環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第7節 環境影響評価等

第7節 環境影響評価等

1 戦略的環境アセスメントの導入

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定されており、上位の計画や政策段階の戦略的環境アセスメントについて我が国での導入に向けた検討を行いました。

2 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響審査の実施

 環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。同法に基づき、平成26年3月末までに計321件の事業について手続が実施されました。そのうち、25年度においては、新たに13件の手続を開始、また、10件が手続完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-7-1)。

表6-7-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

 環境影響評価の信頼性の確保や評価技術の質の向上に資することを目的として、調査・予測等に係る技術手法の開発を推進するとともに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の情報等を集積し、インターネット等を活用して国民や地方公共団体等への情報支援を行いました。

(2)環境影響評価の迅速化に関する取組

 火力発電所のリプレースや風力・地熱発電所の設置の事業に係る環境影響評価手続について、従来3~4年程度要していた期間を、火力発電所のリプレースについては最大1年強まで短縮、風力・地熱発電所の設置についてはおおむね半減させることを目指すこととしています。

 火力発電所のリプレースについては、これまで、対象となる3事案について、運用上の取組により準備書で90日程度確保されている国の審査期間を3週間程度まで短縮することを実現しました。

 また、地方ブロックごとに環境影響評価担当者会議を開催し、地方公共団体における審査会の開催方法や審査スケジュールなどの工夫による審査期間の短縮について情報交換を行いました。

 なお、風力・地熱発電所については、質の高い環境影響評価を効率的に実施できるよう、風況等から判断し風力発電等の適地と考えられる地域の環境情報(貴重な動植物の生息・生育状況等の情報)や環境影響評価に関連する技術情報の収集・整理を行い、これらの情報を「環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム」として公開しました。

(3)環境影響評価法における放射性物質に係る対応について

 環境法体系の下で放射性物質による環境の汚染の防止のための措置を行うことができることを明確に位置付けるため、平成24年通常国会において成立した原子力規制委員会設置法の附則により、環境基本法について、放射性物質による大気等の汚染の防止について原子力基本法等に対応を委ねている規定が削除されました。環境基本法の改正を受け、環境影響評価法等個別環境法で規定されている放射性物質による環境汚染に係る適用除外規定を削除する「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」が第183回通常国会で成立しました(平成25年法律第60号)。

 これにより、環境影響評価法が改正され、放射性物質による環境の汚染を防止するため、環境影響評価手続の対象に放射性物質による環境への影響を含めることとなりました(平成27年6月1日施行)。現在、本改正を踏まえ、基本的事項の検討を行っているところです。

(4)東日本大震災からの復旧・復興に係る施策等について

ア 災害復旧のための発電設備の設置に係る環境影響評価法の適用除外について

 環境影響評価法第52条第2項に基づき、同法の適用除外とされた災害復旧のための発電設備の設置事業の実施については、これらの事業の実施による環境への負荷をできる限り回避・低減し、環境保全について適切な配慮が行われるよう、当該事業による環境影響を最小化するための実行可能な最大限の配慮を行うこと等について、事業者の取組状況のフォローアップを行い、法の趣旨に則った可能な限りの措置がなされていることを確認しました。

イ 適用除外の対象となる土地区画整理事業における環境への配慮

 環境影響評価法第52条第2項に基づき、同法の適用除外とされた被災市街地復興推進地域における土地区画整理の実施については、これらの事業の実施による環境への負荷をできる限り回避・低減し、環境保全について適切な配慮が行われるよう、同法の趣旨をかんがみた自主的な環境保全に係る措置が講じられていることを確認しました。

ウ 復興特区における特定環境影響評価手続

 東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)に基づき策定される復興整備計画に位置付けられる復興整備事業のうち、環境影響評価法の対象事業となる土地区画整理事業並びに鉄道・軌道の建設及び改良事業については、簡易な手法・手続による環境影響評価(特定環境影響評価)をもって環境影響評価法の手続に替える特例規定を適用することにより、手続の迅速化を図りつつ、地方公共団体等の意見を反映した適切な環境配慮が確保されるよう措置を講じました。平成25年度は、1件の特定環境影響評価が実施され、「復興事業への迅速な着手」と「環境保全」の両立が図られました。