環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第3節 地域における人と自然の関係を見直し、再構築する取組

第3節 地域における人と自然の関係を見直し、再構築する取組

1 里地里山及び里海の保全活用に向けた取組の推進

 里地里山は、集落を取り巻く二次林と人工林、農地、ため池、草原等を構成要素としており、人為による適度なかく乱によって特有の環境が形成・維持され、固有種を含む多くの野生生物を育む地域となっています。また、希少種が集中して分布している地域の半数近くが里地里山に含まれています。

 このような里地里山の環境は、これまで農林業生産や生活の場として利用することにより維持されてきましたが、燃料改革や営農形態の変化などに伴う森林や農地の利用の低下に加え、人口の減少や高齢化の進行により里地里山における人間活動が縮小してきており、生物の生息・生育環境の悪化や衰退が進んでいます。こうした背景を踏まえ、都市住民などのボランティア活動への参加を促進するため、環境省ウェブサイトなどにより活動場所や専門家の紹介などを行うとともに、地域や活動団体の参考となる里地里山の特徴的な取組事例を情報発信し、他の地域への取組の波及を図りました。

 さらに、里地里山の保全活用の効果的な促進に向け、生物多様性保全の観点から、特に保全の必要性が高い地域の選定作業を行いました。

 特別緑地保全地区等に含まれる里地里山については、土地所有者と地方公共団体等との管理協定の締結による持続的な管理や市民への公開などの取組を推進しました。

 棚田や里山といった地域における人々と自然との関わりの中で形成されてきた文化的景観の保存活用のために行う調査、保存計画策定、整備、普及・啓発事業を補助する文化的景観保護推進事業を実施しました。

 里海に係る取組は、第4章第4節3(3)オを参照。

2 野生鳥獣の保護及び管理の推進

(1)鳥獣の管理の強化

 第1節4を参照。

(2)科学的・計画的な保護及び管理

 長期的ビジョンに立った鳥獣の科学的・計画的な保護管理を促し、鳥獣保護行政の全般的ガイドラインとしてより詳細かつ具体的な内容を記した「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針」に基づき、鳥獣保護区の指定、被害防止のための捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進しました。

 狩猟者人口は、約53万人(昭和45年度)から約18万人(平成24年度)まで減少し、高齢化も進んでおり、被害防止のための捕獲などを行う鳥獣保護管理の担い手の育成が求められています。このため、狩猟免許の取得促進へ向けたフォーラムの開催、都道府県職員への研修事業、鳥獣保護管理に係る人材登録事業を実施したほか、地域ぐるみでの捕獲を進めるモデル地域を設定し、先進地づくりを進めました。

 クマ類の出没・目撃情報が各地で多数相次いだことから、関係省庁が連携して都道府県に対する情報提供や注意喚起等を実施しました。

 都道府県における特定鳥獣保護管理計画作成や保護管理のより効果的な実施のため、平成24年度から開催している特定鳥獣5種(イノシシ、クマ類、ニホンザル、ニホンジカ、カワウ)の保護管理検討会を継続して開催するとともに、技術研修会を開催しました。ニホンジカ及びニホンザルについては、平成22年に作成した「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン」のニホンジカ編及びニホンザル編について、その後の状況の変化等を踏まえた改訂に向けて検討しました。

 関東地域、中部近畿地域におけるカワウ、白山・奥美濃地域のツキノワグマ、関東山地のニホンジカについて、広域協議会を開催し、関係者間の情報の共有等を行いました。また、カワウについては、新たに中国四国カワウ広域協議会が発足し広域指針策定に向けて検討するとともに、東北及び九州地区で関係県を対象とする連絡会等を開催しました。関東山地ニホンジカ広域協議会においては、実施計画(中期・年次)に基づき、関係機関の連携のもと、各種対策を推進しました。

 希少鳥獣であるゼニガタアザラシによる漁業被害が深刻化しているため、種の保全に十分配慮しながら総合的な保護管理手法を検討しました。

 適切な狩猟が鳥獣の個体群管理に果たす効果等に鑑み、都道府県及び関係狩猟者団体に対し、連絡会議等を通じて事故及び違法行為の防止へ向けた助言を行いました。特に、狩猟等における事故の防止のため、事故の再現ドラマ等による映像資料を制作・公表し、普及啓発に努めました。

 渡り鳥の生息状況等に関する調査として、鳥類観測ステーションにおける鳥類標識調査、ガンカモ類の生息調査等を実施しました。また、出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅル等の保護対策として、生息環境の保全、整備を実施するとともに、越冬地の分散を図るための事業を実施しました。

 悪化した鳥獣の生息環境や生息地の保護及び整備を図るため、ユルリ・モユルリ(北海道)、谷津(千葉県)、鳥島(東京都)、七ツ島(石川県)、浜甲子園(兵庫県)、大東諸島(沖縄県)の各国指定鳥獣保護区において保全事業を実施しました。

 野生生物保護についての普及啓発を推進するため、愛鳥週間行事の一環として東京都において第68回「全国野鳥保護のつどい」を開催したほか、小中学校及び高等学校等を対象として野生生物保護の実践活動を発表する「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催しました。

(3)鳥獣被害対策

 野生鳥獣の生態及び行動特性を踏まえた効果的な追い払い技術の開発等の試験研究、防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止システムの整備、捕獲獣肉利活用マニュアルの作成等の対策を推進するとともに、鳥獣との共存にも配慮した多様で健全な森林の整備・保全等を実施しました。

 農山漁村地域において鳥獣による農林水産業等に係る被害が深刻な状況にあることを背景として、その防止のための施策を総合的かつ効果的に推進することにより、農林水産業の発展及び農山漁村地域の振興に寄与することを目的とする鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成19年法律第134号)が成立し、平成20年2月から施行されました。この法律に基づき、市町村における被害防止計画の作成を推進し、鳥獣被害対策の体制整備等を推進しました。

 また、平成25年12月に環境省と農林水産省が共同で「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を取りまとめたことを受け、鳥獣の捕獲等の一層の促進と捕獲等の担い手育成のため、平成26年に鳥獣保護法の改正を行いました(第1節4参照)。

 近年、トドによる漁業被害が増大しており、トドの資源に悪影響を及ぼすことなく、被害を防ぐための対策として、効果的な追い払い手法の実証試験及び被害を受ける刺し網等の改良等を促進しました。

(4)鳥インフルエンザ等感染症対策

 平成16年以降、野鳥及び家きんにおいて、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)が確認されていることから、「野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る対応技術マニュアル」(以下「マニュアル」という。)に基づき、渡り鳥等を対象として、ウイルス保有状況調査を全国で実施し、その結果を公表しました。また、人工衛星を使った渡り鳥の飛来経路に関する調査や国指定鳥獣保護区等への渡り鳥の飛来状況について環境省ウェブサイト等を通じた情報提供を行うなど、効率的かつ効果的に対策を実施しました。さらに、その他の野生鳥獣が関わる感染症について情報収集、発生時の対応の検討等を行いました。特に平成26年度は、国内の家きん及び野鳥において、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N8亜型)が確認されたことから、マニュアルに基づき、野鳥監視重点区域の指定、野鳥緊急調査チームの派遣等による野鳥の監視の強化を実施しました。

3 生物多様性の保全に貢献する農林水産業の推進

 「農林水産省生物多様性戦略」(平成24年2月改定)に基づき、[1]田園地域・里地里山の保全(環境保全型農業直接支払による生物多様性保全に効果の高い営農活動に対する直接支援等)、[2]森林の保全(適切な間伐等)、[3]里海・海洋の保全(生態系全体の生産力の底上げを目指した漁場の整備等)など、農林水産分野における生物多様性の保全や持続可能な利用を推進しました。

 また、農林水産分野における生物多様性の経済評価や、生物多様性保全活動への企業等による支援を促す仕組みについて実地検証を行い、実用性・普及性の高い支援の仕組みを検討し、農林漁業者及び企業等向けの手引きとして取りまとめました。

(1)農業

 農業農村整備事業においては、環境との調和への配慮の基本方針に基づき事業を実施するとともに、生態系の保全に配慮しながら生活環境の整備等を総合的に行う事業等に助成し、農業の有する多面的機能の発揮や魅力ある田園空間の形成を促進しました。農村地域の生物や生息環境の情報の調査・地理情報化を行い、生物の生息・生育地と水路等の農業用施設との生態系ネットワーク化を図る技術の開発を進めました。また、地域の生態系を代表する種を「保全対象種」として示し、農家や地域住民の理解を得ながら「保全対象種」をはじめとする生物の生息・生育環境や移動経路に配慮した農業生産基盤の整備を推進しました。

 また、景観保全、自然再生活動の推進・定着を図るため、地域密着で活動を行っているNPO等に対し支援を実施しました。

 棚田における農業生産活動により生ずる国土の保全、水源の涵(かん)養等の多面的機能を持続的に発揮していくため、棚田等の保全・利活用活動を推進しました。また、地域の創意と工夫をよりいかした「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」により、自然再生の視点に基づく環境創造型の整備を推進しました。

 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土作りと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の普及推進を図るとともに、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づく有機農業の推進に関する基本的な方針の下で、栽培技術の体系化の取組等の支援、産地の販売企画力、生産技術力強化、販路拡大、施設の整備に関する支援を行いました。

(2)森林・林業

 第4節2を参照。

(3)水産業

 第4節5を参照。

4 地域固有の野生生物を保全する取組の推進

(1)絶滅のおそれのある野生生物種の保全

 環境省では、平成26年4月に、絶滅危惧種の保全を全国的に推進することを目的とし、そのための基本的な考え方と早急に取り組むべき施策の展開を示した「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を策定しました。本保全戦略に基づき、絶滅危惧種の保全に関する様々な施策を幅広く推進しています。

ア レッドリストとレッドデータブック

 野生生物の保全のためには、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、一般への理解を広める必要があることから、環境省ではレッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を作成・公表するとともに、これを基にしたレッドデータブック(レッドリスト掲載種の生息・生育状況等を解説した資料)を刊行しています。

 平成25年2月までに第4次レッドリストを公表しており、第4次レッドリスト掲載種の分布や生態、減少要因等を紹介したレッドデータブックを平成27年3月までに公表しました。

イ 希少野生動植物種の保存

 平成25年に改正された絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)が平成26年6月1日に全面施行され、罰則強化とともに、広告規制等が新しく追加されました。種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種として、哺乳類5種、鳥類37種、爬虫類6種、両生類1種、汽水・淡水魚類4種、昆虫類31種、陸産貝類14種、植物32種の130種を指定し、捕獲や譲渡し等を規制するとともに、そのうち49種について保護増殖事業計画を策定し、生息地の整備や個体の繁殖等の保護増殖事業を行っています(図2-3-1)。また、同法に基づき指定している全国9か所の生息地等保護区において、保護区内の国内希少野生動植物種の生息・生育状況調査、巡視等を行いました。


図2-3-1 主な保護増殖事業の概要

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(以下「ワシントン条約」という。)及び二国間渡り鳥条約等により、国際的に協力して種の保存を図るべき688種類を、国際希少野生動植物種として指定しています。

 絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖事業や調査研究、普及啓発を推進するための拠点となる野生生物保護センターを、平成27年3月末現在、8か所で設置しています。

 トキについては、平成24年、25年に引き続き31羽が無事巣立ち、3年連続となる野生下での繁殖成功となりました。平成26年には24年に野生下で生まれたトキを親とする“孫世代”のヒナも誕生しました。平成15年に策定した環境再生ビジョンにおいて、「平成27年頃までに60羽のトキが佐渡島に定着する」ことを当面の目標としていましたが、平成26年6月時点でこれを達成しました。なお、放鳥についても引き続き実施し、平成27年1月現在で、野生下において138羽の生存を確認しています。

 ツシマヤマネコについては、平成25年度に2010年代前半の推定生息数や分布状況等の生息状況をまとめた第4次特別調査の結果を公表しました。ツシマヤマネコの生息域の拡大が見られた一方で、推定生息数は約70頭~100頭となり、増加傾向は見られませんでした。また、平成24年度に対馬の下島における野生順化関連施設の拠点施設が完成し、平成25年度からは野生順化訓練ケージの整備を進め、平成26年度に完成しました。

 絶滅のおそれのある猛禽(もうきん)類については、平成25年12月にタカ科の鳥であるサシバの保護指針である「サシバの保護の進め方」を取りまとめました。さらに、猛禽(もうきん)類の採餌環境の創出のための間伐の実施等、効果的な森林の整備・保全を実施しました。

 沖縄島周辺海域に生息するジュゴンについては、生息状況調査や地域住民への普及啓発を進めるとともに、全般的な保護方策を検討するため、地元関係者等との情報交換等を実施しました。

ウ 生息域外保全

 トキ、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナなど、絶滅の危険性が極めて高く、本来の生息域内における保全施策のみでは近い将来種を存続させることが困難となるおそれがある種について、飼育下繁殖を実施するなど生息域外保全の取組を進めています。平成26年5月には公益社団法人日本動物園水族館協会(以下「日動水」という。)と環境省の間で「生物多様性保全の推進に関する基本協定」を締結し、絶滅危惧種の生息域外保全等の取組について、一層の連携を図っています。この協定に基づき、現在、ツシマヤマネコ及びライチョウの生息域外保全に取り組んでいます。個別の動物園ではなく協会全体として取り組んでもらうことで、動物園間のネットワークを活用した1つの大きな飼育個体群として捉えて計画的な飼育繁殖を推進することが可能になります。ツシマヤマネコについては、飼育下繁殖の技術確立の推進のため、日動水との協力の下、全国の飼育園館9施設等の関係者による技術向上や新たなペアリング計画の取組の検討を進めました。その結果、平成26年の繁殖期には、4年ぶりに飼育下繁殖に成功し、4頭の子ネコが育っています。ライチョウについては、現在、近縁亜種のスバールバルライチョウの飼育繁殖に日動水正会員の6施設で取り組んでおり、ライチョウの生息域外保全に向けた準備を進めています。また、ヒメバラモミのクローン苗を植栽し、遺伝資源林2か所を造成するとともに、適切な保全・管理を行っています。さらに、新宿御苑においては、絶滅危惧植物の種子保存を実施しています。

“現代の箱船”としての動物園水族館の役割

 現在、全国には89の動物園と64の水族館が存在します(日動水の加盟園館数)。動物園、水族館には世界中から集められた数多くの動物が展示されており、珍しい動物や美しい動物を見て楽しんだり、動物の生態などについて知る機会を提供しているだけでなく、様々な社会的な役割を担っています。日動水は、動物園及び水族館が果たすべき役割として「種の保存」、「教育・環境教育」、「調査・研究」、「レクリエーション」の4つの目的を掲げており、個々の動物園や水族館だけではできないことを協力して行っています。


日本動物園水族館協会の掲げる4つの目的

 日動水の掲げる目的のように動物園、水族館は様々な役割を担っており、特に「種の保存」については、我が国の絶滅危惧種保全を進めていく上でも、生息域外保全の担い手として欠かせない存在となっています。このため、環境省では平成25年度からこうした動物園水族館等が持つ公的な機能をより一層推進していくための方策について検討を開始しています。


環境省と日本動物園水族館協会の連携により生息域外保全に取り組んでいる種 ツシマヤマネコ ライチョウ
(2)外来種等への対応

ア 外来種対策

 外来種とは、人によって本来の生息・生育地からそれ以外の地域に持ち込まれた生き物のことです。そのような外来種の中には、我が国の在来の生き物を食べたり、すみかや食べ物を奪ったりして、生態系を脅かしている侵略的なものがおり、地域ごとに独自の生物相、生態系が形成されている我が国の生物多様性を保全する上で、重要な問題となっています。更には食害等による農林水産業への被害、咬傷(こうしょう)等の人の生命や身体への被害に加え、文化財の汚損、悪臭の発生、景観・構造物の汚損等、様々な被害が及ぶ事例が見られます。このような外来種の脅威に対応するため、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号。以下「外来生物法」という。)に基づき、我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある113種類の外来種を特定外来生物(平成27年3月現在)として指定し、輸入、飼養等を規制しています。

 また、既に国内に侵入し生態系へ悪影響を及ぼしている外来種の防除、近年国内に侵入した外来種の緊急的な防除を行っています。例えば、奄美大島や沖縄島北部(やんばる地域)の希少動物を捕食するマングースの防除事業、小笠原諸島内の国有林野におけるアカギ等の外来種の駆除等のほか、アライグマ、オオクチバスやアルゼンチンアリについての防除手法等の検討を進めました。また、近年琵琶湖において急速に分布が拡大している水草のオオバナミズキンバイ、長崎県対馬に定着し、在来昆虫類等生態系への影響が懸念されているツマアカスズメバチ、湿地等の生態系を改変させるイネ科植物のヒガタアシ(スパルティナ・アルテルニフロラ)等の侵入初期段階の侵略的外来種の緊急防除等、具体的な対策を進めました。

 また、外来種被害予防三原則(「入れない」、「捨てない」、「拡げない」)について、多くの人が理解し、行動につなげられるよう、外来種問題に関するパネルやウェブサイト(http://www.env.go.jp/nature/intro/(別ウィンドウ))等での普及啓発を実施しました(写真2-3-1写真2-3-2写真2-3-3写真2-3-4)。


写真2-3-1 奄美大島や沖縄島北部で対策が進められているフイリマングース

写真2-3-2 長崎県対馬で定着が確認されたツマアカスズメバチ

写真2-3-3 本州各地に定着しているアルゼンチンアリ

写真2-3-4 滋賀県琵琶湖の水面を埋めるオオバナミズキンバイ

 また、平成25年6月に成立、公布された改正外来生物法が平成26年6月に施行されました。施行に併せて、関係する政省令を整備するとともに、改正により新たに規制することが可能となった外来生物が交雑することにより生じた生物として、アカゲザルとニホンザルが交雑することにより生じた生物等を特定外来生物に追加指定しました。さらに、平成24年に長崎県対馬で確認されたツマアカスズメバチについては、 平成27年3月に特定外来生物に指定しました。

 さらに、外来種全般に関する中期的な総合戦略である「外来種被害防止行動計画」及び、現時点で法規制のない種類も含めて、特に侵略性が高い外来種を選定した「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」について、平成27年3月に関係省庁とともに公表しました。

イ 遺伝子組換え生物への対応

 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(以下「カルタヘナ議定書」という。)を締結するための国内制度として定められた遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づき、平成27年3月末現在、308件の遺伝子組換え生物の環境中での使用について承認されています。また、日本版バイオセーフティクリアリングハウス(http:www.bch.biodic.go.jp/(別ウィンドウ))を通じて、法律の枠組みや承認された遺伝子組換え生物に関する情報提供を行ったほか、主要な3つの輸入港周辺の河川敷において遺伝子組換えナタネの生物多様性への影響監視調査等を行いました。

5 遺伝資源等の持続可能な利用の推進

(1)遺伝資源の利用と保存

 医薬品の開発や農作物の品種改良など、生物資源が持つ有用性の価値は拡大する一方、世界的に見れば森林の減少や砂漠化の進行などにより、多様な遺伝資源が減少・消失の危機に瀕(ひん)しており、貴重な遺伝資源を収集・保存し、次世代に引き継ぐとともに、これを積極的に活用していくことが重要となっています。

 農林水産分野では、関係機関が連携して、動植物、微生物、DNA、林木、水産生物などの国内外の遺伝資源の収集、保存などを行っており、植物遺伝資源22万点をはじめ、世界有数のジーンバンクとして利用者への配布・情報提供を行っています。また、海外から研究者を受け入れ、遺伝資源の保護と利用のための研修を行いました。

 さらに、国内の遺伝資源利用者が海外の遺伝資源を円滑に取得し利用を促進するために必要な情報の収集・提供や、相手国等との意見調整の支援等を行いました。

 ライフサイエンス研究の基盤となる研究用動植物等の生物遺伝資源のうち、マウス、シロイヌナズナ等の29のリソースについて、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」により、大学・研究機関等において、生物遺伝資源の戦略的・体系的な収集・保存・提供等を行いました。また、「大学連携バイオバックアッププロジェクト」により、途絶えると二度と復元できない実験途上の貴重な生物遺伝資源を広域災害等から保護するための体制を強化し、受入れを行いました。

(2)微生物資源の利用と保存

 独立行政法人製品評価技術基盤機構を通じた資源保有国との生物多様性条約の精神に則った国際的取組の実施などにより、資源保有国への技術移転、我が国の企業への海外の微生物資源の利用機会の提供などを行いました。

 我が国の微生物などに関する中核的な生物遺伝資源機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(NBRC)において、生物遺伝資源の収集、保存などを行うとともに、これらの資源に関する情報(分類、塩基配列、遺伝子機能などに関する情報)を整備し、生物遺伝資源と併せて提供しました。

(3)遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)

 第5節1(2)を参照。

6 動物の愛護と適正な管理

 動物の保護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)は、動物の所有者やペットショップ等の動物を取り扱う事業者に対する動物の適正な飼養や取扱について定めています。これまで、平成11年、17年、24年に改正されており、動物を取り扱う事業者に対する規制や罰則の強化等を図るとともに、普及啓発等を行い、動物の愛護と適正な管理の推進を図ってきました。

 動物の愛護及び管理に関する法律の改正を踏まえ、政省令の改正や各種基準、動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)が見直されました。基本指針においては、平成35年度までに都道府県等に引き取られる犬猫の数を、平成16年度に比べ75%減となるおおむね10万頭を目指すとともに、引き取られた犬猫の殺処分率の更なる減少を図ること等の見直しがなされました。これらの施策の進捗については毎年点検を行っており、このうち、平成25年度に飼育放棄等によって都道府県等に引き取られた犬猫の数は平成16年度に比べ約58%減少し、返還・譲渡数は約65%増加しました。殺処分数は毎年減少傾向にあり、約13万頭(調査を始めた昭和49年度の約10分の1)まで減少しました(図2-3-2)。また、所有明示(個体識別)措置の推進に関して、マイクロチップの登録数は、年々増加しており、平成26年3月末現在累計約90万件ですが、犬猫等の飼養数全体の4%程度と推測されています。


図2-3-2 全国の犬猫の引取り数の推移

 都道府県等が引き取った収容動物の譲渡及び返還を促進するため、都道府県等の収容・譲渡施設の整備に係る費用の補助を行いました。また、適正な譲渡及び効果的な飼い主教育に関する自治体の取組を推進することを目的に、自治体向けの適正譲渡講習会及び適正飼養講習会を実施し、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)について普及啓発を行いました。

 広く国民に動物の虐待の防止や適正な取扱などに関して正しい知識と理解を普及するため、関係行政機関、団体との協力の下、“宣誓!無責任飼い主0(ゼロ)宣言!!”をテーマとして、上野恩賜公園等で動物愛護週間中央行事を開催したほか、多くの関係自治体等において様々な行事が実施されました。

人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト

 動物は、私たちの生活を様々な形で豊かにしてくれ、時には家族と同様、かけがえのない存在となります。しかし、無責任な飼い主に飼育放棄された犬猫、所有者がいない犬猫等、自治体の動物愛護センターや保健所には、たくさんの犬猫が持ち込まれ、その多くがやむを得ず殺処分されています。

 このような犬猫の殺処分を減らしていくため、平成26年6月に「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」のアクションプランを発表し、「飼い主、国民の意識の向上」、「引取り数の削減」、「返還と適正譲渡の推進」を3つの柱として位置付けました。平成26年度は本プランに基づき、マイクロチップ等の所有明示の推進等、モデル事業を複数の自治体で開始しました(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/project/(別ウィンドウ))。


引取り内訳

マイクロチップ