環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第4章>第6節 海洋環境の保全

第6節 海洋環境の保全

1 海洋汚染等の防止に関する国際的枠組みと取組

ロンドン条約1996年議定書を国内担保する海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)に基づき、廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度等の適切な運用を引き続き行います。船舶バラスト水規制管理条約の発効(2017年9月予定)に向け、バラスト水処理装置の審査等を着実に実施します。

油、危険物質及び有害物質による汚染事故に対応するため、油濁事故対策協力条約(以下「OPRC条約」という。)及び「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に対する準備、対応及び協力に関する議定書(以下「OPRC-HNS議定書」という。)」といった国際条約並びに国家的な緊急時計画に基づき、汚染事故に対する準備・対応体制の整備を進めるとともに、国際的な連携の強化、技術協力の推進等にも取り組みます。また、環境保全の観点から汚染事故に的確に対応するため、汚染事故により環境上著しい影響を受けやすい海岸等に関する情報収集等を行います。北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の活動への積極的な参加や支援を通じて、同海域における海洋環境に係るデータの集積及び海洋汚染の原因等の科学的解明への貢献、国際協力体制の構築等の推進を図ります。具体的には、NOWPAPの枠組みにおいて、引き続き、日本海及び黄海の富栄養化の状況を広域にわたって把握するための試験的評価の活動を継続するとともに、海洋生物多様性を保全する上で課題となる富栄養化や外来生物、生息地の改変の影響に関する評価を進めていきます。また、人工衛星を利用したリモートセンシング技術を活用して、モデル海域における藻場の分布状況の調査等を行う予定です。

2 排出油等防除体制の整備

環境保全の観点から油等汚染事件発生に的確に対応するため、OPRC条約、OPRC-HNS議定書及び国家的な緊急時計画に基づき、緊急措置の手引書の備付けの推進並びに地方公共団体、民間団体等に対する研修・訓練の実施、傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、脆(ぜい)弱沿岸海域図の情報の更新等を推進します。

大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行います。また、油防除・油回収資機材の整備を推進するとともに、油汚染防除指導者養成のための講習会を実施する民間団体に対して補助を行うとともに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を実施します。加えて、沿岸域における情報整備として、沿岸海域環境保全情報の整備を引き続き行い、情報の充実を図ります。

3 監視等の体制の整備

海洋環境の保全を目的として、海洋基本計画(2013年閣議決定)に基づき、領海、排他的経済水域における海洋環境の状況の評価・監視のため、海洋環境モニタリングを行い、日本周辺海域の海洋環境の現状の把握に努めます。

また、東京湾・伊勢湾・大阪湾における海域環境の観測システムを強化するため、各湾でモニタリングポスト(自動連続観測装置)により、水質の連続観測を行います。

4 海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)対策

美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)及び同法の参議院附帯決議並びに同法を受けて閣議決定された基本方針に基づき、漂着ごみ対策の総合的かつ効果的な推進に努めます。

海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)の回収・処理や発生抑制対策の推進のため、引き続き、地方自治体への財政支援を実施します。さらに、異常に堆積した海岸漂着ごみや流木等が海岸保全施設の機能を阻害することとなる場合には、その処理をするため、災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業による支援も行います。

漂流ごみについては、船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び有明海・八代海等の閉鎖性海域において、海域に漂流する流木等のごみの回収を行います。

また、海岸や沿岸、沖合海域において、近年、生態系を含めた海洋環境へ与える影響が懸念されているマイクロプラスチックを含む海洋ごみの組成や分布密度等を定量的に把握するため、モニタリングを実施します。とりわけ、マイクロプラスチックについては、日本近海に加え、日本から南極に至る広範な海域において、分布状況の調査を行うこととし、マイクロプラスチックに吸着しているPCB等の有害化学物質の量を把握するための調査を進めます。2017年度からは、調査海域を拡大し、本州・九州等の近海に加え、我が国南方海域等における東アジア等由来の海洋ごみの実態把握を進めます。

さらに、外国由来の海洋ごみ問題の削減へ向けた国際協力・連携の推進のため、二国間又はG7、UNEP、NOWPAP、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)等の多数国間の枠組みを通じて、関係国の施策に係る情報交換を行うとともに、政策対話等の実施に取り組みます。