環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第5節 地域づくり・人づくりの推進

第5節 地域づくり・人づくりの推進

1 地域における環境保全の現状

(1)地方環境事務所における取組

 地方環境事務所においては、地域の行政・専門家・住民等と協働しながら、廃棄物・リサイクル対策、地球温暖化防止等の環境対策、除染の推進、国立公園保護管理等の自然環境の保全整備、希少種保護や外来種防除等の野生生物の保護管理について、地域の実情に応じた環境保全施策を展開しました。

(2)地域における環境保全施策の計画的・総合的推進

 各地方公共団体において設置された地域環境保全基金により、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援、セミナーや自然観察会等のイベントの開催、ポスター等の啓発資料の作成、地域の環境保全活動に対する相談窓口の設置等が行われました。

2 持続可能な地域づくりに関する取組

 東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、地域主導のローカルなネットワーク構築が危機管理・地域活性化の両面からも有効との見方が拡大しています。また、中長期的な地球温暖化対策や、気候変動による影響等への適応策、資源逼(ひっ)迫への対処を適切に実施するためには、地域特性に応じた低炭素化や地域循環圏の構築、生物多様性の確保への取組等を通じ、持続可能な地域づくりを進めることが不可欠です。

 平成26年度からは、地域の特性を踏まえた低炭素な地域づくりをより一層推進するため、地方公共団体実行計画(区域施策編)に基づく戦略的な再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入支援や、防災拠点への自立・分散型エネルギー導入に関するモデル事業等の支援を行いました。また、地域における低炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、地域低炭素投資促進ファンドからの出資による支援を行いました。

 第四次環境基本計画において目標として掲げられた持続可能な社会を実現するためには、ライフスタイルそのものを持続可能な社会に適合させていくことも重要です。このため、国民一人一人が自らのライフスタイルを見直す契機とすることを目的として、企業、団体、個人等の幅広い主体による「環境と社会によい暮らし」を支える優れた取組を募集し、表彰するとともに、その取組を広く国民に対して情報発信する「グッドライフアワード」を、平成25年度から実施しています。平成27年度は、応募があった155の取組の中から、最優秀賞1、優秀賞3等、計10の取組を環境大臣賞として表彰しました。

 地域で循環可能な資源はなるべく地域で循環させ、地域での循環が困難なものについては循環の環を広域化させていくという考え方に基づいて構築される「地域循環圏」の形成・高度化を促進するため、全国3地域においてモデル事業を実施しました。また、モデル事業の点検・評価等を踏まえ、地域循環圏を構築する際の諸課題を整理し、「地域循環圏形成推進ガイドライン(平成24年7月策定)」が地方公共団体にとって使いやすいものとなるよう、その再編集を行いました。

 特別な助成を行う防災・省エネまちづくり緊急促進事業により、省エネルギー性能の向上に資する質の高い施設建築物を整備する市街地再開発事業等に対し支援を行いました。

 気候変動の影響は、気候、地理、社会経済条件等によって異なります。また、適応を契機として、各地域がそれぞれの特徴をいかした新たな社会の創生につなげていく視点も重要であることから、地域においても適応の取組を進めていくことが必要です。そのため、地方公共団体における気候変動による影響の評価や適応計画策定の支援に加え、最新の科学的な知見や地域における気候変動の身近な影響やそれに対する適応策を取り上げたシンポジウムを全国3か所で開催するなど普及啓発を実施しました。

3 公害防止計画

 環境基本法(平成5年法律第91号)第17条に基づく公害防止計画について、現在21地域が公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和46年法律第70号)に基づく公害防止対策事業計画を環境大臣の同意を得た上で定め、国の財政上の特別措置を受けています。政府では、公害防止対策事業等の進捗状況等について調査を行いました。

4 環境教育・環境学習の推進

 平成23年6月に改正された環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号。以下「環境教育等促進法」という。)及び同法に基づく基本方針(平成24年6月閣議決定)に基づいた、人材認定等事業の登録を始めとする各種制度の運用を行うとともに、運用状況についてインターネットによる情報提供を行いました。また、関係府省が連携して、家庭、学校、職場、地域その他のあらゆる場における、生涯にわたる質の高い環境教育の機会を提供することが重要であることから、環境教育・環境学習に関する各種施策を実施しました。

5 環境保全活動の促進

(1)市民、事業者、民間団体等による環境保全活動の支援

 ECO学習ライブラリー(https://www.eeel.go.jp/(別ウィンドウ))により、地域や各主体ごとに活用できる様々なコンテンツ情報を提供し、環境カウンセラー登録制度の活用により、事業者、市民、民間団体等による環境保全活動等を促進しました。

 また、独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成やセミナー開催等により、それぞれの活動を振興するための事業を行いました。このうち、平成27年度の助成については、428件の助成要望に対し、207件、総額約6.4億円の助成決定が行われました。

 さらに、全国で環境活動を行う高校生や大学生等のネットワークの構築のため、環境省及び独立行政法人環境再生保全機構において「全国ユース環境ネットワーク促進事業」を創設し、全国の高校に対し情報誌を提供するとともに、全国から選抜された高校生による「全国ユース環境活動発表大会」を平成28年2月13日・14日に国連大学において開催し、優秀校に対して環境大臣賞等を授与しました。

 さらに、森林ボランティアを始めとした企業、NPO等多様な主体が行う森林づくり活動等を促進するための事業及び緑の募金を活用した活動を推進しました。

(2)各主体のパートナーシップによる取組の促進

 事業者、市民、民間団体等あらゆる主体のパートナーシップの取組支援や交流の機会を提供する拠点として、国連大学やNPO等との協働により運営している「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」において、パートナーシップへの理解と認識を深めるためのセミナー、市民や民間団体等の声を政策に反映することを目的とした意見交換会等を開催しました。また、地方での環境パートナーシップ形成促進拠点として「地方環境パートナーシップオフィス(EPO)」を全国各ブロック(8か所)に設置しています。平成27年度は、環境教育等促進法に基づく協働取組のモデル事業を国内各地で実施しました。

 国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)の取組は、第2章第2節2(1)を参照。

6 「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」後の取組

 「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の最終年である2014年(平成26年)に開催された「ESDに関するユネスコ世界会議」を経て、「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が正式に開始されたことを踏まえ、「持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議」において、「我が国における「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」実施計画(ESD国内実施計画)」を策定しました。また、ESD活動に取り組む様々な主体が参画・連携する地域活動の拠点を形成し、地域が必要とする取組支援や情報・経験を共有できるESD活動支援センターを開設しました。

 このほか、国連大学が実施する世界各地でのESDの地域拠点(RCE)の認定、アジア太平洋地域における高等教育機関のネットワーク(ProsPER.Net)構築等の事業を支援しました。

 文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会は、平成27年2月に日本ユネスコ国内委員会教育小委員会にESD特別分科会を設置し、ESDの更なる推進方策について議論し、8月に報告書「持続可能な開発のための教育(ESD)の更なる推進に向けて」を取りまとめました。また、優れたESDの取組を世界に広めるため、日本の財政支援により創設された「ユネスコ/日本ESD賞」については、平成27年11月の第38回ユネスコ総会において、第1回表彰式がユネスコ本部にて開催されました。さらに、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、国際的な連携を実践する学校)の拡充に取り組むとともに、ESDコンソーシアム事業を実施するなど、ESDの推進に取り組みました。

7 環境研修の推進

 環境調査研修所においては、国及び地方公共団体等の職員を対象に、行政研修、分析研修及び職員研修の各種研修を実施しています。

 平成27年度においては、行政研修18コース(20回)(日中韓三カ国合同環境研修の協同実施を含む)、分析研修15コース(20回)及び職員研修8コース(9回)の合計41コース(49回)を実施しました。また、国際協力の一環として、JICA集団研修「水環境モニタリング」を始め、各種研修員の受入れを行いました。27年度の研修修了者は、1,942名(前年度1,890名)となりました。修了者の研修区分別数は、行政研修(職員研修含む)が1,654名、分析研修が288名でした。そのほか、JICA集団研修「水環境モニタリング」の修了者が11名でした。所属機関別の修了者の割合は、国が13.7%、地方公共団体が83.5%、独立行政法人等が2.8%となっています。