環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第2章 被災地の回復と未来への取組>第1節 被災地の回復の前提となる災害廃棄物の処理

第2章 被災地の回復と未来への取組

 平成23年3月11日にマグニチュード9.0という観測史上最大の地震が発生し、それによって引き起こされた高い津波によって東北地方の太平洋沿岸を中心に大きな被害が生じました。

 また、震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大量の放射性物質が環境中に放出され、今なお最大の環境問題となっています。

 本章では、東日本大震災からの復旧・復興の取組と、環境問題としての放射性物質による環境汚染からの回復の取組、さらに被災地で始まっているグリーン復興の取組、とりわけグリーン経済を先取りした復興の新しい動きについて紹介します。

第1節 被災地の回復の前提となる災害廃棄物の処理

 東日本大震災により発生した大量の災害廃棄物及び津波堆積物の処理については、本年3月末までを目途に処理を完了するという目標を掲げ、さまざまな関係者の協力を得て取組を進めてきました。その結果、福島県の一部地域を除きおおむね目標どおり処理が完了したところです。なお、処理が完了していない福島県の一部地域については、できるだけ早期の処理完了を目標として、引き続き、着実な処理の推進に全力を挙げていきます。

1 東日本大震災により生じた災害廃棄物及び津波堆積物の処理

 平成23年に発生した東日本大震災では、大規模地震に加え、津波の発生により、さまざまな災害廃棄物が混ざり合い、その性状も量もこれまでの災害をはるかに超えた被害が広範囲に発生しました。

 被災した13道県239市町村(福島県の避難区域を除く)において災害廃棄物が約2,000万トン、6県36市町村において津波堆積物が約1,100万トン発生しました。

 被災県内での懸命な処理に加え、広域処理による多くの自治体や民間事業者の協力により着実な処理が推進され、これらの処理は福島県の一部地域を除いて、目標として設定した平成26年3月末までに処理を完了しました。東日本大震災における災害廃棄物等については積極的な再生利用が実施されており、災害廃棄物は約82%、津波堆積物はほぼ全量が再生利用されています。

 福島県(避難区域を除く)の災害廃棄物等については、当初の処理目標である平成25年度内の処理完了が困難な状況であることから、平成25年9月に処理の進捗状況の点検を行い、今後の処理の見通しとして、災害廃棄物の撤去・仮置場への搬入は、着実な搬入の実施により平成25年度内の完了を、搬入後の処理についても、平成25年度末までの処理を可能な限り進め、災害廃棄物発生量の多い一部地域等については、できるだけ早期の処理完了を目標としています。引き続き、きめ細かな災害廃棄物等の進捗管理を実施し、処理見通しの見直しを踏まえて、着実な処理の推進に全力を挙げます。

図2-1-1 12道県での災害廃棄物、津波堆積物の搬入率、処理割合の推移

表2-1-1 災害廃棄物等全体(13道県)の処理状況(平成26年3月末現在)

(1)県内処理

 岩手県、宮城県、福島県(避難区域を除く)において、災害廃棄物等の処理に県内の民間施設を含む既存施設を活用するとともに、沿岸部に34基の仮設焼却炉と24か所の破砕・選別施設を設置し、処理を推進しました。

写真2-1-1 仮設焼却炉

写真2-1-2 津波堆積物処理装置(破砕・選別施設の一つ)

(2)広域処理

 岩手県・宮城県の災害廃棄物は、その量が膨大であり、かつ津波により混合された状態であったため、その性状からも被災地で最大限の処理を進めながら、処理に困っていた分(約62万トン)について、他の地域へ運んで処理する「広域処理」を活用し、多くの地域(1都1府16県の地方公共団体や民間事業者の処理施設にて広域処理を実施)に御協力いただき、災害廃棄物の処理を推進しました(可燃物・木くずの約1割、不燃混合物等(埋立)の約4割、漁具・漁網(埋立)の約7割の処理に貢献)。これにより、仮設焼却炉の本格稼働前に仮置場を早期に解消できたり、火災等のおそれがある可燃物の早期処理や被災県内の埋立容量不足の緩和にも貢献しました。特に焼却処理の受入先で焼却灰の埋立を実施することにより、埋立容量としても約3万トン分(減容化率を10%として推計)の貢献をしました。

写真2-1-3 宮城県松島町北小泉境の仮置場

写真2-1-4 宮城県石巻市川口町一次仮置場

2 巨大災害発生時における災害廃棄物対策検討について

 今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの東日本大震災をはるかに上回る規模の巨大地震においては、これまでの経験をはるかに超える災害廃棄物が発生すると予測されるだけでなく、南海トラフ巨大地震では広範囲にわたって津波被害がもたらされ、首都直下地震では首都機能が麻痺すると考えられています。このため、既存の廃棄物処理システムによる対応だけでは、災害廃棄物を迅速かつ適正に処理することが困難であると考えられます。

 このため、環境省では、平成25年10月に「巨大地震発生時における災害廃棄物対策検討委員会」を開催し、巨大災害発生に備えて、災害廃棄物の発生量の推計、既存の廃棄物処理施設における処理可能量の推計を踏まえ、廃棄物処理システムの強靱化に関する総合的な対策の検討を進め、平成26年3月31日に、中間とりまとめ「巨大災害発生時における災害廃棄物対策のグランドデザインについて」を公表しました。これを踏まえ、地域ごとに関係者と連携を取りながら、巨大災害に備えた国・自治体・事業者などが共有できる具体的な対策をまとめた行動指針・行動計画の策定を目指していきます。

図2-1-2 巨大災害発生時における災害廃棄物対策の取組