環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第5章>第3節 化学物質の環境リスクの管理

第3節 化学物質の環境リスクの管理

1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく取組

 持続可能な開発に関する世界サミット(以下「WSSD」という。)における「2020年(平成32年)までに、化学物質による人の健康や環境への著しい悪影響を最小化する」という目標を踏まえて、平成21年5月に化学物質審査規制法が改正されました。改正された化学物質審査規制法では、包括的な化学物質の管理を行うため、法制定以前に製造・輸入が行われていた既存化学物質を含む一般化学物質等を対象に、まずは、リスクがないとは言えない化学物質を絞り込んで優先評価化学物質に指定した上で、それらについて段階的に情報収集を求め、国がリスク評価を行う効果的、効率的な体系が導入されました。平成27年4月1日時点で、優先評価化学物質177物質が指定されています(図5-3-1)。また、優先評価化学物質については段階的に詳細なリスク評価を進めており、平成26年度までに42物質について「リスク評価(1次)評価Ⅱ」に着手し、3物質について評価Ⅱの評価結果を審議しました。


図5-3-1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント

 一方、新たに製造・輸入される新規化学物質については、平成26年度は、600件(うち低生産新規化学物質は233件)の届出を事前審査しました。また、平成26年6月に新規化学物質の製造又は輸入に係る届出等に関する省令を改正し、新たに少量中間物等新規化学物質確認制度を創設しました(同年10月1日施行)。

 さらに、平成23年4月及び平成25年5月に開催されたPOPs条約締約国会議の議論を踏まえ、平成26年3月に化学物質審査規制法施行令を改正し、新たに条約上の廃絶対象とすることが決定されたエンドスルファン及びヘキサブロモシクロドデカンを第一種特定化学物質に指定(同年5月1日施行)するとともに、ヘキサブロモシクロドデカンが使用されている場合に輸入することができない製品として繊維用難燃処理薬剤等を指定(同年10月1日施行)しました。

2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく取組

 化学物質排出把握管理促進法に基づく化学物質排出移動量届出制度(以下「PRTR制度」という。)については、同法施行後の第13回目の届出として、事業者が把握した平成25年度の排出量等が都道府県経由で国へ届け出られました。届出された個別事業所のデータ、その集計結果及び国が行った届出対象外の排出源(届出対象外の事業者、家庭、自動車等)からの排出量の推計結果を、平成27年3月に公表しました(図5-3-2図5-3-3図5-3-4)。また、平成22年度から、個別事業所ごとのPRTRデータをインターネット地図上に分かりやすく表示し、ウェブサイト(http://www2.env.go.jp/chemi/prtr/prtrmap/(別ウィンドウ))で公開しています。


図5-3-2 化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR)の実施の手順

図5-3-3 届出排出量・届出外排出量の構成(平成25 年度分)

図5-3-4 届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量(平成25年度分)

3 ダイオキシン類問題への取組

(1)ダイオキシン類による汚染実態と人の摂取量

 平成25年度のダイオキシンに係る環境調査結果は表5-3-1のとおりです。


表5-3-1 平成25年度ダイオキシン類に係る環境調査結果(モニタリングデータ)(概要)

 また、26年度の一日摂取量調査において、25年度に人が一日に食事及び環境中から平均的に摂取したダイオキシン類の量は、体重1kg当たり約0.59pg-TEQと推定されました(図5-3-5)。食事からのダイオキシン類の摂取量は0.58pg-TEQです。この数値は経年的な減少傾向から大きく外れるものではなく、耐容一日摂取量の4pg-TEQ/kg/日を下回っています(図5-3-6)。


図5-3-5 日本におけるダイオキシン類の1人1日摂取量

図5-3-6 食品からのダイオキシン類の1日摂取量の経年変化

(2)ダイオキシン法等に基づく対策

 ダイオキシン類対策は、「ダイオキシン対策推進基本指針(以下「基本指針」という。)」及びダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「ダイオキシン法」という。)の2つの枠組みにより進められています。

 平成11年3月に策定された基本指針では、排出インベントリ(目録)の作成、測定分析体制の整備、廃棄物処理・リサイクル対策の推進などを定めています。

 ダイオキシン法では、施策の基本とすべき基準(耐容一日摂取量及び環境基準)の設定、排出ガス及び排出水に関する規制、廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理に関する規制、汚染状況の調査、土壌汚染に係る措置、国の削減計画の策定などが定められています。

 基本指針及びダイオキシン法に基づき国の削減計画で定めたダイオキシン類の排出量の削減目標が達成されたことを受け、平成24年に国の削減計画を変更し、新たな目標として、当面の間、改善した環境を悪化させないことを原則に、可能な限り排出量を削減する努力を継続することとしました。我が国のダイオキシン類の排出総量は年々減少しており、平成25年における削減目標の設定対象に係る排出総量は、目標量を下回っており、排出削減目標は達成されたと評価されます(図5-3-7)。


図5-3-7 ダイオキシン類の排出総量の推移

 ダイオキシン法に定める排出基準の超過件数は、平成25年度は大気基準適用施設で35件、水質基準適用事業場で0件、合計35件(平成24年度56件)で、前年度に比べ減少しました。また25年度において、同法に基づく命令が発令された件数は、大気関係8件、水質関係0件で、法に基づく命令以外の指導が行われた件数は、大気関係1,581件、水質関係56件でした。

 ダイオキシン類による土壌汚染対策については、環境基準を超過し、汚染の除去等を行う必要がある地域として、平成26年2月に、東京都において新たにダイオキシン類土壌汚染対策地域が指定され、同年10月に東京都が対策計画を策定しました。なお、新たに指定された対策地域以外では、これまでに5地域がダイオキシン類土壌汚染対策地域に指定され、対策計画に基づく事業が完了しています。

 さらに、ダイオキシン類に係る土壌環境基準等の検証・検討のための各種調査を実施しました。

(3)その他の取組

ア ダイオキシン類の測定における精度管理の推進

 「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」又は「ダイオキシン類の環境調査に係る精度管理の手引き(生物検定法)」に基づいて実施するダイオキシン類の環境測定を伴う請負調査について、測定に係る精度管理を推進するために、申請に係る負担軽減に配慮しつつ、測定分析機関に対する受注資格審査を行いました。

イ 調査研究及び技術開発の推進

 ダイオキシン法附則に基づき、臭素系ダイオキシン類の毒性やばく露実態、分析法に関する情報を収集・整理するとともに、臭素系ダイオキシン類の排出実態に関する調査研究等を進めました。また、環境中でのダイオキシン類の実態調査などを引き続き実施しました。

4 農薬のリスク対策

 農薬は、生理活性を有し、意図的に環境中に放出されるものであり、正しく使用しなければ、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあることなどから、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき規制されており、農林水産大臣の登録を受けなければ製造、販売等ができません。農薬の登録を保留するかどうかの要件のうち、作物残留、土壌残留、水産動植物の被害防止及び水質汚濁に係る基準(農薬登録保留基準)を環境大臣が定めています。

 特に、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準は、個別農薬ごとに基準値を設定しており、平成26年度は、水産動植物の被害防止に係る登録保留基準について53農薬に基準値を設定し、24農薬を基準値設定不要としました。水質汚濁に係る農薬登録保留基準については23農薬に基準値を設定し、24農薬を基準値設定不要としました。

 さらに、農薬登録保留基準について、国内外の知見や国際的な動向を考慮して、その充実を図るための検討を行いました。

 また、農薬の適正かつ安全な使用の徹底を図るため、「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」、「住宅地等における農薬使用について」、「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」及び「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル優良事例集」に基づき、地方自治体や農薬メーカー等において、適切なリスク管理措置が講じられるよう、引き続き周知を行いました。

 さらに、農薬の環境リスク対策の推進に資するため、農薬の各種残留実態調査、農薬の生態影響調査、農薬の大気経由による影響に関する調査等を実施しました。