環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第2節 生物多様性を社会に浸透させる取組

第2節 生物多様性を社会に浸透させる取組

1 生物多様性に関する広報の推進

 毎年5月22日は国連が定めた「国際生物多様性の日」です。平成26年度は、平成26年の国際生物多様性の日のテーマ「島嶼(しょ)と生物多様性」を受けて、東京・青山の国連大学において「国際生物多様性の日シンポジウム~つながりと個性を活かした自然と共生する島づくり~」を開催しました(主催・環境省、国連大学サステイナビリティ高等研究所、地球環境パートナーシッププラザ)。ほかにも、生物多様性の重要性を一般の人々に浸透させるとともに、生物多様性に配慮した事業活動や消費活動を促進するため、様々な活動とのタイアップによる広報活動、生物多様性に関するイベントなどの開催、全国各地で開催される環境関係の展示会への出展を実施しました。次項で紹介するUNDB-Jの各種取組のほか、「新宿御苑みどりフェスタ」、「エコライフ・フェア」、「上野の森 親子フェスタ」、「エコプロダクツ展」等、様々なイベントの開催・出展などを通じ、普及啓発を進めています。

2 多様な主体の連携の促進

(1)国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)による取組

 2011年(平成23年)から2020年(平成32年)までの10年間は、国連の定めた「国連生物多様性の10年」です。平成22年10月に愛知県名古屋市で開催されたCOP10において、新たな世界目標である「愛知目標」が採択されましたが、この達成に貢献するため、国際社会のあらゆるセクターが連携して生物多様性の問題に取り組む10年とされています。

 我が国では、国内のあらゆるセクターの参画と連携を促進し、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取組を推進するため、UNDB-Jが平成23年9月に設立され、UNDB-Jを通じて生物多様性の主流化に向けた様々な取組を推進しています。

 生物多様性に関する行動の呼び掛け、認知度向上のための働き掛けとしては、国民一人一人が自分の生活の中で生物多様性との関わりを捉えることができる、5つのアクション「MY行動宣言」の呼び掛け、「生物多様性アクション大賞」による表彰、「グリーンウェイブ2014」(全国で367団体の参加、193団体の協力のもと、約5万1,000人が参加)活動への参加の呼び掛け等を行いました。

 また、「地球いきもの応援団」、「生物多様性リーダー」、「生物多様性キャラクター応援団」による広報を行うとともに、生物多様性マガジン「Iki-Tomo(イキトモ)」の発行、Facebook「Iki-Tomoパートナーズ」による情報発信など、様々な主体への働き掛けを行いました。

 国際社会への発信としては、2014年(平成26年)10月に韓国のピョンチャンで開催されたCOP12において、生物多様性条約事務局とともに、サイドイベントとして「国連生物多様性の10年の日(UNDB-Day)」を開催し、国内委員会を設けている日本、ドイツ、中国からの事例紹介、ユース、市民、自治体、企業各セクターにおける事例紹介、各国代表者による「愛知目標」達成のための決意表明等、国際社会に広く呼び掛けを行いました(写真2-2-1)。


写真2-2-1 生物多様性条約COP12サイドイベント「UNDBDay」

 そして、生物多様性の理解や普及啓発、環境学習にも資するツールとして、子供向け推薦図書(「生物多様性の本箱」~みんなが生きものとつながる100冊~)について、全国の図書館での展示・読み聞かせ会の実施、東北復興支援のための寄贈の呼び掛けなどを行いました。

 国際自然保護連合日本委員会が行う「にじゅうまるプロジェクト」の登録事業等の中から、「多様な主体の連携」、「取組の重要性」、「取組の広報の効果」などの観点からUNDB-Jが推奨する連携事業を認定しており、平成26年度は20件を認定しました。

 そして、各セクター間の意見・情報交換として、平成26年10月に愛知県豊橋市において「第4回生物多様性全国ミーティング」を開催したほか、全国3か所(9月:大分県杵築市、11月:北海道札幌市、12月:宮城県大崎市)において「生物多様性地域セミナー」を開催し、生物多様性保全に関わる方々と意見交換・情報交換を行いました。

(2)地域主体の取組の支援

 地域の多様な主体による生物多様性の保全・再生活動を支援するため、平成22年度から「地域生物多様性保全活動支援事業」を開始し、平成26年度は全国11か所の取組を支援しました。また、平成20年度から開始した「生物多様性保全推進支援事業」については、全国26か所の取組を支援しました。

 地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律(平成22年法律第72号)は、市町村やNPO、地域住民、企業など地域の多様な主体が連携して行う生物多様性保全活動を促進することで、地域の生物多様性を保全することを目的とした法律です。現在、10市町村が同計画を作成済みです。また、同法に基づき、平成27年3月末現在で9自治体が支援センターを設置又はその機能を確保しています(図2-2-1表2-2-1)。


図2-2-1 地域連携保全活動支援センターの役割

表2-2-1 地域連携保全活動支援センター設置状況

 ナショナル・トラスト活動については、その一層の促進のため、引き続き税制優遇措置、普及啓発等を実施しました。

 また、利用者からの入域料の徴収、寄付金による土地の取得等、民間資金を活用した地域における自然環境の保全と持続可能な利用を推進することを目的とし、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成26年法律第85号)が平成26年6月に成立、平成27年4月1日に施行されました。

“地域の自然資産”を将来にわたり保全し利用していくために

 優れた日本の自然環境を保全し、将来世代に継承することは、国や地方公共団体の重要な責務であることから、これまでも公的資金を用いた様々な取組がなされてきました。一方で、地域の重要な自然環境を保全し、持続的に利用していくため、利用者の負担による自然環境の保全、寄付金による土地の取得等、民間資金を活用した取組も各地で進められています。例えば、世界文化遺産に登録された富士山では、平成26年度より、登山シーズン中、山梨・静岡両県が登山者から「富士山保全協力金」を任意に受入れ、富士山の環境保全や登山者の安全対策等に充てる取組を行っています。また、ナショナル・トラスト活動は、1964年(昭和39年)に鎌倉市の鶴岡八幡宮の裏山を宅地開発から守るため「財団法人鎌倉風致保存会」が設立され、市民と市が資金を出し合い土地の一部を買い取ったことを始まりとし、全国各地で民間団体が中心となりその活動が展開されてきました。

 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律は、このような地域の自発的な取組を更に推進するため、議員立法によって制定され、平成27年4月1日に施行されました。

 この法律は、国立公園等の自然豊かな地域において、[1]地方公共団体が、利用者から入域料を収受し、登山道の維持や野生動植物の保護等、自然環境の保全や持続可能な利用のための経費に充てる「地域自然環境保全等事業」、[2]自然環境の保全のために寄付金等の民間資金により土地の取得や管理等を行う「自然環境トラスト活動」やこれらを地方公共団体が促進する「自然環境トラスト活動促進事業」の2種類の取組について規定しています。地方公共団体は、この法律に基づき、自然環境トラスト活動を行う一般社団法人などのほか、土地の所有者等、関係住民、関係事業者、関係行政機関等、幅広い者の参画を得た協議会を設置し、それぞれの事業に関する地域計画を作成することができます。さらに、地域計画に位置付けられた事業は、環境大臣へ事前協議を行うことで、自然公園法(昭和32年法律第161号)等の特例を受けることができるとされています。

 本法の基本方針には、民間資金の活用の透明性の確保、入域料の収受の方法や額の設定の基本的事項、土地の保持や公益性の堅持等自然環境トラスト活動の基本的原則等が規定されました。入域料の収受や自然環境トラスト活動等に関わる理念や枠組みの在り方が、初めて法律に位置付けられたことで、民間資金の適正な活用が一層進み、地域の自然環境を地域の大切な資産として、将来にわたり保全し持続的に利用していく取組の促進が図られることが期待されます。


富士山における協力金受入れの取組

3 生物多様性地域戦略の策定と地域に即した取組の促進

 生物多様性基本法(平成20年法律第58号)において、都道府県及び市町村は生物多様性地域戦略の策定に努めることとされています。平成27年3月末現在、35都道府県、62市町村等で策定されています。奄美大島を構成する5市町村(奄美市、大和市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)は、全国で初めて共同で地域戦略を策定しました。これ以外の多くの地方公共団体でも策定に向けた検討が進められています(表2-2-2)。


表2-2-2 生物多様性地域戦略策定済み都道府県

 生物多様性の保全や回復、持続可能な利用を進めるには、地域に根付いた現場での活動を、自ら実施し、また住民や関係団体の活動を支援する地方公共団体の役割は極めて重要なため、平成22年10月に「生物多様性自治体ネットワーク」が設立されました。平成27年4月1日現在、140自治体が参画しています。

4 生物多様性に配慮した事業者の取組の推進

 愛知目標4「ビジネス界を含めたあらゆる関係者が、持続可能な生産・消費のための計画を実施する」を受け、生物多様性の保全及び持続可能な利用等、生物多様性条約の実施に関する民間の参画を促進するため、「生物多様性民間参画ガイドライン」の普及広報など様々な取組を行っています。

 平成26年度は、生物多様性分野における民間参画を取り巻く動きを紹介するための資料として、事業者や事業者団体等による先駆的な取組事例のほか、ビジネスセクターが目指すべき将来像や各主体に期待される取組をまとめた「生物多様性に関する民間参画に向けた日本の取組」(http://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/trend/(別ウィンドウ))を作成しました(写真2-2-2)。


写真2-2-2 生物多様性に関する民間参画に向けた日本の取組

 また、事業者の取組を促進する上で重要な役割を担う事業者団体を対象に、生物多様性に関する行動指針作成等を促進するための方策について検討を行いました。

 さらに、経済界を中心とした自発的なプログラムとして設立された「生物多様性民間参画パートナーシップ」や「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」と連携・協力しました。「生物多様性民間参画パートナーシップ」には平成27年3月末現在、509の企業・団体が参加しています。

5 生物多様性に関する教育・学習・体験の充実

(1)自然とのふれあい活動

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月1日~10月31日)等を通じて、自然観察会など自然とふれあうための各種活動を実施しました。また、我が国で国立公園が初めて指定されてから80周年を迎えたことを記念し、該当する8つの国立公園(阿寒、大雪山、日光、中部山岳、瀬戸内海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾)において、記念式典等の行事を開催しました。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施し、利用者指導の充実を図ったほか、パークボランティアの養成や活動に対する支援を実施しました。

 「スノーケリングでサンゴ礁体験」など子供達に国立公園等の優れた自然地域を知ってもらい、自然環境の大切さを学ぶ機会を提供しました。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林・林業への理解を深めるための「森林ふれあい推進事業」等を実施しました。また、学校等による体験・学習活動の場である「遊々の森」や、国民による自主的な森林づくりの活動の場である「ふれあいの森」の設定・活用を推進しました。

 国営公園においては、ボランティア等による自然ガイドツアー等の開催、プロジェクト・ワイルド等を活用した指導者の育成等、多様な環境教育プログラムを提供しました。

「山の日」の制定

 平成26年5月に国民の祝日に関する法律(以下「祝日法」という。)が9年ぶりに改正され、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日として、8月11日が「山の日」とされ、平成28年から国民の祝日とされることとなりました。

 山の恩恵としては様々な生態系サービスがあり、その恩恵は森・里・川・海のつながりを通じて、農山漁村だけでなく都市に生活する人々にまで広く行き渡っています。例えば、第1部の第3章第1節でも取り上げた森林による土砂崩れ防止の機能、同じく第3章第2節でも取り上げた水源涵養機能があります。保健・レクリエーション機能も重要な機能で、環境省では「みどりの月間」、「自然に親しむ運動」、「全国・自然歩道を歩こう月間」などを実施し、国民の保健、休養及び教化を推進してきました。特に7月21日から8月20日までの間に行っている「自然に親しむ運動」については、「山の日」を通じて更に積極的に推進していく予定です。

 今後、改正祝日法による「山の日」の祝日化に伴って、山に関する様々なイベントが開催され、山岳生態系への関心や自然とのふれあいの機会が増加することで、国民全体の山への関心が高まり、山岳地域の自然が有する生態系サービスや多面的機能などへの理解と保全、CO2排出削減に向けたライフスタイルの見直し等の意識が醸成されることが期待されます。

(2)エコツーリズム

 エコツーリズム推進法(平成19年法律第105号)に基づき、エコツーリズムに取り組む地域への支援、全体構想の認定・周知、技術的助言、情報の収集、普及啓発、広報活動等を総合的に実施しました。全体構想においては、三重県名張市と京都府南丹市の2地域を新たに認定し、合計6地域となりました。

 また、人材・プログラムづくりとして、22地域の自然観光資源を活用したエコツーリズムを推進するため、魅力あるプログラムの開発、ルール作り、ネットワークの構築等を支援するとともに、地域におけるエコツーリズムガイドやコーディネーター等の人材育成事業等を実施しました。

 さらに法施行から6年が経過し、エコツーリズム推進法では、「基本方針はおおむね5年ごとに見直しを行う」旨と「法律の施行の状況について、必要があると認めるときは所要の措置を講ずる」旨が定められていることから、基本方針の見直し及び法施行状況について検討を行いました。

(3)自然とのふれあいの場の提供

ア 国立・国定公園などにおける取組

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業を環境省の直轄事業とし、国立公園バリューアップ事業による自然資源を活用した観光の促進と地域の活性化の推進、集団施設地区等における景観再生、多くの利用者が訪れる地区及びフィールドにおける人と自然の共生を目指した整備、関係省庁共同でシカ等による影響を受けた自然生態系を維持回復させるための施設整備等を重点的に進めました。国定公園及び長距離自然歩道等については、35都道府県に自然環境整備交付金を交付し、その整備を支援しました。長距離自然歩道の計画総延長は約2万7,000kmに及んでおり、平成24年には約7,251万人が長距離自然歩道を利用しました。

イ 森林における取組

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図るための整備を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備に対し助成しました。また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備等を推進しました。さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無に関わらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図りました。国有林野においては、自然休養林等のレクリエーションの森において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行いました。また、国有林野を活用した森林環境教育の一層の推進を図るため、農山漁村における体験活動とも連携し、フィールドの整備及び学習・体験プログラムの作成を実施しました。

(4)都市と農山漁村の交流

 全国の小学校において農山漁村での宿泊体験活動の実施を目指す「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進し、子供の豊かな心を育むとともに、自然の恩恵などを理解する機会の促進を図るため、新たに全国で4地域の受入モデル地域を指定しました。

 都市住民の農山漁村情報に接する機会の拡大、地域資源を活用した交流拠点の整備、都市と農村の多様な主体が参加した取組等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図りました。

(5)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正な利用を図ることを目的とした温泉法(昭和23年法律第125号)に基づき、温泉の掘削・採取、浴用又は飲用利用等を行う場合には、都道府県知事や保健所設置市長等の許可等を受ける必要があります。平成25年度には、温泉掘削許可214件、増掘許可19件、動力装置許可185件、採取許可56件、濃度確認165件、浴用又は飲用許可1,695件が行われました。

 温泉法の適正な施行を図るため、温泉の保護対策や温泉成分の分析方法等に関する調査・検討を実施しました。また、「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」を改定し、都道府県に通知しました。

 また、国民保養温泉地は、温泉の公共的利用増進のため、温泉法に基づき指定された地域であり、平成27年3月末現在、91か所が指定されています。

6 生物多様性が有する経済的価値の評価の推進

 平成22年10月に最終報告書が公表された「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」では、生態系や生物多様性の価値を様々な主体の意思決定に反映させていくためには、その価値を経済的に評価し「見える化」していくことが有効な手段の1つであるという考え方が示されました。こうした考え方を踏まえ、我が国でも愛知目標の達成や、世界銀行が進める「生態系価値評価パートナーシップ(WAVES)」への貢献を視野に、生物多様性の経済価値評価に関する情報収集や政策研究を実施し、施策の検討を行いました。

 平成26年度は、里地里山が維持されることに対する支払意思額を、アンケート調査に基づき推定し、1世帯あたり中央値で1,411円、平均値で2,657円という結果を得ました。これらの結果を基に、里地里山の生物多様性保全や生態系サービス(生息・生育地サービス、文化的サービス)の価値の評価額は、733億円又は1,380億円と算出されました。さらに、生態系や生物多様性の経済的価値評価を自然環境政策へ活用するための方策について検討を行いました。

 また、平成24年度~平成26年度の3か年で行われた政策研究では、やんばる地域及び奄美地域におけるマングースを駆除することに対する1世帯当たりの支払意思額を、アンケート調査により推定しました。その結果、やんばる地域については中央値で451円/年、平均値で2,538円/年、奄美地域については中央値571円/年、平均値で2,539円/年という結果を得ました。これに全国の世帯数を掛けると、やんばる地域については約234億円/年又は約1,342億円/年、奄美地域については約297億円/年又は約1,319億円/年という評価額が算出されました。

7 生物多様性に配慮した消費行動への転換

 事業者による取組を促進するためには、消費者の行動を生物多様性に配慮したものに転換していくことも重要です。そのための仕組みとして、生物多様性の保全にも配慮した持続可能な生物資源の管理と、それに基づく商品等の流通を促進するための民間主導の認証制度があります。こうした社会経済的な取組を奨励し、多くの人々が生物多様性の保全と持続可能な利用に関わることのできる仕組みを拡大していくことが重要です。

 このため、環境に配慮した商品やサービスに付与される環境認証制度のほか、生物多様性に配慮した持続可能な調達基準を策定する事業者の情報などについて環境省のウェブサイト等で情報提供しています。

 また、木材・木材製品については、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)により、政府調達の対象とするものは合法性、持続可能性が証明されたものとされており、政府調達の対象となる製品の合法性、持続可能性は各事業者において自主的に証明し、説明責任を果たすこととしています。国は、木材・木材製品の供給者が合法性、持続可能性の証明に取り組むに当たって留意すべき事項や証明方法等を「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」として公表しており、合法証明の信頼性・透明性の向上や合法証明された製品の消費者への普及を図っています。