環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用~豊かな自然共生社会の実現に向けて~>第1節 生物多様性を社会に浸透させる取組

第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用~豊かな自然共生社会の実現に向けて~

第1節 生物多様性を社会に浸透させる取組

1 生物多様性の主流化

(1)生物多様性の普及広報

 愛知目標の達成に貢献するため、引き続き「国連生物多様性の10年日本委員会」(UNDB-J)を核として、幅広い主体と連携を図り、生物多様性の主流化に向けたさまざまな取組を推進します。

ア 各セクター間の意見・情報交換

 愛知県豊橋市において第4回生物多様性全国ミーティングを開催するほか、全国数か所で生物多様性地域セミナーや生物多様性出前講座を開催します。

イ 委員会が推奨する連携事業の認定

 引き続き、国際自然保護連合日本委員会が行う「にじゅうまるプロジェクト」の登録事業等の中から、「多様な主体の連携」、「取組の重要性」、「取組の広報の効果」などの観点からUNDB-Jが推奨する連携事業を認定します。

ウ 推薦図書等の選定

 引き続き、生物多様性の理解や普及啓発、環境学習にも資する図書、映像・音楽、各種グッズ等を推薦ツールとして選定し、さまざまなイベントとの連携により広報を実施します。

エ 生物多様性アクション大賞による表彰

 「MY行動宣言」の5つのアクションに即した活動を表彰する「生物多様性アクション大賞2014」を実施し、生物多様性の保全や持続可能な利用につながる地域の活動を掘り起します。

オ 生物多様性の認知度向上のための事業

 効果的なCEPA(Communication, Education & Public Awareness:広報・教育・普及啓発)活動を行っていくため、引き続き「地球いきもの応援団」、「生物多様性リーダー」、「生物多様性キャラクター応援団」による広報を行うとともに、「MY行動宣言」の実施や「グリーンウェイブ2014」への参加の呼びかけ、生物多様性マガジン「Iki・Tomo(イキトモ)」の発行など、さまざまな主体への働きかけを行います。また、生物多様性に関する環境教育の普及方策を検討していきます。

 さらに、生物多様性の保全や持続可能な利用に向け自ら行動する個人・団体がメンバーとして参画する「Iki・Tomoパートナーズ」の拡大を図っていきます。

カ 国際生物多様性の日

 国連が定めた「国際生物多様性の日」である5月22日に、「国際生物多様性の日シンポジウム」を開催します。

(2)地方公共団体、企業、NGOなど多様な主体の参画と連携

 地方公共団体による生物多様性地域戦略の策定については、「生物多様性国家戦略2012-2020」で掲げた目標である「生物多様性地域戦略の策定自治体数:47都道府県(平成32年)」を達成するため、平成25年度に既存事例の紹介を含めて改定した「生物多様性地域戦略策定の手引き」の普及を図ります。

 企業等については、生物多様性の保全及び持続可能な利用等、生物多様性条約の実施に関する民間の参画を推進するため、経済界を中心とした自発的なプログラムとして設立された「生物多様性民間参画パートナーシップ」や「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」等の事業者間の枠組みと引き続き連携・協力します。また、平成25年度に作成した啓発用資料を活用するなど、事業者による取組の促進を図ります。

 地域における生物多様性の保全・再生活動を促進するため、「地域生物多様性保全活動支援事業」や「生物多様性保全推進支援事業」を実施し、多様な主体による生物多様性の保全・再生の活動や計画策定の取組を支援します。

 地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律(平成22年法律第72号)に基づく、市町村による「地域連携保全活動計画」の作成に向けた取組について、「地域生物多様性保全活動支援事業」等により支援します。

 ナショナル・トラスト活動については、その一層の促進のため、引き続き税制優遇措置の適切な運用、普及啓発等を実施します。

(3)生物多様性の経済価値評価

 「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」についてわかりやすく紹介するなど、生物多様性や生態系サービスの価値評価の重要性等について普及啓発を進めるとともに、国内の自然保護地域や自然環境保全施策などを対象に、生物多様性の経済価値評価、生物多様性の損失に伴う経済的損失、効果的な保全に要する費用などの評価を推進します。

2 自然とのふれあい

(1)自然とのふれあい活動

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月)等を通じて、自然観察会等自然とふれあうための各種活動を実施します。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施するとともに、利用者指導の充実を図ります。また、地方環境事務所等においてパークボランティアの養成や活動に対する支援を行います。

 子供達に国立公園等の優れた自然地域を知ってもらうなど、自然環境の大切さ等を学ぶ機会を提供するとともに、さまざまな自然とのふれあいの場やイベントなどに関する情報について、インターネット等を通じて幅広く提供します。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林・林業への理解を深めるための森林ふれあい推進事業等を実施します。また、学校等による体験学習活動の場である「遊々の森」や、国民による自主的な森林づくり活動の場である「ふれあいの森」などの設定・活用を図り、国民参加の森林づくりを推進します。

 国営公園においては、良好な自然環境や歴史的資源をいかし、自然観察会やプロジェクト・ワイルド等、多様な環境教育プログラムを提供します。

(2)エコツーリズム

 エコツーリズム推進法(平成19年法律第105号。以下「法」という。)に基づき、エコツーリズムに取り組む地域への支援、全体構想の認定・周知、技術的助言、情報の収集、普及啓発、広報活動等を総合的に実施します。

 また、国立公園等において、自然観光資源を活用したエコツーリズムを推進するため、魅力あるプログラムの開発、ガイド等の人材育成など、地域におけるエコツーリズムの活動を支援します。

 プログラムの開発への支援策として、ルールづくり、ネットワークの構築等に主体的に取り組む地域を支援します。また、地域におけるエコツーリズムガイド等の人材育成を図ります。

 さらに法施行から5年が経過し、必要があるときは所要の措置を講じるものとすると附則に定められていることから、法施行状況について検討を行います。

 また、基盤づくりとしては、国立公園のエコツーリズムに意欲的な地域において、エコツーリズムの基盤となる情報提供拠点、自然資源の保全活用に係る施設を集中的に整備します。

(3)自然とのふれあいの場の提供

ア 国立・国定公園等における取組

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業を環境省の直轄事業とし、国立公園バリューアップ事業による自然資源を活用した観光の促進と地域の活性化の推進、集団施設地区等における景観再生、標識の多言語化整備による訪日外国人対応の強化、関係省共同でシカ等による影響を受けた自然生態系を維持回復させるための施設整備等を重点的に進めます。

 地方公共団体が行う国定公園及び長距離自然歩道等の整備については、自然環境整備交付金によりその整備を支援します。

イ 森林における取組

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図るための整備を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備を支援します。また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備等を推進します。さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無にかかわらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図ります。

 国有林野においては、自然休養林等のレクリエーションの森において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行います。また、国有林野を活用した森林環境教育の一層の推進を図るため、農山漁村における体験活動とも連携し、フィールドの整備及び学習・体験プログラムの作成を実施します。

(4)都市と農山漁村の交流

 子供の農山漁村宿泊体験活動を一層推進し、子供の豊かな心を育むとともに、自然の恩恵などを理解する機会の促進を図ります。

 地域資源を活用した交流拠点の整備、都市と農村の多様な主体が参加した取組等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図ります。

(5)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉法(昭和23年法律第125号)の施行に当たり、温泉源の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正かつ効率的な利用の増進を図るため都道府県等に対し適切な助言を行います。