環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第6章 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策>第1節 政府の総合的な取組

第6章 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策

第1節 政府の総合的な取組

1 環境保全経費

 各府省の予算のうち環境保全に関係する予算については、環境保全に係る施策が政府全体として効率的、効果的に展開されるよう、環境省において見積り方針の調整を行って各府省に示すとともに、環境保全経費として取りまとめました。平成25年度予算における環境保全経費の総額は、1兆9,326億円となっています(表6-1-1)。


表6-1-1 環境保全経費一覧

2 政府の対策

(1)環境基本計画の策定及び進捗状況の点検

 平成24年4月27日に閣議決定された第四次環境基本計画では、「政策領域の統合による持続可能な社会の構築」などを今後の環境政策の展開の方向として位置づけ、「経済・社会のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進」など9つの優先的に取り組む重点分野を定めるとともに、計画の実効性の確保に資するため、環境の状況、取組の状況等を総体的に表す総合的環境指標を活用することとしました。また、中央環境審議会では、25年から行う計画の進捗状況の点検の進め方について議論を行い、重点分野のうちその年に重点的に点検を行う分野(重点点検分野)や特に焦点を当てて審議を行う重点検討項目等を定め、効果的・効率的な点検を実施するとともに、東日本大震災からの復旧・復興及び放射性物質による環境汚染からの回復についても点検を実施することとしました。

(2)放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案

 放射性物質による環境の汚染を防止するため、放射性物質による大気の汚染並びに公共用水域及び地下水の水質の汚濁の状況を常時監視することとするとともに、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染についても環境影響評価を行うこととする等、大気汚染防止法その他の関係法律の規定の整備を行う必要があるため、第183回国会に、放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案を提出しました。

(3)予防的な取組方法の考え方に基づく環境施策の推進

 化学物質による健康や生態系への影響、地球温暖化による環境への影響など、環境問題の多くには科学的な不確実性があります。しかし、ひとたび問題が発生すれば、それに伴う被害や対策コストが非常に大きくなる可能性や、長期間にわたる極めて深刻な、あるいは不可逆的な影響をもたらす可能性があります。このため、環境影響が懸念される問題については、科学的証拠が欠如していることを理由に対策を遅らせず、知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきです。この予防的取組は、第4次環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)においても「環境政策における原則等」として、位置づけられており、さまざまな環境政策における基本的な考え方として取り入れられています。関係府省は、第四次環境基本計画に基づき、予防的な取組方法の考え方に関する各種施策を実施しました。

化学物質対策における予防的取組

 化学物質の中には、その製造、輸入、使用等の段階で適切な管理が行われない場合に環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれのあるものがあるため、予防的な取組方法の考え方に基づく対策が進められています。

 国際的には、2002年(平成14年)に持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット、WSSD)において、「予防的取組方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」との目標(WSSD2020年目標)が合意され、この目標の達成に向け、2006年に第1回国際化学物質管理会議において「国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ」(SAICM)が採択されました。

 我が国においては、環境基本計画の中でその位置づけが示されているほか、平成24年9月に策定されたSAICM国内実施計画において、特に未解明の問題に対して「予防的取組方法の考え方」に立って的確に対応することが記載されており、WSSD2020年目標の達成に向けて、予防的取組方法に留意しつつ、国民の健康や環境を守るという視点に立って、また、労働者の健康、脆弱な集団の健康や、影響を受けやすい環境に対する悪影響を防止するとのSAICMの考え方を踏まえ、製造・使用から廃棄に至る化学物質のライフサイクル全体を通じたリスクの低減を図っています。

 予防的取組方法の考え方に立った取組例として、平成22年度から実施している出生コホート調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」があります。この調査では、10万組の親子の協力を得て、環境中の化学物質等が子供の健康に与える影響を明らかにし、子供の脆弱性を考慮したリスク管理体制を構築する取組が進められています。また、内分泌かく乱作用に関する評価手法の確立や環境中のナノマテリアルによる影響等の解明などの未解明の問題への取組も進められています。