環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第2章>第4節 地球規模の視野を持って行動する取組

第4節 地球規模の視野を持って行動する取組

1 愛知目標の達成に向けた国際的取組への貢献

(1)生物多様性条約

愛知目標や「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(Access and Benefit-Sharing)に関する名古屋議定書」(以下「名古屋議定書」という。)を始めとする生物多様性条約第10回締約国会議(COP10。以下、締約国会議を「COP」という。なお、本章における締約国会議(COP)は、生物多様性条約締約国会議を指す。)の決定事項の実施に向けた取組を進めます。具体的には、関係省庁間で2016年10月に取りまとめられた愛知目標達成のために今後一層の加速の必要がある施策を進めていきます。また、2016年12月にメキシコ・カンクンで開催されたCOP13までの結果も踏まえ、生物多様性の主流化の更なる実施や、2020年以降の生物多様性に係る世界的な目標設定に向けた国際的な議論にも積極的に貢献していきます。

さらに、2020年までの地球規模での愛知目標の達成や条約の実施に向け、途上国の能力養成等を目的とした「生物多様性日本基金」を通じた支援を行うなど、条約事務局及び関連国際機関と協力して、国際的な取組に引き続き貢献していきます。

(2)名古屋議定書

COP10において採択された名古屋議定書については、2017年1月に国内措置案が取りまとめられたこと及び2017年2月24日にその締結について国会の承認を求めることを閣議決定したことを踏まえ、早期締結を目指すとともに、締結した場合の円滑な国内措置の実施に向け関係省庁間で連携して取組を進めます。また、締結後には、名古屋議定書の実施に向けた国際的な議論にも積極的に参加します。

(3)カルタヘナ議定書及び名古屋・クアラルンプール補足議定書

カルタヘナ議定書が適切に実施されるよう、開発途上国の体制整備を支援するとともに、2017年2月24日に、名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について国会の承認を求めることを閣議決定したところであり、早期締結を目指します。

2 自然資源の持続可能な利用・管理の国際的推進

(1)SATOYAMAイニシアティブ

二次的な自然環境における自然資源の持続可能な利用と、それによる生物多様性の保全を推進するための取組である「SATOYAMAイニシアティブ」を推進するため、「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)」の下でマレーシア・コタキナバルでアジア地域会合を開催するなど、国内外の活動を促進します。

(2)ワシントン条約

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の適切な執行に向けた取組を推進します。また、関係省庁及び関連機関が連携・協力して、野生動植物の違法取引の防止及び摘発に努めます。

(3)保護地域に係る国際的な取組

国立公園等の保護地域に関するアジアの連携のための枠組みである「アジア保護地域パートナーシップ」の下で、保護地域管理に係るワークショップ開催等を実施していきます。

3 生物多様性に関わる国際協力の推進

(1)ラムサール条約

特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)の決議等を参考にしながら関係する地方自治体やNGO等と連携しつつ、条約湿地のモニタリング調査や、風土や文化をいかした各条約湿地の保全と賢明な利用を推進します。また、東南アジアにおける国際的に重要な湿地の保全のための協力を引き続き実施します。

(2)アジア太平洋地域における渡り性水鳥の保全

東アジア・オーストラリア地域の渡り性水鳥及びその生息地の保全を目的とする国際的連携・協力のための枠組み「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)」を活用して、関係国政府や国際機関等と連携して、保全活動の一層の推進に努めます。EAAFPの下に設置されている渡り性水鳥重要生息地ネットワークの国内参加地における普及啓発や情報交換等を引き続き推進するとともに、渡り性水鳥の保全上重要な生息地についてネットワークへの参加を推薦します。

(3)二国間渡り鳥条約・協定

米国、ロシア、オーストラリア、中国及び韓国との二国間の渡り鳥条約等に基づき、ズグロカモメの渡りの経路に関する共同調査等を実施するとともに、渡り鳥の保全施策や調査研究に関する意見や情報の交換を行います。

(4)国際的なサンゴ礁保全の取組

国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)等の枠組みを活用し、各国の取組について情報を共有するなど国際的なサンゴ礁保全の取組に積極的に貢献します。

(5)持続可能な森林経営と違法伐採対策

世界の森林の保全と持続可能な経営の推進を目指し、国連森林フォーラム(UNFF)における国際対話、違法伐採及び関連する貿易に関する議論、国際熱帯木材機関(ITTO)等の国際機関を通じた国際協力の推進等に努めます。

4 世界的に重要な地域の保全管理の推進

(1)世界遺産条約

屋久島、白神山地、知床及び小笠原諸島は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)に基づき、自然遺産として登録されています。これらの自然遺産について、地元の意見と科学的な知見を管理に反映させるための管理体制と保全施策の充実を図るとともに、関係省庁、地方公共団体、地元関係者及び専門家の連携により、適正な保全・管理を進めます。また、大規模な噴火活動により、陸地が大きく拡大し、その大部分が溶岩に覆われた小笠原諸島の西之島について、生態系の形成過程をごく初期段階から観測できる希少な場所となっていることから、今後の保全手法を検討するための調査を実施します。

新たに世界自然遺産の推薦を行った奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島については、2018年の遺産登録を目指し、世界遺産委員会の諮問機関による調査を受け入れるとともに、世界的に優れた自然環境の価値を保全するために必要な取組を、関係省庁、地方公共団体、地元関係者及び専門家の連携により進めます。

(2)生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)

地域コミュニティを主体とした持続可能な地域づくりを後押しする生物圏保存地域(BR)について、その仕組みを活用した新たな施策、協働の取組等を、引き続き自治体を含む関係者と連携して検討・実施します。また、新規登録を目指す自治体に対する情報提供、助言等を行います。

(3)ユネスコ世界ジオパーク

ユネスコ世界ジオパークに認定されている国内の8地域全てに自然公園法に基づく国立・国定公園の区域が含まれており、国立・国定公園の適正な保護は、ジオパークの地形・地質の保護において重要な役割を果たしています。

そのため、国立公園における地形・地質等の保護、ジオパークと連携した公園施設整備等を推進するとともに、ジオパークの利活用を推進する機関と連携したエコツアーの実施、環境教育のプログラムづくり等を行い、ユネスコ世界ジオパークに関係する取組を支援します。

(4)世界農業遺産等

世界農業遺産及び日本農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形作られてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性等が一体となった重要な農林水産業システムを認定するものです。今後は、候補となる地域の掘り起こしを行うとともに、認定地域の情報発信を行います。

(5)砂漠化への対処

砂漠化対処条約(UNCCD)に関する国際的動向を踏まえつつ、同条約に基づく取組を推進します。具体的には、砂漠化対処のための技術の活用に関する調査等を進めます。また、二国間協力や、民間団体の活動支援等による国際協力の推進に努めます。

(6)南極地域の環境の保護

南極地域の環境保護を図るため、観測、観光等に対する確認制度等を運用し、普及啓発を行うなど、「環境保護に関する南極条約議定書」及びその国内担保法である南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)の適正な施行を推進します。2005年6月の南極条約協議国会議で採択された環境上の緊急事態に対する責任について定めた南極条約環境保護議定書附属書について、引き続き対応を検討します。また、毎年開催される南極条約協議国会議に参加し、南極における環境の保護の方策について議論を行います。