環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 原子力利用における安全の確保

第9節 原子力利用における安全の確保

1 原子力規制行政に対する信頼の確保

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組を継続的に行っていくことが極めて重要であると認識しています。原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて、人と環境を守るという使命を果たすため、「独立した意思決定」、「実効ある行動」、「透明で開かれた組織」、「向上心と責任感」及び「緊急時即応」を組織理念として、様々な政策課題に取り組んでいます。

(1)原子力規制行政の独立性・中立性・透明性の確保

 平成26年度に引き続き、原子力規制委員会は、組織理念に基づき、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ独立して意思決定を行いました。

 中立性の確保については、平成24年9月に決定した原子力規制委員会委員の行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を遵守し、業務を遂行しています。平成27年9月19日に新たに委員に就任した伴委員についても、就任前3年間の寄付等の必要な情報を就任日に公開しました。

 透明性の確保については、原子力規制委員会、審査会合及び各種検討チーム等を公開するとともに、これらの議事録及び資料の公開、インターネット動画サイトによる生中継に加え、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せ及び被規制者との面談の概要等の公開、幅広い報道機関に対する積極的な記者会見(原子力規制委員会委員長定例会見は週1回、原子力規制庁定例ブリーフィングは週2回)を継続し、意思決定の透明性を確保しています。

 また、国内外の多様な意見を聴くため、外部とのコミュニケーションとして、以下の取組を行いました。

ア 事業者とのコミュニケーション

 原子力事業者の安全性向上に関する活動及び現行の規制制度の改善案等に関する意見を聴取するため、平成26年10月から開始した主要な原子力施設を保有する事業者の経営責任者及び原子力部門の管理責任者との意見交換を引き続き実施し、平成27年9月に、当初予定していた12事業者との意見交換を終了しました。

 平成27年10月28日の原子力規制委員会において、それまでの意見交換の結果の総括及び意見交換の継続に当たっての考え方を議論しました。その結果、今後は、経営責任者が能動的に意見を述べ、より充実した意見交換とするため、議題については極力制限を設けずに、事業者側から提案された議題等を含めて意見交換を行っていくこととしました。

 この方針に従い、平成28年2月から2事業者と意見交換を行い、事業者側から提案された議題についても意見交換を行いました。

 このほか、個別に課題を抱えている事業者の経営責任者と、原子力規制委員会において意見交換を行っています。

イ 地方公共団体等とのコミュニケーション

 原子力規制委員会では、地方公共団体や、全国知事会等の団体との面会を行っています。原子力規制委員会委員長は、平成27年8月20日に全国知事会原子力発電対策特別委員会委員長と、平成27年8月24日に全国知事会危機管理・防災特別委員会委員長と面会を行いました。また、原子力規制委員会委員長は、平成27年10月、8日間にかけて福島県を訪問し、14市町村の首長と面会を行い、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の現状等を説明し、意見交換を行いました。さらに、原子力規制庁長官や次長も、地方公共団体の首長や全国知事会等の代表者との面会を行っています。このほか、原子力規制庁職員が、立地自治体、地域住民等に対し、新規制基準適合性審査の結果や原子力災害対策指針の内容について説明を行うなど、原子力規制委員会委員長だけでなく様々なレベルで地方自治体とのコミュニケーションの充実に努めました。

ウ 国内外におけるその他のコミュニケーション

 原子力規制委員会における各種検討会合等において外部有識者を構成員に含め、その知見を活用しました。また、行政手続法(平成5年法律第88号)に基づくパブリックコメントに加え、同法において要求されていないパブリックコメントを平成27年度に計15件実施し、積極的に国民の意見を募集しました。さらに、原子力規制委員会では、米国、英国及びフランスの原子力規制機関のトップとしての豊富な経験を有する3名の有識者を国際アドバイザーとして委嘱しています。平成27年11月には、その国際アドバイザー3名と原子力規制委員会委員長及び委員との意見交換を行いました。

(2)組織体制及び運営の継続的改善

ア マネジメントシステムの本格的な運用と改善

 原子力規制委員会は、業務の品質の維持向上及び安全文化の醸成を目指し、原子力規制委員会マネジメント規程(平成26年9月3日原子力規制委員会決定)に基づくマネジメントシステムについて、平成27年4月から本格的な運用を開始しました。また、平成27年5月27日の原子力規制委員会において、「原子力安全文化に関する宣言」を決定し、原子力規制委員会が原子力安全文化の醸成に取り組む姿勢を組織内外に明確に示しました。

 平成27年度においては、このマネジメントシステムの下、「原子力規制委員会の組織理念」、「原子力安全文化に関する宣言」、「核セキュリティ文化に関する行動指針」、「原子力規制委員会第1期中期目標」及び「原子力規制委員会平成27年度年度重点計画」等に沿って業務を実施し、平成28年3月2日の原子力規制委員会において本年度重点計画の実績・成果について評価を行いました。この評価により次年度に向けた取組を踏まえた「平成28年度年度重点計画」を平成28年3月30日において決定しました。また、平成27年度においては主にマネジメントシステムの構築状況について内部監査を実施しました。内部監査を強化するため、監査を踏まえた機動的な指導等が図られるように、平成28年度機構要求にて「監査・業務改善推進室」を要求し、政府案として容認されました。

 行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)に基づく原子力規制委員会の政策評価については、マネジメントシステムと連携を図った上で、平成26年度実施施策の事後評価、平成27年度実施施策の事前分析を行い、平成27年8月26日に評価書を取りまとめました。

イ IRRSの受入れと指摘への対応

 国際原子力機関(IAEA)では、原子力規制に関する法制度や組織を含む幅広い課題について総合的に評価するレビューとして、総合規制評価サービス(IRRS)を実施しています。原子力規制委員会は、平成25年12月にIRRSの受入れを決定してから自己評価書の作成を進め、平成27年10月28日の原子力規制委員会において、自己評価書作成の過程で浮き彫りにされた課題に対する改善すべき事項を取りまとめました。

 また、平成28年1月11日から1月22日にかけてIRRSミッションチームが来日し、IRRSミッションチームによるレビューが行われました。IRRSミッションチームは、そのプレスリリースにおいて、「日本の原子力及び放射線の安全に係る規制機関が、2012年の設置以来、独立性及び透明性を体現しつつ規制活動に取り組んできた」と言及する一方、「原子力施設が再稼働していく中で、規制機関の技術的能力を更に強化する必要がある」ことなどを指摘しました。

 このIRRSミッションの最終報告書は、ミッション終了から約3か月後の平成28年4月頃にIAEAから原子力規制委員会に提示される予定ですが、原子力規制委員会は、IRRSミッションチームとの議論を通じて課題として認識したもの及びIRRSミッション受入れのため行った自己評価の過程で浮き彫りにされた改善すべき事項について、最終報告書の提示を待たずに、できるところから課題解決に向けた取組を開始するとの方針の下、既に検討を始めており、平成28年3月16日の原子力規制委員会において、IRRSにおいて明らかになった課題とこれらの課題への平成28年度の対応方針を取りまとめました。

(3)国際社会との連携

 原子力規制委員会は、原子力規制の向上のために、国際機関との連携や諸外国の原子力規制機関との協力を積極的に図っています。

 平成26年度に引き続き、原子力規制委員会は、国際機関との連携として、IAEAや経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の常設委員会(安全基準委員会(CSS)、原子力施設安全委員会(CSNI)等)を含む各種会議に参加し、東京電力福島第一原子力発電所の事故から得られた知見や教訓を国際社会と共有するとともに、国際的な原子力安全の向上のための情報・意見交換を行いました。

 また、諸外国の原子力規制機関との協力については、国際原子力規制者会議(INRA)、日中韓上級規制者会合(TRM)等へ参加し、諸外国の原子力規制機関との情報交換等を実施しました。さらに、各種国際条約に基づく各種会合への参加等も行いました。

(4)法的支援・訴訟事務への着実な対応

 原子力規制委員会の業務に係る法的支援・訴訟事務について、関係機関と連携しつつ対応を行いました。具体的には、平成27年度において、原子力規制委員会の事務に係る係争中の43件及び判決があった3件の訴訟について、関係省庁等と協力して、対応を行いました。また、原子力規制委員会発足後初となる発電用原子炉設置変更許可処分に係る異議申立てについて、適切に対応しました。

2 原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施

(1)原子炉等規制法に係る規制制度の見直し

ア 規制制度や運用の継続的改善

 IRRSミッションの受入準備の一環として、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。以下「原子炉等規制法」という。)等の規制制度の見直しの方向性について、平成27年10月9日及び10月28日の原子力規制員会において議論を行い、特に検査制度については、諸外国の検査制度等も参考にしつつ、改善に取り組むこととしました。

 また、保安規定の遵守状況等の検査(保安検査)の在り方については、平成24年度より引き続き検討を行っており、平成27年8月19日の原子力規制委員会において、この時点における検討結果を取りまとめました。取りまとめた事項のうち、「抜打ち型検査及び職員インタビュー手法」については、平成27年度の実用発電用原子炉に係る保安検査において本格運用を開始しており、その他の事項も含め、運用を行いながら改善を継続していくこととしています。

イ 緊急作業員の被ばくに関する規制の見直し

 平成26年7月から検討を開始した緊急作業時における被ばくに関する規制の見直しについて、パブリックコメントや放射線審議会への諮問を経て、平成27年8月5日の原子力規制委員会において関係規則等の改正案を決定し、同月31日に公布しました。

(2)原子炉等規制法及び放射線障害防止法に係る規制の厳正かつ適切な実施

ア 実用発電用原子炉に係る審査・検査の実施

 実用発電用原子炉については、原子力規制委員会が平成25年7月8日に新規制基準を施行した後、平成27年度までに11事業者から16原子力発電所26プラントについて、新規制基準への対応に係る設置変更許可申請等が提出されました。これらの申請については、原子力規制委員会において了承された方針に基づき厳正かつ適切に審査を行っているところであり、平成27年度に審査会合を計132回開催しました。

 このうち、四国電力伊方発電所(以下「伊方発電所」という。)3号炉について、発電用原子炉設置変更許可申請書に対する審査の結果の案を取りまとめ、事業者の技術的能力や原子炉の構造、設備に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集、審査の結果の案に係る経済産業大臣及び原子力委員会への意見聴取を行いました。これらの結果を踏まえ、平成27年7月15日の原子力規制委員会において審議し、伊方発電所3号炉に関する設置変更許可を行いました。

 なお、原子力規制委員会は、審査全体を効率的に進める工夫にも取り組んでおり、審査書を作成する際には、適合性審査の結果のみならず主な論点等も併せてまとめています。また、平成27年11月11日には、これまでの審査結果を踏まえ、適合性審査で確認すべき事項を整理し、約1,800ページにわたる「伊方発電所3号炉に係る新規制基準適合性審査の視点及び確認事項」を公表しています。

 このほか、平成27年度において、計4プラントの工事計画の認可を行いました。

 さらに、九州電力川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)1号炉及び2号炉並びに関西電力高浜発電所(以下「高浜発電所」という。)3号炉及び4号炉については、使用前検査において、認可された工事計画に従って工事が行われているかどうか等を確認し、川内原子力発電所1号炉に関しては平成27年9月10日に、川内原子力発電所2号炉に関しては同年11月17日に、高浜発電所3号炉に関しては平成28年2月26日に使用前検査に合格したと認め、使用前検査合格証を交付しました。

 このほか、原子力規制委員会では、原子力施設近傍に原子力規制事務所(全22か所)を設置し、原子力保安検査官等を配置しています。平成26年度に引き続き、現地駐在の原子力保安検査官を中心に、実用発電用原子炉を対象として定期的に保安検査を実施したほか、施設の形態を踏まえた、日々の原子力施設の巡視、運転状況の聴取、定例試験への立会い等を行いました。また、発電用原子炉施設においては、発電用原子炉設置者が行う安全確保上重要な行為等に対する保安検査等を実施しました。

イ 核燃料施設等に係る新規制基準適合性審査・検査の実施

 核燃料施設等については、原子力規制委員会が平成25年12月に新規制基準を施行した後、平成27年度までに9事業者から20施設の事業変更許可申請等が提出されました。これらの申請について、原子力規制委員会において了承された方針に基づき厳正かつ適切に審査を行っています。

 具体的には、再処理施設(日本原燃株式会社再処理事業所)及びMOX燃料加工施設(日本原燃株式会社再処理事業所)については、原子力規制委員会委員が原則として出席する審査会合を、ウラン燃料加工施設(日本原燃株式会社濃縮・埋設事業所等)及び試験研究用等原子炉施設のうち中高出力炉等(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JRR-3等)については、原子力規制庁が原則として行う審査会合を平成27年度に計55回開催し、厳正かつ適切に審査を進めています。

 これらの審査に当たっては、事業者側の法令解釈等に関する不明点等について行政相談を実施しました。

 このほか、原子力規制事務所の原子力保安検査官を中心に、核燃料施設等を対象として、保安検査を定期的に実施したほか、施設の形態を踏まえた、日々の原子力施設の巡視、運転状況の聴取、定例試験への立会い等を行いました。

ウ 原子力施設で発生したトラブルの原因究明や再発防止策の確認

 原子炉等規制法第62条の3では、原子力事業者等に対し、原子力施設等において原子力規制委員会規則で定める事故・故障等(以下「法令報告事象」という。)が生じたときには、原子力規制委員会への報告を義務付けています。

 平成27年度においては、研究開発段階にある原子炉及び再処理施設においてそれぞれ1件ずつ、実用発電用原子炉において2件の法令報告事象が発生しました。原子力規制委員会は、これらの法令報告事象のうち、研究開発段階にある原子炉及び再処理施設において発生した事象について、事業者から提出された原因と対策に係る報告書を精査し、その再発防止策が妥当なものであるとの評価を行いました。また、実用発電用原子炉において発生した2件の事象については、事業者から報告を受けたところであり、今後、事業者が行う原因究明及び再発防止策について、厳格に確認していきます。

 このほか、個別トラブル等のうち、中部電力浜岡原子力発電所5号炉の海水流入事象については、平成27年12月15日、事業者から報告書を受領し、ヒアリングを実施するなど適切に対応しています。また、東京電力柏崎刈羽原子力発電所等で確認された不適切なケーブル敷設事案については、平成28年1月29日に東京電力株式会社の報告書を受領し、平成28年2月10日の原子力規制委員会において、当該報告の概要並びに当該報告に対する原子力規制庁の評価及び今後の対応方針について原子力規制庁から原子力規制委員会が報告を受けました。

エ 実用発電用原子炉の運転期間延長認可に係る審査等の実施

 運転期間延長認可制度は、発電用原子炉を運転することができる期間が運転開始から40年であるのに対し、20年を上限として1回に限り延長することを認める制度であり、延長しようとする期間において要求事項を満足することを求めています。平成27年度に1事業者から2原子力発電所3プラントの申請が提出されました。これらの申請については、原子力規制委員会において了承した方針に基づき審査を行っているところであり、平成27年度においては審査会合を計5回開催し、厳正かつ適切に審査を進めています。

 高経年化対策制度は、運転開始後30年を経過する発電用原子炉施設について、以降10年ごとに機器・構造物の劣化評価及び長期保守管理方針の策定を義務付け、これを保安規定認可に係らしめる制度です。平成27年度までに、冷温停止状態が維持されることを前提とした評価のみを行っているプラントとして6事業者から8原子力発電所10プラント、運転を前提とした評価を行っているプラントとして2事業者から3原子力発電所7プラントの申請がありました。これらの申請について、厳正かつ適切に審査を行った結果、平成27年度において、冷温停止状態が維持されることを前提とした評価のみを行っている5プラント、運転を前提とした評価を行っている4プラントについて、高経年化対策制度に係る保安規定変更申請を認可しました。

オ 敷地内破砕帯の活動性の評価

 旧原子力安全・保安院での検討において発電所敷地内の破砕帯の追加調査が必要とされた6つの発電所について、関係学会から推薦を受けた有識者で構成する有識者会合を開催し、現地調査と評価を実施しています。

 平成27年度においては、平成26年度までに評価が終了している関西電力大飯発電所、日本原子力発電敦賀発電所及び東北電力東通原子力発電所に続き、平成27年9月30日の原子力規制委員会において、関西電力美浜発電所について、有識者会合における評価結果の報告を受けました。

 さらに、他の二つの発電所(北陸電力志賀原子力発電所及び日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ)について、現地調査、評価会合等を実施しています。

 なお、原子力規制委員会に報告された評価結果については重要な知見の一つとして参考としつつ、新規制基準適合性に係る原子力規制委員会としての判断は、新規制基準適合性審査において行うこととしています。

カ 火山活動のモニタリングに係る検討

 原子力施設における火山活動のモニタリングに関して、巨大噴火の可能性につながる異常が検知された場合に、原子力規制委員会として原子炉の停止を求めるなどの対応を行う必要があります。このため、原子力規制委員会は、巨大噴火に関連した火山学上の知見の整理を行うべく、平成27年度において、2回の検討チーム会合を開催しました。

 その後、平成27年8月26日の原子力規制委員会において、「原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提言取りまとめ」について報告を受けました。この提言を踏まえ、平成27年12月16日の原子力規制委員会において、原子力規制委員会における火山モニタリングに係る評価及び原子力規制委員会が策定する原子炉の停止等に係る判断の目安について、原子炉安全専門審査会の新たな調査審議事項とすることを決定しました。また、第7回原子炉安全専門審査会(平成28年3月25日)において、当該調査審議のため原子炉安全専門審査会に原子炉火山部会を設置することを決定しました。

キ もんじゅへの対応

 もんじゅについては、原子力規制委員会発足以降も、保守管理等の不備に係る種々に問題が次々と発覚していたことなどがあったため、原子力規制委員会は、平成27年10月21日、文部科学省からもんじゅの運営主体の認識及び評価に関する説明を聴取し、同年11月2日には、もんじゅの設置者である国立研究開発法人日本原子力研究開発機構から保守管理不備問題への対応状況に関する説明を聴取しました。

 そして、平成27年11月13日の原子力規制委員会において、これまでのもんじゅに関する一連の経緯と問題点を踏まえ、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構はもんじゅの出力運転を安全に行う主体として必要な資質を有していないと判断し、原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)第4条第2項の規定に基づき、文部科学大臣に対し、以下のとおり勧告を行いました。

勧告文(平成27年11月13日原規規発第1511131号)(抜粋)

 次の事項について検討の上、おおむね半年を目途として、これらについて講ずる措置の内容を示されたい。

一 機構に代わってもんじゅの出力運転を安全に行う能力を有すると認められる者を具体的に特定すること。

二 もんじゅの出力運転を安全に行う能力を有する者を具体的に特定することが困難であるならば、もんじゅが有する安全上のリスクを明確に減少させるよう、もんじゅという発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すこと。

ク 審査結果等の丁寧な説明

 立地自治体、地域住民等に対し、新規制基準適合性審査の結果について丁寧な説明を行うべく、高浜発電所3号炉及び4号炉の原子炉設置変更許可の審査結果について、立地自治体である福井県が設置した専門委員会等の場において原子力規制庁職員が説明するとともに、隣接する京都府内の7市町で開催された住民説明会等においても説明を行いました。また、平成27年7月15日の伊方発電所3号炉の原子炉設置変更許可後には、立地自治体である愛媛県及び伊方町が設置した専門委員会等の場において、審査結果について原子力規制庁職員が説明するとともに、愛媛県内の6市で開催された住民説明会等においても説明を行いました。

 審査結果の説明に当たっては、一般の方々が理解しやすいように絵や写真を用いた審査結果の概要資料を作成し説明を行うとともに、当該資料を原子力規制委員会のウェブサイトにおいて公表しました。

ケ 放射線障害防止法に係る制度整備等

 IRRSの自己評価書作成の過程で浮き彫りにされた課題のうち、日本国内の放射性同位元素等の取扱施設の緊急時対応体制について、IAEAが緊急時の準備と対応について要求している事項が国内でどの程度実施可能か検討するため、国内及び海外の実態調査を行いました。

 また、原子力規制委員会では、放射性同位元素等の放射線利用による放射線障害を防止するため、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)(昭和32年法律第167号)に基づき、許可使用者等について、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性汚染物の廃棄その他の取扱いに関する規制を行っています。平成27年度において、放射性同位元素等の使用について厳正かつ適切に審査を行い、新規に51件の許可を行うとともに、354件の立入検査を厳正かつ適切に行いました(平成25年4月1日に放射性同位元素の使用等に係る事務が原子力規制委員会へ移管されてからこれまでに、放射性同位元素等の使用について新規に125件の許可を行うとともに、895件の立入検査を行っています)。

(3)安全性と核セキュリティの両立のための効率的な連携

 安全性と核セキュリティの双方の措置の調和を図ることについては、「核セキュリティ文化に関する行動指針」と「原子力安全文化に関する宣言」において明記し、原子力規制委員会の組織理念の下、全ての職員の責務として位置付けました。これを踏まえ、安全性と核セキュリティの両立のため、核物質防護情報の管理、設置変更許可申請に対する審査の進め方等について効率的な連携を行いました。

3 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視等

(1)東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視

 原子力規制委員会は、施設の状況に応じた適切な方法による管理を行うため、平成24年11月7日に東京電力福島第一原子力発電所を「特定原子力施設」に指定するとともに、東京電力株式会社に当該発電用原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護のために措置を講ずべき事項を示しました。その後、措置を講ずべき事項に基づき策定した、「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画(以下「実施計画」という。)」の認可申請を受理し、留意事項を示した上で平成25年8月14日にこれを認可しました。平成27年度において、作業の進捗状況に応じ、計42件の実施計画の変更を認可するとともに、実施計画の遵守状況に関しては、現地に駐在する原子力保安検査官による日常的な巡視活動のほか、保安検査、使用前検査、溶接検査等により、東京電力株式会社の取組を監視しています。

 また、原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の措置に関する目標を示すことを目的として、平成27年2月18日の原子力規制委員会において、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成27年2月版)」を策定しました。その後、当該マップの策定から約半年が経過し、いくつかの目標が達成されたことなどの進捗状況を踏まえ、平成27年8月5日の原子力規制委員会において、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成27年8月版)」へ改定を行いました。

 さらに、東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年が経過しようとする中で、様々なトラブルに緊急的に対応していた「事態対処型」の状態から、廃棄物の管理や廃炉に向けた対策全般について、計画を一つ一つ十分に検討し、着実に対策を進めることのできる「計画的対処」の状態に移行したと認識し、平成28年2月3日の原子力規制委員会において、平成27年8月以降の進捗状況、廃炉作業の状況等を踏まえ、当該マップの改定について議論を行いました。

 その後、特定原子力施設監視・評価検討会等における議論等を踏まえ、平成28年3月2日の原子力規制委員会において、「福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成28年3月版)」(図6-9-1)へ改定を行いました。


図6-9-1 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成28年3月版)

 このほか、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業が進捗するに従って、放射性廃棄物等の安定的な長期管理がより一層重要な課題となったことを踏まえ、平成27年10月28日の原子力規制委員会において、特定原子力施設監視・評価検討会の体制を見直すとともに、特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会を開催することを決定しました。

 また、平成27年度における、東京電力福島第一原子力発電所に係る法令報告事象は2件でした。この2件の事象については、事業者から提出された原因と対策に係る報告書を精査し、その再発防止策が妥当なものであるとの評価を行いました。

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故の分析

 東京電力福島第一原子力発電所の事故についての継続的な分析は、原子力規制委員会の重要な所掌事務の一つであり、平成26年10月8日の原子力規制委員会において中間報告書を取りまとめました。平成27年度においては、国会事故調等の指摘事項以外の検討項目を抽出するため、原子力規制庁において東京電力株式会社による調査の進捗状況を確認するなどの取組を行いました。また、OECD/NEAによる調査研究活動等に参加しました。

(3)放射線モニタリングの実施

 原子力規制委員会では、政府が定めた「総合モニタリング計画(平成23年8月2日モニタリング調整会議決定、平成27年4月1日改定)」に基づき、東京電力福島第一原子力発電所の事故に係るモニタリングとして、福島県全域の環境一般モニタリング、東京電力福島第一原子力発電所周辺海域及び東京湾のモニタリング等を実施し、解析結果を毎週、公表しています。平成27年5月及び同年11月には、平成26年11月に続き、IAEA環境研究所の専門家等が来日し、関係省庁と共同で東京電力福島第一原子力発電所近海の海水、海底土及び水産物を採取し、日本のデータの信頼性が高いことを確認しました。平成28年2月10日の原子力規制委員会においては、東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年が経過しようとする中で、約5年間のモニタリング結果を整理し、今後のモニタリングの見直しの方向性について議論を行いました。

4 原子力規制等に関する技術・人材の基盤の構築

(1)最新の科学的・技術的知見に基づく規制基準の継続的改善

ア 規制基準の継続的改善

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、事故の教訓や最新の技術的知見、IAEA等の国際機関が定める規制基準を含む海外の規制動向を踏まえて、平成25年7月に発電用原子炉施設、同年12月に再処理施設の新規制基準等を施行しました。これらの規制基準(解釈・ガイド等を含む)については最新の科学的・技術的知見等を踏まえて、継続的に改善することとしています。

 平成27年度においては、特定重大事故等対処施設等に係る経過措置規定について、その設置義務の適正かつ円滑な履行を確保するため、必要な見直しを行いました。

 また、原子力規制委員会は、性能水準を満たす詳細仕様に関し、あらかじめ技術評価を行った上で、一般社団法人日本原子力学会、一般社団法人日本機械学会及び一般社団法人日本電気協会等の民間規格を活用することとしています。平成27年度においては、日本電気協会が策定した「原子炉構造材の監視試験方法[2013年追補版]」について、平成27年10月7日に技術評価書を取りまとめ、技術基準規則解釈の一部改正を行いました。

イ 廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討

 廃炉等に伴う放射性廃棄物の埋設に係る規制に関して、平成27年度において、廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チームを8回開催し、「炉内等廃棄物の埋設に係る規制の考え方について(案)」を策定するなど、規制の基本的考え方について審議し、検討を進めました。

(2)安全研究の実施等による最新の科学的・技術的知見の蓄積

ア 安全研究の推進

 原子力規制委員会が、その業務を的確に実施していくためには、原子力安全を継続的に改善していくための課題に対応した安全研究を実現し、科学的・技術的知見を蓄積していくことが不可欠です。

 原子力規制委員会は、これまでの安全研究の進捗等を踏まえ、平成27年度以降に実施すべき研究分野を見直すこととし、平成27年4月22日に「原子力規制委員会における安全研究について-平成27年度版-」を策定し、これに基づき9研究分野37件の安全研究プロジェクトを実施しました。安全研究の成果として、平成27年度においては、規制基準、各種ガイド類並びに審査及び検査における判断のための技術的基礎、実験データ等を取りまとめた4件の「NRA技術報告」を公表するとともに、13件の論文投稿、33件の学会発表を行いました。

 また、平成27年7月8日の原子力規制委員会において、平成26年度に実施した安全研究プロジェクトの中間評価及び事後評価について了承するとともに、年次評価について報告を受けました。

イ 国内外のトラブル情報の収集・分析

 安全研究の実施のほかにも、国内外で発生した事故・トラブル及び海外における規制動向に係る情報を収集・分析し、国内への対応について技術情報検討会、原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会において審議を行い、その結果について原子力規制委員会において報告を受けました。

(3)原子力規制人材の確保及び育成の仕組みの確立

 実効ある規制事務を遂行するためには、原子力規制委員会の高度な専門的・技術的判断を支える専門性を有する人材を確保するとともに、その専門性の更なる向上に継続的に取り組んでいくことが不可欠です。

ア 人材の確保

 実務経験者の確保については、積極的に募集を行い、安全審査・検査、原子力防災、安全研究等の業務を担当する技術系職員等を採用しました。

 また、若手職員の採用については、原子力規制庁独自の採用試験である原子力工学系採用試験も活用し、採用活動を行いました。

イ 研修体系等の整備

 職員の専門性の向上のために、平成26年度に引き続き、職員の人材育成に係る基本理念や人材育成の施策の大枠を明確にした「原子力規制委員会職員の人材育成の基本方針(平成26年6月25日原子力規制委員会決定)」等に基づき、職員が担当業務の遂行上必要な力量(知識及び技能)を計画的に修得できる仕組みの構築の整備、知識管理・技術伝承の取組の推進等に取り組みました。また、研修体系の見直しについては、検査官等が受講すべき研修やOJT等の見直しを行いました。平成26年度補正予算にて発電炉の研修用プラントシミュレータを開発・整備し、これを用いた研修を開始しました。また、平成27年度補正予算を措置し、より実践的な訓練が可能となる設備の付加、改良型沸騰水型発電用原子炉等の炉型の追加の開発・整備に着手したところです。

ウ ノーリターンルールの運用方針明確化

 原子力規制委員会の職員の原子力利用を推進する行政組織への直接の配置転換については、平成26年度に引き続き、原子力規制委員会設置法附則の規定を厳格に運用しています。この運用に関しては、平成27年9月30日の原子力規制委員会において、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織を明確にした運用方針を決定し、この方針に基づき適切に人事異動を行うこととしました。

5 核セキュリティ対策の強化及び保障措置の着実な実施

(1)核セキュリティ対策の強化

ア 核セキュリティ上の課題への対応

 核セキュリティにおける主要課題への対応に関しては、平成25年7月より、核セキュリティに関する検討会において、個人の信頼性確認制度、輸送時の核セキュリティ対策並びに放射線物質及び関連施設に係る核セキュリティといった個別課題の具体的検討を進めるため、それぞれの課題を取り扱うワーキンググループを開催して検討を行っています。個人の信頼性確認制度の導入に関しては、警察等の関係行政機関と連携を取りつつ検討を行い、信頼性確認を行う者の範囲、信頼性確認の項目、具体的にどのような確認を行うのかといった個人の信頼性確認制度の方向性について報告書を取りまとめ、平成27年10月の原子力規制委員会において、個人の信頼性確認制度の詳細な制度設計に入ることを決定しました。

 また、平成26年度に受け入れた、IAEAの国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)のミッションにおける報告書の勧告事項や助言事項について、関係省庁と協議しつつ、継続的な改善の一環として措置を講じています。

 さらに、原子力規制委員会における核セキュリティ文化を醸成する取組についても、平成26年度に引き続き、職員に対する研修等を通じて取り組んでいます。

イ 核物質防護検査等の実施

 原子力規制委員会では、特定核燃料物質の防護のために事業者及びその従業者が守らなければならない核物質防護規定の認可、当該規定の遵守状況の検査を行っています。平成27年度において、核物質防護規定の変更の認可を37件、核物質防護規定の遵守状況の検査を59件実施し、核物質防護規定の遵守状況の検査においては事業者における核セキュリティ文化醸成や、サイバーセキュリティ対策を含めた防護措置等の確認を厳正かつ適切に行いました。

(2)保障措置の着実な実施

 原子力規制委員会は、日・IAEA保障措置協定及び追加議定書に基づき、我が国の核物質が核兵器等に転用されていないことの確認をIAEAから受けるため、原子力施設や大学等が保有する全ての核物質の在庫量等を取りまとめてIAEAに報告し、その報告内容が正確かつ完全であることをIAEAが現場で確認をするための査察等への対応を行いました。これらの活動を通じて国際社会における我が国の原子力の平和的利用への信用の維持に努めています。なお、東京電力福島第一原子力発電所においても、平成26年度に引き続き、廃炉作業の進捗に合わせた保障措置活動を行っています。

 また、平成27年6月19日にIAEAより公表された「2014年版保障措置声明」においても、我が国に対しては、平成16年以降継続して「全ての核物質が平和的利用の範囲にあると見なされる(拡大結論)」との評価がなされています。

6 原子力災害対策及び放射線モニタリングの充実

(1)原子力災害対策に係る取組

 平成24年9月19日の原子力規制委員会の設置に合わせ、原子力基本法(昭和30年法律第186号)、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)等の関連法令が改正され、政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築されました。平成26年度には、内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織が新しく発足し、現在の原子力災害対策に係る政府の体制については、図6-9-2のとおりとなっています。


図6-9-2 原子力防災体制

 また、原子力災害対策特別措置法では、原子力規制委員会は、事業者、国、地方自治体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため、原子力災害対策指針を定めることとされています。このため、原子力規制委員会においては、平成24年10月31日に同指針を策定し、平成24年度に1度、平成25年度に2度の改正を行いました。平成27年4月22日には、東京電力福島第一原子力発電所に係る原子力災害対策、緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)外におけるプルーム通過時の防護措置実施の範囲及び判断基準、予測的手法の記載の削除や、緊急時モニタリング結果の集約及び迅速な共有が可能となる仕組みの整備について検討を行い、同指針を改正しました。また、平成27年8月26日には、原子力災害に対応する医療機関や国、立地道府県等及び事業者の役割、原子力災害時医療に関係する者に対する研修・訓練等、原子力災害と自然災害等との複合災害を見据えた連携、避難退域時における検査及び除染等の具体化について、同指針に反映しました。

 あわせて、原子力災害時医療体制について、高度被ばく医療支援センター、原子力災害医療・総合支援センター、原子力災害拠点病院及び原子力災害医療協力機関に関する施設要件を定め、高度被ばく医療支援センターとして国立研究開発法人放射線医学総合研究所、国立大学法人弘前大学、公立大学法人福島県立医科大学、国立大学法人広島大学、国立大学法人長崎大学の5施設、原子力災害医療・総合支援センターとして国立大学法人弘前大学、公立大学法人福島県立医科大学、国立大学法人広島大学、国立大学法人長崎大学の4施設を同日付けで指定しました。

 このほか、平成28年3月29日、原子力災害事前対策等に関する検討チームを開催し、核燃料施設等に係る原子力災害対策の在り方に関する検討を開始しました。

(2)放射線モニタリングの充実

ア 緊急時モニタリング体制の充実・強化

 原子力災害対策指針に基づく実効性のある緊急時モニタリングを行うために、平成27年7月には、愛媛地方放射線モニタリング対策官事務所に地方放射線モニタリング対策官を増員し、現地における緊急時モニタリング体制の強化を図りました。また、原子力規制庁において、緊急時モニタリングに関する詳細な事項について取りまとめている「緊急時モニタリングについて(原子力災害対策指針補足参考資料)」を平成27年4月22日及び8月26日に改訂し、公表しました。さらに、緊急時モニタリング結果の集約、関係者間での共有及び公表を迅速に行うことが可能な「緊急時放射線モニタリング情報共有・公表システム」について、平成27年6月から運用を開始しました。

イ 全国の環境中の放射線等の測定

 平成26年度に引き続き、原子力発電施設等の周辺地域における放射線の影響及び全国の環境放射能水準を調査するため、全国47都道府県における環境放射能水準調査、原子力発電所等周辺海域(全16海域)における海水等の放射能分析、原子力発電施設等の立地・隣接道府県(24道府県)が実施する放射能調査等の支援を行いました。

 なお、平成28年1月6日の北朝鮮による核実験を実施したとの発表等を受け、同日付の放射能対策連絡会議申合せに基づき、我が国の放射能影響を把握するため、都道府県等関係機関の協力を得て、モニタリングを強化し、その結果を公表しました。

(3)原子力規制委員会における危機管理体制の整備・運用等

ア 緊急時対応能力の強化

 原子力規制委員会としての危機管理に係る取組として、原子力災害対策指針、各種計画等の改正結果を踏まえて、原子力規制委員会防災業務計画、初動対応マニュアル、原子力緊急事態等現地対応標準マニュアル及び原子力規制委員会国民保護計画を修正等するとともに、業務継続計画に基づく初動対応訓練を実施し、原子力規制委員会が行う緊急時対応の円滑かつ的確な実施のための危機管理体制の基盤整備に努めました。

 また、原子力災害対策マニュアル、NBC(核・生物・化学)テロ現地連携モデル、防災基本計画、国民保護に関する基本指針の修正等に協力するとともに、各種訓練に参加し、政府全体の緊急時対応の円滑かつ的確な実施に寄与しました。

 このほか、平成26年度に引き続き、実務研修及び防災携帯の整備(機種更新及びアドレス帳更新)等を通じて、原子力規制委員会初動対応マニュアルに基づく初動対応能力の維持向上に努めました。

 さらに、平成27年11月8日、11月9日に、伊方発電所を対象として、国、地方公共団体、原子力事業者の合同で、原子力災害対策特別措置法に基づく平成27年度原子力総合防災訓練が実施され、内閣府政策統括官(原子力防災担当)と原子力規制委員会との連携を含め、複合災害時の各関係機関における防災体制の確認や「伊方地域の緊急時対応」に基づく避難計画の実効性の検証等を行いました。

 また、平成26年度に引き続き、原子力規制庁として原子力事業者防災訓練に参加し、原子力規制庁緊急時対応センター(ERC)と原子力施設事態即応センターとのより幅広い情報共有の在り方を追求するなど、緊急時対応能力の向上に向けて改善を図っています。

イ 事業者防災の強化

 事業者における危機管理に係る取組としては、原子力災害対策特別措置法に基づき実施される原子力事業者防災訓練について、平成25年度から、原子力事業者防災訓練報告会を開催し、当該訓練の評価を行っています。平成27年度の報告会においては、平成26年度の報告会で抽出された共通の課題等に基づいて原子力規制庁が策定した評価指標(案)を用いて、試行的な評価を行った結果等について意見交換を行い、これまでの訓練実績の積み重ねにより、訓練内容が着実に高度化してきていることを確認しました。