環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート2>第2章 災害による環境リスクへの備え>第1節 災害廃棄物対策の強化

第2章 災害による環境リスクへの備え

 東日本大震災から私たちは多くの教訓を学びました。そうした教訓を通じ、災害による環境リスクへの備えの重要性が再認識され、環境面の施策に関する東日本大震災以前からの取組の強化及び東日本大震災への対応を受けて新たな取組を推進する動きが見られます。

第1節 災害廃棄物対策の強化

1 廃棄物処理法と災害対策基本法の改正

 東日本大震災や近年の災害における経験を通じて、廃棄物処理については、事前の備えのみならず、大規模災害時においても適正な処理を確保しつつ、円滑かつ迅速に処理を行うための措置が十分ではないことが明らかとなりました。このため、平成27年8月、今後発生が予測されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の大規模災害発生時に大量に発生が見込まれる災害廃棄物について、円滑かつ迅速な処理を実現し、また災害廃棄物処理の停滞により復旧・復興が大幅に遅れる事態を防止するため、次の法制度の整備を行いました。

 具体的には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)、同法施行令(昭和46年政令第300号)及び施行規則(昭和46年厚生省令第35号)の改正を行い、[1]災害廃棄物処理に係る基本理念の明確化、[2]非常災害時における廃棄物処理施設の新設又は活用に係る手続の簡素化、[3]非常災害時における一般廃棄物の収集・運搬・処分等の委託の基準の緩和等を行いました。また、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の改正も行い、大規模災害時における環境大臣による災害廃棄物の処理に関する指針の策定及び廃棄物処理の代行等の措置を講じました。

2 災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)の発足

 上述の法改正も踏まえ、平時からの備えとして、自治体等における災害廃棄物対策への支援を充実させるため、政府は、平成27年9月に災害廃棄物処理支援ネットワーク(以下「D.Waste-Net」という。)を発足させました。D.Waste-Netは、災害廃棄物に関する有識者や技術者、業界団体等で構成されています。D.Waste-Netを介した情報共有によって、環境省が取りまとめる最新の科学的・技術的知見等の活用を図り、自治体等の災害廃棄物対策を支援することが期待されています。

 平成27年度は、平成27年9月に関東・東北豪雨災害が発生した際、茨城県や栃木県、宮城県等の被災自治体でD.Waste-Netが活用されました。具体的には、一般財団法人日本環境衛生センター及び一般社団法人日本廃棄物コンサルタント協会が茨城県常総市に常駐し、常総市の災害廃棄物処理実行計画の策定や災害廃棄物発生量の推計、処理困難物の処理について支援を実施しました。また、全国都市清掃会議が市町村間の調整を行い、横浜市と名古屋市のチームが常総市における災害廃棄物の収集・運搬活動を行いました(写真2-1-1写真2-1-2)。


写真2-1-1 常総市における横浜市及び名古屋市による災害廃棄物の収集・運搬支援

写真2-1-2 常総市における技術専門家による仮置場の環境対策及び分別状況の調査

3 地域ブロック協議会の設置

 地域の災害廃棄物対策を強化するため、地方環境事務所が中心となって全国8か所に地域ブロック協議会を設置し、都道府県や主要な市町村、地域の民間事業者や有識者等の参加を得て、都道府県の枠を越えた実効性のある災害廃棄物処理の枠組みの構築を進めています。地域ブロック協議会では、大規模災害に備えて、災害廃棄物処理に係る関係者間の調整や、地域ブロック単位での共同災害廃棄物処理訓練の実施等、実効性の高い広域連携体制の構築を行っています。また、平成27年11月に政府が策定した「大規模災害発生時における災害廃棄物対策行動指針」を活用し、災害廃棄物の発生量の想定や地域ブロックにおける廃棄物処理に係る対策等の検討を行い、地域ブロック別の災害廃棄物対策行動計画の策定を目指しています。