環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保
ア 多数国間の枠組みによる連携

(ア)国連を通じた取組

a 国連持続可能な開発会議(リオ+20)等における取組

2012年の国連持続可能な開発会議(以下「リオ+20」という。)において立上げが合意された持続可能な開発目標(SDGs)に関するオープン・ワーキンググループ(OWG)は、2013年1月から計13回開催され、SDGs報告書が2014年7月に公表されました。同報告書を踏まえ、2015年9月の国連サミットにおいてSDGsを核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsの17の目標には、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等、多くの環境関連の目標が含まれました。

これを受け、環境省では、特にSDGsの環境的側面の実施を促進するため、2016年度より「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催しています。先行してSDGsに取り組む企業、市民団体、研究者や各省庁が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場です。具体的には、先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促します。また、環境研究総合推進費により2013年度から開始した「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究」等では、各分野の研究者が共同で、指標、開発、ガバナンスといった側面について、学際的な研究を行い、公開シンポジウムを開催するなど多様な視点からSDGsの研究がなされました。さらに、持続可能な消費と生産(SCP)パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、同じくリオ+20で合意された「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み」が2014年から本格的に始まりました。本枠組みの6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイルと教育」プログラムの共同リード国として、アジアを始めとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を開始しました。

b 国連環境計画(UNEP)における活動

我が国は、国連環境計画(UNEP)の環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見をいかし、多大な貢献を行っています。2016年5月には、第2回国連環境総会(UNEA)が開催され、環境に関する様々な決議が採択されました。

大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。

また、UNEPアジア太平洋地域事務所が実施する「気候変動に強靭(じん)な発展支援プログラム」を通して、アジア太平洋地域の途上国に対し、適応基金や緑の気候基金(GCF)の資金に直接アクセス(ダイレクトアクセス)する制度を利用するための人材育成を行いました。世界適応ネットワーク(GAN)への支援を通じて、世界各地域の取組を国際的取組につなげるための検討を行いました。

(イ)経済協力開発機構(OECD)における取組

我が国は、2012年1月から経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に参加してきました。2016年9月にはOECD環境政策委員会閣僚級会合が行われ、気候変動、資源効率性及び循環経済への移行、生物多様性等が議論されました。我が国は、2016年5月に日本が議長国として開催したG7伊勢志摩サミット等の成果をアピールしつつ、積極的に議論に参加・貢献しました。

(ウ)主要国首脳会議(G7サミット)及びG7環境大臣会合における取組

2016年5月、我が国が議長国としてG7伊勢志摩サミットを開催しました。G7伊勢志摩首脳宣言では、気候変動や開発、資源効率性・3R等が取り上げられました。気候変動分野では、G7が、パリ協定の2016年中の発効という目標に向けて取り組みつつ、可能な限り早期の協定の締結に必要な措置をとることにコミットしました。また、2020年の期限に十分先立って今世紀半ばの温室効果ガス低排出型発展のための長期戦略を策定し、通報することにG7としてコミットしました。さらに、G7として、国内政策及びカーボンプライシング(炭素の価格付け)などの手段を含めた、排出削減活動へのインセンティブの提供の重要な役割を認識しました。

資源効率性・3Rの分野では、G7富山環境大臣会合で合意した、資源の効率的な利用やライフサイクル全体を通じた持続可能性の確保を目的とし、G7各国が今後行うべき野心的な取組を示した「富山物質循環フレームワーク」が支持されました。また、G7として海洋ごみ対処のコミットメントを再確認しました。

伊勢志摩サミットに先立って我が国が開催したG7富山環境大臣会合では、上記議題のほか、様々な議題を扱いました。持続可能な開発のための2030アジェンダでは、会合後も継続してG7としての協調行動を立案していくことに合意しました。生物多様性については、経済的アプローチを進めることの重要性について一致しました。化学物質管理では、水俣条約の早期発効と効果的な実施を支持し、化学物質の子どもの健康に関する疫学調査を高く評価しました。都市の役割については、G7環境大臣会合初の試みとして、G7各国の都市の首長等の参加によるパラレルセッションを開催しました。これらの成果は、2017年のG7議長国であるイタリアに引き継がれ、イタリアは、サミットに加えて環境大臣会合を開催します。

(エ)国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より連続して理事国を務めるとともに、2015年1月に開催されたIRENA第5回総会の議長国を務めるなど、IRENAの諸活動に積極的に参加してきました。日本政府は、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、IRENAとの共催により、国際ワークショップ及び訪日研修を実施しました。

(オ)アジア太平洋地域における取組

a 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

2016年4月に静岡県静岡市において第18回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM18。以下、日中韓三カ国環境大臣会合を「TEMM」という。)を開催し、三カ国の国内環境政策の進捗状況の紹介及びそれらに基づく意見交換を行うとともに、昨年採択された行動計画に基づき、各分野の活動の進展及び今後も協調的な取組を継続・拡大することを確認しました。また、「持続可能な2030アジェンダ」及び「パリ合意」について、今年から対策を実施すること及びパリ協定の早期の発効の重要性に合意しました。加えて、大地震等災害時の廃棄物対策等における経験や政策の共有を図ることに合意しました。

個別分野においては、中国を始めとする環境技術のニーズと日本などが持つ環境技術のマッチングを促進する「技術ネットワーク」を三カ国で新たに立ち上げました。大気汚染問題については、PM2.5対策が優先課題であることを確認しました。PM2.5の発生源に関する研究、「技術ネットワーク」を活用することで、PM2.5対策に資する技術に関する情報交換を強化することに合意しました。また、海洋ごみ問題の解決に向け、初となるワークショップを開催しました。

b ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合

2015年10月に、ベトナム・ハノイにおいて第14回ASEAN+3環境大臣会合が開催されました。この会合で、第6回環境的に持続可能な都市(ESC)ハイレベルセミナーが2015年2月にマレーシアで開催されたことを報告し、また第7回のセミナーから、SDGsの実現を視野に入れた新たなフォーラムとして発展させることを提案し、各国から支持を得ました。

第8回持続可能な都市ハイレベルセミナーは2017年2月にタイ・チェンライで開催されました。

c 北東アジア環境協力プログラム(NEASPEC)

北東アジア地域環境協力プログラム(NEASPEC)第21回高級実務者会合(SOM21)が2017年3月に韓国で開催され、「越境大気汚染」、「国境地域の自然保護」、「海洋保護区」、「低炭素都市」、「砂漠化と土地劣化」等をテーマとして議論を行いました。

d その他の取組

環境省は、2016年6月に、タイ・プーケットにおいて「第25回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー」を開催し、アジア太平洋地域(16か国)、国際機関及び研究機関等(13機関)から、約50名の気候変動に関する担当官や専門家等がこれに参加しました。各国が提出した2020年以降の自国が決定する貢献(NDC)の実施準備の状況、既存の報告制度及び2020年以降の透明性の枠組、NDCsの実施や国内の透明性の枠組の強化に向けた支援の在り方等、活発な議論が行われました。

2017年2月に、タイ天然資源環境省天然資源・環境政策計画局との共催により、タイ・バンコクにおいて「アジア太平洋地域における適応計画の推進および適応行動の推進に関するワークショップ」を開催しました。本ワークショップには、アジア太平洋地域(14か国)、国際機関及び研究機関等(11機関)が参加し、同地域における適応計画の策定プロセス及び適応行動の実施に関する事例から得られる経験や教訓についての共有、活発な意見交換を行い、互いに理解を深めました。

(カ)持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に向けた協力

自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年より様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。

a アジアEST地域フォーラム

2017年3月にラオスのビエンチャンにおいて第10回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを開催し、アジア地域各国等から参加した代表と、持続可能な発展に向けた交通システム等に関する政策、先進事例等の共有を図りました。

b 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

2016年11月に、タイのバンコクにおいて第18回政府間会合が開催され、PM2.5やオゾンのモニタリングの推進を含む東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の中期計画(2016年~2020年)の進捗や今後の進め方等について意見交換が行われました。

c アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

2016年11月にベトナムにおいて第12回年次会合を開催するとともに、第12回東南アジア水環境シンポジウム(SEAWE12)をベトナム国立土木大学、東京大学等との共催により実施し、学術、行政等様々な観点から、アジアの水環境を改善するためのディスカッションを行いました。

d アジア水環境改善モデル事業

我が国企業による海外での事業展開を通じ、アジア等の水環境の改善を図ることを目的に、2011年度よりアジア水環境改善モデル事業を実施しています。2016年度は、過年度に実施可能性調査を実施した4件(ベトナム(2件)、マレーシア、ミャンマー)の現地実証試験を実施したほか、新たに公募により選定された民間事業者が、ベトナム(ハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システム普及事業)、フィリピン(Hiビーズ(石炭灰造粒物)を用いた水環境改善事業)、インドネシア(エアレーターを活用した産業排水の集合処理事業)の実施可能性調査を実施しました。

e アジア・コベネフィット・パートナーシップ

2010年11月に創設された「アジア・コベネフィット・パートナーシップ」において、アジアの途上国における環境汚染対策と温室効果ガス排出削減を同時に効率的に推進するための方策検討に積極的に参画するとともに、ウェブサイト(http://www.cobenefit.org/(別ウィンドウ))等を通じ、コベネフィット・アプローチの普及啓発に取り組みました。

f 分散型汚水処理システム

2016年6月にハンガリー及びルーマニアにおいて分散型汚水処理システムに関するワークショップ及び現地調査を行い、今後中東欧地域において日本の分散型汚水処理システムを普及するための情報収集及びアプローチの検討を行いました。

2016年9月に第4回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを開催し、分散型汚水処理システムの適正な普及に関する課題の解決に向けて議論を行い、今後取り組むべき課題や方向性について共通認識を得ると共に、各国分散型汚水処理関係者とのネットワーク構築や連携強化を図りました。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

a 米国

2015年8月に日米環境政策対話を大臣級で開催し、特に水銀、気候変動、アジア太平洋地域の大気環境管理、環境教育、除染、子供の健康と環境、環境影響評価等について議論し、今後の協力として、プロジェクトの形成や事務方での情報交換等を行うことを確認しました。2016年5月には、G7富山環境大臣会合の機会をとらえて、日米二国間の環境協力に関する共同声明を発表しました。

b フランス

2015年12月に両国大臣間で、両国間の友好関係の強化と、国際及び国内レベルにおける低炭素社会の構築を目指した環境協力の覚書への署名が行われました。2016年12月には、上記覚書に基づき第1回年次会合を開催しました。

c ドイツ

2016年5月、両国大臣は、二国間で気候変動、資源効率性・3R、海洋ごみ等について環境政策対話を行いました。また、脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する共同声明への署名を行いました。共同声明に基づき、日独地方自治体間で再生可能エネルギーの普及に関するワークショップ等を開催しました。

(イ)開発途上国との連携

a 中国

日中経済パートナーシップ協議や日中高級事務レベル海洋協議を開催するなど、これまで様々な機会を捉えて、日中それぞれの環境政策及び大気汚染、海洋汚染、気候変動対応、廃棄物、生物多様性等における環境協力を推進しました。

気候変動については、2016年6月に、気候変動対策に関する研究面からの知見について両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が、中国エネルギー研究所(能源研)と協力して「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」を開催しました。中国の二酸化炭素排出シナリオについて概要の紹介があったほか、各国が決定する貢献(NDC)と長期戦略との関係、2020 年以降の透明性の枠組み、グローバルストックテイクの在り方等について、日中両国を始め欧米各国の政府系・非政府系研究機関等が活発な意見交換を行いました。

大気分野については、日中間の都市間連携による大気環境改善に関する協力を進めるとともに、2007年12月に、両国の環境大臣間での合意により開始した、環境汚染対策と温室効果ガスの排出削減の双方に資するコベネフィット協力について、2016年4月には、協力の第3フェーズに係る覚書に合意し、中国第13次五ヶ年計画の大気汚染物質削減目標に資する協力を進めました。

水分野については、2015年3月に二国間で締結された意向書に基づき、畜産排水対策における共同研究、訪日研修等を実施しました。

b インド

2015年12月、安倍晋三総理とナレンドラ・モディ首相との主脳会談が行われ、共同声明「日印ヴィジョン2025 特別戦略的グローバル・パートナーシップ」のファクトシートにおいて、日本の対インド投資を通じ、低炭素に関する先端技術の移転を促進するため、更なる協力が必要との認識を共有しました。また、2016年11月に実施された安倍総理とモディ首相との首脳会談で署名された共同声明において、可能な限り早期にJCMに係る協議を実施する意図を共有しました。

2016年8月、インド・ニューデリーで「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」が開催され、NDCと長期戦略との関係、2020年以降の透明性の枠組みやグローバルストックテイクの在り方、適応に関する課題等について、両国の政策担当官・研究者が意見交換を行いました。

c インドネシア

2007年12月に両国の環境大臣間で締結したコベネフィット協力に関する共同声明に基づき協力を実施してきたところですが、2015年7月に協力の第3フェーズに係る文書に署名し、農産業分野を対象とした調査研究、人材育成及び実証事業等を行いました。

また、2007年11月、日本国政府とインドネシア政府との間で両国間の気候変動分野における具体的な協力と更なる対話の促進が重要との認識の下、森林保全、測定・報告・検証(MRV)の強化、低炭素成長の実現等における協力をうたった二国間協力文書が合意され、両国の間で具体的な施策に関する協議を進めました。その後、2013年8月には、JCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、2016年5月にJCMの開始以降初めてのクレジットが発行されました。2017年3月末までに合計で7件のJCMプロジェクトが登録され、40トンのJCMクレジットが発行されました。

さらに、2012年12月に両国大臣が署名した「日本国環境省とインドネシア共和国環境省の間の環境協力に関する協力覚書」に基づき、気候変動、廃棄物管理等で協力を進めてきました。また、パリ協定及びSDGsの実施を念頭に、新しい覚書に署名するための協議を進めました。また、両国の都市間環境協力についてJCMの活用を想定した支援等を継続的に実施しました。

d イラン

2016年2月に、第2回日本・イラン環境政策対話をイラン・テヘランで開催し、気候変動対策の緩和を含めたグリーン経済の促進及び生物多様性保全について、日イラン間で、それぞれの経験や施策について情報及び意見の交換を行いました。2017年2月には、第3回日本・イラン環境政策対話をイラン・テヘランで開催し、気候変動対策及び廃棄物管理について、意見交換を行いました。また、政策対話のフォローアップとして、イラン環境庁の職員及び専門家を対象に、気候変動緩和・適応及び生物多様性保全についてのテクニカルセミナーを、2017年1月にはフェーズ1としてテヘランで、3月にはフェーズ2として日本で開催し、イラン環境庁の人材育成に貢献しました。

e 韓国

日韓環境保護協力協定に基づき、これまでに18回の日韓環境保護協力合同委員会を開催し、両国間での環境協力に関して幅広い意見交換等を行っています。前回は2016年7月に韓国で開催しており、第19回は2017年に日本で開催することで合意しています。

f モンゴル

2012年12月、両国の環境大臣が「環境協力・気候変動・二国間クレジット制度に関する共同声明」に署名しました。その後、2013年1月には、他国に先駆けてJCMに関する二国間文書に署名し、同制度を正式に開始しました。2016年9月にモンゴルで初となるJCMクレジットが発行されました。2017年4月までに合計で2件のJCMプロジェクトが登録され、157トンのJCMクレジットが発行されました。

2016年11月、第10回日本・モンゴル環境政策対話をモンゴル・ウランバートルで開催し、気候変動(適応)、JCM、水銀管理等に関して意見交換を行い、モンゴルでの環境改善のために両省間での協力事業を推進していくことに合意しました。

g フィリピン

2015年10月、マニラで、廃棄物管理に関する環境対話を開催し、フィリピンが抱える廃棄物管理の課題解決に向け、今後の協力について協議しました。また、2017年1月に、安倍晋三総理とロドリゴ・ドゥテルテ大統領の立会いの下でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始しました。

h シンガポール

2014年3月に署名した「日本国環境省とシンガポール共和国国家環境庁との環境協力に関する同意書」に基づき、2015年1月に東京で第2回日本・シンガポール環境政策対話を開催し、廃棄物管理・リサイクル及び大気汚染管理について、双方の政策や経験を共有し、意見交換を行いました。さらに、2016年1月に、シンガポールで第3回日本・シンガポール環境政策対話を開催し、今後の協力の方向性について協議するなど、両国間の協力関係を強化しています。

i タイ

我が国循環産業海外展開事業化促進事業として、埋立ごみを対象とした廃棄物発電、貴金属残存めっき廃液等のリサイクル事業等の実現可能性(FS)調査を実施しました。また、2015年11月、日本国政府とタイ政府との間でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始しました。

j ベトナム

我が国が有する知見を活用し環境保護法改正を支援するため、環境法の専門家派遣等を実施しました。また、2013年7月、日本国政府とベトナム政府との間でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、2017年4月までに合計で4件のJCMプロジェクトが登録されました。さらに、2016年12月に、第3回日本・ベトナム環境政策対話を開催し、これまでの三年間の協力活動について総合的にレビューを行いました。そして、二度目となる「環境分野での協力に関する協力覚書」に署名を行いました。

ウ 開発途上国の適応支援

我が国の「気候変動の影響への適応計画」(2015年11月閣議決定)に基づき、インドネシア、モンゴル、太平洋の島嶼(しょ)国における適応計画策定に関連する支援を行ったほか、アジア太平洋地域における適応計画策定及び実施等に関する能力開発ワークショップを開催しました。また、2016年11月の気候変動枠組条約第22回締約国会議では、適応に関する国際的な情報基盤となる「アジア太平洋適応情報プラットフォーム」の構築等を含む「気候変動対策支援イニシアティブ」を発表し、同地域の途上国支援を進めていくことを発信しました。

エ 環境と貿易

我が国は、2013年7月に環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉に正式に参加しました。「環境」分野では、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと、環境規制を貿易・投資障壁として利用しないことなどについて議論を行い、2015年10月の大筋合意に貢献しました。2016年12月には、国会でTPP協定が承認されました。また、欧州連合(EU)、中国・韓国、カナダ、コロンビア等との経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)交渉において、適切かつ戦略的な環境配慮を確保すべく交渉を進めました。

オ 海外広報の推進

海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、英語版広報誌や環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版の刊行等、海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。

(2)開発途上地域の環境の保全

我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年2月に改定された「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靭(じん)な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

さらに、ODAを中心とした我が国の国際環境協力については、2002年に表明した「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」において、環境対処能力向上や我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針の下で、地球温暖化対策、環境汚染対策、「水」問題への取組、自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。

ア 技術協力

独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクト等、我が国の技術・知識・経験をいかし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。

例えば、JICA課題別研修「島嶼水環境の保全と管理」、「産業環境対策」等を始め、40か国以上の途上国からの研修員を受け入れ、環境管理に関する講義等の協力を行いました。

イ 無償資金協力

無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において実施されています。

また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

ウ 有償資金協力

有償資金協力(円借款・海外投融資)は経済・社会インフラへの援助等を通じ、開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対しても、JICAを通じて、積極的に円借款・海外投融資を供与しています。

エ 国際機関を通じた協力

我が国は、UNEPの環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組むためのプロジェクトに対して、主に無償資金を提供する多国間基金です。我が国は第6次増資(2014年7月~2018年6月)におけるトップドナー国として、意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しています。また、途上国における温室効果ガス削減対策の透明性に関する能力開発支援を行うため、パリ協定を契機にGEFに設置することが決定された透明性に関する能力開発イニシアティブ(Capacity Building Initiative for Transparency :CBIT)に我が国からも資金拠出を通じて貢献します。

2015年5月、我が国において、開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)への拠出を可能にするための法律が成立し、15億ドルの拠出取決めに署名しました。これにより、GCFは途上国支援を開始するために必要な条件が充足されたことから稼働しました。同年11月には、GCF理事会において最初の支援案件となる8件が採択され、2016年12月までに35件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国はGCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。我が国は、COP22の際に資金の追加拠出を表明するなど、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対してこれまで474万ドルを拠出し、積極的に貢献してきました。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、WMOにおけるGAW計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、GCOS、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合(GEO)においては、2005年の設立から2008年11月まで、また2009年11月以降執行委員会のメンバー国を務めるとともに、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」の後継枠組である「GEO戦略計画2016-2025」の策定作業部会の共同議長及び執筆委員を務めるなど、103の国と106の国際機関(2016年12月時点)が参加するGEOの活動を主導しています。また、GCOSの地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象機関と連携して推進しました。

気象庁は、WMOの地区気候センター(RCC)を運営し、アジア太平洋地域の気象機関に対し基礎資料となる気候情報やウェブベースの気候解析ツールを引き続き提供しました。さらに、アジア太平洋地域の気象機関を対象にした研修を実施するなど、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。

また、超長基線電波干渉法(VLBI)や全世界的衛星測位システム(GNSS)を用いた国際観測に参画するとともに、験潮、絶対重力観測等と組み合わせて、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しました。

さらに、東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のため、これら地域の国々と連携して環境モニタリングを実施しました。また、水俣条約の有効性の評価に資する水銀モニタリング能力向上について、米国環境保護庁(EPA)等と連携して推進しました。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実・強化

低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)では、2016年9月にドイツのヴッパタールにおいて、第8回年次会合が開催され、「パリ協定」をこれからどのように社会全体で実行に移していくかなどについて議論が行われました。

GANの傘下であるアジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を他の国際機関等との連携により支援し、アジア太平洋地域の気候変動適応策の立案・策定等のための情報共有・研修会等を行い、10月には第5回APANフォーラムを開催しました。

さらに、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)は、神戸市のAPNセンターを中核として、気候変動や生物多様性に関する国際共同研究等を支援し、アジア太平洋地域内の途上国を中心とする研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。

また、国連や各国と連携して地球環境の現状を把握するための全陸域の地理情報を整備する「地球地図プロジェクト」を主導しました。本プロジェクトは168か国・16地域が参加し、114か国・8地域分のデータが公開され、地球地図データ整備において一定の成果を達成したとして、2017年3月に本プロジェクトは完了しました。

さらに、気候変動問題の解決に向けて世界の産官学のリーダーがイノベーションの創出に向けた議論を行い、協力を促進するための国際的プラットフォームである「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の第3回年次会合を2016年10月に開催しました。

3 民間団体等による活動の推進

(1)都市間連携等を活用した協力の推進

環境分野において豊富な経験と国際協力の実績のある地方自治体等の協力の下、アジア各国の都市との間で、都市間連携を活用し、自治体が有する知見やノウハウ等を利用しつつ、JCMを通じて優れた低炭素技術の普及支援を実施しました。2016年度は、神奈川県、北海道、福島市、横浜市、川崎市、札幌市、北九州市による19件の取組を支援しました。

(2)ウェブサイトにおける情報提供

経済成長著しいアジアで活動を展開しようとする我が国企業が、優れた環境技術・サービスの積極的な海外展開を通じた国際協力を推進し、また低炭素社会づくりにおける都市の重要性を背景として、我が国自治体が海外都市との連携事業を強化することを目的とし、「アジアの低炭素発展に向けた情報提供サイト」(http://www.env.go.jp/earth/coop/lowcarbon-asia/(別ウィンドウ))等を開設しています。