環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第5節 地球規模の視野を持って行動する取組

第5節 地球規模の視野を持って行動する取組

1 生物多様性条約

(1)COP10・11決定事項の実施

 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において採択された愛知目標を踏まえ、生物多様性に関する国内施策の充実及び国際的な連携の強化を図ることなどを目的として、平成24年9月に「生物多様性国家戦略2012-2020」を閣議決定しました。生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)(2012年(平成24年)10月インド・ハイデラバード)の結果も踏まえ、我が国の条約実施状況や愛知目標の達成状況等を評価した第5回国別報告書をとりまとめ、2014年(平成26年)3月に生物多様性条約事務局へ提出するとともに、同国家戦略の進捗状況の点検を実施しました。また、補助機関会合等の条約関連会合で積極的に交渉に参加するとともに、科学技術助言補助機関等について開催支援を行いました。

 愛知目標の達成を含め、生物多様性条約に基づく取組を地球規模で推進していくためには、途上国への資金供与や技術移転、能力養成が必要であることが強く指摘されています。このため、我が国は、愛知目標の達成に向けた途上国の能力養成等を支援するため、条約事務局に「生物多様性日本基金」を設置しています。本基金を活用し、生物多様性国家戦略の策定・改定を支援するワークショップ開催などが進められています。

(2)名古屋議定書

 COP10において採択された「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS:Access and Benefit-Sharing)に関する名古屋議定書」の早期締結及び国内措置の実施については、「生物多様性国家戦略2012-2020」の目標として掲げているところですが、国内措置の具体化を始めとしてさまざまな課題があることから、関係者及び関係省庁で名古屋議定書の締結に必要な国内措置の検討を進めています。その一環として、環境省では平成24年9月から平成26年3月までの間、関係する産業界や学術分野の有識者により構成される「名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会」を開催し、当該有識者が考える我が国にふさわしい国内措置のあり方に関する意見の取りまとめを行いました。

 平成23年3月に、名古屋議定書の早期発効や効果的な実施に貢献するため、地球環境ファシリティ(GEF)によって管理・運営される名古屋議定書実施基金が設置されました。我が国は、COP10時に本基金の構想について支援を表明しており、平成23年4月に10億円を拠出しました。平成26年3月現在、パナマ、コロンビア、フィジー、ガボン、コスタリカ、ブータン、中央アフリカ地域等の各国や地域等を対象とした8件のプロジェクトが承認され、国内制度の発展、遺伝資源の保全及び持続可能な利用に係る技術移転、民間セクターの参加促進等の活動が支援されています。

(3)SATOYAMAイニシアティブ

 COP10において、締約国会議としてSATOYAMAイニシアティブを生物多様性及び人間の福利のために人為的影響を受けた自然環境をより理解・支援する有用なツールとなり得るものとして認識し、締約国その他の政府及び関連する機関に対して、SATOYAMAイニシアティブをさらに発展させるために、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)への参加を勧奨すること等を含む決定が行われました。

 このCOP10での決定を踏まえ、SATOYAMAイニシアティブを国際的に推進するため、COP10期間中に発足したIPSIを通じて、参加団体間の情報共有や連携した活動の促進を行いました。

 SATOYAMAイニシアティブを普及するため、2013年(平成25年)9月に福井県福井市において、「SATOYAMA イニシアティブ国際パートナーシップ第四回定例会合」を開催しました。第四回定例会合では、2012年(平成24年)10月に開催された第三回定例会合で合意されたIPSI戦略の実施を目的とし、「生物多様性の保全と人間の豊かな暮らしの実現に向けたIPSI戦略の実施」をテーマに、IPSI 総会と公開フォーラムが行われました。また、第四回定例会合と併せて、SATOYAMAイニシアティブの理念を国内において推進するための組織「SATOYAMAイニシアティブ推進ネットワーク」が48地方自治体を含む101団体の参画を得て設立され、発起団体代表の石川県知事と福井県知事が共同代表を務めることとなりました。2014年(平成26年)3月現在、IPSIの会員は16か国の政府機関を含む158団体となりました。

2 カルタヘナ議定書

 国内担保法であるカルタヘナ法に基づき、議定書で求められている遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を実施しました。また、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」について、関係省庁において締結に向けた情報収集と検討を進めました。

3 ラムサール条約

 国内に46か所あるラムサール条約に基づく国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)における普及啓発活動等を、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議をはじめとする関係者とともに進めました。また、ミャンマーに対する国際的に重要な湿地の保全及び賢明な利用に向けた協力等を行いました。

4 ワシントン条約

 ワシントン条約に基づく絶滅のおそれのある野生動植物の輸出入の規制に加え、同条約附属書Ⅰに掲げる種については、種の保存法に基づき国内での譲渡し等の規制を行っています。また、関係省庁、関連機関が連携・協力し、インターネット取引を含む条約規制対象種の違法取引削減に向けた取組等を進めました。

5 世界遺産条約

 我が国では、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(以下「世界遺産条約」という。)に基づき、屋久島、白神山地、知床及び小笠原諸島の4地域が自然遺産として世界遺産一覧表に記載されています。これらの世界自然遺産については、遺産地域ごとに関係省庁・地方公共団体・地元関係者からなる地域連絡会議と専門家による科学委員会を設置しており、関係者の連携によって適正な保全・管理を実施しました。特に小笠原諸島については、世界遺産委員会の勧告を踏まえ外来種対策の推進など質の高い保全管理に取り組んでおり、平成25年3月に兄島で新たに確認された侵略的外来種グリーンアノールについて、関係省庁、地方公共団体及び地元関係者の協働により早急かつ集中的な対策を講じました。白神山地については、関係省庁及び県が、平成25年10月に新しい「世界遺産地域管理計画」を策定しました。平成25年は、屋久島と白神山地が我が国で初めての世界自然遺産として世界遺産一覧表に記載されて20周年に当たることから、関係省庁、地方公共団体及び地元関係者の協働、共催等により記念式典やシンポジウム等を開催し、記載後の変化や課題を踏まえつつ、保全管理の重要性を改めて確認するとともに、今後の方向性を議論しました。

 また、平成24年1月に世界遺産センターへ世界文化遺産の推薦書を提出した富士山については、2013年(平成25年)6月に開催された第37回世界遺産委員会において、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として世界遺産一覧表に記載されました。

 世界自然遺産の国内候補地である奄美・琉球については、平成25年度に専門家による「奄美・琉球世界自然遺産候補地科学委員会」を開催し、世界遺産候補区域の選定を行いました。

奄美・琉球:世界で唯一の価値

 世界自然遺産の国内候補地である奄美・琉球については、平成25年度に専門家による「奄美・琉球世界自然遺産候補地科学委員会」を開催し、推薦候補区域の検討を進めてきました。その結果、平成25年12月の第3回科学委員会において、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の4地域を世界遺産地域として推薦していくとの結論が出されました。

 世界遺産一覧表へ記載されるためには、世界で唯一の価値を有する重要な地域として認められることが必要で、これにはいくつかの条件を満たす必要があります。自然遺産については、「自然美」、「地形・地質」、「生態系」、「生物多様性」の評価基準のいずれかを満たすことが、条件の1つとして求められています。また、その他の条件としては、世界遺産としての価値を示すのに必要な要素や適切な広さが確保されていることや保護措置がとられていることが挙げられます。

亜熱帯照葉樹林(1)

亜熱帯照葉樹林(2)

 奄美・琉球は、地史を反映した独特な種分化・系統的多様化の過程を明白に表す顕著な見本として「生態系」の評価基準を、また、世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生息・生育地など生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含した地域として「生物多様性」の評価基準をそれぞれ満たすと考えられます。

 奄美・琉球では、かつては大陸の一部であったことから大陸と共通の陸生生物が生息・生育していましたが、島々が分離・結合を繰り返し、小島しょ群として成立する過程において多くの進化系統に種分化が生じ、独自の進化が進みました。特に奄美大島、徳之島及び沖縄島北部は、大陸からの隔離の歴史が長く、捕食者や競争相手が海峡により隔てられたことでその地域だけに生息・生育するようになった遺存固有種が多く存在します。その代表的なものとして、動物ではアマミノクロウサギやケナガネズミ、植物ではクニガミトンボソウやコケタンポポ等が挙げられ、このうちアマミノクロウサギは、近縁種が存在しない1属1種であり、奄美大島と徳之島において原始的な形態を残しつつ特異な生活型を進化させた種です。種の分化は現在も進行中で、島しょごとに固有種や固有亜種に分化している事例が豊富に見られ、特に、奄美群島及び琉球諸島の陸生爬虫類及び両生類の固有種率の高さは特筆に値します。前者は約80%、後者は約79%の固有種率を示しており、これらの多くが奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島に生息しています。

アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)

 また、奄美・琉球は、イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ及びヤンバルクイナなど、IUCNレッドリストに掲載されている種が多く、陸生生物にとってかけがえのない生息・生育地となっています。さらに植物では、気候条件と多様な分散史を反映した極めて多様な植物が生育しており、奄美・琉球の上記4地域の面積は日本国土の1%に満たないにも関わらず、日本に生育する絶滅のおそれがある維管束植物の約17%が分布し、絶滅のおそれがある植物の保全のための最重要地域として認識されています。

イリオモテヤマネコ

ヤンバルクイナ

アマミイシカワガエル

 科学委員会では、大きくは、固有種、遺存固有種、絶滅危惧種等の生息数が多いこと、ある程度の面積的な広がりがあることを基準として整理し、候補区域が検討されました。この結果、上述の通り、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の4地域が今後世界自然遺産として推薦していく地域として絞り込まれたものです。

 今後は、これらの地域を国が責任を持って管理していくための国立公園の指定や拡張、森林生態系保護地域等の保全管理の充実等を進めるとともに、地域関係者と連携し、地域の理解・合意を得ながら、保全管理体制の整備やマングースをはじめとした外来種問題への対応をさらに進めていきます。

6 南極地域の環境の保護

 南極地域は、保護すべき価値を有する地域であり、地球環境研究の場等としてかけがえのない価値を有しています。近年は基地活動や観光利用の増加による環境影響の増大も懸念されています。

 南極の環境保護に向けた国際的な取組は、南極の平和的利用と科学的調査における国際協力の推進を目的として南極条約(1961年(昭和36年)発効)の下で定められた、南極の環境や生態系の保護を目的とする「環境保護に関する南極条約議定書」(1998年(平成10年)発効)により進められています。

 我が国は、南極条約の締約国として、環境保護に関する南極条約議定書を適切に実施するため制定された南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)に基づき、南極地域における観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用するとともに、ホームページ等を通じて南極地域の環境保護に関する普及啓発、指導等を行いました。また、毎年開催される「南極条約協議国会議」に参加し、南極特別保護地区等の管理計画や、非在来種の移入防除方法など、南極における環境の保護の方策について議論を行いました。さらに、国立極地研究所が設置している南極観測審議委員会設営専門部会環境分科会において、昭和基地における環境保全の方策等について検討を行いました。

7 砂漠化への対処

 砂漠化とは、国連の砂漠化対処条約(UNCCD)において、「乾燥地域における土地の劣化」と定義されています。乾燥地域は地表面積の約41%を占めており、その10~20%はすでに劣化(砂漠化)しており、世界の3分の1以上の人々がそこに居住しています。一方で、世界で1,900万km2の土地が劣化し、15億人が砂漠化の影響を受けていると推定されています。砂漠化の原因として、干ばつ・乾燥化等の気候的要因のほか、過放牧、過度の耕作、過度の薪炭材採取による森林減少、不適切な灌漑による農地への塩分集積等が挙げられます。その背景には、開発途上国における人口増加、貧困、市場経済の進展等の社会的・経済的要因が関係しています。

 1996年(平成8年)に発効した砂漠化対処条約では、加盟している開発途上国は砂漠化対処のための行動計画を作成し、先進国がその支援を行うことで砂漠化対策に取り組んでいます。我が国も1998年(平成10年)に条約を受諾し、締約国会議に参画・貢献するとともに関係各国、各国際機関等と連携を図りつつ国際的な取組を推進しています。また、米国に次ぐ規模の拠出国としてその活動を支援しています。

 このほか、同条約への科学技術面からの貢献を念頭に、砂漠化対処のための技術の活用に関する調査などを行ったほか、独立行政法人国際協力機構(JICA)等を通じ、農業農村開発、森林保全・造成、水資源保全等のプロジェクト等を実施しました。

8 二国間渡り鳥条約・協定

 米国、露国、豪州、中国及び韓国との二国間の渡り鳥条約等に基づき、各国との間で渡り鳥等の保護のため、アホウドリ及びズグロカモメに関する共同調査等を引き続き実施するとともに、2013年(平成25年)12月に米国及び露国との間の二国間渡り鳥等保護協定等会議を東京において開催し、渡り鳥保護施策や調査研究に関する情報や意見の交換等を行いました(写真2-5-1写真2-5-2)。

写真2-5-1 ズグロカモメ

写真2-5-2 アホウドリ

9 アジア太平洋地域における渡り性水鳥の保全

 日豪政府のイニシアティブにより、2006年(平成18年)11月に発足した「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)」の活動として、EAAFP事務局への支援を継続するとともに、ツル、ガンカモ、シギ・チドリ類といった渡り鳥の主要な渡り経路である東アジア・オーストラリア地域におけるモニタリング体制構築のため、EAAFP事務局やNGOと協力してモニタリングマニュアル案の作成を行いました。また、国内30か所のEAAFPフライウェイ・ネットワークサイトの関係自治体間の交流促進を行いました。

10 アジア国立公園会議

 国際自然保護連合(IUCN)との共催により、アジアにおける国立公園等保護地域の管理の経験の共有と多様な関係者の協力体制の構築、愛知目標の達成と保護地域作業計画の実施に向けた活動の推進などを目的として、アジアにおける国立公園等の関係者が参集する初めての国際会議である「第1回アジア国立公園会議」を2013年(平成25年)11月に宮城県仙台市で開催しました。会議には、アジア各国を中心に40の国及び地域から、約800人が参加し、アジアにおける保護地域の基本理念を示す「アジア保護地域憲章(仙台憲章)」などの成果文書が取りまとめられました(詳細は講じた第1部第1章を参照)。

11 国際的なサンゴ礁保全の取組

 2013年(平成25年)9月に、シンガポールで第9回ICRI東アジア地域会合を開催し、海洋保護区の管理効果評価にかかる能力開発ワークショップや東アジア地域サンゴ礁保護区ネットワーク戦略2010の実施のための情報交換を行いました。また、同年10月に、ベリーズシティ(ベリーズ)で開催された第28回ICRI総会に出席し、地球規模サンゴ礁モニタリングネットワーク(GCRMN)の今後の活動に関する議論や日本の取組の報告等を行いました。

 2013年(平成25年)6月29~30日に、「地球温暖化防止とサンゴ礁保全に関する国際会議」(主催:環境省、沖縄県)を沖縄県で開催し、パラオ共和国財務大臣、モルディブ共和国環境エネルギー大臣らを交え、サンゴ礁保全をはじめとした島しょ国の課題について横断的に議論しました。

12 持続可能な森林経営と違法伐採対策

 世界の森林は、陸地の約31%を占め、面積は約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2010年(平成22年)にかけて、年平均1,300万haの割合で減少しました(増加分を差し引いて年520万haの純減)。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域で森林の減少が続いています(図2-5-1)。このような森林減少・劣化は、地球温暖化や生物多様性の損失に深刻な影響を与えています。

図2-5-1 世界の森林面積変化(地域別)

 森林減少の原因として、プランテーション開発等農地への転用、非伝統的な焼畑農業の増加、燃料用木材の過剰採取、森林火災等が挙げられます。また、違法伐採など不適切な森林伐採が森林を劣化させ、森林減少の原因を誘発していることも大きな問題となっています。

 このような森林減少・劣化を抑制するためには、持続可能な森林経営を実現する必要があります。

 1992年(平成4年)の地球サミットにおいて、森林原則声明及びアジェンダ21が採択され、以降、世界の森林の持続可能な経営に関する国際的な議論が行われています。我が国は、これらの議論に参画・貢献するとともに、関係各国、各国際機関等と連携を図るなどして国際的な取組を推進しています。

 我が国は、持続可能な森林経営の進捗状況を客観的に把握・分析・評価するための「基準・指標」を作成・適用する取組として、欧州以外の温帯林等を対象とした「モントリオール・プロセス」に参加しており、2007年(平成19年)1月より事務局を務めるなど、積極的に取り組んでいます。

 2013年(平成25年)4月にイスタンブール(トルコ)で開催された第10回国連森林フォーラム(UNFF10)では、「森林と経済開発」のテーマの下に、(ア)森林に関する4つの世界的な目標の達成状況及び「すべてのタイプの森林に関する法的拘束力を持たない文書(NLBI)」の実施状況の課題と評価、(イ)資金・技術協力等の持続可能な森林経営の実施手段(資金提供、技術移転等)のあり方等について、加盟国等によって検討を行いました。現在の枠組みの最終年となる2015年(平成27年)に次回会合を開催し、これまでの成果を評価し、その後の森林に関する国際的な取決めのあり方について協議することとし、対立するテーマの一つである世界森林基金の設立に関しても、引き続き検討することが合意されました。

 また、2013年(平成25年)11月にリーブルビル(ガボン)で開催された第49回国際熱帯木材(ITTO)理事会では、持続可能な森林経営と熱帯木材の適正な貿易の推進に向け、運営や予算に加え、「熱帯天然林の持続可能な森林経営に関するITTO自主的ガイドライン」の改定等の議論が行われました。

 また、特に持続可能な森林経営の阻害要因の一つとなっている違法伐採については、1998年(平成10年)のバーミンガム・サミット以降、国際的な議論が行われていますが、我が国では、平成18年4月から、この対策として、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)により、合法性、持続可能性が証明された木材・木材製品を政府調達の対象とする措置を実施するとともに、地方公共団体や民間事業者等に対する普及等を行っています。

 さらに、IPCC第4次評価報告書では、森林減少及び土地利用の変化に伴う人為的な温室効果ガス排出量が全体の17%を占めるとされています。このため、途上国における森林減少・劣化からの排出の削減に加え、森林保全も含めて排出削減を実現するREDD+という考え方が提唱されています。2013年(平成25年)11月にワルシャワ(ポーランド)で開催された国連気候変動枠組条約第19回締約国会議では、REDD+についての技術ガイダンス、資金、組織を含む支援の調整に関する枠組みが決定されました。

 上記の取組のほか、ITTO、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関への拠出、JICA等を通じた協力、独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金等を通じた民間団体の植林活動等への支援等を行いました。

13 生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)

 生物多様性の保全、経済と社会の発展、学術研究支援に焦点を当てたユネスコの「人間と生物圏(MAB: Man and Biosphere)計画」に基づく生物圏保存地域(BR: Biosphere Reserves, ユネスコエコパーク※1)については、国内では「志賀高原」、「白山」、「大台ヶ原・大峯山」※2、「綾」及び「屋久島」の5件が登録されています。

 また、平成25年9月には日本ユネスコ国内委員会第26回人間と生物圏(MAB)計画分科会において、「只見」(福島県)及び「南アルプス」(山梨県、長野県及び静岡県)の新規登録と、「志賀高原」(群馬県及び長野県)の拡張について、ユネスコに推薦することが決定されました。

 今後、2014年(平成26年)6月にスウェーデンにて開催される第26回ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画国際調整理事会において、登録・拡張の可否が決定される予定です。

 今回、推薦が決定したそれぞれの地域においても、豊かな自然を保全するとともに、自然や文化の特徴を活かした地域づくりが積極的に進められているところです。

※1 日本ユネスコ国内委員会第22回MAB計画分科会にて、生物圏保存地域の国内呼称を「ユネスコエコパーク」とするとともに、国内での普及を図ることを決定(平成22年1月25日)。

※2 従来使用されていた「大台ヶ原・大峰山」の表記については、関係自治体(協議会)からの名称変更の申請を受けて、日本ユネスコ国内委員会第28回MAB計画分科会にて、「大台ヶ原・大峯山」に変更することが決定(平成26年3月25日)。

14 世界ジオパーク

 2012年(平成24年)9月に「隠岐」が新たに世界ジオパークに認定され、洞爺湖有珠山、糸魚川、山陰海岸、室戸、島原半島とともに、合計6地域となりました。「隠岐」の世界ジオパーク認定を機に、ジオパークと連携した国立公園の標識や園路等の整備、シンポジウムの開催、学習教材・プログラムづくり等を行いました。 さらに、島原半島ジオパークや今後世界ジオパークを目指す地域においても、国立公園における地形・地質等の保全を推進するとともに、ジオサイトとなる地形・地質等の資源調査、ジオツアーのプログラムづくり、ガイドの育成等を支援しました。