環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第2章>第4節 地球規模の視野を持って行動する取組

第4節 地球規模の視野を持って行動する取組

1 愛知目標の達成に向けた国際的取組への貢献

(1)生物多様性条約

 2014年(平成26年)10月に韓国・ピョンチャンにおいて開催された生物多様性条約第12回締約国会議(COP12。以下、締約国会議を「COP」という。なお、本章における締約国会議(COP)は、生物多様性条約締約国会議を指す)で決定された「生物多様性戦略計画2011-2020」及び愛知目標の中間評価結果等も踏まえつつ、引き続き関係省庁間で緊密な連携を図り、愛知目標や名古屋議定書をはじめとするCOP10決定事項の実施に向けた取組を更に進めます。具体的には、愛知目標の達成に向けた我が国のロードマップを示した「生物多様性国家戦略2012-2020」に基づき、生物多様性に関する国内施策の充実及び国際的な連携の強化を図ります。また、我が国は2016年(平成28年)12月にメキシコ・ロスカボスで開催されるCOP13までのビューロー国に選出されたことから、COP13に向けた国際的な議論に積極的に貢献していきます。

 さらに、地球規模での愛知目標の達成や条約の実施に向け、途上国の能力養成等を目的とした「生物多様性日本基金」を通じた支援を行うなど、条約事務局及び関連する国際機関との協力の下に、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた国際的な取組に引き続き貢献していきます。

(2)名古屋議定書

 COP10において採択された「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(Access and Benefit-Sharing)に関する名古屋議定書」の早期締結及び国内措置の実施については「生物多様性国家戦略2012-2020」の目標として掲げているところですが、国内措置の具体化をはじめとして様々な課題があることから、引き続き関係者及び関係省庁による検討を進め、取りまとめに向けた合意形成を目指します。また、名古屋議定書の実施に向けた国際的な議論に積極的に参加します。

(3)カルタヘナ議定書

 カルタヘナ議定書が適切に実施されるよう、開発途上国の体制整備を支援するとともに、引き続き名古屋・クアラルンプール補足議定書の早期締結に向けた検討を進めます。

2 自然資源の持続可能な利用・管理の国際的推進

(1)SATOYAMAイニシアティブ

 二次的な自然環境における持続可能な利用と、それによる生物多様性の保全を推進する「SATOYAMAイニシアティブ」については、2016年(平成28年)にSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ第六回定例会合がカンボジアにおいて開催されます。こうした機会を通じて、国際パートナーシップの参加者と連携し、国内外の活動を促進します。

(2)ワシントン条約

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)締約国間の、条約の適切な執行に向けた取組を推進するとともに、関係省庁、関連機関が連携・協力して、違法取引の防止、摘発に努めます。

(3)保護地域に係る国際的な取組

 2014年(平成26年)11月に正式に発足した、国立公園等の保護地域に関するアジアの連携のための枠組みである「アジア保護地域パートナーシップ」の下で、保護地域における協働型管理、生態系を活用した防災・減災に関する情報共有と能力開発のためのワークショップ開催などの具体的なプロジェクトを実施していきます。

3 生物多様性に関わる国際協力の推進

(1)ラムサール条約

 2015年(平成27年)6月にウルグアイで開催される「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」の第12回締約国会議において、我が国における条約の実施状況等を踏まえて議論に貢献するとともに、同会議の開催に際して、国際的に重要な湿地としての基準等を満たす国内の湿地の追加登録を目指します。また、関係する地方自治体やNGO等と連携しつつ、引き続き、ラムサール情報表の更新を核とした条約湿地のモニタリング調査や、風土や文化をいかした各条約湿地の保全と賢明な利用を推進します。また、東南アジアにおける国際的に重要な湿地の保全のための協力を引き続き実施します。

(2)アジア太平洋地域における渡り性水鳥の保全

 東アジア・オーストラリア地域の渡り性水鳥及びその生息地の保全を目的とする国際的連携・協力のための枠組み「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)」に関して、平成27年1月に釧路市で開催された同パートナーシップの第8回パートナー会議の成果を踏まえて、関係国政府や国際機関等と連携して、渡り性水鳥及びその生息地の保全活動の一層の推進に努めます。また、同パートナーシップの下に設置されている、渡り性水鳥重要生息地ネットワーク国内参加地における普及啓発や情報交換等を推進するとともに、渡り性水鳥の保全上重要な生息地についてはネットワークへの参加を推薦します。

(3)二国間渡り鳥条約・協定

 米国、露国、豪州、中国及び韓国との二国間の渡り鳥条約等に基づき、引き続き、アホウドリやズグロカモメ等についての共同調査を実施するとともに、渡り鳥の保全施策や調査研究に関する意見や情報の交換を行います。

(4)国際的なサンゴ礁保全の取組

 2014年度(平成26年度)から2年間、日本とタイが国際サンゴ礁イニシアティブ(以下「ICRI」という。)事務局を共同でホストすることとなっており、第29回ICRI総会及び第10回ICRI東アジア地域会合の開催等を通じ、国際的なサンゴ礁保全の取組を主導します。

(5)持続可能な森林経営と違法伐採対策

 森林原則声明や気候変動問題における森林の重要性などを踏まえ、世界の森林の保全と持続可能な経営の推進を目指し、[1]国連森林フォーラム(UNFF)において2015年(平成27年)以降の森林に関する国際的な枠組みの合意に向けた議論、[2]2012年(平成24年)から開催されているアジア太平洋経済協力(APEC)違法伐採及び関連する貿易専門家グループ(EGILAT)の会合等を通じた地域的取組の推進、[3]国際熱帯木材機関(ITTO)、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関を通じた協力の推進、[4]独立行政法人国際協力機構(JICA)、世界銀行の「森林炭素パートナーシップファシリティ(FCPF)」等を通じた二国間・多国間の技術・資金協力の推進、[5]熱帯林の保全等に関する調査・研究の推進、[6]民間団体の活動の支援による国際協力の推進等に努めます。

4 世界的に重要な地域の保全管理の推進

(1)世界遺産条約

 屋久島、白神山地、知床及び小笠原諸島は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)に基づき、自然遺産として世界遺産一覧表に記載されています。これらの世界自然遺産について、地元の意見と科学的な知見を管理に反映させるための管理体制と保全施策の充実を図るとともに、関係省庁、地方公共団体、地元関係者及び専門家の連携により、引き続き適正な保全・管理を進めます。

 文化遺産として世界遺産一覧表に記載されている「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」については、関係省庁及び関係地方公共団体等が連携し、引き続き保全管理の取組を進めるとともに、平成25年6月~7月に行われた第37回世界遺産委員会における決議に基づき、平成28年2月1日までに世界遺産センターへ保全状況報告書を提出します。世界自然遺産の国内候補地である奄美・琉球については、引き続き世界的に優れた自然環境の価値を保全するために必要な方策の検討、保全管理体制の整備及び保全の推進等の取組を、関係省庁、地方公共団体、地元関係者及び専門家の連携により進めていきます。

(2)生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)

 「生物圏保存地域(Biosphere Reserves(BR))」は、ユネスコの「人間と生物圏(Man and the Biosphere(MAB))計画」の枠組みに基づいて国際的に認定された地域で、生態系の保全と持続可能な地域資源の利活用の調和を目的としています。なお、「ユネスコエコパーク」は、我が国での通称です。

 生物圏保存地域は、「保存(生物多様性の保全)」、「学術的研究支援」及び「経済と社会の発展」の3つの機能を発揮するため、ゾーニングとして、法律等に基づいて厳格に保護される「核心地域」、核心地域への緩衝機能を有し、保全目標と両立する活動のみ行える「緩衝地域」、及び持続可能な地域資源の利活用が展開・促進される「移行地域」の設定が求められており、核心地域と緩衝地域については、国立・国定公園や国有林の保護林等として保全されています。

 現在の登録総数は、119か国、631地域(平成26年6月現在)で、国内では、昭和55年に登録された「志賀高原」、「白山」、「大台ヶ原・大峯山」及び「屋久島」、平成24年に登録された「綾」、26年に登録された「只見」及び「南アルプス」の7件が登録されています(「志賀高原」については26年に拡張)。

 地域コミュニティを主体とした持続可能な地域づくりを後押しする生物圏保存地域について、その仕組みを活用した新たな施策、協働の取組等を、引き続き自治体を含む関係者と連携して検討・実施します。また、新規登録を目指す自治体に対する情報提供、助言等を行います。

(3)世界ジオパーク

 世界ジオパークは、国際的重要性を持つ地質学的遺産を有し、これらの遺産を地域社会の持続可能な発展に活用している地域を、ユネスコの支援の下、世界ジオパークネットワーク(GGN)が認定するものです。我が国では現在、7地域が世界ジオパークに認定されています。これらの7地域全てに国立・国定公園の区域が含まれており、法に基づく国立・国定公園の適正な保護は、ジオパークの地形・地質の保護において重要な役割を果たしています。また、ジオパークの核となる地形・地質は生物の生育・生息地の「土台」として重要な役割を果たしています。

 そのため、国立公園における地形・地質等の保全を推進するとともに、ジオパークの利活用を推進する機関と連携したエコツアーの実施、環境教育のプログラム作り等を行い、世界ジオパークに関係する取組を支援します。

(4)砂漠化への対処

 砂漠化対処条約(UNCCD)に関する国際的動向を踏まえつつ、同条約に基づく取組を推進します。具体的には、同条約への科学技術面からの貢献を念頭に、砂漠化対処のための技術の活用に関する調査などを進めます。また、二国間協力や、民間団体の活動支援等による国際協力の推進に努めます。

(5)南極地域の環境の保護

 南極地域の環境保護の促進を図るため、観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用し、南極地域の環境保護に関する普及啓発を行うなど、「環境保護に関する南極条約議定書(以下「議定書」という。)」及びその国内担保法である南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)の適正な施行を推進します。また、2005年(平成17年)6月の南極条約協議国会議で採択された環境上の緊急事態に対する責任について定めた議定書附属書について、引き続き対応を検討します。また、毎年開催される「南極条約協議国会議」に参加し、南極特別保護地区等の管理計画や気候変動に関する対応方法など、南極における環境の保護の方策について議論を行います。さらに、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所の南極観測審議委員会設営専門部会環境分科会において、昭和基地における環境保全の方策等について検討を行います。