環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第5節 東日本大震災により生じた災害廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物の処理

第5節 東日本大震災により生じた災害廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物の処理

1 災害廃棄物の処理

 被災地復興のために必要不可欠である、東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理について、震災から3年後の平成26年3月末までに完了させることを目指し、平成23年度においては、以下のとおり実施しました。(第1部第2章参照)

(1)財政的措置

 災害廃棄物を市町村が処理する際に要する費用について、廃棄物処理法に基づく2分の1の補助に加え、[1]東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律に基づき国庫補助率の嵩上げを行うとともに、[2]東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法に基づきグリーンニューディール基金を通じた支援により国の実質負担額が平均95%となるよう措置を講じました。

 地方負担分についても、その全額について震災復興特別交付税により措置することとしており、市町村負担が実質的に生じないよう措置されます。

(2)指針等の整備

 災害廃棄物の円滑かつ迅速な処理を進めるため、以下の特例措置の規定、各種指針等の整備を行いました。

ア.廃棄物処理法に係る特例措置

 産業廃棄物処理施設において一般廃棄物を処理する際に必要となる都道府県知事への事前届出に係る届出期間の短縮(平成23年3月31日環境省令第6号)、コンクリートくず等の災害廃棄物を安定型最終処分場において埋立処分する場合の手続の簡素化(平成23年5月9日環境省令第8号)、被災市町村が災害廃棄物処理を委託する場合における処理の再委託の特例(平成23年7月8日政令第215号、平成23年7月8日環境省令第15号)をそれぞれ定めました。

イ.東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)

 主に仮置場に搬入された後の処理に焦点を当てて、処理推進体制、財政措置、処理方法、スケジュール等についてまとめました(平成23年5月16日)。(第1部第2章参照)

ウ.東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針

 損壊家屋等の撤去等について、法律的観点から指針をとりまとめました。(平成23年3月25日)

エ.東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に係る契約の内容に関する指針

 東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法に基づき、災害廃棄物の処理に係る契約の内容に関する統一的な指針を定めました。(平成23年11月11日)

オ.東日本大震災により海に流出した災害廃棄物の処理指針

 海に流出した災害廃棄物の処理指針として、処理を行うに当たっての基本的な考え方、区域ごとの取組方針等についてとりまとめました。(平成23年11月18日)

カ.東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備に関する技術的指針

 災害廃棄物を地方公共団体が適切に活用できるよう、公園緑地の整備における災害廃棄物の活用に関する基本的考え方をとりまとめました。(平成24年3月27日)

キ.その他

 被災した、自動車、家電リサイクル法対象品目、パソコン、有害廃棄物の取扱い等について、各自治体に周知しました。

(3)処理支援体制の整備

 環境省の呼びかけにより、岩手、宮城及び福島県において、県、市町村、国の出先機関、関係業界団体等をメンバーとした「県災害廃棄物処理対策協議会」が設立され、県レベルでの関係者の協力体制を確保しました。また、契約面や技術面での支援ができるよう、震災直後から、環境省職員・コンサルタントを派遣・常駐させているほか、環境省職員、国立環境研究所の研究者等で構成するチームによる巡回訪問を実施しました。

(4)仮置場への移動

 住民が生活している場所の近くにある災害廃棄物の仮置場への移動について、平成23年8月に福島県の警戒区域を除く全ての市町村で完了しました。

 また、平成24年3月31日時点で、建物解体によるものを除き、岩手、宮城及び福島3県の沿岸部における発生推計量の96%について、仮置場への移動を行いました。解体により生じるものを含めても、75%の移動が完了しています。

(5)処理、再生利用

 岩手及び宮城県では、ブロック単位での処理委託契約や仮設焼却炉の設置等が進められており、平成24年3月31日時点で、約168万トン(推計量の約7.5%)の処理が完了しています。

 災害廃棄物の処理にあたっては、利用可能なものは再生利用することが重要です。このため、マスタープランにおいて再生利用の進め方について示すとともに、土木工事の原材料等として活用されるよう、関係省庁連絡会を開催しました。

(6)広域処理

 東日本大震災で発生した災害廃棄物の量は、各県の通常の年間ごみ発生量と比較すると、岩手県では約12年分、宮城県では約14年分に相当する膨大な量となります。被災地のみでは処理能力が不足していることから、全国の地方公共団体の協力、被災地以外の施設を活用した広域処理の実施が不可欠となっています。

 広域処理の対象となる災害廃棄物は、放射能濃度が不検出または低く、受入側において安全に処理することができるものに限っていますが、放射性物質による汚染に対する心配の声も踏まえて、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン」(平成23年8月11日策定、平成24年1月11日一部改正)を策定したほか、パンフレット等の配布、ウェブサイトの開設、住民説明会等への政務三役の出席、職員の派遣等により、広域処理の必要性、安全性について周知を図りました。

 また、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理のより一層の推進が必要であることに鑑み、政府を挙げて、広域処理、再生利用などの取組を推進していくため、平成24年3月13日に、「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合」を開催しました。

 さらに、平成24年3月23日及び3月30日に、野田内閣総理大臣及び細野環境大臣は、対象自治体に対し災害廃棄物の処理に係る広域的な協力の要請を行いました。

 こうした取組も踏まえ、平成23年度は、東京都、山形県、青森県で災害廃棄物の受入が行われました。

2 放射性物質に汚染された廃棄物の処理

(1)放射性物質汚染対対処特措法に基づく基本方針の決定

 今般の原子力発電所の事故に由来する放射性物質に汚染された廃棄物の処理について規定した放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針を平成23年11月11日に閣議決定しました。

 基本方針では、[1]安全性を確保しつつ可能な限り減容化すること、[2]指定廃棄物の処理は当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行うこと等を定めました。

(2)放射性物質汚染対処特措法の政省令等の整備

 放射性物質汚染対処特措法の政省令を平成23年12月14日に公布しました。

 このうち、省令では、[1]汚染廃棄物対策地域内(区域内の廃棄物について、特別な管理が必要な程度に放射性物質により汚染されているおそれがあるものとして、国が処理を進める地域)の指定要件、[2]国が処理を進める指定廃棄物の指定要件(汚染状態が8,000ベクレル/kgを超えるもの)、[3]具体的な処理基準等を定めました。

(3)汚染廃棄物対策地域の指定

 放射性物質汚染対処特措法に基づき、平成23年12月28日に、汚染廃棄物対策地域として、警戒区域・計画的避難区域を指定しました。