環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

1 三陸復興国立公園を核としたグリーン復興

(1)三陸復興国立公園に関する取組

 みちのく潮風トレイルについては、平成26年10月に開通した福島県新地町から相馬市の区間(約50km)で踏破証明書の発行による利用促進を図ったほか、平成27年7月に岩手県岩泉町から宮古市の区間(約51km)、平成27年8月に岩手県野田村から普代村の区間(約24km)、平成27年9月に岩手県釜石市から大船渡市の区間(約144km)が新たに開通しました。また、トレイルの利用を促進するための取組として、トレイルマップの配布、踏破認定制度の導入、メディアを通じたPR、イベントの開催、ウェブサイトのリニューアル等を実施しました。さらに、岩手・宮城・福島県内の5つの地域を対象とした復興エコツーリズム推進モデル事業の3年間の成果や課題を踏まえ、推進体制の構築、エコツアーの商品化及び情報発信の強化等の検討を行いました。地震・津波による自然環境への影響の把握については、震災から5年間の変化状況を取りまとめ、過年度に地図化した「重要自然マップ」の更新等について情報発信を行いました。

(2)公園施設の整備

 三陸復興国立公園の主要な利用拠点やみちのく潮風トレイルにおいて、防災機能を強化しつつ、被災した公園利用施設の再整備や観光地の再生に資する復興のための整備を推進しました。宮城県気仙沼市では、キャンプ場の再整備を行い、平成27年7月にリニューアルオープンしました。青森県階上町では、階上岳(はしかみだけ)登山道沿いの大開平(おおびらきたい)に休憩所を整備し、平成27年9月に開所しました。また、岩手県内での三陸復興国立公園の整備について、自然環境整備交付金による支援を行いました。

2 東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応

(1)野生動植物への影響のモニタリング

 東京電力福島第一原子力発電所の周辺地域での放射性物質による野生動植物への影響や、人間活動の減少による二次的な影響を把握するため、関係する研究機関等とも協力しながら、植物の種子やネズミ等の試料の採取及び分析、定点カメラによる観測等を進めました。また、関連した調査を行っている他の研究機関や学識経験者、海外の研究者とも意見交換を行いながら、今後のモニタリング方法の検討等を行いました。

(2)野生鳥獣への影響と鳥獣被害対策

 東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、放射線量の高い帰還困難区域等は、原則立入り禁止となりました。これらの区域内では、農業生産活動等の人為活動が停滞していること、また、狩猟者の他市町村への避難等により、狩猟や有害鳥獣捕獲を行うことが難しい状況となっています。このため、イノシシ等の野生鳥獣の人里への出没が増加し、農地を掘り返したり、家屋に侵入したりする被害が発生しています。これらの鳥獣をこのまま放置すれば、住民の帰還準備や帰還後の生活、地域経済の再建に大きな支障が生じるおそれがあります。

 そのため、平成25年度においては旧警戒区域内の帰還困難区域等において、イノシシなどの生息状況調査及び捕獲を行い、4町(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町)で計204頭のイノシシ等を捕獲しました。平成26年度からは上記に加え半径20キロ圏外の帰還困難区域も事業対象区域とし、5町村(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)でイノシシ等の生息状況調査及び捕獲を行っており、平成26年度は計381頭、平成27年度は計286頭を捕獲しました。