環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第9節 放射性物質による汚染の除去等の取組

第9節 放射性物質による汚染の除去等の取組

 東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による環境の汚染が生じており、これによる人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することが喫緊の課題となっていることを踏まえ、平成23年8月に、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)が公布され、平成24年1月1日に全面施行されました。平成23年11月には同法に基づく基本方針が閣議決定され、環境の汚染の状況についての監視・測定、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理、土壌等の除染等の措置等に係る考え方が取りまとめられました。また、同年12月には同法に基づく政省令やガイドラインが策定されました。

 放射性物質汚染対処特措法に基づき、国が除染を実施する除染特別地域については、市町村ごとに策定する特別地域内除染実施計画に従って除染事業を進めることとしており、福島県下の11市町村を指定しています。平成25年6月末までに、そのうち10市町村(田村市、楢葉町、川内村、南相馬市、飯舘村、川俣町、葛尾村、浪江町、大熊町、富岡町)について、同計画を策定し、同年9月に実施した除染の進捗状況についての総点検を踏まえ、一部の市町村については同年12月に同計画を見直しました。また、双葉町については平成26年7月に計画を策定しました。

 平成27年3月末までに、田村市、楢葉町、川内村及び大熊町の全体、葛尾村及び川俣町の宅地部分並びに常磐自動車道については、計画に基づく除染が終了し、飯舘村の宅地部分についても計画に基づく除染がおおむね終了しました。南相馬市、飯舘村、浪江町、富岡町及び双葉町の全体並びに川俣町及び葛尾村の宅地以外については同計画に基づき、除染を進めています。

 また、市町村が中心となって除染を実施する汚染状況重点調査地域については、市町村が除染実施計画を策定し、除染事業を進めることとされており、8県94市町村において除染実施計画が策定され(平成27年3月末現在)、各地で除染作業が進められています。これらについては、公共施設等の8割以上で除染が実施されるなど着実な進捗が見られており、計画した除染が終了した市町村も見られるところです。

 平成24年1月の放射性物質汚染対処特措法の全面施行に伴い、除染事業を進めるため、同年1月に、福島県に福島環境再生事務所を開設するなど、体制の強化を図り、福島県などにおける除染や汚染廃棄物処理を推進しています。また、福島県と共同で除染情報プラザを設置し、除染に関する情報の提供及び専門家派遣、移動展示などを行っています。

 この他にも、除染作業等に活用し得る技術を発掘し、除染効果、経済性、安全性等を確認するため、除染技術実証事業などを進めています。さらに、国際機関等と連携・協力し、除染の経験・知見の共有等も行っています。

 また、福島県内の除染に伴い発生した土壌や廃棄物等を安全かつ集中的に管理・保管する中間貯蔵施設については、候補地におけるボーリング調査等の結果や、学識経験者から構成される検討会での議論等を踏まえて、平成25年12月に福島県並びに大熊町、双葉町、楢葉町及び富岡町に対して、中間貯蔵施設の案等を提示して受入れの要請を行いました。この案について、平成26年2月に福島県知事より、中間貯蔵施設を大熊町及び双葉町に集約すること等の申入れがあり、これに対し、同年3月に計画面積を変えることなく、中間貯蔵施設を大熊町及び双葉町に集約すること等の回答を行いました。その後、大熊町及び双葉町の両町民を対象とした住民説明会を同年5月から6月にかけて福島県内及び県外で合計16回開催しました。そこで様々な意見があり、この意見も踏まえ、同年7月から8月にかけて福島県並びに大熊町及び双葉町に対して、住民説明会での意見等を踏まえた国の考え方の全体像を提示しました。これを受けて、同年9月に福島県知事より施設の建設受入れを容認する旨、大熊町長及び双葉町長より知事の考えを重く受け止め、地権者への説明を了承する旨が国に伝達されました。同時に施設への搬入に当たっては、県外最終処分の法案の成立、施設及び輸送に関する安全性等の5項目の確認を求められました。同年9月から10月に施設予定地の地権者を対象とした説明会を福島県内及び県外で合計12回開催しました。

 施設への搬入に当たっての確認事項の1つである、県外最終処分の法案の成立については、日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第120号)が同年11月に成立し、同年12月に施行され、この改正により、国の責務として、中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずること、国の委託に基づき中間貯蔵施設の管理運営を中間貯蔵・環境安全事業株式会社が行うことができること等が定められました。

 他の確認事項のうち、輸送に関する安全性等については、同年11月に輸送基本計画を取りまとめ、平成27年1月に輸送実施計画を取りまとめ、本格的な搬入に向けて、安全かつ確実に輸送を実施できることを確認するため、おおむね1年程度パイロット輸送を行うこととしました。また、福島県並びに大熊町及び双葉町に対して講ずることとしていた、新規かつ追加的な財政措置である中間貯蔵施設等に係る交付金等の予算化については、平成26年度補正予算及び平成27年度本予算に計上しました(同補正予算については本年2月3日に成立)。

 平成26年12月に大熊町から、平成27年1月に双葉町から、建設の受入れが容認されました。

 同年1月16日には、福島県からの5項目の確認事項が確認された場合には東日本大震災から5年目を迎えるまでに搬入が開始できるように全力で取り組む等の中間貯蔵施設への搬入開始時期の見通しについて公表しました。そして、同年2月8日に福島県に対して、搬入に当たって確認が必要な5項目に係る取組状況等を説明し、搬入について、速やかな判断をお願いしました。同年2月25日には、福島県並びに大熊町及び双葉町から搬入の受入れについて国に伝達があり、福島県、大熊町及び双葉町並びに環境省の間で安全協定を締結しました。同日に、大熊町及び双葉町から搬入開始を3月12日以降にすること等について申入れがありました。

 この申入れを重く受け止め、3月13日に大熊町の仮置場から、3月25日に双葉町の仮置場から中間貯蔵施設内の保管場への除去土壌等のパイロット輸送を開始しました。