大気汚染の状況を全国的な視野で把握するとともに、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料を得るため、国設大気環境測定所(9か所)及び国設自動車交通環境測定所(9か所)を設置し、測定を行っています。これらの測定所は、地方公共団体が設置する大気環境常時監視測定局の基準局、大気環境の常時監視に係る試験局、国として測定すべき物質等(有害大気汚染物質)の測定局、大気汚染物質のバックグラウンド測定局としての機能を有しています。
加えて、国内における酸性雨や越境大気汚染の長期的な影響を把握することを目的として、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画(平成26年3月改訂)」に基づくモニタリングを離島など遠隔地域を中心に全国24か所で実施しています。
都道府県等では、一般局及び自排局において、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づく大気の汚染状況を常時監視しています。
また、そのデータ(速報値)を「大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)」によりリアルタイムに収集し、インターネット及び携帯電話用サイトで情報提供しています(http://soramame.taiki.go.jp/(別ウィンドウ))。
PM2.5に関しては、平成21年9月に環境基準を設定し、平成22年度から、地方公共団体が大気汚染防止法に基づく大気の汚染状況の常時監視を開始しています。また、常時監視に用いるPM2.5の自動測定機について、標準測定方法との等価性の評価を行っています。
平成25年6月の大気汚染防止法の改正に伴い、我が国は、関係機関が実施している放射性物質モニタリングを含めて、全国309地点で空間放射線量率の測定を行うなど、放射性物質による大気の汚染の状況を監視し、その結果を専門家による評価を経て公表しています。
大気汚染防止法に基づき、ばい煙(NOx、硫黄酸化物(SOx)、ばいじん等)を発生し、及び排出する施設について排出基準を定めて規制等を行っています。加えて、施設単位の排出基準では良好な大気環境の確保が困難な地域においては、工場又は事業場の単位でNOx及びSOxの総量規制を行っています。
自動車の排出ガス及び燃料については、大気汚染防止法に基づき逐次規制を強化してきています(図4-2-1、図4-2-2、図4-2-3)。
また、公道を走行しない特殊自動車(以下「オフロード特殊自動車」という。)については、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(平成17年法律第51号。以下「オフロード法」という。)に基づき、平成18年10月から原動機の燃料の種類と出力帯ごとに順次使用規制を開始し、その後も逐次規制を強化してきています。平成27年度は、平成26年度に引き続き、一部の出力帯においてNOxの規制強化が適用開始されました。そのほか、順次強化している排出ガス基準に適合するオフロード特殊自動車等への買換えが円滑に進むよう、税制の特例措置、政府系金融機関による低利融資を講じました。
自動車交通が集中する大都市地域の大気汚染状況に対応するため、自動車NOx・PM法(図4-2-4)に基づき大都市地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府及び兵庫県)において各都府県が「総量削減計画」を策定し、自動車からのNOx及びPMの排出量の削減に向けた施策を計画的に進めています。また、同法の排出基準に適合しているトラック・バス等であることが判別できる「自動車NOx・PM法適合車ステッカー」の交付や、事業者による排出抑制のための措置の推進等に取り組みました。
平成42年までに、新車販売に占める次世代自動車の割合を5割~7割にするとの目標に基づき、次世代自動車等の普及に取り組んだ結果、平成26年度における新車販売に占める次世代自動車の割合は、約24%となりました。
低公害車の普及を促す施策として、車両導入に対する各種補助、自動車税・軽自動車税の軽減措置及び自動車重量税・自動車取得税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置並びに政府系金融機関による低利融資を講じました。
また、低公害車普及のためのインフラ整備については、国による設置費用の一部補助、燃料等供給設備に係る固定資産税の軽減措置等の税制上の特例措置を実施しました。
ア 交通流の分散・円滑化施策
道路交通情報通信システム(VICS)の情報提供エリアの更なる拡大を図るとともに、ETC2.0サービスを活用し、道路交通情報の内容・精度の改善・充実に努めたほか、信号機の改良、公共車両優先システム(PTPS)の整備、総合的な駐車対策等により、環境改善を図りました。また、環境ロードプライシング施策を試行し、住宅地域の沿道環境の改善を図りました。
イ 交通量の抑制・低減施策
交通に関わる多様な主体で構成される協議会による都市・地域総合交通戦略の策定及びそれに基づく公共交通機関の利用促進等への取組を支援しました。また、交通需要マネジメント施策の推進により、地域における自動車交通需要の調整を図りました。
船舶からの排出ガスについては、国際海事機関(IMO)の排出基準(1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(以下「MARPOL条約」という。)附属書Ⅵ)を踏まえ、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)により、NOx、燃料油中硫黄分濃度等について規制されています。航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出基準を踏まえ、航空法(昭和27年法律第231号)により、炭化水素(HC)、一酸化炭素、NOx等について規制されています。
建設機械のうちオフロード特殊自動車については、オフロード法に基づき平成18年10月より順次使用規制を開始し、平成23年及び平成26年に規制を順次強化するとともに、「建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針」に基づきNOx、PM等大気汚染物質の排出抑制に取り組んでいます。
一方、オフロード法の対象外機種(発動発電機や小型の建設機械等)についても、オフロード法の平成18年基準と同等の排出ガス基準値に基づき策定した「排出ガス対策型建設機械の普及促進に関する規程」等により、排出ガス対策型建設機械の使用を推進しました。また、これら建設機械の取得時の融資制度を設置しました。
低公害車(次世代自動車等)やエコドライブに関する意識調査を目的として、平成27年5月に「エコ&セーフティ神戸カーライフ・フェスタ2015」を実施しました。また、エコドライブ普及連絡会では、エコドライブの普及推進を図るため、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、当該連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。
平成25年12月に取りまとめた「PM2.5に関する総合的な取組(政策パッケージ)」に基づき、排出抑制対策の基盤となる発生源情報の整備や生成機構の解明等、シミュレーションモデルの高度化等を進めつつ、国民の安全・安心の確保、環境基準の達成、アジア地域における清浄な大気の共有を目標とした取組を進めています。
平成27年3月に、中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会において、国内における当面の排出抑制策の在り方について中間取りまとめが行われたところであり、これに基づいてPM2.5の原因物質である各種の大気汚染物質について、排出抑制対策の強化を検討・実施することとしています。
PM2.5濃度が上昇した場合における注意喚起については、環境省が開催した「微小粒子状物質(PM2.5)に関する専門家会合」において、取りまとめられた「注意喚起のための暫定的な指針」に基づき、都道府県等が注意喚起の運用や情報提供を実施しています。
国際的には、平成25年に開催された第15回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM15。以下、日中韓三カ国環境大臣会合を「TEMM」という。)において、我が国の提案により大気汚染に関する三カ国政策対話を設置することが合意され、以後、毎年開催しています。また、TEMM17においては、政策対話の下に新たに二つのワーキンググループを設置し、3か国の連携を強化することに合意しました。
都道府県等では、大気汚染防止法に基づく大気の汚染状況の常時監視において、光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずるおそれがある場合に、光化学オキシダント注意報等を発令しています。その際には、ばい煙排出者に対する大気汚染物質排出量の削減及び自動車使用者に対する自動車の走行の自主的制限を要請するほか、住民に対する広報活動と保健対策を実施しています。また、気象庁では光化学スモッグに関連する気象状況を都道府県等に通報し、光化学スモッグの発生しやすい気象状況が予想される場合にはスモッグ気象情報や全般スモッグ気象情報を発表して国民へ周知しています。
加えて、「大気汚染物質広域監視システム」により、都道府県等が発令した光化学オキシダント注意報等発令情報を、リアルタイムで収集し、これらのデータを地図情報等として、ウェブサイト等で一般に公開しています(http://soramame.taiki.go.jp/(別ウィンドウ))。
VOCは光化学オキシダント及びPMの生成の原因物質の一つであり、その排出削減により、光化学オキシダント及びPMによる大気汚染の改善が期待されます。
VOCの排出抑制対策は、法規制と自主的取組を適切に組み合わせること(ベストミックス)により実施しています。平成26年度のVOC総排出量は平成12年度に対し4割以上削減されています。
平成26年8月、中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会において、光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための新たな指標(日最高8時間平均値の年間99パーセンタイル値の3年平均値)が示されました。これによると、近年、関東地域等では、注意報の発令レベルを超えるような高濃度汚染について改善の効果が見られています。
大気汚染防止法に基づき、地方公共団体との連携の下に、有害大気汚染物質による大気の汚染の状況を把握するため、平成25年8月に改正した「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」に基づき、PRTR(化学物質排出移動量届出)データ等を用いた効率的なモニタリング地点を選定し、有害大気汚染物質モニタリング調査を行いました。
また、優先取組物質のうち、環境目標値が設定されていない物質については、迅速な指針値設定を目指すこととされており、科学的知見の充実のため、有害性情報等の収集を実施しました。
大気汚染防止法では、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材を使用する全ての建築物及びその他の工作物の解体等作業について作業基準等を定め、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んでいます。
東アジア地域において、酸性雨の現状やその影響を解明するとともに、酸性雨問題に関する地域の協力体制を確立することを目的として、日本のイニシアティブにより、平成13年から東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)が本格稼働しており、現在、東アジア地域の13か国が参加しています。EANETでは、共通手法による酸性雨モニタリングによって、信頼できるデータの集積等を実施しています(図4-2-5)。
EANETでは、EANETへの財政的貢献のための健全な基礎を提供する文書についての議論の結果、平成22年11月に開催された第12回政府間会合において「EANETの強化のための文書」の採択と署名が行われ、平成24年1月から同文書の運用が開始されました。平成27年11月には、第17回政府間会合において、PM2.5やオゾンのモニタリングの推進等の活動範囲の拡大を盛り込んだ、新しい中期計画(2016年-2020年)が承認されました。
また、国内では、越境大気汚染及び酸性雨による影響の早期把握、大気汚染原因物質の長距離輸送や長期トレンドの把握、将来影響の予測を目的として、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、国内の湿性・乾性沈着モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリングを行っています。
日中韓三カ国黄砂局長会合等において、北東アジア地域における黄砂対策の地域協力について検討が行われており、平成19年12月に開催されたTEMM9における合意を受けて、平成20年に黄砂共同研究を開始しました。
また、国内では、黄砂の物理的性質(黄砂の粒径)や化学的性質(黄砂の成分)を解明するため、平成14年度より黄砂実態解明調査を実施しています。また、我が国への黄砂の飛来状況を把握するとともに、国際的なモニタリングネットワークの構築にも資するものとして、国立研究開発法人国立環境研究所と協力して、高度な黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリングネットワークを整備しています。さらに、平成19年度より、国内外のライダー装置によるモニタリングネットワークの観測データをリアルタイムで提供する「環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)」(http://soramame.taiki.go.jp/dss/kosa/(別ウィンドウ))を運用しています。
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