環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第1章>第2節 地球温暖化に関する国内対策

第2節 地球温暖化に関する国内対策

温室効果ガス削減目標を柱とする日本の約束草案やパリ協定等を踏まえ、事業者、国民等の各主体が取り組むべき対策や国の施策を明らかにした、地球温暖化対策計画(2016年5月閣議決定)に基づき着実に取組を進めます。また、パリ協定等では、長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略を作成し、提出することが招請されており、また、G7伊勢志摩サミット首脳宣言の中では、2020年の期限に十分に先立って同戦略を策定し、通報することにコミットしていることから、これらを踏まえた対応をしていきます。政府としても率先して地球温暖化対策に取り組むため、政府実行計画に基づく温室効果ガスの削減取組を進めます。低炭素型の製品への買換え、サービスの利用、ライフスタイルの選択など温暖化対策に資する賢い選択を促す国民運動「COOL CHOICE」を強化し、多様な主体が連携しつつ、情報発信、意識改革、行動喚起を更に進めていきます。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収、気候変動の影響への適応等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進
ア 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

産業界の地球温暖化対策の中心的な取組であった自主行動計画については、これまで十分に高い成果を上げていると評価されています。2013年度以降の新たな計画である「低炭素社会実行計画」においては、経済的に利用可能な最善の技術(Best Available Technology、以下「BAT」という。)の最大限の導入等を前提として、国内の事業活動における2020年のCO2排出削減目標を立てるとともに、低炭素製品・サービス等による業務・運輸・家庭等他部門での削減、技術移転等を通じた国際貢献、革新的技術の開発といった取組についても、「削減ポテンシャル」として可能な限り定量的に示して、世界のCO2排出削減に貢献することを促しています。

また、日本の約束草案の決定に先立って、2015年4月には、一般社団法人日本経済団体連合会が2030年を目標年限とする経団連低炭素社会実行計画(フェーズII)を発表し、政府としても各業界の計画策定を慫慂(しょうよう)してきました。2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」においても、低炭素社会実行計画を産業界における対策の中心的役割と位置付け、2030年度削減目標の達成に向けて引き続き自主的な取組を進めていくこととしています。現在、115業種がこの自主的取組に参画しており、省エネルギー対策の推進を始めとして、国内・自社の削減の取組に閉じず、グローバルでバリューチェーンを通じた削減取組等、各業界の特徴・良さをいかした対策を盛り込んでいます。産業界における対策の中心的役割として引き続き事業者による自主的取組を進めるとともに、政府としても、計画の透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、関係審議会等による厳格かつ定期的な評価・検証を実施します。また、今後より多くの業種の参加促進や、審議会における業種横断的な意見交換を通じたベストプラクティスの共有化、国内外に向けた各業種の取組内容の積極的な発信等の改善を図っていきます。

産業分野を中心として、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャルの診断の実施やCO2削減効果の高い設備への更新等多様な施策を展開することで、企業の積極的な地球温暖化対策を促進します。

また、部材の軽量化等によるCO2の大幅削減が期待できるセルロースナノファイバー等の次世代素材の早期の社会実装を推進します。このため、メーカー等と連携し、製品等活用時の削減効果検証や製造プロセスの低炭素化の検証等を実施します。

農林水産分野における温室効果ガス排出削減に貢献するため、温室効果ガス排出削減技術の検証等への支援や施設園芸における省エネ設備の導入支援、施肥の適正化、木質バイオマスの化石燃料代替利用による排出削減、省エネルギー性能に優れた漁業用機器の導入支援等を推進します。

(イ)業務その他部門の取組

2016年施行の建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)について、適合義務や届出等の円滑な施行に向け、基準や手続の周知を行い、環境整備を実施します。さらに、建築物省エネ法に基づく表示制度の周知・普及を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)に基づく低炭素建築物の普及促進、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省エネ改修促進税制の活用及び省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援により、建築物の省エネ化・低炭素化を促進します。トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、対象機器の追加を検討するとともに、既に対象となっている機器の基準の見直しについて検討します。また、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、CO2削減ポテンシャルの診断の実施や、環境省におけるL2-Tech(先導的低炭素技術)の普及促進、CO2削減効果の高い設備への更新等の多様な施策について、更なる推進を図ります。

政府実行計画に基づく取組に当たっては、2007年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、政府の温室効果ガス排出量に大きく関連する電気の供給契約や自動車の購入及び賃貸借に係わる契約等6分野を中心に、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施します。

(ウ)家庭部門の取組

2016年施行の建築物省エネ法に基づく表示制度の周知・普及を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の普及促進や、2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」において取りまとめられた、省エネ基準適合義務化等の住宅・建築物の低炭素化に向けた推進方策について、住宅・建築物における対策の強化を図っていきます。また、消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及を行います。さらに、ゼロエネルギー住宅の建設や、低炭素型の賃貸住宅の新築、改修に対する支援等を行うほか、既存住宅に係る特定の改修工事(高断熱窓への取替え等の一定の省エネ改修工事等)をした場合の所得税額の特別控除制度を引き続き実施します。また、製造事業者等による省エネルギー性能の品質表示制度を円滑に実施するとともに、その省エネルギー効果について各種媒体を活用した周知徹底を行うこととし、住宅リフォーム時に導入可能な各種省エネ対策について普及啓発を行います。加えて、家庭における着実な省エネ対策等を実行し、低炭素なライフスタイルへの変革を促すため、家庭エコ診断制度の促進を図ります。こうした取組と連携しながら、国民一人一人に地球温暖化の深刻な状況を伝えて危機意識を持ってもらうとともに、低炭素型の製品・サービス・ライフスタイルの具体的なアクションの選択肢とメリットを示していくために、COOL CHOICE(賢い選択)をスローガンとした国民運動に取り組みます。

(エ)運輸部門の取組

自動車単体対策のみならず、交通流対策、エコドライブ等の自動車利用の効率化対策等も含めた総合的アプローチを推進します。世界最高水準の自動車単体対策の実現を目指すとともに、燃費性能の優れた自動車やクリーンエネルギー自動車の普及等の対策を推進します。あわせて、道路整備に伴って、いわゆる誘発・転換交通が発生する可能性があることを認識しつつ、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する「賢く使う」取組等の交通流対策やLED道路照明灯の整備を推進します。また、利用環境改善促進等事業により、バリアフリー化されたまちづくりの一環として、地域公共交通の利用環境改善を促進するために、より制約の少ない交通システムである次世代型路面電車システム(LRT)の導入等に対して支援します。

物流分野に関しては、引き続き、改正された物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の認定等を活用し、荷主、物流事業者の協働による取組を支援します。さらに、自動車輸送から内航海運又は鉄道による輸送への転換、トラック等による共同輸配送、オープン型宅配ボックス等を利用した宅配再配達の削減、都市鉄道等の旅客鉄道を利用した新たな物流システムの構築、営業倉庫等の物流拠点における低炭素化、港湾の最適な選択による貨物の陸上輸送距離の削減、港湾における総合的な低炭素化等を推進することにより、物流体系全体のグリーン化を促進します。また、トラック輸送の更なる効率化のため、ITを活用した「賢い物流管理」を推進します。

海運分野については、我が国の高い技術力を背景に船舶からのCO2排出規制に関する国際的枠組みづくりを推進し、国際競争力を強化しつつ、CO2排出の大幅な削減対策を実施するとともに、省エネ船舶等の普及促進により、低炭素化を推進します。また、鉄道分野においては、鉄道の更なる低炭素化を図るため、CO2排出削減、省エネ効果が期待される燃料電池車両の技術開発を推進するとともに、鉄道駅や運転司令所等への先進的な省エネ機器等の導入に係る支援(エコレールラインプロジェクト)を実施し、鉄道の省電力化、低炭素化技術の普及を図ります。さらに、航空分野においては、空港における減エネ・CO2削減対策等を推進させ、航空分野におけるCO2排出削減を図ります。

(オ)エネルギー転換部門の取組

原子力発電に関しては、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、福島の再生に全力を挙げるとともに、事故の原因や原子炉内の状況を踏まえ、このような事故の再発の防止のための努力を続けていかなければなりません。また、再生可能エネルギーを利用するための設備の導入促進等、必要な施策を講じます。また、ガスコージェネレーションや燃料電池、ヒートポンプ等、エネルギー効率を高める設備等の更なる普及も推進していきます。さらに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施します。

電気事業分野における地球温暖化対策については、電力業界の自主的枠組みの実効性・透明性の向上等を促すとともに、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)やエネルギー供給構造高度化法に基づく基準の設定・運用の強化等により、電力業界全体の取組の実効性を確保していきます。また、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価し、省エネ法等に基づき必要に応じて指導を行うこととしています。また、目標の達成ができないと判断される場合には、施策の見直し等について検討することとしています。これらを踏まえ、政府としては、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会資源・エネルギーワーキンググループにおいて、電力業界の自主的枠組みにおける取組等をフォローアップし、引き続き実効性・透明性の向上を促すとともに、掲げた目標の達成に真摯に取り組むことを促します。また、環境省は、電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価を行います。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化、下水汚泥の燃焼の高度化等を引き続き推進します。

(3)代替フロン等4ガスに関する対策の推進

「地球温暖化対策計画」に掲げられた2030年における代替フロン等4ガスの排出量目標である2,890万 トンCO2(2013年比▲25.1%)を達成するため、産業界の計画的な取組の推進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、冷媒として機器に充填(てん)されたHFCの法律に基づく回収等の施策を、引き続き実施します。

具体的には、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)によるフロン類の使用の合理化(ノンフロン・低GWP(温室効果)製品の導入促進等)及び管理の適正化(冷媒フロン類の使用時漏えい対策、回収の徹底等)、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)及び使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号)に基づくフロン類回収の徹底、冷凍冷蔵機器等のノンフロン化を更に推進するための普及啓発等に取り組みます。また、代替物質を使用した製品等の技術開発支援及びその利用を促進するための省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入補助等を推進します。

特に、フロン排出抑制法については、フロン類の製造から使用、回収、再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制を目指し、2013年に法律を改正し、名称を改め、2015年4月から施行されたもので、都道府県等の関係者と連携し、その確実な運用に努めます。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

森林吸収量(1990年以降に森林経営活動等が行われた森林の吸収量)については、2015年12月に気候変動枠組条約に基づき提出された我が国の報告書において、京都議定書第二約束期間の土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)のルールに則して、対象となるLULUCF活動実施による吸収量を活用することとしています。具体的には、2020年度において、森林経営による吸収量は、約3,800万トンCO2以上(一定の前提を置いて試算)、植生回復による吸収量は約120万トンCO2の確保が目標とされています。また、農地土壌吸収源による純吸収量は約770万トンCO2が見込まれています。

この目標を達成するため、森林・林業基本計画に基づき、健全な森林の整備や保安林等の適切な管理・保全、効率的かつ安定的な林業経営の育成、国民参加の森林づくり、木材及び木質バイオマスの利用拡大等の森林吸収源対策を推進します。

また、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう、国全体としての財源確保を引き続き検討します。

そのほか、都市における吸収源対策として、引き続き都市公園整備、道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進します。

さらに、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の活用に向けた取組等を実施します。また、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援も行います。

(5)気候変動の影響への適応策の推進

政府全体として気候変動の影響への適応策を計画的かつ総合的に進めるため、目指すべき社会の姿等の基本的な方針と、基本的な進め方、分野別施策の基本的方向、基盤的施策及び国際的施策を定めた、政府として初の気候変動の影響への適応計画を2015年11月に閣議決定しました。本計画に基づき、引き続き適応の取組を実施します。

気候変動の影響に対して講じられる適応策は、地域の特性を踏まえるとともに、地域の現場において主体的に検討し、取り組むことが重要となるため、気候変動適応情報プラットフォームにおいて、地方公共団体等が活用しやすい形での情報提供等を引き続き行います。また、国、地方公共団体、地域の大学・試験研究所等の研究者との連携を強化するため、地域適応コンソーシアムを立ち上げ、地域における適応に関する取組も引き続き支援します。

2 横断的施策

(1)低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)、都市の低炭素化の促進に関する法律等に基づく低炭素都市づくり関連施策の集中投入、「環境モデル都市」や「環境未来都市」における取組を各府省の連携・協力の下で促進するとともに、「環境未来都市」構想推進国際フォーラムや「環境未来都市」構想推進協議会等を通じた成果の情報共有等により、施策の効果の最大化を図るなど、低炭素都市づくりを推進します。

その際、地方公共団体実行計画(区域施策編)と整合のとれた地域の戦略的な再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入等を支援することで、地域の温室効果ガス排出削減を後押しします。また、引き続き、低炭素なまちづくりの推進のためのモデル事業や支援を実施します。

さらに、将来的なトータルでのCO2フリー水素(再生可能エネルギー由来水素等)を活用した水素社会の実現への取組も含め、低炭素社会の実現に向けた様々な取組を進めます。

(2)地方公共団体における対策の促進

地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画(事務事業編・区域施策編)の策定・実施を一層推進するため、同計画の内容の分析を進めるとともに、地方公共団体の担当者等を対象とした地方公共団体実行計画(事務事業編・区域施策編)策定マニュアルの説明会等を開催する予定です。加えて、「地方公共団体実行計画策定支援サイト」(http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/(別ウィンドウ))や地方公共団体職員向けの掲示板等を活用し、地域の計画推進に役立つ有益な情報を定常的に発信します。

また再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入等、地方公共団体実行計画(区域施策編・事務事業編)の取組の強化に向けた支援を行うことで、地域の温室効果ガス排出削減を促します。

(3)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

地球温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に、毎年度、排出量を国に報告することを義務付け、国がそれを集計して公表しています。当該制度を引き続き着実に実施するとともに、IPCCガイドラインに基づく適切な見直しや、排出量情報等の正確な報告、迅速な集計と公表等により、事業者におけるより積極的な温室効果ガスの排出抑制の促進を図ります。

(4)排出抑制等指針

地球温暖化対策推進法第21条に基づく排出抑制等指針について、未策定の部門についても検討し、早期に策定・公表するとともに、引き続き更なる指針の活用方法等についても検討を行うなど、事業者による温室効果ガスの排出抑制等のための取組を推進していきます。また、既に策定された分野においても、BATの技術動向等を踏まえ、随時見直しを行います。

(5)国民運動の展開

多様な主体と連携し、低炭素型の「製品」、「サービス」、「ライフスタイル」等、温暖化対策に資する「賢い選択」を促す国民運動「COOL CHOICE」のより一層の展開を図ります。「クールビズ」、「ウォームビズ」、「エコドライブ」等の様々な取組を推進し、各種メディアやイベント等で普及啓発を行い、企業や国民一人一人の地球温暖化に対する危機意識を醸成し、自主的な行動を促すことで、ライフスタイルの転換を訴えていきます。さらに、成功事例が共有されるよう、多様な主体が連携して、情報発信、意識改革、行動喚起を進めます。

(6)「見える化」等の推進

民間事業として実施されているカーボンフットプリントコミュニケーションプログラムとも連携しながら、「カーボンフットプリントを活用したカーボン・オフセット制度」を実施するとともに、前述した家庭エコ診断等を実施し、製品や家庭の温室効果ガス排出量の「見える化」を図ります。また、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を活用した環境負荷の「見える化」に関する国内外の最新動向を調査するとともに、国際会議やワークショップ等を通じて我が国の産業界の取組や事業活動の実態等を踏まえたLCA手法等の発信を行い、我が国の環境配慮製品が適切に評価されるための環境づくりに貢献します。さらに、事業者に対する削減ポテンシャルの診断や、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を把握・管理するための基盤整備を進めます。

また、L2-Techに関する体系的な情報を整備・発信し、メーカー・ユーザー双方がL2-Tech情報を利活用しやすい体制を構築し、自発的なL2-Tech導入の拡大によるCO2排出量の大幅削減及び低炭素社会の実現を図ります。

(7)税制のグリーン化

第6章第2節を参照。

(8)国内排出量取引制度

「地球温暖化対策計画」に基づき、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組等)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行います。

(9)J-クレジット制度の推進

国内の多様な主体による省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用等による排出削減対策及び適切な森林管理による吸収源対策を引き続き積極的に推進していくため、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセット等に活用できるクレジットを認証するJ-クレジット制度を着実に実施していきます。J-クレジット制度の対象となるプロジェクトの拡充や認証プロセスの効率化により、制度の円滑な運営を図るとともに、認証に係る事業者等への支援やクレジットの売り手と買い手のマッチング機会の提供など制度活用を促進するための取組を強化していきます。

(10)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

J-クレジット等を活用したカーボン・オフセット及びカーボン・ニュートラルの取組を推進するため、カーボン・オフセット及びカーボン・ニュートラルの取組事例の情報発信や、「カーボンフットプリントを活用したカーボン・オフセット制度」を通じて、カーボン・オフセットされた製品・サービスの更なる普及を図ります。

(11)金融のグリーン化

地域低炭素投資促進ファンドから低炭素化プロジェクトへの出資事業につき、地域金融機関等との連携を図りつつ、支援を拡大していくほか、低炭素機器のリース料の助成事業等を引き続き実施するなど、金融のグリーン化に向けた取組を引き続き、実施していきます。

金融のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を報告します。また、温室効果ガス排出量・吸収量の更なる精度等の向上に向けた算定方法の改善や情報解析等を行います。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

地球温暖化の防止や地球温暖化への適応に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進します。

また、高効率火力発電(石炭・LNG)について、発電効率の更なる向上を目指します。

農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略及び農林水産省気候変動適応計画に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を強化します。農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動による農林水産物への影響評価を行うとともに、気候変動に適応する農水産物の品種・育種素材の開発や農畜産物の生産安定技術、山地災害の激甚化や人工林の生育環境の変化等に対応するための技術、気候変動に伴い増加が懸念される有害プランクトンに対応するための迅速診断技術、気候変動に伴い被害の拡大が予想される野生鳥獣被害対策拡大への対応技術の開発を推進します。

(3)観測・調査研究の推進

地球温暖化の実態を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な行政施策を講じるため、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。

地球温暖化分野の観測に関わる関係府省・機関が参加する連携拠点の運営や、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(第6章第3節2(1)を参照)を用いた全球の温室効果ガス濃度の観測等により、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、インドネシア及びモンゴルにおいて効率の良い低炭素システムの検証及び実証を行います。また、2018年度打ち上げを目指し、2012年度から着手した「いぶき」の後継機の開発を引き続き推進します。さらに、2017年度をめどに3号機の開発の検討に着手し、2022年度に打ち上げることで継続観測を図ります。これにより、大都市単位あるいは大規模排出原単位でのCO2等の吸収・排出の把握を行い、世界各国の地球温暖化対策への貢献を目指します。

4 フロン等対策

フロン類の使用の合理化、管理の適正化の一層の徹底を図り、フロン排出抑制法等により、戦略的にフロン類の排出抑制を推進します。特に、2016年度から報告が始まったフロン類算定漏えい量報告・公表制度の確実な運用に努めるとともに、省エネ型自然冷媒機器の導入促進を推進します。

オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に定められた、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)等のオゾン層破壊物質の生産規制等を着実に実施するとともに、その排出抑制、使用合理化の一層の促進に努めます。また、オゾン量、オゾン層破壊物質の大気中濃度及び太陽紫外線の観測・監視等を実施します。

開発途上国におけるフロン等対策を支援するため、同議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した、オゾン層破壊物質からオゾン層を破壊せずかつ温室効果の低い代替物質への転換支援、研修の受入れ等を引き続き推進するなど、開発途上国への技術協力を行います。さらに、日本の技術・取組等の普及促進による開発途上国における議定書遵守対策の加速化、フロン類の回収・再利用・破壊に係る施策実施の促進を図ります。