環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第3節 地域の生活環境に係る問題への対策

第3節 地域の生活環境に係る問題への対策

1 自動車騒音常時監視体制

 騒音規制法(昭和43年法律第98号)に基づき規定される全国の地方公共団体(都道府県及び全ての市(特別区を含む))において、自動車騒音常時監視を実施しています。この状況は、インターネット上の「環境GIS全国自動車交通騒音マップ」(自動車騒音の常時監視結果(環境展望台:独立行政法人国立環境研究所)http://tenbou.nies.go.jp/gis/monitor/?map_mode=monitoring_map&field=8(別ウィンドウ))において、地図とともに情報提供しています。

2 騒音・振動対策

(1)工場・事業場及び建設作業による騒音・振動対策

 騒音規制法及び振動規制法(昭和51年法律第64号)では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域(指定地域)内における法で定める工場・事業場(特定工場等)及び建設作業(特定建設作業)の騒音・振動を規制しています。建設作業の振動については、振動の苦情総数の6割以上を占めている現状を踏まえ、平成24年4月に地方公共団体担当者のための建設作業振動対策の手引を公表しました。また、各業界団体にて機器の騒音問題を低減するような自主的な取組を促進するための普遍的なマニュアルを平成25年3月に公表しました。

(2)自動車交通騒音・振動対策

 自動車交通騒音・振動問題を抜本的に解決するため、自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、道路構造対策、交通流対策、沿道環境対策等の諸施策を総合的に推進しました(表4-3-1)。

表4-3-1 道路交通騒音対策の状況

 自動車単体から発生する騒音を低減するため、加速走行騒音・定常走行騒音・近接排気騒音の3種類について規制を実施しています。また、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)等に基づき不正改造車両の取締りを強化するなど、突出した騒音を発生させる不適切なマフラーの排除対策に取り組んでいます。

 しかし、幹線道路の沿道地域を中心に環境基準の達成率は依然として低く、一層の騒音低減が必要であることから、中央環境審議会では、「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について」について継続的に審議が行われています。

 「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について(第二次答申)」(平成24年4月)において導入することが提言されているタイヤ騒音規制の適用時期等を検討するため、環境省・国土交通省合同で「タイヤ騒音規制検討会」を平成25年度も引き続き開催し、平成26年3月に中間取りまとめを行い、新車については、自動車の種別毎に、平成30年4月以降に逐次規制を適用することが適当とされました。また、四輪自動車の騒音規制について、我が国の騒音環境を考慮し実態に即した自動車騒音低減を図りつつ、国際基準に調和すべく国際会議等に参画し、議論を進めました。

 自動車からの騒音や振動が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれると認められる場合に、市町村長が都道府県公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置を要請することができる要請限度制度に基づき、自動車騒音について、平成24年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した57地点のうち、要請限度値を超過したのは7地点であり、同様に、道路交通振動については、測定を実施した91地点のうち、要請限度値を超過したのは4地点でした。

(3)航空機騒音対策

 平成19年「航空機騒音に係る環境基準について」(昭和48年12月環境庁告示第154号)の一部改正により、近年の騒音測定機器の技術的進歩及び国際的動向に即して新たな評価指標が採用され、平成25年4月1日に施行されました。それに合わせて、平成24年11月に改正後の航空機騒音の測定・評価に関する標準的な方法を示した「航空機騒音測定・評価マニュアル」を発行するなど、施行への対応を行っています。

 耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度による騒音基準に適合しない航空機の運航を禁止するとともに、緊急時等を除き、成田国際空港では夜間の航空機の発着を禁止し、大阪国際空港等では発着数の制限を行っています。

 発生源対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際、大阪国際、福岡等14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備等を行っています(表4-3-2)。また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された独立行政法人空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業等を実施しています(関西国際空港・大阪国際空港の経営統合に伴い、経営統合後の大阪国際空港周辺の事業は新関西国際空港株式会社が実施)。

表4-3-2 空港周辺対策事業一覧表(平成23年度~25年度)

 自衛隊等の使用する飛行場等に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています(表4-3-3)。

表4-3-3 防衛施設周辺騒音対策関係事業一覧表(平成23年度~25年度)

(4)鉄道騒音・振動対策

 東海道、山陽、東北及び上越新幹線については、環境基準達成に向けた対策として、新幹線鉄道沿線の住宅密集地域等であって75デシベルを超える地域における騒音レベルを75デシベル以下とするため、いわゆる75デシベル対策を推進しています。鉄道事業者が地上設備対策や環境性能に優れた新型車両の投入などの対策を実施した結果、沿線の環境は改善の傾向にあります。しかし、これまでの対策区間以外の区間において、75デシベルを超える地域が残されていることから、引き続き75デシベル対策を計画的に推進しています。また、新幹線鉄道騒音の実態をより適切かつ正確に把握するため、平成22年5月に測定・評価に関する標準的な方法を示した「新幹線鉄道騒音測定・評価マニュアル」を発行し、現状の把握に努めています。

 在来鉄道騒音については、平成22年度に発行した「在来鉄道騒音測定マニュアル」を用いて統一した測定方法での騒音測定を実施し、現状の把握に努めています。

(5)近隣騒音対策(良好な音環境の保全)

 近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約20%を占めています。近隣騒音対策は、各人のマナーやモラルに期待するところが大きいことから、「近隣騒音防止ポスター・カレンダーデザイン」を一般公募して普及啓発活動を行っています。また、各地方公共団体においても取組が進められており、平成24年度末現在、深夜営業騒音は41の都道府県及び79の市で、拡声機騒音は41の都道府県及び105の市で条例を制定しています。

(6)その他の対策

 低周波音問題への対応に資するため、地方公共団体職員を対象として、低周波音問題に対応するための知識・技術の習得を目的とした低周波音測定評価方法講習を行いました。また、風力発電施設については、近年設置数が増加していること、騒音・低周波音による苦情が発生していることなどから、その実態の把握と知見の充実が求められており、風力発電施設等の低周波音の人への影響評価に関する研究を引き続き進めるとともに、騒音・低周波音を適切に調査、予測、評価する手法についても検討を行っています。

3 悪臭対策

(1)悪臭防止法による措置

 悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭の規制等を実施しています。

 同法では、地方公共団体は、従来の特定悪臭物質ごとの規制に代えて、複合臭等の都市型の悪臭問題にも対応できる、人間の嗅覚に基づいた臭気指数規制を選択することができることから、平成25年度も、地方公共団体に対する情報提供等により、臭気指数規制の一層の導入促進に向けた取組を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を実施しました。

(2)簡易嗅覚測定法の開発

 規制対象となる工場・事業場からの悪臭苦情に対し、地方公共団体による測定は十分に実施されていない現状にあります。そのため、現場で簡便に測定できる新たな簡易嗅覚測定法を開発しました。

(3)良好なかおり環境の保全・創出

 まちづくりに「かおり」の要素を取り込むことで、良好なかおり環境を創出しようとする地域の取組を支援することを目指し、「かおりの樹木・草花」を用いた「みどり香るまちづくり」企画コンテストを実施し、平成26年1月14日に表彰式が行われました。

4 ヒートアイランド対策

 ヒートアイランド対策大綱に基づき、[1]人工排熱の低減、[2]地表面被覆の改善、[3]都市形態の改善、[4]ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。

 ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供を継続的に実施しました。また、WBGT(暑さ指数:湿球黒球温度)のモニタリングを強化しました。さらに、引き続きヒートアイランド現象に対する適応策についての調査・検討を実施するとともに、地中熱利用の普及方策の構築を検討しました。

5 光害(ひかりがい)対策等

 光害については、光害対策ガイドライン(平成18年度改訂)、地域照明環境計画策定マニュアル及び光害防止制度に係るガイドブック等を活用して、良好な照明環境の実現を図る取組を支援しました。

 また、郷土の環境をいかした地域おこしの推進と大気環境等保全の高揚を図ることを目的とした「星空の街・あおぞらの街」全国協議会が開催する全国大会(福岡県北九州市)を共同開催しました。