環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成26年度 環境の保全に関する施策  平成26年度 循環型社会の形成に関する施策  平成26年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策>第1章 低炭素社会の構築>第1節 地球温暖化対策に係る国際的枠組みの下での取組

平成26年度 環境の保全に関する施策

平成26年度 循環型社会の形成に関する施策

平成26年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 低炭素社会の構築

第1節 地球温暖化対策に係る国際的枠組みの下での取組

〈気候変動に関する国際的取組〉

 2013年(平成25年)9月に公表された気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)第5次評価報告書第1作業部会報告書によると、世界の温室効果ガスの排出量は、工業化以降、人間活動により増加しており、1年あたりの二酸化炭素の排出量は2011年(平成23年)に1990年(平成2年)の水準から54%増加したとされています。2013年(平成25年)11月に開催された国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19、以下締約国会議を「COP」という。)においては、すべての国に対し、自主的に決定する約束草案(intended nationally determined contributions)のための国内準備を開始しCOP21に十分先立ち(準備ができる国は2015年(平成27年)第一四半期までに)約束草案を示すことを招請する(invite)ことが決定されました。我が国としては、引き続きすべての国に適用される公平かつ実効的な2020年(平成32年)以降の法的枠組みの構築に向けた議論に積極的に貢献するとともに、新たな法的枠組みが構築されるまでの間においてもカンクン合意の着実な実施に向けた取組、及び各国による排出削減の努力を促進していきます。また、COP19期間中に発表した、更なる技術革新、日本の低炭素技術の世界への応用、途上国に対する支援を含む「Actions for Cool Earth(攻めの地球温暖化外交戦略)」に基づき、技術で世界に貢献する攻めの地球温暖化外交を実行します。

 さらに、地球温暖化防止のため、今後の国際交渉の状況を注視しつつ、気候変動対策に取り組む意欲的な途上国に対する支援を実施することに加え、気候投資基金(CIF)や地球環境ファシリティ(GEF)等の多数国間基金を通じた貢献、コベネフィット・アプローチ等に基づく二国間・多国間の技術・資金協力の推進、国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)における国際航空分野及び国際海運分野からの温室効果ガス排出削減に関する検討、短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)を通じたブラックカーボン等の短寿命気候汚染物質の削減の取組等を引き続き実施します。

 現在のクリーン開発メカニズム(CDM)を補完する新たなメカニズムとして、途上国への優れた低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価し、我が国の削減目標の達成に活用する二国間オフセット・クレジット制度(以下「JCM」という。)の署名国の拡大や構築・運用に取り組んでいきます。外務省、経済産業省、環境省等の関係省庁が連携し、途上国との協議を進めつつ具体的な制度設計を進めます。また、途上国における排出削減事業の発掘・形成、排出削減量の測定に関する方法論等の確立を目的とした実現可能性調査や人材構築支援等を実施するとともに、民間主導の事業や官民連携による事業への支援を実施していきます。

 また、経済成長著しいアジアの途上国が、先進国が辿ったCO2の大量排出の歴史を繰り返さずに“一足飛び”に最先端の低炭素社会へ移行できるよう、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援プロジェクトと連携しつつ、排出削減を行うプロジェクトを支援するための基金を設置、また同様にアジア開発銀行信託基金に拠出した資金で我が国がこれまで蓄積してきた優れた低炭素技術やノウハウを途上国へ大規模に展開するための支援を積極的に実施します。

 地球温暖化対策に不可欠な科学的知見の一層の発展を視野にIPCCの各種報告書の執筆に参加する専門家をサポートする等、IPCCの活動に対する人的、技術的、資金的な貢献を行うとともに、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるために公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)に設立されたインベントリータスクフォースの技術支援組織を引き続き支援します。

 また、途上国におけるインベントリの策定、適応や測定・報告・検証(MRV)の実施に向けた地球温暖化に係る諸課題に関する各種のセミナーやワークショップを引き続き開催することにより、途上国を含む関係諸国との意見交換の促進や能力構築支援に努めます。さらに、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の後継機の開発により、温室効果ガスの多点観測データを提供し、気候変動の科学、地球環境の監視、気候変動関連施策に貢献します。