環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

 地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

(1)地球環境保全等に関する国際的な連携の確保

ア 多国間の枠組みによる連携

(ア)国連を通じた取組

a 国連持続可能な開発会議(リオ+20)等における取組

 平成24年のリオ+20において立上げが合意された持続可能な開発目標(以下「SDGs」という。)に関するオープン・ワーキンググループ(以下「OWG」という。)は、25年1月から26年7月にかけて計13回にわたって開催され、27年9月に採択予定の「ポスト2015年開発アジェンダ」の基礎となるSDGs報告書が26年7月に公表されました。我が国も各OWG会合に出席し、各テーマの下で我が国が重視する取組等について発言する等、議論に貢献しました。

 また、環境研究総合推進費により平成25年度から開始した「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究」等では、各分野の研究者が共同で、指標、開発、ガバナンスといった側面について、学際的な研究を行っており、公開シンポジウムを開催するなど多様な視点からSDGsへの議論がなされました。さらに、持続可能な消費と生産(SCP)パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、同じくリオ+20で合意された「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組」が26年から本格的に始まりました。本枠組みが持つ6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイルと教育」の共同リード機関として、アジアをはじめとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を開始しました。

b 国連環境計画(UNEP)における活動

 我が国は、創設当初から一貫して国連環境計画(以下「UNEP」という。)の管理理事国であるとともに、環境基金に対し、平成25年は約280万ドルを拠出する等、多大な貢献を行っています。UNEP強化策の1つとして、24年6月に開催されたリオ+20の成果文書「我々が望む未来(The Future We Want)」において、管理理事会は「国連環境総会(以下「UNEA」という。)」と改名され、全ての国連加盟国が参加する第1回会合が26年6月23日~6月27日にナイロビで開催されました。なお、我が国は23年2月より管理理事会(25年まで)、及びUNEA(26年から)のビューロー(議長団)メンバーを務めています。

 大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(以下「UNEP/IETC」という。)に対しては、平成25年は約160万ドルを拠出する等財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETCが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備及び発信や廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップへの協力等を行い、関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。なお、UNEP/IETCへの拠出金に関しては、24年6月に行われた環境省行政事業レビューにおける指摘を受け、環境省では、UNEP/IETCの機能及び組織に関する改善・見直しを検討する外部有識者検討委員会を開催しました。同委員会によって25年7月に取りまとめられた提言を受け、UNEP/IETCの協力体制の強化を目的として、UNEP/IETCと密接に協働し、国内外の様々なステークホルダーと連携するための機能を有する「コラボレーティングセンター」が26年12月に発足しました。

 また、UNEPアジア太平洋地域事務所が実施する「気候変動に強靱(じん)な発展支援プログラム」への拠出を通して、アジア太平洋地域の途上国に対し適応基金へのダイレクトアクセスの能力開発を行いました。平成27年3月には、我が国の提案・資金支援により第1回世界適応ネットワーク(以下「GAN」という。)フォーラム及び第2回GAN運営委員会を開催し、各地域の適応の取組について知見を共有するとともに、今後の活動方針を議論しました。

(イ)経済協力開発機構(OECD)における取組

 我が国は、平成24年1月から経済協力開発機構(以下「OECD」という。)環境政策委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に参加してきました。我が国がOECDに加盟して50周年を迎えた平成26年には、シンポジウム等を開催するなど、持続可能な社会の実現に向けた取組を実施しました。

(ウ)主要国首脳会議(G7サミット)における取組

 平成26年6月にベルギーで開催されたG7ブリュッセル・サミットでは、気候変動が議題として取り上げられました。G7首脳は、全ての締約国に適用される新たな議定書、他の法的文書又は憲章の下で法的効力を有する合意成果といった世界的な合意を2015年(平成27年)に採択するとの強い決意を確認しました。

(エ)アジア・太平洋地域における取組

a 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

 平成26年4月に、韓国において第16回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM16。以下、日中韓三カ国環境大臣会合を「TEMM」という。)を開催し、平成27年~平成31年に三か国間で大気環境改善、生物多様性、化学物質管理、3R、気候変動、水・海洋環境、環境教育、地方環境管理、グリーン経済への移行の9分野に優先的に取り組んでいくことに合意しました。また、TEMMの枠組みの下で、日中韓環境産業円卓会議、日中韓合同環境研修、日中韓環境教育ネットワークにおけるシンポジウム等のプロジェクトを実施しました。

b ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合及び東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合

 平成26年9月に、ラオス・ビエンチャンにおいて第13回ASEAN+3環境大臣会合及び第4回東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合が開催されました。これらの会合では、環境的に持続可能な都市(ESC)に関するモデル都市プログラムや、二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)及び低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)等の都市の低炭素化に資する協力施策について議論を行いました。

c 北東アジア環境協力プログラム(NEASPEC)

 北東アジア地域環境協力プログラム第19回高級実務者会合(NEASPEC SOM19)が平成26年9月にロシアのモスクワで開催され、「国境地域の自然保護」、「越境大気汚染」や「環境効率」等をテーマとして議論を行いました。

d その他の取組

 平成26年8月に、石川県において「第23回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催し、アジア太平洋地域(12か国)、その他の国・地域(3か国・1地域)及び国際機関等(8機関)から、35名の緩和政策・事業や同分野の研究等の担当官や専門家、気候変動交渉等に係る行政官が参加し、同地域における国内の緩和政策の実施の状況と課題及び各国が自主的に定める2020年(平成32年)以降の約束草案の在り方について議論しました。

(オ)クリーンアジア・イニシアティブ

 環境と共生しつつ経済発展を図り、持続可能な社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、様々な環境協力を戦略的に展開しています。

a アジアEST地域フォーラム

 平成26年11月にスリランカのコロンボにおいて第8回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを開催し、アジア地域21か国等から参加した代表と、ESTに関する政策、先進事例等の共有を図りました。また、アジアにおける低炭素交通促進に向けたコロンボ宣言が採択されました。

b 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

 平成26年11月に、インドネシアのジャカルタにおいて第16回政府間会合が開催され、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の対象範囲の拡大を含む将来発展に関する検討が行われました。

c アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

 平成27年2月にスリランカにおいて第10回年次会合及びトレーニングワークショップを開催し、各国の産業排水管理や生活排水対策に関する課題の解決に向けて、意見交換を行いました。

d アジア水環境改善モデル事業

 我が国企業による海外での事業展開を通じ、アジア等の水環境の改善を図ることを目的に、平成23年度よりアジア水環境改善モデル事業を実施しています。26年度は、過年度に実施可能性調査を実施した3件(ベトナム(2件)、ソロモン諸島)の現地実証試験を実施したほか、新たに公募により選定された民間事業者が、ベトナム(水産加工排水処理事業)、マレーシア(浄化槽整備)、インド(再生水システム)の実施可能性調査を実施しました。

e アジア・コベネフィット・パートナーシップ

 平成22年11月に創設された「アジア・コベネフィット・パートナーシップ」において、アジアの途上国における環境汚染対策と温室効果ガス排出削減を同時に効率的に推進するための方策検討に積極的に参画するとともに、ウェブサイト(http://www.cobenefit.org/(別ウィンドウ))やコベネフィット白書の出版を通じ、コベネフィット・アプローチの普及啓発に取り組みました。

f アジア諸国における石綿(アスベスト)対策技術支援

 平成27年2月にマレーシアに行政・技術専門家を派遣し、石綿対策に関する情報の提供を行いました。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)中国

 日中環境保護協力協定に基づき、日中環境保護合同委員会を継続的に開催するなど様々な機会を捉えて、日中それぞれの環境政策及び大気汚染、気候変動対応、廃棄物、生物多様性等における環境協力を推進しました。

 大気分野については、日中間の都市間連携による大気環境改善に関する協力を進めるとともに、平成19年12月に、両国の環境大臣間での合意により開始した、環境汚染対策と温室効果ガスの排出削減の双方に資するコベネフィット協力について、23年4月には、協力の第2フェーズに係る覚書に合意し、中国第12次五ヶ年計画の大気汚染物質削減目標に資する協力を進めました。さらに、中国での窒素酸化物の総量削減に資するため、21年度から窒素酸化物削減手法や評価に関する共同研究を実施しており、23年度からは湖北省武漢市を対象として、NOx削減対策技術を導入するモデル事業を開始しています。

 水分野については、平成23年4月に両国環境大臣間で締結された覚書に基づき、農村地域等におけるアンモニア性窒素等総量削減モデル事業を実施しており、過年度に完成した山東省威海市及び四川省徳陽市のモデル施設に加え、26年度には浙江省嘉興市においてモデル施設が完成し、これら3施設を中国側に引き渡しました。

(イ)インドネシア

 平成19年12月に両国の環境大臣間で締結したコベネフィット協力に関する共同声明に基づき協力を実施してきたところですが、23年9月に協力の第2フェーズに係る文書に署名し、農産業分野を対象とした調査研究、人材育成及び実証事業等を行いました。

 また、平成19年11月、日本国政府とインドネシア政府との間で両国間の気候変動分野における具体的な協力と更なる対話の促進が重要との認識の下、森林保全、JCM、測定・報告・検証(MRV)の強化、低炭素成長の実現等における協力をうたった二国間協力文書が合意され、両国の間で具体的な施策に関する協議を進めました。その後、25年8月には、JCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始し、26年10月には、最初のJCMプロジェクトの登録が行われました。

 さらに、平成24年12月に両国大臣が署名した「日本国環境省とインドネシア共和国環境省の間の環境協力に関する協力覚書」や、26年2月に開催した第1回日本・インドネシア環境政策対話の開催を通じ両国の環境協力を引き続き強化しています。また、両国の都市間環境協力についてJCMの活用を想定した支援等を継続的に実施しています。

(ウ)インド

 平成26年1月、安倍総理とシン首相との首脳会談が行われ、共同声明「日インド戦略的グローバル・パートナーシップの強化」において、JCMに関する協議を継続することを共有しました。

(エ)ベトナム

 我が国が有する知見を活用し環境保護法改正を支援するため、環境法の専門家派遣等を実施しました。

 また、平成25年7月、日本国政府とベトナム政府との間でJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始することとなりました。

 さらに、同年12月に署名した「日本国環境省とベトナム社会主義共和国天然資源環境省の間の環境協力に関する協力覚書」に基づき、26年8月に第1回日本・ベトナム環境政策対話を開催し、気候変動、ベトナムにおける改正環境保護法の実施、廃棄物管理等について議論を行いました。

(オ)モンゴル

 平成24年12月、両国の環境大臣が「環境協力・気候変動・二国間クレジット制度に関する共同声明」に署名しました。その後、25年1月には、他国に先駆けてJCMに関する二国間文書への署名が行われ、同制度を正式に開始することとなりました。

 平成27年3月、第9回日本・モンゴル環境政策対話を日本で開催し、気候変動、大気汚染、エコツーリズム等に関して双方の経験を共有し、モンゴルの抱える環境問題解決のために意見交換を行いました。また、両国の環境協力を一層推進することに合意しました。

(カ)韓国

 日韓環境保護協力協定に基づき、これまでに16回の日韓環境保護協力合同委員会を開催し、両国間での環境協力に関して幅広い意見交換等を行っています。前回は平成25年12月に韓国・ソウルで開催しており、平成26年度は第17回の開催に向けた準備を進めました。

(キ)シンガポール

 平成26年3月に署名した「日本国環境省とシンガポール共和国国家環境庁との環境協力に関する同意書」に基づき、27年1月に東京で第2回日本・シンガポール環境政策対話を開催し、廃棄物管理・リサイクル及び大気汚染管理について、双方の政策や経験を共有し、意見交換を行いました。

ウ 環境と貿易

 我が国は、平成25年7月に環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉に正式に参加しました。「環境」分野では、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと、環境規制を貿易・投資障壁として利用しないことなどについて議論を行いました。また、欧州連合(EU)、中国・韓国、カナダ、コロンビア等との経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)交渉において、適切かつ戦略的な環境配慮を確保すべく交渉を進めました。

エ 海外広報の推進

 海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、英語版広報誌の刊行、「Japan Annual Report on the Environment, the Sound Material-Cycle Society and Biodiversity 2014(英語版環境・循環型社会・生物多様性白書)」等、海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。

(2)開発途上地域の環境の保全

 我が国は政府開発援助(以下「ODA」という。)による開発途上国支援を積極的に行っています。環境問題は、平成27年2月に改正された「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱(じん)な国際社会の構築を重点課題の1つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島しょ国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

 さらに、ODAを中心とした我が国の国際環境協力については、平成14年に表明した「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」において、環境対処能力向上や我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針の下で、地球温暖化対策、環境汚染対策、「水」問題への取組、自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。平成25年においては、環境分野の国際協力として73億4,210万ドルの支援を行いました。

ア 技術協力

 独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクトへの支援等、我が国の技術・知識・経験をいかし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上といった環境分野における技術協力を行いました。

イ 無償資金協力

 無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において実施されています。

 また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。

ウ 有償資金協力

 有償資金協力(円借款・海外投融資)は経済・社会インフラへの援助等を通じ、開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対しても、JICAを通じて、積極的に円借款・海外投融資を供与しています。

エ 国際機関を通じた協力

 我が国は、UNEPの環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っており、また、我が国が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

 地球環境ファシリティ(以下「GEF」という。)は、開発途上国等で実施される、地球環境問題の解決に資するプロジェクトに対して、主に無償資金を提供する多国間基金です。我が国はアメリカに次ぐ世界第2位の資金拠出国として、意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しています。

 また、途上国における気候変動対策を支援するための緑の気候基金(以下「GCF」という。)については、安倍総理により平成26年11月のG20サミットにおいて、国会の承認を前提に、15億ドルの拠出を表明しました。GCF理事会における基金設計の議論にも引き続き積極的に参画しています。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進

 監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、WMOにおけるGAW計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、GCOS、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合(以下「GEO」という。)において、2008年(平成20年)11月まで執行委員会国を務めるとともに、GEOの専門委員会である構造及びデータ委員会の共同議長を務めるなど、GEOの活動に積極的に参加しました。GCOSの地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象機関と連携して推進しました。

 気象庁は、WMOの地域気候センター(RCC)を運営し、アジア太平洋地域の気象機関に対し基礎資料となる気候情報やウェブベースの気候解析ツールを引き続き提供しました。さらに、アジア太平洋地域の気象機関を対象にした研修を実施するなど、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。

 また、超長基線電波干渉法(VLBI)やGPSを用いた国際観測に参画するとともに、験潮、絶対重力観測等と組み合わせて、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しました。

 さらに、東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のため、これら地域の国々と連携して環境モニタリングを実施しました。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実・強化

 低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)では、平成26年10月にイタリアのローマにおいて、第6回年次会合が開催されました。緩和策のみならず気候変動影響への適応策との並行的推進が、今後更に重要となるとの認識を共有しました。さらに、緩和策と適応策を統合的に実施するべく、試験的な研究プロジェクトをフィリピンで開始しました。

 また、アジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を他の国際機関等との連携により支援し、アジア太平洋地域の気候変動適応に関する政策立案者及び決定者・実施者に対する能力強化等の活動の強化を推進しました。第4回アジア太平洋気候変動適応フォーラムが平成26年10月にクアラルンプールで開催されました。さらに、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(以下「APN」という。)は、アジア太平洋地域における、特に開発途上国の地球変動研究の推進を積極的に支援しました。神戸市のAPNセンターを中核として、気候変動や生物多様性に関する国際共同研究などを支援し、地域内諸国の研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。

 また、国連や各国と連携して地球環境の現状を把握するための地球全陸域の地理情報を整備する「地球地図プロジェクト」を主導しました。本プロジェクトには167か国・16地域が参加しており、111か国・8地域分のデータが公開されています(平成27年3月31日現在)。さらに、東アジアをリアルタイムでカバーできる温暖化影響観測ネットワーク網の構築によりアジアの環境影響評価を行うとともに、アジア太平洋環境経済統合モデル(AIMモデル)を用いて、中国、インド等のアジア各国において各国が自ら現状の政策を踏まえた将来の社会環境変化を予測するためのシナリオを構築する能力開発を協力して行いました。また、平成26年9月の国連気候サミットにおいて安倍総理が、途上国における気候変動による影響への適応を包括的に支援するため、「適応イニシアチブ」(適応分野の支援体制)を立ち上げました。

 さらに、エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るため、世界の産官学の議論と協力を促進する国際的プラットフォームとして、イノベーション・フォー・クール・アース・フォーラム(ICEF)を創設し、第一回年次会合を平成26年10月に開催しました。

3 民間団体等による活動の推進

 経済成長著しいアジアで活動を展開しようとする我が国企業が、優れた環境技術・サービスの積極的な海外展開を通じた国際協力を推進することを目的とし、「アジアの低炭素発展に向けた情報提供サイト」(http://www.env.go.jp/earth/coop/lowcarbon-asia/(別ウィンドウ))等を開設しています。