環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第4節 国際的取組の推進

第4節 国際的取組の推進

1 3R国際協力の推進と我が国循環産業の海外展開の支援

 アジアをはじめとする途上国や地球規模での循環型社会づくりと、我が国循環産業の活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。

 我が国とつながりの深いアジア・太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、アジア太平洋諸国における3Rの推進を促す取組として、2015年(平成27年)にモルディブで開催予定の「アジア太平洋3R推進フォーラム第6回会合」について、開催に向けた準備及び調整を実施しました。また、2015年(平成27年)以降の「アジア太平洋3R推進フォーラム」の開催計画を検討しました。

 特に、アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(以下「ESM」という。)の定着のため、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)では、アジア太平洋諸国のうち、中国、ベトナム、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施しました。

 同時に、国レベルだけでなく、アジア各国の地方公共団体との知見・経験の共有を行うことも重要です。日本環境衛生センター主催の第7回アジア3R自治体間ネットワーク会合の前日には、3Rと廃棄物適正処理の推進を目的とした、環境省主催による官民連携ワークショップを開催し、海外から5都市と日本の自治体を招聘(へい)しました。あわせて、NGOによるセミナーも開催しました。また、平成26年度の廃棄物処理・リサイクルに関する自治体間協力事業として、ベトナムをターゲットに法制度動向調査や関係行政機関が参加するセミナー等も実施しました。

 さらに、これらの取組を下地とし、各国における廃棄物・リサイクル制度の導入・施行と、静脈産業をはじめとする我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国の優れたインフラ関連産業として、循環産業の国際展開を支援する、我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業では、海外展開を行う事業者の支援を平成26年度に17件(継続1件、新規16件)実施しました。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネスについては、平成25年度からの継続案件1件のほか、3件の実施可能性調査を新たに実施しました。さらに、平成26年度の現地ニーズに合致したリサイクル技術・システムの確立に係る研究開発・実証事業として、平成24年度からの継続案件1件、平成25年度からの継続案件1件を実施しました。

 さらに、各国別でも様々な取組を行っています。ベトナムにおいては、平成26年度の廃棄物処理、3R関連制度、戦略に関する二国間協力として、廃棄物関連政令の策定を支援し、平成26年6月に政令案を公開するワークショップに際して、専門家を派遣し、内容の提案を行いました。また、焼却炉性能指針の策定とJICAと連携して自治体向け一般廃棄物処理計画のためのガイドラインの策定についての支援も実施しました。マレーシアでは、食品廃棄物を対象とした国家戦略計画の策定、状況調査、ガイドラインの作成支援、成果報告ワークショップを実施しました。アラブ首長国連邦では、平成27年1月に相互の産官学を招いて展示会「Eco Waste展」の会場でワークショップを開催しました。同様に、クウェートでも平成27年1月に両国の産官学を招いてワークショップを開催しました。さらに、日本の環境関連事業者を招いて、シンガポール訪日団を対象としたワークショップも平成26年10月に開催しました。

 また、インドネシアの農水産業分野を中心に、同国の環境対策の強化を支援している、コベネフィット(共通便益)協力として、平成26年度は過年度の協力内容をレビューし、成果や課題を取りまとめた上で今後の協力継続について検討を行いました。

 加えて、アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、日本の優れたし尿処理技術である浄化槽の国際普及を推進しています。平成26年度は、第2回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを平成26年12月にタイで行いました。また、ベトナム及び中国においては、二国間での協力事業の案件形成に向け、し尿処理に関する現地調査や浄化槽の導入実地検証等を行いました。

 同時に、国際的な活動に積極的に参画し、情報発信を強化することも重要です。国連環境計画(以下「UNEP」という。)国際資源パネルへの支援については、環境省は平成26年5月にチリのサンチアゴで開催されたUNEP国際資源パネル第14回会合に参加し、推進中の調査・研究の進捗を確認しました。また、同年9月には、UNEP国際資源パネルの物質フロー分析作業部会を東京に誘致し、環境省、専門家、民間企業で資源効率等を議論したほか、同年11月にオランダのロッテルダムで開催された、UNEP国際資源パネル第15回会合に参加し、推進中の調査・研究の進捗確認を実施しました。今後も毎年複数の世界経済の持続的発展に資する報告書の公表が予定される等、UNEP国際資源パネルの活動は着実に進捗しています。外務省は、国際的な情報発信を強化するため、UNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の活動について、エネルギー利用のためのバイオマス廃棄物プロジェクトに関するセミナーや同省の支援により作成した、我が国の産業廃棄物処理政策と実践を取りまとめた報告書のサイドイベント等に参加しました。

 経済協力開発機構(以下「OECD」という。)については、平成26年6月にOECD資源生産性・廃棄物作業部会と連携し、環境に関するグローバル・フォーラムを東京に誘致し、拡大生産者責任に関する議論を行いました。また、同年12月にフランスのパリで開催された同作業部会第5回会合へ参加し、推進中の調査・研究の進捗を確認しました。

 また、持続可能な開発目標(SDGs)に関する活動についても、2014年(平成26年)3月~7月に開催された持続可能な開発目標オープン・ワーキング・グループ(以下「SDGsOWG」という。)の報告書作成交渉に積極的に参加しました。なお、SDGsOWGの報告書には、持続可能な消費と生産に関するゴールの下、廃棄物の3Rの推進等に関するターゲットが盛り込まれました。

 さらに、バーゼル条約等に関わる取組も、各省連携の下で行っています。環境省は、2013年(平成25年)のバーゼル条約第11回締約国会議で設置された、ESMに関する専門家作業グループ(平成26年度に第2回及び第3回を開催)に、我が国の専門家を参加させ、各国におけるESMを実施するためのガイダンス文書の策定のための作業やパイロットプロジェクトの実施を支援するなど、積極的に取り組みました。さらに、水銀に関する水俣条約で考慮すべきとされている、水銀廃棄物の環境上適正な管理に関するガイドライン及びPCB廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインの改定作業を我が国が主導するとともに、我が国の水銀廃棄物の処理技術、PCB廃棄物等の処理技術等に関する知見を適切にインプットすることで、他のPOPs廃棄物に関するガイドライン等の策定・改定作業も含め、国際的な議論の進展に貢献しました。外務省も、バーゼル条約に関係する活動として、2014年(平成26年)9月に開催された第9回公開作業部会での議論に積極的に参加しました。

 さらに、バーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)、POPs条約の3条約に、2013年(平成25年)に採択された水銀に関する水俣条約を加えた4条約の連携強化に係る活動も推進しました。水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン等、バーゼル条約における取組で得られた知見は、水俣条約の実施に活用できることから、特にこれら2条約についての連携強化に取り組みました。

 「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」については、第6章第5節6を参照。

国内外でのNPO/NGOの取組

 「NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク」は、1976年(昭和51年)から廃食油のリサイクル等を通じて分散・自立・資源循環サイクルづくり等に関する幅広い取組を実施しています。東日本大震災の際には、同NPOのネットワークメンバーにより、岩手県釜石市、宮城県石巻市及び気仙沼市等の被災地へバイオディーゼル燃料の給油等の支援を行いました。

 また、廃棄物問題の解決と循環型社会の形成のために日本が進めている3Rの取組を世界各国に広げていく上でも、NPO/NGOは大きな役割を果たしています。

 日本国内とアジア域内の廃棄物問題に取り組むNGOから成るネットワークである、「アジア3R推進市民ネットワーク」は、日本あるいはアジア各国で進む先進的な3R推進の取組に関する情報をアジア各国の市民に向けて発信しています。例えば、ベトナム等のNGO、行政機関、大学等を訪問し、情報交換と課題の共有を図るとともに、その結果を「アジア3R推進市民フォーラム」で報告しています。同ネットワークは、現在、せっけん、堆肥、バイオ燃料に関して、市民コミュニティーベースで社会システムを構築することに注力をしており、今後は更にその活動の拡大を図る予定としています。

2 循環資源の輸出入に係る対応

 3R推進月間の活動の一環として、地方環境事務所において廃棄物等の不法輸出入の監視強化のための取組を関係省庁と連携して行う等、有害廃棄物の不法輸出入防止に関する水際対策に取り組みました。また、平成26年11月には、岡山市でアジア11か国・関係国際機関の参加を得て、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップを開催し、不法輸出入防止のための連携強化を図りました。また、廃棄物等の輸出入を行う事業者に対しては、平成26年11月以降に全国9か所でバーゼル法等の説明会を開催する等、事業者への手続き案内等の拡充を図りました。

 そのほかにも、港湾における循環資源の取扱いにおいては、循環資源の積替・保管施設等を活用しました。