環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

1 三陸復興国立公園を核としたグリーン復興

(1)三陸復興国立公園に関する取組

 平成25年5月に創設した三陸復興国立公園については、平成27年3月に南三陸金華山国定公園を新たに編入しました。みちのく潮風トレイルについては、25年11月に開通した青森県八戸市蕪島から岩手県久慈市小袖の区間(約100km)で踏破証明書の発行による利用促進を図ったほか、26年10月には福島県新地町・相馬市の区間(約50km)を新たに開通しました。また、岩手・宮城・福島県内の5つの地域を対象とした復興エコツーリズム推進モデル事業、地震・津波による自然環境への影響の把握と「重要自然マップ」として地図化する(第1部第2章コラムP.44を参照)などの情報発信といったグリーン復興プロジェクトを推進しました。

(2)公園施設の整備

 三陸復興国立公園の主要な利用拠点において、防災機能を強化しつつ、被災した公園利用施設の再整備を推進しました。岩手県宮古市では、中の浜の野営場跡地を、震災遺構の保存・展示のための「震災メモリアルパーク中の浜」として再整備を行い、平成26年5月に利用を再開しました(写真2-7-1)。青森県八戸市では、種差海岸に利用拠点となるインフォメーションセンターを整備し、平成26年7月に開館しました。


写真2-7-1 「震災メモリアルパーク中の浜」開園式典の様子

2 東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応

(1)野生動植物への影響のモニタリング

 東京電力福島第一原子力発電所の周辺地域での放射性物質による野生動植物への影響や、人間活動の減少による二次的な影響を把握するため、関係する研究機関とも協力しながら、植物の種子やネズミ等の試料の採取及び分析、定点カメラの設置等を進めました。また、関連した調査を行っている他の研究機関や学識経験者、海外の研究者とも意見交換を行いながら、今後のモニタリング方法の検討などを行いました。

(2)野生鳥獣への影響と鳥獣被害対策

 平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、放射線量の高い帰還困難区域や居住制限区域は、原則立入り禁止となりました。これらの区域内では、農業生産活動などの人為活動が停滞していること、また、狩猟者の他市町村への避難などにより、狩猟や有害鳥獣捕獲を行うことが難しい状況となっています。このため、イノシシなどの野生鳥獣の人里への出没が増加し、農地を掘り返したり、家屋に侵入したりする被害が出ている状況です。これらの鳥獣をこのまま放置すれば、住民の帰還準備や帰還後の生活、地域経済の再建に大きな支障が生じるおそれがあります。

 そのため政府では、平成25年度旧警戒区域内の帰還困難区域と居住制限区域において、イノシシなどの生息状況調査と捕獲を開始し、4町(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町)で計204頭のイノシシ等を捕獲しました。26年度は上記に加え半径20キロ圏外の帰還困難区域も事業対象区域とし、5町村(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)でイノシシなどの生息状況調査と捕獲を行い、計381頭を捕獲しました。

(3)東日本大震災にかかる被災ペット対応

 震災発生以降、各自治体や緊急災害時動物救援本部(公益財団法人日本動物愛護協会、公益社団法人日本動物福祉協会、公益社団法人日本愛玩動物協会、公益社団法人日本獣医師会で構成)等と連携して被災ペットの救護を支援してきました。

 特に、福島県においては、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、住民の緊急避難の際に旧警戒区域内に多くのペットが取り残されたため、福島県及び福島県動物救護本部等と協力し、被災ペットの保護活動等を実施しました。平成26年度はこれまで保護したペットを福島県内の動物収容施設等で飼養管理を行いながら、元の飼い主への返還や新しい飼い主への譲渡を行っていました。これまで保護したペットのうち犬437頭、猫459頭を返還・譲渡しました(平成26年9月30日現在)。残りを福島県動物救護本部に引き継いだため、平成24年7月に環境省が設置した三春の臨時シェルターについては、その役割を果たしたことから、平成26年9月30日をもって閉鎖しました。