環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第5章 化学物質の環境リスクの評価・管理>第1節 化学物質の環境中の残留実態の現状

第5章 化学物質の環境リスクの評価・管理

第1節 化学物質の環境中の残留実態の現状

 現代の社会においては、さまざまな産業活動や日常生活に多種多様な化学物質が利用され、私たちの生活に利便を提供しています。また、物の焼却などに伴い非意図的に発生する化学物質もあります。化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄の各段階で適切な管理が行われない場合に環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあります。

 化学物質の一般環境中の残留状況については、化学物質環境実態調査を行い、「化学物質と環境」(http://www.env.go.jp/chemi/kurohon/(別ウィンドウ))として公表しています。平成14年度からは、本調査の結果が環境中の化学物質対策に積極的に有効活用されるよう、施策に直結した調査対象物質選定と調査の充実を図っており、23年度においては、[1]初期環境調査、[2]詳細環境調査及び[3]モニタリング調査の3つの体系を基本として調査を実施しました(図5-1-1)。これらの調査結果は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「化学物質審査規制法」という。)の規制対象物質の追加、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号。以下「化学物質排出把握管理促進法」という。)の指定化学物質の指定の検討、環境リスク評価の実施のための基礎資料など、各種の化学物質関連施策に活用されています。


図5-1-1 化学物質環境実態調査の検討体系図

1 初期環境調査

 初期環境調査は、環境残留の有無が明らかでない化学物質の環境残留を確認するための調査であり、調査対象物質の特性に応じて、水質、底質、生物、大気について調査を実施しています。平成22年度は、16物質(群)について調査を実施し、9物質が検出されました。また、平成23年度は、15物質について調査を実施しました。

2 詳細環境調査

 詳細環境調査は、初期環境調査で環境残留が確認された化学物質について、環境中の残留状況を精密に把握するための調査であり、調査対象物質の特性に応じて、水質、底質、生物、大気について調査を実施しています。

 平成22年度は、11物質(群)について調査を実施し、8物質(群)が検出されました。また、平成23年度は、8物質について調査を実施しました。

3 モニタリング調査

 モニタリング調査は、難分解性、高蓄積性等の性質を持つPCB、DDT等の化学物質の残留状況を経年的に把握するための調査であり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下「POPs条約」という。)の対象物質及びその候補となる可能性のある物質並びに化学物質審査規制法の特定化学物質等のうち、環境基準等が設定されていないものの、環境残留性が高く環境実態の推移の把握が必要な物質を対象に調査を実施しています。調査対象物質の特性に応じて、水質、底質、生物、大気について調査を実施しています。

 平成22年度は、15物質(群)について調査を実施し、それまでの結果を解析したところ、POPs条約対象物質となっているものについては、いずれも濃度レベルが総じて横ばい又は漸減傾向を示していました(図5-1-2図5-1-3)。また、平成23年度は17物質(群)について調査を実施しました。


図5-1-2 DDTのモニタリング調査の経年変化


図5-1-3 クロルデンのモニタリング調査の経年変化