近年の人間活動の拡大に伴って二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスが人為的に大量に大気中に排出されることで、地球が過度に温暖化するおそれが生じています。特に二酸化炭素は、化石燃料の燃焼などによって膨大な量が人為的に排出されています。我が国が排出する温室効果ガスのうち、二酸化炭素の排出が全体の排出量の約95%を占めています(図1-1-1)。
気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)は、2013年(平成25年)に取りまとめた第5次評価報告書第1作業部会報告書において、以下の内容を公表しました。気象及び気候の極端現象については表1-1-1のとおり、下線部で示した可能性及び確信度の表現は、表1-1-2及び表1-1-3のとおりです。
○気候システムに関する観測事実
・気候システムの温暖化については疑う余地がない。1880~2012年において、世界平均地上気温は0.85(0.65~1.06)℃上昇しており、最近30年の各10年間はいずれも、1850年以降の各々に先立つどの10年間よりも高温でありつづけた。
注:( )の中の数字は、90%の確からしさで起きる可能性のある値の範囲を示している。
・1971~2010年において、海洋表層(0~700m)で水温が上昇していることはほぼ確実である。1992~2005年において、3,000mから海底までの層で海洋は温暖化した可能性が高い。
・過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。また、北極域の海氷及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている(高い確信度)。
・海洋酸性化はpHの減少により定量化される。海面付近の海水のpHは工業化時代の始まり以降0.1低下している(高い確信度)。
○温暖化の要因
・人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い。
○将来予測
・1986~2005年平均に対する、2081~2100年の世界平均地上気温の上昇量は、可能な限りの温暖化対策を前提としたRCP2.6シナリオでは0.3~1.7℃の範囲に入る可能性が高いとする一方、かなり高い排出量が続くRCP8.5シナリオでは2.6~4.8℃の範囲に入る可能性が高い。
・同様に世界平均海面水位の上昇は、RCP2.6シナリオでは0.26~0.55mの範囲に入る可能性が高いとする一方、RCP8.5シナリオでは0.45~0.82mの範囲に入る可能性が高い(中程度の確信度)。
・RCP8.5シナリオにおいて今世紀半ばまでに9月の北極海で海氷がほとんど存在しない状態となる可能性が高い(中程度の確信度)。
・21世紀末までに、地表付近の永久凍土面積はモデル平均では37%(RCP2.6シナリオ)から81%(RCP8.5シナリオ)の間で減少する。
・熱膨張に起因する海面水位上昇が何世紀にわたって継続するため、2100年以降も世界平均海面水位が上昇しつづけることはほぼ確実である。RCP8.5シナリオのように700ppmを超えるが1,500ppmには達しない二酸化炭素濃度に相当する放射強制力の場合、予測された水位上昇は2300年までに1mから3m以上である(中程度の確信度)。
・あるしきい値を超える気温上昇が持続すると、千年あるいはさらに長期間をかけたグリーンランド氷床のほぼ完全な損失を招いて、7mに達する世界平均海面上昇をもたらす(高い確信度)。
○気候の安定化、気候変動の不可避性と気候変動の不可逆性
・二酸化炭素の累積排出量と世界平均地上気温の応答はほぼ比例関係にある。
・人為的な二酸化炭素排出のみによる温暖化を、ある確率で1861~1880年の平均から2℃未満に抑えるには、同期間以降の全ての人為的発生源からの累積二酸化炭素排出量を表1-1-4のとおりに制限する必要がある。
・二酸化炭素の排出に起因する人為的な気候変動の大部分は、大気中から二酸化炭素の正味での除去を大規模に継続して行う場合を除いて、数百年から千年規模の時間スケールで不可逆である。人為的な二酸化炭素の正味の排出が完全に停止した後も、数世紀にわたって、地上気温は高いレベルでほぼ一定のままとどまるだろう。
○日本の状況
気象庁ホームページによると、日本の年平均気温は、1898年(明治31年)から2013年(平成25年)の期間に、100年あたり1.14℃の割合で上昇しています。
日本においても、気候の変動が農林水産業、生態系、水資源、人の健康などに影響を与えることが予想されています。
日本の2012年度(平成24年度)の温室効果ガス総排出量は、約13億4,300万トン*でした。京都議定書の規定による基準年(1990年度(平成2年度)。ただし、HFCs、PFCs及びSF6については1995年(平成7年))の総排出量(12億6,100万トン*)と比べ、6.5%上回っています。また、前年度と比べると2.8%の増加となっています(図1-1-2)。
これまで我が国は、京都議定書第一約束期間(2008~2012年度(平成20~24年度))における温室効果ガスの6%削減目標に関し、京都議定書目標達成計画(平成17年4月閣議決定、平成20年3月全部改定)に基づく取組を進めてきました。これまでの取組の結果、森林等吸収源や京都メカニズムクレジットを加味すると、6%削減目標を達成することとなります。
温室効果ガスごとにみると、2012年度(平成24年度)の二酸化炭素排出量は12億7,600万トン(基準年比11.5%増加)でした。その内訳を部門別にみると産業部門からの排出量は4億1,800万トン(同13.4%減少)でした。また、運輸部門からの排出量は2億2,600万トン(同4.1%増加)でした。業務その他部門からの排出量は2億7,200万トン(同65.8%増加)でした。家庭部門からの排出量は2億300万トン(同59.7%増加)でした(図1-1-3、図1-1-4)。
二酸化炭素以外の温室効果ガス排出量については、メタン排出量は2,000万トン*(同40.1%減少)、一酸化二窒素排出量は2,020万トン*(同38.0%減少)となりました。また、HFCs排出量は2,290万トン*(同13.4%増加)、PFCs排出量は280万トン*(同80.4%減少)、SF6排出量は160万トン*(同90.6%減少)となりました(図1-1-5)。
注:「*」は二酸化炭素換算
CFC、HCFC、ハロン、臭化メチル等の化学物質によって、オゾン層の破壊は今も続いています。オゾン層破壊の結果、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害の発生や、植物の生育の阻害等を引き起こす懸念があります。また、オゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化への影響も懸念されます。
オゾン層破壊物質は、1989年(平成元年)以降、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)に基づき規制が行われています。その結果、代表的な物質の1つであるCFC-12の北半球中緯度における大気中濃度は、我が国の観測では緩やかな減少の兆しが見られます。一方、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。
オゾン全量は、1980年代から1990年代前半にかけて地球規模で大きく減少した後、現在も減少した状態が続いています。また、2011年(平成23年)の南極域上空のオゾンホールの最大面積は、過去10年間(2001~2010年(平成13~22年))の平均とほぼ同程度でした(図1-1-6)。オゾンホールの規模は、長期的な拡大傾向は見られなくなっているものの、年々変動が大きいため、現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。モントリオール議定書科学評価パネルの「オゾン層破壊の科学アセスメント:2010年」によると、南極域のオゾン層が1980年(昭和55年)以前の状態に戻るのは今世紀後半と予測されています。
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