環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第4章>第6節 海洋環境の保全

第6節 海洋環境の保全

1 海洋汚染等の防止に関する国際的枠組みと取組

 ロンドン条約1996年議定書を国内担保する海洋汚染等防止法に基づき、廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度の適切な運用を引き続き行います。また、二酸化炭素の海底下への貯留事業(以下「海底下CCS」という。)の適正な実施のために、海洋生態系及び海水の炭酸系指標に係る化学的性状を、海底下CCS実証試験実施予定海域で調査します。また、海底から二酸化炭素が万一漏出した際に迅速に漏出を検知する手法を検討するため、漏出を検知する技術及び地中での二酸化炭素の挙動に係る検討を行います。

 船舶バラスト水規制管理条約の早期発効に向け、条約未締結国に対し、早期締結を促すとともに、バラスト水処理装置の審査等を着実に実施します。

 油、危険物質及び有害物質による汚染事故に対応するため、油濁事故対策協力条約(以下「OPRC条約」という。)及び「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に対する準備、対応及び協力に関する議定書(以下「OPRC-HNS議定書」という。)」といった国際条約並びに国家的な緊急時計画に基づき、汚染事故に対する準備・対応体制の整備を進めるとともに、国際的な連携の強化、技術協力の推進等にも取り組みます。また、環境保全の観点から汚染事故に的確に対応するため、汚染事故により環境上著しい影響を受けやすい海岸等に関する情報を盛り込んだ図面(脆(ぜい)弱沿岸海域図)の更新のための情報収集等を行います。北西太平洋地域における海洋及び沿岸の環境保全・管理・開発のための行動計画(以下「NOWPAP」という。)の活動への積極的な参加や支援を通じて、同海域における海洋環境に係るデータの集積及び海洋汚染の原因等の科学的解明への貢献、国際協力体制の構築等の推進を図ります。具体的には、NOWPAPの枠組みにおいて、引き続き、日本海及び黄海の富栄養化の状況を広域にわたって把握するための試験的評価の活動を継続するとともに、海洋生物多様性を保全する上で課題となる富栄養化や外来生物、生息地の改変の影響に関する評価を進めていきます。また、人工衛星を利用したリモートセンシング技術を活用して、モデル海域における藻場の分布状況の調査等を行う予定です。

2 排出油等防除体制の整備

 環境保全の観点から油等汚染事件発生に的確に対応するため、OPRC条約、OPRC-HNS議定書及び国家的な緊急時計画に基づき、緊急措置の手引書の備え付けの推進並びに地方公共団体、民間団体等に対する研修・訓練の実施、傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、脆(ぜい)弱沿岸海域図の情報の更新等を推進します。大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行います。また、油防除・油回収資機材の整備を推進するとともに、油汚染防除指導者養成のための講習会を実施する民間団体に対して補助を行うとともに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を実施します。

 また、沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、情報の充実を図ります。

3 監視等の体制の整備

 海洋環境の保全を目的として、日本周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、海洋基本計画(平成25年閣議決定)に基づき、領海、排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のため、海洋環境モニタリングを行います。

 また、東京湾・伊勢湾・大阪湾における海域環境の観測システムを強化するため、各湾でモニタリングポスト(自動連続観測装置)により、水質の連続観測を行います。

4 漂流・漂着・海底ごみ対策

 美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)及び同法の参議院附帯決議並びに同法を受けて閣議決定された基本方針に基づき、漂着ごみ及び漂流・海底ごみ(以下「海洋ごみ」という。)対策の総合的かつ効果的な推進に努めます。

 また、都道府県等が実施する漂着ごみ対策については、補助金による支援を引き続き実施します。さらに、これまで補助対象としていた漂着ごみの回収・処理や発生抑制対策の事業に加え、漂流・海底ごみの回収・処理事業への支援を新たに実施します。

 漂流ごみについては、船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び有明海・八代海の閉鎖性海域において、海域に漂流する流木等のごみの回収や船舶等から流出する油の防除等を行います。

 海洋ごみについては、組成や密度、生態系へ与える影響等を把握するための調査を引き続き実施します。

 また、外国由来の海洋ごみ問題の削減へ向けた国際協力・連携の推進のため、二国間又は日本、中国、韓国、ロシアが参加するNOWPAPや日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)の多国間の枠組みを通じて、関係国の施策に係る情報交換を行うとともに、政策対話等の実施に取り組みます。