環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 原子力利用における安全の確保

第9節 原子力利用における安全の確保

1 原子力規制行政に対する信頼の確保

原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて人と環境を守るという使命を果たすため、「独立した意思決定」、「実効ある行動」、「透明で開かれた組織」、「向上心と責任感」及び「緊急時即応」を組織理念として、様々な政策課題に取り組みました。

(1)原子力規制行政の独立性・中立性・透明性の確保

原子力規制委員会は、2015年に引き続き、組織理念に基づいて、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ、独立して意思決定を行いました。

中立性の確保については、2012年度第1回原子力規制委員会(2012年9月)において定めた原子力規制委員会委員長及び委員の倫理等に係る行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を遵守して業務を遂行しました。

透明性の確保については、原子力規制委員会、審査会合、各種検討チーム等を公開で開催するとともに、これらの議事録及び資料の公開、インターネット動画サイトによる生中継に加え、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せ及び被規制者との面談の議事概要等の公開、報道機関に対する記者会見(原子力規制委員会委員長定例会見は週1回、原子力規制庁定例ブリーフィングは週2回)を引き続き行いました。

また、多様な意見を聴くため、外部とのコミュニケーションとして、以下の取組を行いました。

ア 事業者とのコミュニケーション

原子力事業者の安全性向上に関する活動及び現行の規制制度の改善案等を聴取するため、主要な原子力施設を保有する事業者の経営責任者との意見交換を引き続き実施し、事業者が自主的に行っている安全文化の醸成を始めとした安全性向上に関する取組、規制制度の改善に向けた検討を行うための発案等を主な議題として、8事業者と意見交換を行いました。また、3事業者の経営責任者とは、当該事業者に特有の課題について意見交換を行いました。

これまでの原子力事業者(経営責任者)との意見交換の実施状況を踏まえ、2016年度第59回原子力規制委員会(2017年2月)において、今後も主要な原子力施設を有する原子力事業者の経営責任者と月1回程度の頻度で意見交換を実施することを確認し、議題として、[1]前回の意見交換会以降における各事業者による安全性の向上のための新たな取組や改善事項等、[2]その他事前に原子力規制委員会又は事業者から提案した議題を扱うこととしました。

また、2016年度第43回原子力規制委員会(2016年11月)において、主要原子力施設設置者の原子力部門の責任者との意見交換を新たに実施することを確認したことを踏まえ、2017年1月に主要原子力施設設置者(被規制者)の原子力部門の責任者との第1回意見交換を実施しました。

イ 地方公共団体等とのコミュニケーション

2016年度において、原子力規制委員会委員長は、2016年8月に福井県知事(全国知事会原子力発電対策特別委員会委員長)と面会しました。また、2016年12月には愛媛県を訪問し、愛媛県知事、八幡浜市長、伊方町長と面会し、さらに伊方町の住民に対して、原子力災害時の効果的な退避の在り方や、その前提となる放射線被ばくに関する知識について説明し、意見交換を行いました。2017年2月には鹿児島県を訪問し、鹿児島県知事、薩摩川内市長と面会し、さらに上甑島里地区、上甑地区の住民に対して、愛媛県訪問時と同様の対応を行いました。原子力規制庁長官や次長等も、地方公共団体の首長や全国知事会等の代表者と面会をしました。このほか、2017年2~3月に佐賀県、長崎県及び福岡県において、原子力規制庁職員が、立地自治体及び地域住民等に対し、新規制基準適合性審査の結果や原子力災害対策指針の内容について説明を行う等、原子力規制委員会委員長だけでなく様々なレベルで地方公共団体とのコミュニケーションの充実を図る活動に従事しました。

ウ その他のコミュニケーション

原子力規制委員会における各種検討会合において外部有識者を構成員に含め、その知見を活用しました。また、原子力規制委員会委員長は、2017年2月に、国際アドバイザー(米国、英国及びフランスの原子力規制機関のトップとしての豊富な経験を有する有識者の中から原子力規制委員会委員長が指名)のメザーブ氏と面会し、国際アドバイザーからの助言等を踏まえて新しい検査制度の導入を進めていることなどについて意見交換を行いました。

(2)組織体制及び運営の継続的改善
ア マネジメントシステムの本格的な運用と改善

原子力規制委員会マネジメント規程(2014年9月原子力規制委員会決定)に基づき、「原子力規制委員会の組織理念」、「原子力安全文化に関する宣言」、「核セキュリティ文化に関する行動指針」、「原子力規制委員会第1期中期目標」、「原子力規制委員会平成28年度年度重点計画」等に沿って業務を実施し、2016年度第62回原子力規制委員会(2017年2月)において平成28年度重点計画の取組・成果に関する評価を行いました。

イ IRRSミッションにおいて明らかになった課題への対応

国際原子力機関(IAEA)では、加盟国の要請に基づきIAEAが実施する各種評価(レビュー)の一つとして、原子力規制に関する法制度や組織等を含む幅広い課題について総合的にレビューする総合規制評価サービス(IRRS)を実施しています。

IRRSミッションチームは、2016年1月に来日しレビューを行い、同年4月にIRRS報告書を日本に提出しました。

同報告書では、日本の原子力規制が東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を取り入れて安全確保上必要な水準に達していることを前提に、更なる改善が求められ、2つの良好事例と共に、13の勧告と13の提言がなされました。

原子力規制委員会では、IRRSミッション受入れのために行った自己評価の過程で把握した改善すべき事項を含め、IRRSにおいて明らかになった課題について対応方針を取りまとめ、検査と執行、放射線源規制・放射線防護及び人材育成・確保を含む31の課題について改善に取り組むこととしました。

また、原子力規制委員会は、原子炉安全専門審査会(以下「炉安審」という。)及び核燃料安全専門審査会(以下「燃安審」という。)にIRRSにおいて明らかになった課題のフォローアップを行うよう指示しました。これを受け、2016年7月から2017年1月までに、各課題についての取組状況が原子力規制庁から炉安審及び燃安審に報告され、炉安審及び燃安審は評価及び助言を行いました。これを踏まえ、2016年度第55回原子力規制委員会臨時会議(2017年1月)において、炉安審・燃安審両会長との意見交換を行いました。2016年度第59回原子力規制委員会(2017年2月)において、IRRSにおいて明らかになった課題については、来年度以降も当分の間、その進捗状況等を勘案し、順次、取組状況のフォローアップ(評価及び助言)を継続していくこととしました。

ウ 国際社会との連携

原子力規制委員会は、国際機関との連携として、IAEAや経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)等の各種会合への出席や専門家の派遣を通じて、東京電力福島第一原子力発電所の事故から得られた知見や教訓を国際社会と共有するとともに、国際的な原子力安全の向上のための情報収集や意見交換を行いました。

また、諸外国の原子力規制機関との協力として、国際原子力規制者会議(INRA)、日中韓原子力安全上級規制者会合(TRM)等の多国間の枠組み、海外の原子力規制機関との二国間会合等において、情報収集や意見交換を行いました。また、西欧原子力規制者会合(WENRA)に、原子力規制委員会として新たにオブザーバー加盟することを表明し、了承されました。さらに、各種国際条約に基づく各種会合への参加等も行いました。

2 原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施

(1)原子炉等規制法に係る規制制度の継続的改善

2016年度第5回原子力規制委員会(2016年4月)において、IRRS報告書における原子力施設の検査制度に関する指摘に対し、実効性のある検査を実施できる仕組みとするために、原子炉等規制法を改正し、事業者の一義的責任が明確な制度とした上で、事業者による安全確保の取組の状況に応じて検査部門の判断で検査項目を選定することとするなどの対応方針を了承しました。

これを踏まえ同年5月から、原子力規制委員会委員、原子力規制庁職員及び専門家から構成される「検査制度の見直しに関する検討チーム」を開催しました。同チームでは、事業者の参加を得て公開の場で議論を進めました。8月には中間取りまとめ(素案)を策定し、意見公募手続の実施及び炉安審・燃安審での検討を経て、11月に検査制度の見直しに関して中間取りまとめを行いました。

原子力規制委員会では、この中間取りまとめ等を踏まえて原子炉等規制法の改正準備を進め、2016年度第52回原子力規制委員会(2016年12月)において、法改正の骨子を了承しました。2016年度第59回原子力規制委員会(2017年2月)において決定した「原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律案」は、2017年2月に閣議決定され、第193回国会に提出されました。

同法案では、より高い安全性の確保を目指して、事業者、規制機関双方の取組を強化する観点から、原子力施設の規制基準への適合性を確認する行為を、事業者が自ら実施するものとして義務付け、安全確保に係る事業者の一義的責任の徹底を図っています。また、規制機関が、事業者の保安活動全般を対象に、事業の許可・指定等から廃止措置の終了まで切れ目なく一貫して、時期や内容を限定することなく、包括的に監視・評価を行う仕組みを新たに設けるとともに、規制機関が検査結果を踏まえた評定を行い、以後の検査に安全の実績を的確に反映させることを規定しています。

(2)原子炉等規制法及び放射線障害防止法に係る規制の厳正かつ適切な実施
ア 実用発電用原子炉に係る新規制基準適合性審査・検査の実施

実用発電用原子炉に係る設置変更許可申請等について、原子力規制委員会において了承した方針に基づき厳正かつ適切に審査を行っているところであり、2016年度に審査会合を計113回開催しました。

審査会合における議論を踏まえ、関西電力高浜発電所(以下「高浜発電所」という。)1号炉、2号炉、3号炉及び4号炉、関西電力美浜発電所(以下「美浜発電所」という。)3号炉、九州電力玄海原子力発電所(以下「玄海原子力発電所」という。)3号炉及び4号炉並びに関西電力大飯発電所(以下「大飯発電所」という。)3号炉及び4号炉について、発電用原子炉設置変更許可申請書に対する審査の結果の案を取りまとめ、事業者の技術的能力や原子炉の構造、設備に関する審査書案に対する審査を行い、事業者の技術的能力、原子炉の構造及び設備に関する審査書案に対する科学的・技術的意見を募集するとともに、原子力の平和利用について原子力委員会から、許可について経済産業大臣から意見を聴取しました。これらの結果を踏まえ、高浜発電所1号炉、2号炉、3号炉及び4号炉について2016年度第4回原子力規制委員会(2016年4月)、美浜発電所3号炉について2016年度第35回原子力規制委員会(2016年10月)、玄海原子力発電所3号炉及び4号炉について2016年度第56回原子力規制委員会(2017年1月)において、設置変更を許可しました。

なお、特定重大事故等対処施設の設置に係る設置変更の許可に関しては、2016年度末までに7事業者7原子力発電所13プラントから、申請書が提出されており、順次審査を進めました。高浜発電所3号炉及び4号炉については、特定重大事故等対処施設に係る設置変更許可申請書に対する審査の結果の案を取りまとめ、経済産業大臣及び原子力委員会への意見聴取を行い、その回答を踏まえて審議した結果、第33回原子力規制委員会(平成28年9月)において、設置変更を許可しました。

このほか、2016年度に、計4プラントの工事計画を認可しました。

また、高浜発電所1号炉、2号炉及び4号炉並びに四国電力伊方発電所(以下「伊方発電所」という。)3号炉に係る使用前検査において、認可された工事計画に従って工事が行われているかどうか等を確認し、伊方発電所3号炉に関しては2016年9月に使用前検査に合格したと認め、使用前検査合格証を交付しました。

イ 実用発電用原子炉に係る保安検査の実施

原子力規制事務所の原子力保安検査官を中心に、実用発電用原子炉を対象として、保安規定の遵守状況等の検査(以下「保安検査」という。)を定期的に実施したほか、施設の形態を踏まえて、日々の原子力施設の巡視、運転状況の聴取、定例試験への立会い等を行いました。また、2016年度は、各施設において四半期毎の保安検査を4回実施したほか、伊方発電所3号炉等において安全確保上重要な行為等に係る保安検査を実施しました。

ウ 核燃料施設等に係る新規制基準適合性審査・検査の実施

核燃料施設等については、原子力規制委員会が2013年12月にいわゆる新規制基準を施行した後、これまでに9事業者から21施設について事業変更許可申請等が提出されました。これらの申請について、「核燃料施設等の新規制基準施行後の適合確認のための審査の進め方について」(2013年12月決定、2016年6月改正)に基づき審査を行っており、2016年度に原子力規制委員会委員が原則として出席する審査会合を計87回開催しました。

また、核燃料施設等の新規制基準等への適合性の確認にグレーデッドアプローチ(等級別扱い)を適用し、安全上重要な施設の有無等、それぞれの核燃料施設等の特徴を踏まえて審査を効率的・効果的に進めるため、2016年11月に核燃料施設等の基準の解釈を改定し、新たな評価ガイドを制定しました。

審査会合における議論を踏まえ、京都大学臨界実験装置(KUCA)及び近畿大学原子炉に対しては2016年5月、京都大学研究用原子炉(KUR)に対しては2016年9月に設置変更承認及び許可を行いました。その後の設計及び工事の方法の承認及び認可については、京都大学、近畿大学ともに分割申請としており、近畿大学に対しては、平成29年2月7日までに全ての認可を行うとともに、京都大学研究用原子炉(KUR)及び臨界実験装置(KUCA)に対しては一部を承認しました。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)核燃料サイクル工学研究所再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)について、リスク低減のためのガラス固化処理等の実施状況、同施設の安全性や廃止措置に向けた安全確保のあり方等について定期的に確認するため、原子力規制委員会からの指示により、2016年1月に「東海再処理施設等安全監視チーム」が設置されました。同監視チームにおいて、東海再処理施設の廃止に向けた計画が具体化されず進展が見られないこと、ガラス固化処理についても、多くのトラブル等により当初計画の実現の見通しがついていない状態等が確認されたことから、原子力規制委員会は、2016年8月、原子力機構に対し東海再処理施設の廃止に向けた計画や、高放射性廃液の貯蔵に係るリスクを早急に低減するための実効性のある計画等について検討し、報告するよう指示文書を発出しました。東海再処理施設等の安全確保の在り方や原子力機構から提出された当該報告への対応等を含め「東海再処理施設等安全監視チーム」を計9回開催しました。

また、東海再処理施設の廃止措置を安全かつ着実に実施しつつ、早期にリスク低減を図るため、廃止措置計画に係る認可申請を可能な限り早期に行うことができるよう、関係規則の改正案を作成し、意見公募手続を実施するなどの取組を進めています。さらに、関係規則の改正に併せて、審査を円滑に行うための審査の考え方の整理を進めています。

エ 核燃料施設等に係る保安検査の実施

原子力規制事務所の原子力保安検査官を中心に、核燃料施設等を対象とした保安検査を定期的に実施したほか、施設の特徴を踏まえて、日々の原子力施設の巡視、運転状況の聴取、定例試験への立会い等を行いました。

オ 原子力施設で発生したトラブルの原因究明や再発防止策の確認

原子炉等規制法第62条の3は、原子力事業者等に対し、原子力施設等において原子力規制委員会規則で定める事故、故障等(以下「法令報告事象」という。)が生じたときは、原子力規制委員会への報告を義務付けています。

2016年度に、実用発電用原子炉において4件の法令報告事象が発生しました。原子力規制委員会は、これらの事象について、事業者から報告を受けたところであり、引き続き、事業者が行う原因究明及び再発防止策について、厳正に確認していきます。

カ 発電用原子炉の運転期間延長認可に係る審査等の実施

運転期間延長認可制度は、発電用原子炉を運転することができる期間を運転開始から40年とした上で、20年を上限として1回に限り延長することを認める制度であり、延長しようとする期間において安全性を確保するための基準に適合することを求めています。これまでに1事業者から2原子力発電所3プラントの申請が提出されました。これらの申請について、2016年度に審査会合を計4回開催し、審査会合における議論を踏まえて審査結果の案を取りまとめ、高浜発電所1号炉及び2号炉に対して2016年度第16回原子力規制委員会(2016年6月)、美浜発電所3号炉に対して2016年度第43回原子力規制委員会(2016年11月)において、運転の期間の延長を認可しました。

高経年化対策制度は、運転開始後30年を経過する発電用原子炉施設について、以降10年ごとに機器・構造物の劣化評価及び長期保守管理方針の策定を義務付け、これらを保安規定に反映することを求める制度です。2016年度に、冷温停止状態が維持されることを前提とした評価のみを行うプラントとして2事業者から2原子力発電所2プラントについて申請がありました。原子力規制委員会は、運転を前提とした評価を行っている高浜発電所1号炉(2016年6月認可)、高浜発電所2号炉(2016年6月認可)及び美浜発電所3号炉(2016年11月認可)並びに冷温停止状態が維持されることを前提とした評価のみを行っている敦賀発電所2号炉(2017年2月認可)について、高経年化対策制度に係る保安規定変更申請を認可しました。

キ 敷地内破砕帯の活動性の評価

旧原子力安全・保安院が発電所敷地内の破砕帯の追加調査を行う必要があると指摘した6原子力発電所について、関係学会から推薦を受けた有識者等から構成される有識者会合を開催し、現地調査と評価を実施しています。

2016年度の活動としては、北陸電力株式会社志賀原子力発電所(以下「志賀原子力発電所」という。)について2016年度第6回原子力規制委員会(2016年4月)において有識者会合における評価結果が報告され、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ(以下「もんじゅ」という。)について評価会合等が実施され、2016年度第69回原子力規制委員会(2017年3月)において有識者会合における評価結果が報告されました。これによって、評価の対象となった発電所全てについて、評価が終了しました。

なお、本評価結果については重要な知見の一つとして参考としつつ、新規制基準適合性に係る原子力規制委員会としての判断は、新規制基準適合性審査において行うこととしています。

ク 火山活動のモニタリングに係る検討

原子力規制委員会は、事業者が実施した火山活動のモニタリング結果を評価するとともに、設計対応が不可能な火山事象により安全性に影響が及ぶ可能性は十分小さいとした状況に変化が生じた場合には、早い段階で原子炉の停止を命じるなどの対応をとることとしています。

原子力規制委員会は、2015年度第46回原子力規制委員会(2015年12月)において、原子力規制委員会における火山モニタリングに係る評価及び原子力規制委員会が策定する原子炉の停止等に係る判断の目安についても、炉安審の新たな調査審議事項とし、2016年3月の第7回原子炉安全専門審査会において指示され、当該調査審議のため炉安審に原子炉火山部会を設置しています。2016年10月に第1回原子炉火山部会を開催し、九州電力が実施した九州電力株式会社川内原子力発電所の火山モニタリング結果に関して原子力規制庁が行った評価及び原子力規制委員会が策定する火山活動に係る原子炉の停止等に関する判断の目安について審議しました。

ケ もんじゅへの対応

原子力規制委員会が2015年11月にもんじゅについて行った勧告に対し、2016年12月に文部科学大臣からもんじゅは廃止措置段階に移行すること、国立研究開発法人原子力機構を適切に指導・監督すること等の報告があり、併せて、もんじゅの廃止措置計画の認可の早期申請が可能となるような取組を検討するよう要請がありました。

もんじゅの廃止措置には、[1]建設中に廃止措置に移行すること、[2]炉心から燃料体を取り出した実績が少なく、燃料を炉心から取り出す作業におおむね5年半の期間を要すること、[3]我が国初のナトリウム冷却型発電用原子炉施設の廃止措置であること等の特殊性があるため、早期のリスク低減を図るには、炉心から燃料体を取り出していない状態で廃止措置計画を認可し、原子力規制委員会の監督の下で廃止に向けた取組を早期に開始できるようにするなどの対応が必要となることから、関係規則の改正について意見公募手続を実施するなどの取組を進めています。

また、もんじゅの現況や原子力機構の取組状況を継続的に確認するため、もんじゅ廃止措置安全監視チーム会合を開催し、もんじゅの廃止措置の準備状況等について聴取しました。

コ 審査結果等の丁寧な説明

玄海原子力発電所3号炉及び4号炉の原子炉設置変更許可の審査結果について、立地自治体である佐賀県及び玄海町の専門委員会等の場において原子力規制庁職員が説明するとともに、佐賀県内、長崎県及び福岡県で開催されました住民説明会等においても説明を行いました。

審査結果の説明に当たっては、絵や写真を用いた分かりやすい資料を用いるとともに、当該資料を原子力規制委員会のホームページにおいて公表しました。

サ 放射線障害防止法に係る制度整備等

IRRS報告書では、IAEAが示す国際基準との整合性の観点から、我が国において、放射線源による緊急事態への対応等放射線規制に関する取組を強化すべきであるとの勧告が示されました。また、放射性同位元素に係るセキュリティは、2011年1月にIAEAの「放射性物質及び関連施設に関する核セキュリティ勧告」により防護措置の実施が勧告されて以来、課題であり、核セキュリティに関する検討会において当面優先すべき検討課題の一つとされ、具体的な防護措置については、検討会の下に設置された「放射性同位元素に係る核セキュリティに関するワーキンググループ」において議論を重ね、2016年6月に検討会において規制対象、防護措置に係る要件、規制上の枠組み等の考え方を取りまとめた「放射性同位元素に対する防護措置について(報告書)」を決定しました。2016年5月のG7伊勢志摩首脳宣言においても、「核物質及び他の放射性物質のセキュリティを引き続き優先する」こと及び「世界的な核セキュリティ構造の更なる強化に取り組む」ことの必要性が示されました。

これらを受けて、2016年度に原子力規制委員会委員、外部専門家、原子力規制庁職員を構成員とする「放射性同位元素使用施設等の規制に関する検討チーム」を8回開催し、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号。以下「放射線障害防止法」という。)の改正を念頭に、同法に基づく規制を再構築するための検討を行いました。同検討チームでは、放射性同位元素使用施設等の危険時の措置の充実強化とセキュリティ対策の追加を中心に議論を重ね、新たな規制の枠組みの考え方を整理しました。その後、意見公募手続等を経て、2016年11月に「放射性同位元素使用施設等の規制の見直しに関する中間取りまとめ-放射性同位元素使用施設等におけるより高い安全水準の実現を目指して-」を取りまとめました。その内容に基づく放射線障害防止法の改正案を第193回国会に提出しました。

また、原子力規制委員会には、関係行政機関が定める放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一化を任務とする放射線審議会が設置されています。

当該技術的基準の策定には、今まで以上に高い水準の専門的知識等が要求されるようになったため、関係行政機関による国内法令への技術的基準の取り入れの円滑化を目的として、放射線審議会の所掌事務に放射線障害の防止に関する技術的基準について自ら調査審議し、関係行政機関に対し提言すること等を追加することとしました放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第162号)の改正案を第193回国会に提出しました。

シ 放射線障害防止法に基づく審査及び立入検査

原子力規制委員会では、放射性同位元素等の放射線利用による放射線障害を防止するため、放射線障害防止法に基づき、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性汚染物の廃棄その他の取扱いに関する規制を行いました。

ス 核燃料取扱主任者、原子炉主任技術者及び放射線取扱主任者の試験の実施等

原子力規制委員会では、原子炉の運転や核燃料物質の取扱いに関する保安・監督を行う核燃料取扱主任者や原子炉主任技術者に選任される資格を付与するための試験を実施しており、第48回核燃料取扱主任者試験においては25名、第58回原子炉主任技術者試験においては11名に対し免状の交付を行いました。さらに、核燃料取扱主任者試験の実施細目等に関する規則等に基づいて認定しました大学院課程を修了した者に対して、核燃料取扱主任者試験及び原子炉主任技術者試験の筆記試験の一部を免除しており、当該課程を設置している国立大学法人東京大学の課程について、5年ごとの認定基準の適合状況の確認を行いました。

また、原子力規制委員会は放射線障害防止法に基づき、放射性同位元素等の取扱上の監督を行う放射線取扱主任者(第1種及び第2種)に選任される資格を判定するための試験を実施しています。2016年8月に実施した平成28年度放射線主任者試験において第1種は788名、第2種は801名が合格しました。また、放射線取扱主任者試験に合格し、放射線取扱主任者講習を受講・修了しました者に対し第1種及び第2種免状を、放射線取扱主任者講習を受講・修了した者に対し第3種免状を交付しました。

(3)安全性と核セキュリティの両立のための効率的な連携

安全性と核セキュリティの両立のための効率的な連携として、関係課室間で情報の共有を図ることとしています。

具体的な対応として、安全性を確認する部門で作成した「防護設備の新設・変更に伴う安全施設等への影響に関する要件・評価のポイント」を参考に核セキュリティを確認する部門において核物質防護規定の変更認可申請に係る審査を実施しました。また、IAEA及び米国等の取組について調査を実施するとともに、原子力規制庁における「核物質防護情報取扱者等を指定する制度」(仮称)について検討を行いました。

3 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視等

(1)東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視

原子力規制委員会は、施設の状況に応じた適切な方法による管理を行うため、2012年11月に東京電力福島第一原子力発電所を「特定原子力施設」に指定するとともに、東京電力株式会社(2016年4月1日付けで東京電力ホールディングス株式会社に名称変更)に当該特定原子力施設の保安及び特定核燃料物質の防護のために措置を講ずべき事項を示しました。その後、その事項について策定した「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」(以下「実施計画」という。)の認可申請を受理し、留意事項を示した上で2013年8月に認可しました。

2016年度において、放射性物質分析・研究施設第1棟の設置等、計28件の実施計画の変更を認可するとともに、実施計画の遵守状況に関しては、原子力規制事務所の原子力保安検査官による日常的な巡視活動のほか、保安検査、使用前検査、溶接検査等により、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)の取組を監視しました。

また、原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の措置に関する目標を示すことを目的として、2014年度第57回原子力規制委員会(2015年2月)において、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成27年2月版)」を策定しました。その後、前回改定以降の進捗状況や、特定原子力施設監視・評価検討会において1、2号機排気筒の上部解体時期、メガフロートの対策時期等が明確になったこと等を踏まえ、2016年度第48回原子力規制委員会(2016年12月)において、「東京電力福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成28年12月版)」(図6-9-1)に改定しました。

図6-9-1 東京電力福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成28年12月版)

2016年度に東京電力福島第一原子力発電所に係る法令報告の対象となるトラブル事象が1件あり、2016年4月20日、G6タンクエリアへの移送配管からRO濃縮水(Sr処理水をいう。)が漏えいしたことにより、東京電力が実施計画において定めた排水基準を超える放射性物質の濃度の水が管理区域内で漏えいしたとして、法令報告事象に該当するとの報告を受けました。2016年5月2日、原子力規制委員会は、東京電力から当該事象の原因と対策に係る報告書を受領しました。その後、当該報告を確認し、2016年度第8回原子力規制委員会(2016年5月)において、移送配管については、年1回保温材を取り外した状態での点検を計画・実施すること等の再発防止対策が講じられていること等の評価を決定しました。

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故の分析

東京電力福島第一原子力発電所の事故についての継続的な分析は、原子力規制委員会の重要な所掌事務の一つであり、2014年度第31回原子力規制委員会(2014年10月)において、「東京電力福島第一原子力発電所 事故の分析 中間報告書」を取りまとめました。2016年度においては、これまで行いました東京電力福島第一原子力発電所3号機及び4号機のオペレーティングフロアにおける線源調査の結果を取りまとめ、国際会議での発表等を行いました。また、OECD/NEAによる調査研究活動等に参加しました。

(3)放射線モニタリングの実施

原子力規制委員会は、「総合モニタリング計画」(2011年8月モニタリング調整会議決定、2016年4月改定)に基づき、東京電力福島第一原子力発電所の事故後のモニタリングとして、福島県全域の環境一般モニタリング、東京電力福島第一原子力発電所周辺海域及び東京湾のモニタリング等を実施し、解析結果を毎月公表しました。2016年5月及び11月には、IAEA環境研究所の専門家が来日し、分析結果の相互比較を行うため、原子力規制庁等と共同で東京電力福島第一原子力発電所近海にて5月は海水・海底土を、11月は海水・水産物を採取しました。これまでに得られた分析結果の相互比較や分析機関の力量評価から、日本のデータの信頼性が高いことを確認しました。

4 原子力の安全確保に向けた技術・人材の基盤の構築

(1)最新の科学的・技術的知見に基づく規制基準の継続的改善
ア 規制基準の継続的改善

原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、事故の教訓や最新の技術的知見、IAEA 等の国際機関が定める規制基準を含む海外の規制動向を踏まえて、2013年7月に発電用原子炉施設の、同年12月に核燃料施設等のいわゆる新規制基準を施行しました。これらの規制基準(解釈、ガイド等を含む。)については、最新の科学的・技術的知見等を踏まえて、継続的に改善することとしています。

原子力規制委員会は、IRRSによる「定期的な規制要件及びガイドの見直し」に関する勧告を踏まえて、従来から実施している最新知見の規制への反映について整理し、情報を収集・整理する範囲とその体制、情報のスクリーニング及び規制基準への適用の考え方並びにこれらの手順等として取りまとめ、2016年度第45回原子力規制委員会(2016年11月)において了承しました。

イ 廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討

2016年度において、廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チームの会合を7回開催し、「炉内等廃棄物の埋設に係る規制の考え方について」を策定する等、規制の基本的考え方について審議し、検討を進めました。

(2)安全研究の実施等による最新の科学的・技術的知見の蓄積
ア 安全研究の推進

原子力規制委員会は、2015年度以降の安全研究の分野を定めた「原子力規制委員会における安全研究について-平成27年度版-」に基づいて、2016年度も9研究分野35件の安全研究プロジェクトを実施しました。

安全研究の成果として、規制基準、各種ガイド類に新知見を反映するとともに、審査及び検査における判断のための技術的基礎、実験データ等を取りまとめた2件の「NRA技術報告」を公表するとともに、13件の論文投稿、43件の学会発表を行いました。

また、これまでの安全研究の進捗等を踏まえ、実施すべき研究分野を見直すこととし、2016年度第19回原子力規制委員会(2016年7月)において「原子力規制委員会における安全研究の基本方針」を策定し、2017年度以降を対象に「今後推進すべき安全研究の分野及びその実施方針」を原則として毎年度策定することとしました。

イ 国内外のトラブル情報の収集・分析

原子力規制委員会は、国内外で発生しました事故・トラブル及び海外における規制動向に係る情報を収集・分析し、炉安審・燃安審の評価・助言を得つつ、必要な対策を検討して、随時に規制基準等に反映させています。

2016年度に、国内外のトラブル情報等118件を収集・分析するとともに技術情報検討会を7回開催し、対応等の検討結果が原子力規制委員会に逐次報告されました。

2016年度は、規制基準等に反映させる取組の一例として、高エネルギーアーク損傷(HEAF)事象に関する最新の知見を規制に反映させた規則改正案等を作成し意見公募手続を実施しました。

(3)原子力規制人材の確保及び育成の仕組みの確立
ア 人材の確保

安全審査・検査、原子力防災、安全研究等の業務を担当する職員を中心に、優れた知識・技能を有する実務経験者を採用しました。

また、原子力規制庁独自の採用試験も有効活用して、将来の原子力規制行政を担う若手職員の採用を行いました。

さらに、原子力規制を着実に進めていくことを目的として、広く原子力安全・原子力規制に係る人材を確保・育成するために、大学等と連携した原子力規制人材育成事業を2016年度から実施しています。2016年度は大学が実施機関となるもの等13件の案件を採択しました。

イ 人材の育成

職員の専門性の向上のため、「原子力規制委員会職員の人材育成の基本方針」(2014年6月原子力規制委員会決定)等に基づき、原子力安全人材育成センターを活用して、力量管理制度の検査官に対する試行及び改善、知識管理・技術伝承の取組の推進等人材の育成に取り組みました。

また、検査官等が受講すべき研修やOJT等の見直しを行うとともに、2015年度に整備したプラントシミュレータを用いた研修の本格的な運用を開始しました。さらに、新たな検査制度の検討を踏まえ、米国の検査官育成プログラムを参考に、検査官等に対する教育訓練プログラムの整備に着手しました。

5 核セキュリティ対策の強化及び保障措置の着実な実施

(1)核セキュリティ対策の強化
ア 核セキュリティ上の課題への対応

核セキュリティにおける主要課題への対応に関しては、核セキュリティに関する検討会において、個人の信頼性確認制度、輸送時の核セキュリティ対策並びに放射性物質及び関連施設に係る核セキュリティといった個別課題の具体的検討を進めるため、それぞれの課題を取り扱うワーキンググループを開催して検討を行ってきました。個人の信頼性確認制度に関しては、2016年度第30回原子力規制委員会(2016年9月)において、同制度の導入に必要な原子力規制委員会規則の改正並びに法令上の義務の要件の一部を定める告示及び運用ガイドの制定を決定し、同年9月21日に同規則の改正等が公布・施行され、一定の範囲の原子力施設について導入されることとなりました。

放射性物質に係る核セキュリティに関しては、幅広い観点から実務上の検討を行うことが必要であるため、検討会に加え、検討会の下に開催したワーキンググループにおいても検討を行いました。

2014年度に受け入れたIAEAの国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)のミッションにおける報告書の勧告事項や助言事項については、関係省庁と協議しつつ、関係する規則の改正等継続的な改善に取り組んでおり、原子力規制委員会は、2016年度第53回原子力規制委員会(2017年1月)において、過去にIPPASミッションを受け入れた国が、勧告事項や助言事項に対する対応の妥当性について、評価を得る機会であるIPPASフォローアップミッションを要請することを決定しました。

さらに、原子力規制委員会における核セキュリティ文化を醸成する取組についても、引き続き、職員に対する研修等を通じて取り組みました。

イ 核物質防護検査等の実施

原子力規制委員会は、特定核燃料物質の防護のために事業者及びその従業者が守らなければならない核物質防護規定の認可、当該規定の遵守状況の検査を行いました。2016年度において、37件の核物質防護規定の変更の認可等を実施し、核物質防護規定の遵守状況の検査において事業者における核セキュリティ文化醸成や、サイバーセキュリティ対策を含めた防護措置等の確認を厳正かつ適切に行いました。

(2)保障措置の着実な実施
ア 国際約束の履行

日IAEA保障措置協定に基づく申告情報を適時・適確にIAEAに提供するとともに、保障措置活動の円滑な実施のために必要な調整を行いました。同協定の実施に当たり生じた諸問題については、IAEAとの日常的な連絡調整や定期協議を通じて解決のための具体的措置を講じました。2015年における我が国の保障措置活動に対するIAEAの実施報告では、国内の全ての核物質が平和的活動にとどまっているとの結論(拡大結論)を得るに至りました。その他、二国間原子力協力で規定されている国際規制物資の管理等、国際約束に基づく義務を誠実に履行しました。

東京電力福島第一原子力発電所における保障措置に関しては、未申告の核物質の移動がないことを確認するためのIAEAの監視能力の強化を図りました。また、3号炉使用済燃料取出作業開始に先立ち、必要とされる保障措置手法の検討及びその実現に向けてIAEAとの協議を継続しました。

イ 積極的な情報発信

IAEA保障措置技術支援計画等の枠組みを通じて、国際的な保障措置の強化に積極的に関与するとともに、アジア太平洋保障措置ネットワーク等に参画し、我が国の保障措置の実施状況に関する国際的な理解の促進に努めました。

6 原子力災害対策及び放射線モニタリングの充実

(1)原子力災害対策指針の継続的改善

最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、防災計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう原子力災害対策指針の充実を図っており、2016年度には核燃料施設等に係る原子力災害対策を盛り込んだ指針を改正しました。

さらに、実用発電用原子炉の緊急時活動レベル(EAL)の見直し及び核燃料施設等のEALの設定について検討し、2016年度第68回原子力規制委員会(2017年3月)にそれらの考え方(骨子)を取りまとめました。

また、原子力災害拠点病院の指定促進の支援等、原子力災害時における医療体制の着実な整備を進めています。

(2)放射線モニタリングの充実
ア 緊急時モニタリング体制の充実・強化

原子力災害対策指針の方針に基づき、実効性のある緊急時モニタリング体制の整備等、測定体制の更なる充実強化を図りました。

放射性ヨウ素のモニタリング体制の具体化等を図るため、「緊急時モニタリングについて(原子力災害対策指針補足参考資料)」を2016年9月に改正し、公表しました。加えて、原子力施設立地地域において、地方公共団体等と緊密に連携・協力しながら実効性のある緊急時モニタリングを行うことを目的として、2016年4月に、北海道及び新潟県に地方放射線モニタリング対策官事務所を開設し、2016年度までに10か所の地方放射線モニタリング対策官事務所を設置しました。加えて、2016年12月に、佐賀地方放射線モニタリング対策官事務所の地方放射線モニタリング対策官を増員しました。

このほか、緊急時モニタリング結果を集約し、関係者間で迅速に共有及び公表を行うことが可能な「緊急時放射線モニタリング情報共有・公表システム」を2016年度原子力総合防災訓練等の各種訓練において活用するなどして、その運用の向上を図りました。

イ 全国の環境中の放射線等の測定

原子力発電施設等の周辺地域における放射線の影響及び全国の環境放射能水準を調査するため、全国47都道府県における環境放射能水準調査、原子力発電所等周辺海域(全16海域)における海水等の放射能分析、原子力発電施設等の立地・隣接道府県(24道府県)が実施する放射能調査等の支援を引き続き行いました。

なお、2016年9月9日の北朝鮮による核実験の影響を把握するため、同日付の内閣官房副長官指示に基づき、都道府県等関係機関の協力を得てモニタリングを強化し、その結果を公表しました。

ウ 原子力艦寄港に係る放射能調査の実施

原子力規制委員会は、米国原子力艦が寄港する三港(横須賀港、佐世保港、金武中城港)において、原子力艦の入出港時及び寄港時に海上保安庁等関係機関と連携して空間線量率の測定及び海水等の放射能分析を実施するとともに、原子力艦寄港の有無に関わらず、定期的に放射能調査を実施しました。原子力艦の入出港時及び寄港時の結果は原子力規制委員会のホームページで毎日公表を行い、2015年度に実施した結果についてデータベース化し公表しました。

(3)原子力規制委員会における危機管理体制の整備・運用等
ア 緊急時対応能力の強化

2016年11月に、北海道電力泊発電所を対象として、国、地方公共団体及び原子力事業者等の合同で、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号。以下「原災法」という。)に基づく原子力総合防災訓練が実施され、内閣府政策統括官(原子力防災担当)と原子力規制委員会との連携を含め、複合災害時の各関係機関における防災体制及び避難計画の実効性の確認等を行いました。さらに、2017年2月に冬期の降雪や積雪を考慮した除雪や避難の手順等を確認する要素訓練が原子力総合防災訓練の一環として実施され「泊地域の緊急時対応」に基づく避難計画の実効性の検証等を行いました。

また、原子力規制委員会はこれまでに引き続き、原子力事業者防災訓練に参加し、原子力規制庁緊急時対応センター(ERC)と原子力施設事態即応センターとのより幅広い情報共有の在り方を追求する等、緊急時対応能力の向上に向けて改善を図りました。

イ 原子力事業者防災の強化

原子力規制委員会は、原災法に基づき実施される原子力事業者防災訓練について、2013年度から原子力事業者防災訓練報告会(以下「報告会」という。)を開催し、当該訓練の評価を行っています。2016年6月の報告会では、原子力事業者の緊急時対応能力は向上していますが、情報共有、シナリオの難度及びシナリオの多様化については継続して改善が必要であると評価しました。また、これまでの評価結果を踏まえ、評価指標・基準を見直すこととし、2016年度の評価から適用することとしました。

ウ 情報発信の強化

社会的な関心の高さにも応じて、国民への迅速かつ丁寧な情報発信の一層の強化に努めました。

具体的には、2016年4月に発生した熊本地震を契機に、従来の情報発信に加え、近隣の原子力施設において大きな地震が観測されていないことや、施設の異常が生じていないことについて、情報発信する範囲を拡大しました。加えて、法令報告の対象ではなくとも、原子力施設で発生したトラブルについては、社会的関心の度合いに応じて情報発信することとしました。