環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

 地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保

ア 多国間の枠組みによる連携

(ア)国連を通じた取組

a 国連持続可能な開発会議(リオ+20)等における取組

 2012年(平成24年)の国連持続可能な開発会議(以下「リオ+20」という。)において立上げが合意された持続可能な開発目標(SDGs)に関するオープン・ワーキンググループ(OWG)は、2013年(平成25年)1月から計13回開催され、SDGs報告書が2014年(平成26年)7月に公表されました。我が国も各OWG会合において、各テーマの下で我が国が重視する取組等について発言するなど、議論に貢献しました。同報告書を踏まえ、2015年(平成27年)9月の国連サミットにおいてSDGsを核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsの17の目標には、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等、多くの環境関連の目標が含まれました。

 また、環境研究総合推進費により平成25年度から開始した「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究」等では、各分野の研究者が共同で、指標、開発、ガバナンスといった側面について、学際的な研究を行っており、公開シンポジウムを開催するなど多様な視点からSDGsへの議論がなされました。さらに、持続可能な消費と生産(SCP)パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、同じくリオ+20で合意された「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み」が2014年(平成26年)から本格的に始まりました。本枠組みの6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイルと教育」の共同リード機関として、アジアを始めとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を開始しました。

b 国連環境計画(UNEP)における活動

 我が国は、国連環境計画(UNEP)の環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見をいかし、多大な貢献を行っています。

 大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。

 また、UNEPアジア太平洋地域事務所が実施する「気候変動に強靱(じん)な発展支援プログラム」への拠出を通して、アジア太平洋地域の途上国に対し適応基金や緑の気候基金(GCF)へのダイレクトアクセスの能力開発を行いました。世界適応ネットワーク(GAN)への支援を通じて、世界各地域の取組を国際的取組につなげるための検討を行いました。

(イ)経済協力開発機構(OECD)における取組

 我が国は、2012年(平成24年)1月から経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に参加してきました。2015年(平成27年)6月にはOECD閣僚理事会が開催され、我が国は実効性ある気候変動対策の重要性や気候資金に対する我が国の貢献を説明しました。また、閣僚理事会では、政策間の不調和を特定し、それらの調和のためのガイダンスを提供することを目的とした低炭素経済への移行のための政策の調和レポートが提出されました。

(ウ)主要国首脳会議(G7サミット)における取組

 2015年(平成27年)6月にドイツで開催されたG7エルマウ・サミットでは、気候変動や開発等が議題として取り上げられました。気候変動について、G7各国の首脳は、2050年(平成62年)までに2010年(平成22年)比で最新のIPCCの提案の40%から70%の幅の上方に削減するという目標を共有することを支持しました。また、開発については、野心的で人間中心で普遍的な「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の達成にコミットするとともに、新たなアジェンダを後押しするため、資金的・非資金的実施手段の促進を支援することとしました。

 加えて、首脳宣言では資源効率性(3Rを含む)や海洋ごみ等も取り上げられました。資源効率性(3Rを含む)については資源効率性のためのG7アライアンスが設立され、海洋ごみについては解決の重要性が指摘されました。

(エ)国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

 我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より連続して理事国を務めるとともに、2015年(平成27年)1月に開催されたIRENA第5回総会の議長国を務めるなど、IRENAの諸活動に積極的に参加してきました。日本政府は、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、IRENAとの共催により、国際セミナー、国際ワークショップ及び訪日研修を実施しました。

(オ)アジア太平洋地域における取組

a 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

 2015年(平成27年)4月に中国・上海において第17回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM17。以下、日中韓三カ国環境大臣会合を「TEMM」という。)を開催し、2015年(平成27年)から2019年(平成31年)の今後5年間に3か国で協力して取り組む「環境協力に係る日中韓三カ国共同行動計画」を策定しました。共同行動計画では、平成26年のTEMM16において決定された優先9分野について、活動を強化していくことが合意されました。

 優先9分野及びTEMM17の成果については、第1部パート3第1章第2節を参照。

b ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合

 2015年(平成27年)10月に、ベトナム・ハノイにおいて第14回ASEAN+3環境大臣会合が開催されました。この会合で、第6回環境的に持続可能な都市(ESC)ハイレベルセミナーが2015年(平成27年)2月にマレーシアで開催されたことを報告し、また次回のセミナーから、SDGsの実現を視野に入れた新たなフォーラムとして発展させることを提案し、各国から支持を得ました。

 第7回ESCハイレベルセミナーは2016年(平成28年)3月にベトナム・ハノイで開催されました。

c 北東アジア環境協力プログラム(NEASPEC)

 北東アジア地域環境協力プログラム(NEASPEC)第20回高級実務者会合(SOM20)が2016年(平成28年)2月に東京で開催され、「越境大気汚染」、「国境地域の自然保護」、「海洋保護区」、「低炭素都市」、「砂漠化と土地劣化」等をテーマとして議論を行いました。また、2016年(平成28年)から2020年(平成32年)までの今後5年間の戦略計画を採択しました。

d その他の取組

 2015年(平成27年)6月に、タイ・パタヤにおいて「第24回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー」を開催し、アジア太平洋地域(16か国)、国際機関及び研究機関等(11機関)から、約50名の気候変動に関する担当官や専門家等が参加し、各国が定める2020年(平成32年)以降の自国が決定する貢献案(INDC)の内容や準備状況等について情報共有し、活発な議論が行われました。

 2015年(平成27年)10月に、タイ天然資源環境省天然資源・環境政策計画局との共催により、タイ・パタヤにおいて「アジア太平洋地域における適応計画の推進に関するワークショップ:国・地域・分野別のイニシアティブの統合」を開催しました。本ワークショップには、アジア太平洋地域(15か国)、国際機関及び研究機関等(10機関)が参加し、同地域における適応計画の策定プロセス及び適応行動の実施に関する事例から得られる経験や教訓について経験・知見の共有、活発な意見交換を行い、互いに理解を深めることができました。

(カ)クリーンアジア・イニシアティブ

 環境と共生しつつ経済発展を図り、持続可能な社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、様々な環境協力を戦略的に展開しています。

a アジアEST地域フォーラム

 2015年(平成27年)11月にネパールのカトマンズにおいて第9回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを開催し、アジア地域各国等から参加した代表と、災害にレジリエント(強靭(じん))な交通や気候変動への適応等に関する政策、先進事例等の共有を図りました。

b 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

 2015年(平成27年)11月に、タイのバンコクにおいて第17回政府間会合が開催され、PM2.5やオゾンのモニタリングの推進を含む東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の対象範囲の拡大を盛り込んだ、新しい中期計画(2016年~2020年(平成28年~平成32年))が承認されました。

c アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

 2016年(平成28年)1月にラオスにおいて第11回年次会合及びトレーニングワークショップを開催し、各国の産業排水管理や生活排水対策に関する課題の解決に向けて、意見交換を行いました。

d アジア水環境改善モデル事業

 我が国企業による海外での事業展開を通じ、アジア等の水環境の改善を図ることを目的に、平成23年度よりアジア水環境改善モデル事業を実施しています。27年度は、過年度に実施可能性調査を実施した4件(ベトナム(2件)、マレーシア、ソロモン諸島)の現地実証試験を実施したほか、新たに公募により選定された民間事業者が、ベトナム(排水処理の省コスト対応制御システムの普及事業及びセプティックタンク汚泥処理事業)、ミャンマー(染色排水処理事業)の実施可能性調査を実施しました。

e アジア・コベネフィット・パートナーシップ

 2010年(平成22年)11月に創設された「アジア・コベネフィット・パートナーシップ」において、アジアの途上国における環境汚染対策と温室効果ガス排出削減を同時に効率的に推進するための方策検討に積極的に参画するとともに、ウェブサイト(http://www.cobenefit.org/(別ウィンドウ))やコベネフィット白書の出版を通じ、コベネフィット・アプローチの普及啓発に取り組みました。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

a 米国

 2015年(平成27年)8月に日米環境政策対話を大臣級で開催し、特に水銀、気候変動、アジア太平洋地域の大気環境管理、環境教育、除染、子供の健康と環境、環境影響評価等について議論し、今後の協力として、プロジェクトの形成や事務方での情報交換等を行うことを確認しました。

b フランス

 2015年(平成27年)12月に丸川珠代環境大臣とセゴレーヌ・ロワイヤルエコロジー・持続可能開発・エネルギー大臣との間で、両国間の友好関係の強化と、国際及び国内レベルにおける低炭素社会の構築を目指した環境協力の覚書への署名が行われました。

(イ)開発途上国との連携

a 中国

 日中環境保護協力協定に基づき、日中環境保護合同委員会を開催するなど、これまで様々な機会を捉えて、日中それぞれの環境政策及び大気汚染、気候変動対応、廃棄物、生物多様性等における環境協力を推進しました。

 気候変動については、2015年(平成27年)7月に、気候変動対策に関する研究面からの知見について両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が、中国エネルギー研究所(能源研)と協力して気候変動に係る日中政策研究ワークショップを開催しました。日中両国を始め欧米各国の政府系・非政府系研究機関等が活発な意見交換を行いました。

 大気分野については、日中間の都市間連携による大気環境改善に関する協力を進めるとともに、2007年(平成19年)12月に、両国の環境大臣間での合意により開始した、環境汚染対策と温室効果ガスの排出削減の双方に資するコベネフィット協力について、2011年(平成23年)4月には、協力の第2フェーズに係る覚書に合意し、中国第12次五ヶ年計画の大気汚染物質削減目標に資する協力を進めました。

 水分野については、2015年(平成27年)3月に2国間で締結された意向書に基づき、畜産排水対策における共同研究、訪日研修等を実施しました。

b インド

 2014年(平成26年)1月、安倍晋三総理とマンモハン・シン首相との首脳会談が行われ、共同声明「日インド戦略的グローバル・パートナーシップの強化」において、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)に関する協議を継続することを共有しました。また、2015年(平成27年)12月、安倍総理とモディ首相との主脳会談が行われ、共同声明「日印ヴィジョン2025 特別戦略的グローバル・パートナーシップ」のファクトシートにおいて、日本の対インド投資を通じ、低炭素に関する先端技術の移転を促進するため、更なる協力が必要との認識を共有しました。

 2015年(平成27年)9月、インド・ニューデリーにて「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」が開催され、主要排出国から提出されたINDC、各国の気候変動政策・対策、国際協力の在り方、気候変動に係る2020年(平成32年)以降の枠組みの在り方について、両国の政策担当官・研究者が意見交換を行いました。

c インドネシア

 2007年(平成19年)12月に両国の環境大臣間で締結したコベネフィット協力に関する共同声明に基づき協力を実施してきたところですが、2015年(平成27年)7月に協力の第3フェーズに係る文書に署名し、農産業分野を対象とした調査研究、人材育成及び実証事業等を行いました。

 また、2007年(平成19年)11月、日本国政府とインドネシア政府との間で両国間の気候変動分野における具体的な協力と更なる対話の促進が重要との認識の下、森林保全、JCM、測定・報告・検証(MRV)の強化、低炭素成長の実現等における協力をうたった二国間協力文書が合意され、両国の間で具体的な施策に関する協議を進めました。その後、2013年(平成25年)8月には、JCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、2014年(平成26年)10月には、JCMプロジェクトが世界で初めて登録されました。その後2015年(平成27年)5月には更に2件登録され、インドネシアにおいては計3件のJCMプロジェクトが登録されました。

 さらに、2012年(平成24年)12月に両国大臣が署名した「日本国環境省とインドネシア共和国環境省の間の環境協力に関する協力覚書」に基づき2014年(平成26年)2月に開催した第1回日本・インドネシア環境政策対話を開催し、今後の協力方針を位置付けました。また、この成果を基に、日本とインドネシアの協力をより効果的に進めていくことを目的に、第2回環境政策対話の準備を進め、両国の環境協力を引き続き強化しています。また、両国の都市間環境協力についてJCMの活用を想定した支援等を継続的に実施しています。

d モンゴル

 2012年(平成24年)12月、両国の環境大臣が「環境協力・気候変動・二国間クレジット制度に関する共同声明」に署名しました。その後、2013年(平成25年)1月には、他国に先駆けてJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、2015年(平成27年)6月にはモンゴルにおける最初のJCMプロジェクトとして2件のプロジェクトが登録されました。

 2015年(平成27年)3月、第9回日本・モンゴル環境政策対話を日本で開催し、気候変動、大気汚染、エコツーリズム等に関して双方の経験を共有し、モンゴルの抱える環境問題解決のために意見交換を行いました。また、2015年(平成27年)5月、「日本国環境省とモンゴル国自然環境グリーン開発観光省の間の環境協力に関する協力覚書」を署名し、今後も両国の包括的な環境協力を一層推進することに合意しました。

e フィリピン

 2015年(平成27年)10月、マニラで、廃棄物管理に関する環境対話を開催し、フィリピンが抱える廃棄物管理の課題解決に向け、今後の協力について協議しました。また、同年12月に、日本国政府とフィリピン政府との間でJCMの構築に向けて覚書への署名を行いました。

f 韓国

 日韓環境保護協力協定に基づき、これまでに17回の日韓環境保護協力合同委員会を開催し、両国間での環境協力に関して幅広い意見交換等を行っています。前回は2015年(平成27年)5月に東京で開催しており、第18回は韓国で開催することで合意しています。

g シンガポール

 2014年(平成26年)3月に署名した「日本国環境省とシンガポール共和国国家環境庁との環境協力に関する同意書」に基づき、2015年(平成27年)1月に東京で第2回日本・シンガポール環境政策対話を開催し、廃棄物管理・リサイクル及び大気汚染管理について、双方の政策や経験を共有し、意見交換を行いました。さらに、2016年(平成28年)1月に、シンガポールで第3回日本・シンガポール環境政策対話を開催するなど、両国間の協力関係を強化しています。

h タイ

 我が国循環産業海外展開事業化促進事業として、埋立ごみを対象とした廃棄物発電、貴金属残存めっき廃液等のリサイクル事業等の実現可能性調査(FS)を実施しました。また、2015年(平成27年)11月、日本国政府とタイ政府との間でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始しました。

i ベトナム

 我が国が有する知見を活用し環境保護法改正を支援するため、環境法の専門家派遣等を実施しました。また、2013年(平成25年)7月、日本国政府とベトナム政府との間でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、2015年(平成27年)8月にはベトナムにおける最初のJCMプロジェクトが登録されました。その後2015年(平成27年)11月には更に1件登録され、ベトナムにおいては計2件のJCMプロジェクトが登録されました。さらに、2015年(平成27年)12月に、第2回日本・ベトナム環境政策対話を開催し、グリーン成長・低炭素化社会の促進、環境影響評価制度、排水管理、廃棄物管理・3R、化学物質管理について、日本の経験を共有するとともに、議論を行いました。

ウ 開発途上国の適応支援

 2014年(平成26年)9月の国連気候サミットにおいて安倍総理が、途上国における気候変動による影響への適応を包括的に支援するため、「適応イニシアチブ」(適応分野の支援体制)を立ち上げました。また、我が国の「気候変動の影響への適応計画」(2015年(平成27年)11月27日閣議決定)に基づき、インドネシア、モンゴル、太平洋の島嶼(しょ)国における適応計画策定に関連する支援を開始したほか、アジア太平洋地域における適応計画策定及び実施等に関する能力開発ワークショップを開催しました。

エ 環境と貿易

 我が国は、2013年(平成25年)7月に環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉に正式に参加しました。「環境」分野では、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと、環境規制を貿易・投資障壁として利用しないことなどについて議論を行い、2015年(平成27年)10月の大筋合意に貢献しました。また、欧州連合(EU)、中国・韓国、カナダ、コロンビア等との経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)交渉において、適切かつ戦略的な環境配慮を確保すべく交渉を進めました。

オ 海外広報の推進

 海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、英語版広報誌の刊行、「Annual Report on the Environment, the Sound Material-Cycle Society and Biodiversity in Japan(環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の一部内容を抜粋して英訳したもの)」等、海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。

(2)開発途上地域の環境の保全

 我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年(平成27年)2月に改定された「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱(じん)な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

 さらに、ODAを中心とした我が国の国際環境協力については、2002年(平成14年)に表明した「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」において、環境対処能力向上や我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針の下で、地球温暖化対策、環境汚染対策、「水」問題への取組、自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。

ア 技術協力

 独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクト等、我が国の技術・知識・経験をいかし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上といった環境分野における技術協力を行いました。

 例えば、JICA課題別研修「水環境行政」、JICA国別本邦研修「タイ地方環境管理能力向上プロジェクト研修」等を始め、10か国以上の途上国からの研修員を受け入れ、環境管理に関する講義等の協力を行いました。

イ 無償資金協力

 無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において実施されています。

 また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

ウ 有償資金協力

 有償資金協力(円借款・海外投融資)は経済・社会インフラへの援助等を通じ、開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対しても、JICAを通じて、積極的に円借款・海外投融資を供与しています。

エ 国際機関を通じた協力

 我が国は、UNEPの環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

 地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等で実施される、地球環境問題の解決に資するプロジェクトに対して、主に無償資金を提供する多国間基金です。我が国は第6次増資(2014年(平成26年)7月~2018年(平成30年)6月)におけるトップドナー国として、意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しています。

 また、2015年(平成27年)5月、我が国において、開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援するGCFへの拠出を可能にするための法律が成立し、15億ドルの拠出取決めに署名しました。これにより、GCFは途上国支援を開始するために必要な条件が充足されたことから稼働しました。11月には、GCF理事会において最初の支援案件となる8件が採択されました。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

 監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、WMOにおけるGAW計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、GCOS、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合(GEO)において、2005年(平成17年)の設立から2008年(平成20年)11月まで、また2009年(平成21年)11月以降に執行委員会のメンバー国を務めるとともに、GEOの専門委員会である構造及びデータ委員会の共同議長を務めるなど、GEOの活動に積極的に参加しました。GCOSの地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象機関と連携して推進しました。

 気象庁は、WMOの地区気候センター(RCC)を運営し、アジア太平洋地域の気象機関に対し基礎資料となる気候情報やウェブベースの気候解析ツールを引き続き提供しました。さらに、アジア太平洋地域の気象機関を対象にした研修を実施するなど、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。

 また、超長基線電波干渉法(VLBI)や全世界的衛星測位システム(GNSS)を用いた国際観測に参画するとともに、験潮、絶対重力観測等と組み合わせて、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しました。

 さらに、東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のため、これら地域の国々と連携して環境モニタリングを実施しました。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実・強化

 低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)では、平成27年6月にフランスのパリにおいて、第7回年次会合が開催され、COP21に向けた研究者による提言をまとめました。また、緩和策と適応策を統合的に実施するべく、試験的な研究プロジェクトをフィリピン等で行いました。

 GANの傘下であるアジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を他の国際機関等との連携により支援し、アジア太平洋地域の気候変動適応策の立案・策定等のための情報共有・研修会等を行いました。

 さらに、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)は、神戸市のAPNセンターを中核として、気候変動や生物多様性に関する国際共同研究等を支援し、アジア太平洋地域内の途上国を中心とする研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。

 また、国連や各国と連携して地球環境の現状を把握するための地球全陸域の地理情報を整備する「地球地図プロジェクト」を主導しました。本プロジェクトには167か国・16地域が参加しており、111か国・8地域分のデータが公開されています。

 さらに、エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るべく、平成26年に創設した、世界の産官学の議論と協力を促進する国際的プラットフォームであるイノベーション・フォー・クール・アース・フォーラム(ICEF)の第2回年次会合を、2015年(平成27年)10月に開催しました。

3 民間団体等による活動の推進

(1)地方公共団体の活動

 環境分野において豊富な経験と国際協力の実績のある地方自治体等の協力の下、アジア各国の都市との間で、都市間連携を活用し、自治体が有する知見やノウハウ等を利用しつつ、JCMを通じて優れた低炭素技術の普及を図るための案件形成可能性調査を実施しました。平成27年度は、神奈川県、福島市、横浜市、川崎市、京都市、大阪市、北九州市による14件の取組を支援しました。

(2)ウェブサイトにおける情報提供

 経済成長著しいアジアで活動を展開しようとする我が国企業が、優れた環境技術・サービスの積極的な海外展開を通じた国際協力を推進することを目的とし、「アジアの低炭素発展に向けた情報提供サイト」(http://www.env.go.jp/earth/coop/lowcarbon-asia/(別ウィンドウ))等を開設しています。