環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保
ア 多国間の枠組みによる連携

(ア)国連を通じた取組

a 2015年9月の国連サミット等の成果を踏まえた取組

2015年9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsの17の目標には、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等、多くの環境関連の目標が含まれました。我が国として、目標達成に向けて、国内の環境政策を推進することはもちろん、G7各国等と緊密に連携し、世界全体でのSDGsの実施に貢献していきます。環境省では、特にSDGsの環境的側面の実施を促進するため、企業等の先行事例を認め合い、更なる取組に弾みをつける「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催していきます。また、国連持続可能な開発会議(以下「リオ+20」という。)で合意された「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み」の6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイルと教育」プログラムの共同リード国として、アジアを始めとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組に貢献します。

b 国連環境計画(UNEP)における活動

UNEPの環境基金への財政的な支援を引き続き行うとともに、リオ+20での合意に基づくUNEPの強化策の実施、2016年5月の第2回国連環境総会(UNEA)で採択された決議の推進のため、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見をいかし、今後とも積極的に貢献します。

UNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)への財政的な支援を引き続き行うとともに、UNEP/IETC及びコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を継続します。

世界適応ネットワーク(GAN)の活動及びアジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を通じて地域及び世界の適応能力の強化に貢献します。

c 国連教育科学文化機関(UNESCO)における取組

国連教育科学文化機関(UNESCO)やアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携して、河川流域における統合水資源管理(IWRM)に係るガイドラインの作成及び研修等を通じて、IWRMの普及・促進に貢献します。

(イ)経済協力開発機構(OECD)における取組

環境政策委員会及び気候変動、化学品、環境保全成果評価等に関する各作業部会への参加を通じ、今後とも経済協力開発機構(OECD)の環境分野における活動に積極的に参画・貢献します。

(ウ)主要国首脳会議(G7サミット)における取組

2016年は日本が議長国であり、G7伊勢志摩サミットやG7富山環境大臣会合等を開催しました。これらの会合の成果を踏まえて、世界全体の環境問題の解決に向けた取組の強化を促進します。

(エ)国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

総会及び理事会への参加、分担金の拠出、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)との共催による訪日研修の実施等を通じ、今後ともIRENAの活動に積極的に参画・貢献します。

(オ)アジア太平洋地域における取組

毎年開催している、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)は、2017年度は第19回を韓国水原市で開催する予定であり、2015年度に策定した優先分野に基づく今後5年間の共同行動計画の進捗を確認し、3か国の環境協力の推進を図ります。また、北東アジア地域環境協力プログラム(NEASPEC)等への参加や、「気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー」の開催を通じ、アジア太平洋地域における気候変動や地球規模の環境保全に関する政策対話の強化に努めます。

(カ)持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に向けた協力

2015年9月に国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたことを受け、これまで推進してきたクリーンアジア・イニシアティブを踏まえ、同アジェンダの実現を視野にアジアという枠に止まらず途上国への環境協力を推進します。

アジア地域における持続可能な都市(ESC)の取組を促進するため、日・ASEANや東アジア首脳会議(EAS)の枠組み等を活用しつつ、アジア各国における環境都市推進プログラムの支援や、各援助機関、国際機関等と協力・連携した低炭素・大気・水・廃棄物等の分野での環境都市の事業を推進し、SDGsの実現を目指し、引き続きアジア地域の環境協力において主導的役割を果たします。

アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップや東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)等の国際機関と連携した取組を推進するとともに、大気汚染対策については、日中韓の政策対話や共同研究を進め、黄砂については、中国、韓国、モンゴル等の関係各国との連携を強化しつつ、国際的なプロジェクト等を推進していきます。

アジア水環境パートナーシップ(WEPA)事業を通じ、関係各国と連携し、情報共有を通じた水環境ガバナンス強化に向けた取組を一層推進します。また、その過程で得られた有益な情報等を収集・整理し、WEPAデータベースを充実させるとともに、これらの情報を基に各国の水環境管理上の進捗度合いや課題に応じたガバナンス改善支援を行います。また、引き続き我が国の優れた水処理技術を活用した海外展開を支援し、我が国企業によるアジア・大洋州諸国への事業展開を通じたアジア・大洋州の水環境改善の実現を図ります。

また、アジア・コベネフィット・パートナーシップの活動への貢献を通じて、アジア諸国の環境政策・開発計画等におけるコベネフィット・アプローチの主流化及びコベネフィット型事業の普及を図ります。

アジア環境的に持続可能な交通(EST)地域フォーラムの枠組みを通じて、参加国と協働しながら、国際連合地域開発センター(UNCRD)と共に、アジア地域におけるESTの実現を目指す取組を進めます。

基礎的な衛生施設、都市の汚水・雨水対策としての下水道の整備や浄化槽等の分散型の汚水処理まで幅広いサニテーションを視野に入れアジア太平洋地域のナレッジ・ハブとして設立された「日本サニテーションコンソーシアム」や、下水道技術の海外への情報発信やプロジェクト形成支援等により本邦企業の海外展開を後押しするためのプラットフォームとして設立された「下水道グローバルセンター」等と連携しながら、我が国の優れた下水道技術や、浄化槽等の分散型の汚水処理システムに関する技術の海外展開により、世界の水と衛生問題の解決に向けた取組を推進します。

北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)等を通じ、周辺諸国と連携して海洋環境保全の取組を進めます。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

2015年12月にフランスとの間で締結した、環境協力覚書に基づき、環境分野におけるセミナー・ワークショップの共催や情報共有、連携を進めます。2016年5月にドイツと発表した、脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する共同声明に基づき、戦略対話やワークショップ等を開催します。

(イ)開発途上国との連携

中国、韓国等との環境保護協力協定に基づく協力、中国等との科学技術協力協定に基づく共同研究・調査、中国、インドネシア両国との合意に基づくコベネフィット・アプローチの推進、中国との合意に基づく中国国内で総量削減を進める上で課題となっている畜産排水処理分野を対象とした技術協力、インドネシア、イラン、モンゴル、シンガポール、ベトナム等との環境政策対話等を行い、戦略的な環境協力を進めます。また、「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」、「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」の開催を通じ、アジア地域における気候変動に関する政策対話の強化に努めます。また、二国間クレジット制度(JCM)パートナー各国と共にJCMをさらに促進します。

ウ 開発途上国の適応支援

2015年11月に閣議決定された我が国の「気候変動の影響への適応計画」に基づいて、インドネシア、モンゴル、太平洋の島嶼(しょ)国における適応計画策定に関連する支援を引き続き実施し、他のアジア太平洋諸国への適応支援の展開を検討します。加えて、引き続きアジア太平洋地域における適応計画策定及び実施等に関する能力開発ワークショップを開催します。また、途上国による適応策の実施をサポートするために、2020年を目途に「アジア太平洋適応情報プラットフォーム」を構築します。

エ 環境と貿易

各種の貿易協定において貿易自由化の環境面でのメリットを最大化し、デメリットを最小化するよう、当該枠組みにおける適切な環境配慮の確保を推進します。

オ 国際的な連携の確保に資する海外広報の推進

国際的に要望の高い英語版行政資料の作成・配布、英語版広報誌の刊行及びインターネットを通じた海外広報を積極的に行います。

(2)開発途上地域の環境の保全

気候変動対策、大気汚染対策、オゾン層保護対策、砂漠化対策、国際河川流域環境管理、生物多様性保全、化学物質管理、廃棄物対策等、地球規模及び広域的問題の解決に対して、積極的に貢献します。その際、二国間協力と多国間協力の連携を強化し、プロジェクト形成機能の強化を図ります。

我が国の経験や技術を活用し、温室効果ガスの排出削減にも配慮しつつ、途上国の環境汚染対策分野における主体的な取組の強化を促し、持続可能な開発を支援します。

また、世界銀行、国連開発計画(UNDP)、UNEP等の国際機関を通じた協力や他のドナー国との連携を進めます。引き続き、独立行政法人国際協力機構(JICA)課題別研修、国別研修等を通じ、途上国を対象とした環境研修も進めていきます。

(3)国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備

地球環境保全等に関する国際的な連携に資するため、アジアを中心とした諸外国の環境の状況や国際機関の環境保全戦略に関する情報収集に努めるとともに、国民の理解と支持を得るため、環境省ウェブサイトを活用した広報等を積極的に行います。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

地球観測に関する政府間会合(GEO)執行委員会のメンバー国として、「GEO戦略計画2016-2025」に基づき、政策決定に必要な情報を創出するため、全球地球観測システム(GEOSS)構築に向けた取組に積極的に貢献します。また、「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」に基づき、関係府省の連携の下、地球観測を行います。

地球環境の監視・観測については、GAW計画を含むWMOの各種計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、GCOS、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加・連携して実施します。

温室効果ガス等の観測・監視に関し、WMO温室効果ガス世界資料センターとして全世界の温室効果ガスのデータ収集・管理・提供業務を、WMO品質保証科学センターとしてアジア・南西太平洋地域における観測データの品質向上に関する業務を、さらにWMO全球大気監視較正センターとしてメタン等の観測基準(準器)の維持を図る業務を引き続き実施します。さらに、黄砂に関する情報及び有害紫外線に関する情報の発表を継続します。

気象の観測・監視に関し、WMOやGCOS等が推進する気候変動の監視等のための総合的な観測システムの運用・構築に積極的に参加するほか、世界各国からの地上気候観測データの入電数状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務やアジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を各国気象機関と連携して推進します。また、異常気象による被害軽減等に貢献するため、アジア太平洋地域の各国気象機関に対し基礎資料となる気候情報を提供するとともに、人材育成への協力等を通じて、域内の各国気象機関の気候情報業務の改善に協力していきます。

さらに、超長基線電波干渉法(VLBI)や全世界的衛星測位システム(GNSS)を用いた国際観測に参画するとともに、験潮・絶対重力観測等と組み合わせて地球規模の地殻変動等の観測・研究を行います。

化学物質についても、東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態の把握を目的とした環境モニタリングにおいて、引き続き主導的役割を果たしつつ、これら地域の国々と連携を図り、POPsモニタリング能力の強化に向けた取組を推進します。また、水銀に関する水俣条約の有効性の評価に資するグローバルな水銀モニタリングの計画づくりに積極的に貢献します。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実、強化

低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)や低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)の経験を活用し、低炭素社会研究に適応の側面も勘案した研究の促進及び情報共有を支援する国際的研究ネットワークの活動を充実させます。

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)においては、引き続き、2015年~2020年を対象とした第4次戦略計画に基づいて、神戸市内のAPNセンターを中核として、地域内の研究活動等の支援を積極的に行います。特に、緩和及び適応の分野での共同研究、能力開発を着実に推進します。

また、気候変動影響に対して脆(ぜい)弱な地域における気候変動への適応について関係機関の能力強化を図るGANやAPANに対し、事務局を担うUNEPや国際機関、各国政府関係機関等のステークホルダーと協力して支援します。

さらに、2015年より開始された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書作成プロセスへの参画や資金の拠出等を通じて世界の気候変動対策に貢献します。気候変動問題の解決に向けて世界の産官学のリーダーが一堂に会し、それぞれの知を結集して議論を行うための国際的プラットフォームである「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の年次会合を開催し、イノベーションの創出に向けた議論を行い、協力を促進していきます。

3 民間団体等による活動の推進

開発途上国の自立的取組の促進のため、地方公共団体、民間団体、事業者等の役割を踏まえた多元的パートナーシップを形成しつつ、厚みのあるきめの細かい協力を推進します。

また、特にアジア地域の低炭素発展に関心を持つ関係者間の協力を促進するために、企業・自治体・研究者、それぞれの連携プラットフォームを確立し、我が国が有する環境技術や知見をアジア地域に展開できるように引き続き支援します。

(1)都市間連携等を活用した協力の推進

地方自治体の協力の下、都市間連携を活用したJCMを通じて優れた低炭素技術の普及支援を引き続き推進します。また、地方公共団体等がJICAと連携して行う草の根協力事業の活用を進めます。

(2)民間の活動

外務省の日本NGO連携無償資金協力、NGO事業補助金、JICAの草の根技術協力等の既存の支援策を活用し、途上国の環境問題の改善を引き続き推進します。