環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第4節 国際的な循環型社会の構築

第4節 国際的な循環型社会の構築

1 有害廃棄物の適正管理

 有害廃棄物の輸出入等の規制を適切に実施するため、平成16年度から毎年度環境省が主宰する「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」の活動を開始し、アジア各国のバーゼル条約担当官と税関職員、関係国際機関との対話促進や連携強化のための取組を行いました。さらに、アジア太平洋地域のE-waste及びコンピュータ機器廃棄物の環境上適正な管理、有害廃棄物等の環境上適正な管理に関するフレームワークの策定等、バーゼル条約の下で進められるプロジェクトについて、財政的・技術的支援を行いました。

2 「アジア太平洋3R推進フォーラム」等を活用した3Rの国際的推進

 平成20年5月に、神戸でG8環境大臣会合が開催され、今後G8各国が3Rの一層の推進に向けて取り組む具体的な行動が列挙された「神戸3R行動計画」が合意されました。当該計画は、同年7月に北海道洞爺湖で開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいて、G8各国の首脳間でも支持されました。また、G8環境大臣会合の際には、日本として、アジア等における循環型社会の構築に向けて進めていく国際的取組を列挙した「新・ゴミゼロ国際化行動計画」を発表しました。

 平成23年5月にドーヴィル(フランス)で開催されたG8サミットでは、首脳宣言において「神戸3R行動計画」への支持が再確認され、同年5月にOECDが発表した神戸3R行動計画に基づく報告書「G8及びOECD諸国における資源生産性」が歓迎され、OECDがこの問題に引き続き取り組むことが奨励されました。

(1)アジア太平洋3R推進フォーラム

 我が国の提唱により、アジアでの3Rの推進に向け各国政府、国際機関、援助機関、民間セクター、研究機関、NGO等を含む幅広い関係者の協力の基盤となるものとして、平成21年に「アジア3R推進フォーラム」が設立され、同フォーラムの下で、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援の促進、3R推進に役立つ情報の共有、関係者のネットワーク化等を進めることとなりました。我が国は平成21年の同フォーラム設立会合を東京で開催し、それ以降、同フォーラム会合を開催国政府、国連地域開発センターとともに主催してきました。

 平成26年2月にインドネシア政府と共同で開催した第5回会合(インドネシア・スラバヤ)からは、アジア太平洋3R推進フォーラムと名称を変更し、「アジア太平洋における3R推進の基盤としての重層的な連携と協力枠組み」をテーマに積極的な議論が行われました。その成果として、官民連携や都市間等の協力関係の推進を記載した「スラバヤ3R宣言」を採択しました。スラバヤ3R宣言は、3Rの効果的な実行に向けた国家間協力、北南南協力、都市間・地方自治体間協力、産業間連携、政府・非政府間連携等の推進を表明するもので、資源効率及びゼロ廃棄物社会への移行に向けたハノイ3R宣言(第4回会合で採択)の目的を補完するものです。

(2)二国間協力

 環境省ではアジア各国での3R国家戦略策定、法制度整備等の二国間協力を継続して実施してきました。例えば、バングラデシュ、タイ、カンボジア、フィリピン、ベトナム、インドネシア等に対して、国別の状況に応じた3R国家戦略の策定を支援してきました。その結果、カンボジア(2008年(平成20年))、フィリピン(2009年(平成21年))、ベトナム(2009年(平成21年))、バングラデシュ(2010年(平成22年))では国家戦略が策定され、その他の国においても策定への手続きが進められています。

 また、マレーシアに対しては食品廃棄物管理に関する戦略計画の策定支援、ベトナムに対しては「統合的廃棄物国家戦略計画(本計画自体も我が国の支援により策定している。)」に含まれる実施プログラムの策定支援など、法制度整備に関する支援を実施しています。2013年(平成25年)からは、アジア3R推進フォーラム第4回会合で採択された「ハノイ3R宣言」に則り、ベトナム、インドネシア、マレーシアに適した政策目標及びそのモニタリング指標の検討を支援しています(図3-4-1)。

図3-4-1 3R・廃棄物対策に関するアジア各国との二国間協力

(3)国際機関との協力

 平成4年の地球サミットで採択された「アジェンダ21」の実施状況を年次計画に基づいて評価していた国連持続可能な開発委員会(CSD)では、平成22年から平成23年の2年間に「廃棄物管理」がテーマの一つとして取り上げられました。CSDの議論に積極的に貢献するため、環境省は国連と共同で、平成22年3月と平成23年2月にCSD会期間会合として「国連持続可能な廃棄物管理会議」を東京で主催しました。平成24年にリオデジャネイロで行われた国連持続可能な開発会議(リオ+20)では、成果文書「我々の望む未来」が採択され、分野別取組のなかで廃棄物や持続可能な消費と生産が取り上げられています。特に、持続可能な消費と生産については10年取組枠組に合意され、我が国はその実施のための理事会メンバーを務めることになっています。

 環境省は、国連環境計画(UNEP)が天然資源の利用による環境への影響の科学的評価などを目的に平成19年に設立した「国際資源パネル」(持続可能な資源管理に関する国際パネルから名称を変更)についても、資金拠出や科学的知見の提供等の支援を行っています。平成24年11月6日から10日の間に、東京にて第11回国際資源パネル会合を開催し、各分野のテーマに関する専門家による討議のほか、同パネルの報告書等の成果を国内に普及啓発するための公開セミナーも実施しました。

 また、短期的な気候変動の緩和と大気汚染の防止の双方に効果がある短期寿命気候汚染物質(SLCPs)(ブラックカーボン、メタン、HFCなど)の削減を目指し、平成24年2月に立ち上がった新しい枠組みである「短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)」のイニシアチブの一つである都市廃棄物イニシアチブにおいても、我が国はリードパートナーを務めています。平成26年2月には、インドネシア・スラバヤにおいて都市廃棄物イニシアチブのアジア地域会合を開催し、我が国が議長を務めました。

 さらに、OECDの廃棄物・資源生産性作業部会(WPRPW)において進められている物質フロー及び資源生産性のプロジェクトを重視し、積極的に議論をリードしています。平成26年6月には、WPRPWのグローバルフォーラムを国内にて開催する予定です。

3 廃棄物・リサイクルに関する我が国循環産業の国際展開の支援

(1)循環産業の国際展開の促進

 平成23年度より、我が国循環産業が海外において事業展開することを支援し、世界規模で環境負荷の低減を実現するとともに、我が国経済の活性化につなげるため、「日系静脈産業メジャーの育成・海外展開促進事業」を開始しました。平成25年度からは「我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業」と名称を変更し、国際展開計画事業に関する実現可能性調査(FS)等への支援、海外情報の収集と国内事業者への情報提供、事業者・地方公共団体・関係団体などの間での情報共有・意見交換の促進、我が国の循環産業事業者及び技術に関する海外への情報発信などを積極的に実施しています。

 特にFS支援では、我が国の循環産業による廃棄物処理・リサイクル分野における具体的な国際展開の計画のある事業について、FSの実施等への支援を行うとともに、現地関係者との情報共有・意見交換のための現地合同ワークショップを実施することを義務付けています。加えて、支援対象事業の現地関係者を日本に招き、我が国の廃棄物処理体制・技術について学んでもらう訪日研修も実施しています。本支援では、平成23年度に7件(応募件数31件)を支援し、平成24年度には10件(応募件数29件)の新規事業、4件の継続事業の計14件を支援しました。そして、平成25年度には7件(応募件数20件)の新規事業、3件の継続事業の計10件を支援しています。平成25年度の支援事業は、廃棄物発電、中間処理、廃液リサイクル等多岐にわたり、対象国も中国・東南アジアを中心に7か国となっています。

(2)アジアにおけるリサイクルビジネス展開可能性調査

 平成21年度より、我が国企業によるアジアでのリサイクルビジネス展開を促進させることを目的として、アジア各国における、法制度、市場規模、収益性及び事業リスク等を調査・分析し、リサイクルビジネス展開の可能性調査を行っています。

 平成24年度は、中国での自動車リサイクル事業やベトナムにおける電子機器廃棄物リサイクル事業をはじめ、3か国で3件の調査を実施しました。平成25年度は中国での自動車部品リビルト事業や、マレーシアにおける廃電気・電子機器リサイクル、フィリピンにおける電気・電子機器廃棄物リサイクル事業の、3か国で3件の調査を実施しました。

(3)アジアエコタウン協力(循環型都市協力)

 平成19年度から実施してきたアジアエコタウン協力事業は、我が国がエコタウン整備を通じて蓄積した経験・ノウハウを、自治体間協力の枠組みの下アジア各国に移転しつつ、我が国リサイクル産業の海外展開を支援するものです。平成23年度には、中国において北九州市-大連市、茨城県-天津市、福岡県-江蘇省との間で事業実施可能性調査、人材育成事業等を実施しました。また、中国以外のアジア各国へも協力を拡大し、秋田県-タイ、秋田県-マレーシアとの間で協力事業を実施しました。

(4)リサイクル技術に関する協力の実施

 平成21年度より、各地域で直面している廃棄物・リサイクル問題を解決するため、我が国のリサイクル技術・システムを活用した実証事業を実施しました。平成25年度には、NEDO事業を活用し、中国における自動車リサイクル実証事業、インドにおける電気電子機器廃棄物リサイクル実証事業、及びインドネシアにおける廃油リサイクルの実証事業を実施しました。

4 し尿処理システムの国際普及の推進

 国連ミレニアム開発目標に掲げられた、衛生的なトイレを使用できない25億人の人口を半減させるという国際的な衛生問題の解決に貢献するとともに、浄化槽やし尿処理施設などの日本における分散型のし尿処理システムの国際普及を通じた途上国の水環境の向上に向け、平成21年度から「し尿処理システム国際普及推進事業」を実施しています。

 具体的には、中国及びベトナムにおいて、し尿処理に関する現地調査や日本の汚水処理技術の情報発信を行い、日本において分散型汚水処理のワークショップを開催しました。

循環型社会の形成に向けた国民、民間団体等の取組事例

 現在、さまざまな取組が進められていますが、ここでは、3R活動推進フォーラム※1並びに環境省が主催する「循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰」、リデュース・リユース・リサイクル推進協議会※2が主催する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」における内閣総理大臣賞において平成25年度に表彰された、民間団体における先進的な取組事例を紹介します。

※1 3R活動推進フォーラム

 平成18年1月設立した「3R活動推進フォーラム」は、地方公共団体や民間団体を会員とし、3Rに関する社会的取組や先進的技術による取組をさらに進め、循環型社会への変革を強く意識した3R活動を一層推進しています。平成25年度は、「第8回3R推進全国大会」を環境省及び栃木県と共催し、イベントを通して3R施策の普及啓発を行いました。大会式典で環境大臣表彰を行った3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から約1万点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しています。10月の3R推進月間では環境省、経済産業省と共同で「環境にやさしい買い物キャンペーン」を実施し、全国の都道府県や流通事業者・小売事業者の協力を得て、環境に配慮した商品の購入、マイバッグ持参など3R行動の実践を呼びかけました。また、循環型社会の形成や食品リサイクルを推進した優れた取組などの環境大臣表彰の推薦、我が国の3R制度・技術・経験の変遷についての調査研究を実施するとともに、これら3Rに関する情報をホームページやメールニュース等により、全国に提供しています。

※2 リデュース・リユース・リサイクル推進協議会

 行政・消費者・産業界等が連携してリサイクルを推進することを目的に、平成3年9月「リサイクル推進協議会」として設立されました。平成14年6月に、これからの資源・廃棄物問題に対処するにはリサイクルのみならず3R(リデュース・リユース・リサイクル)を通じた循環型社会の構築が必要であることを踏まえ、「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会」と改称し、3R推進のための啓発・普及活動を実施しています。

 1 循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰

 循環型社会形成推進功労者表彰は、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の適切な推進に顕著な功績があった個人、企業、団体を表彰し、その功績をたたえて、循環型社会の形成の推進に資することを目的として、平成18年度から実施しています。

 平成25年度の受賞者数は、4個人、7団体、10企業の計21件であり、平成25年10月に開催された「第8回3R推進全国大会」式典において、表彰式が行われました。


 2 リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰

 リデュース・リユース・リサイクル推進協議会では毎年、3R(リデュース・リユース・リサイクル)に率先して取り組み、顕著な実績を挙げている方々を表彰し、これらの活動を奨励することを目的に「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」を実施し、「内閣総理大臣賞」を含む関係省庁大臣賞を交付しています。

 平成25年度内閣総理大臣賞

 受賞者名: トヨタ自動車株式会社・豊田通商株式会社(2者連名)(愛知県豊田市・名古屋市)

 受賞テーマ: 解体しやすい車両構造の開発・設計、廃車の破砕くずから分別された鉄・アルミの再生利用や、自社製品の部品の再使用を進めるなど、全行程で一貫した3R活動に長期間取り組まれました。また、鉄やアルミ以外の残渣を車の防音材にリサイクルする技術や、レアメタルが使用されるハイブリッド車のモーター磁石をモーター磁石に再生利用する技術を世界に先駆けて確立されました。


 3 資源循環技術・システム表彰

 廃棄物の発生抑制、使用済み物品の再使用、再生資源の有効利用に寄与する技術的又はシステム的特徴を有する優れた事業や取組の奨励・普及を図り、循環ビジネスを振興することを目的としてそれらを広く公募・発掘し表彰しました。

 なお、平成25年度からレアメタルリサイクル賞を新設しました。

 平成25年度は合計15件19社が受賞しました。