃度の算出を行い、CO2に加えメタンにおいても季節変動を経ながら年々濃度が上昇している動向を世界で初めて明らかにしました。パリ協定に基づき世界各国が温室効果ガス排出量を報告する際に衛星観測データを利活用できるよう、「いぶき」の観測データからの推計結果と、インベントリからの推定結果について比較・評価を行うとともに、衛星観測データの利用ガイドブックを作成しています。さらに、観測精度を飛躍的に向上させた後継機「いぶき2号」の開発を2012年度から実施しており、2018年度の打上げを目指しています。

4 気候変動の影響への適応策の推進

 気候変動の影響に対処するため、温室効果ガスの排出の抑制等を行う「緩和」だけではなく、既に現れている影響や中長期的に避けられない影響を回避・軽減する「適応」を進めることが求められています。

このため、2015年11月に閣議決定した「気候変動の影響への適応計画」に基づき、地方公共団体や事業者等の取組をサポートする情報基盤として、2016年8月に関係府省庁と連携して構築した「気候変動適応情報プラットフォーム」(事務局:国立研究開発法人国立環境研究所)により気候変動の影響や適応に関する様々な情報を提供しています。さらに、地域での適応の取組を促進するため、国、地方公共団体、地域の研究機関等が参画する「地域適応コンソーシアム」事業を2017年度より3カ年計画で開始し、地域における具体的な気候変動の影響予測や適応策の検討を行っています。

気候変動の影響への適応に関し、関係府省庁が緊密な連携の下、必要な施策を総合的かつ計画的に推進するため、気候変動の影響への適応に関する関係府省庁連絡会議を開催し、2017年10月に「気候変動の影響への適応計画の試行的なフォローアップ報告書」を公表しました。

さらに、適応策の更なる充実・強化を図るため、国、地方公共団体、事業者、国民が適応策の推進のため担うべき役割を明確化し、政府による気候変動適応計画の策定、環境大臣による気候変動影響評価の実施、国立環境研究所を中核とした情報基盤の整備、地域における広域協議会を通じた国と地方の連携促進等の措置を講ずる「気候変動適応法案」を2018年2月に閣議決定し、国会に提出しました。

5 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、オゾン層保護法を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施等を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金等を使用した二国間協力事業、開発途上国の関係者を集めたフロン等対策に関する関係国会議、モントリオール議定書採択30周年及びHFC改正採択記念シンポジウム等を実施しました。

国際会議等において、ノンフロン技術やフロン排出抑制法など、日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-3)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年をもって生産・消費が全廃されることとなっています。

図1-3-3 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理等の適正な管理を進めています。

(3)フロン類の管理の適正化

我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、大幅に削減されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充塡されたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCは京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン排出抑制法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、破壊業者等により適正処理されることとなっています。2016年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-3図1-3-4のとおりです。

表1-3-3 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(2016年度)
図1-3-4 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(2016年度)

フロン排出抑制法には、冷媒フロン類に関して、業務用冷凍空調機器の使用時漏えい対策、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が規定されています。これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知など、フロン類の管理の適正化について、一層の徹底を図っています。