第2節 化学物質の環境リスクの管理

1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく取組

 平成23年4月に全面施行された化学物質審査規制法に基づき、新規化学物質について、引き続き事前審査を行うとともにすべての工業用化学物質から優先評価化学物質を絞り込むスクリーニング評価を行うことで、優先評価化学物質の指定を行います。この優先評価化学物質について、必要に応じて有害性情報の提出を求めること等により、環境リスク評価を着実に実施し、環境リスクが認められる場合は第2種特定化学物質に指定するなど、わが国における厳格な化学物質管理をより一層推進します。さらに、官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(通称:Japanチャレンジプログラム)を通じて収集した情報については、国が評価を進めるとともに、引き続き国民に対し分かりやすく発信します。

2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく取組

 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号。「化学物質排出把握管理促進法」という。)に基づくPRTR制度については、地方公共団体と連携しつつ、届出データの集計・公表、個別事業所データの公表及び開示、届出対象外の排出源からの排出量の推計・公表等、同制度を引き続き円滑に運用していきます。また、対象物質の見直し等を内容とする化学物質排出把握管理促進法に基づく政令の一部改正や届出事項の追加や二次元コードの採用等を内容とする同法に基づく省令の一部改正に関する内容の周知・徹底や、届出・推計データの多面的利用の検討等を実施し、必要な措置を講じます。

 MSDS(化学物質等安全データシート)制度については、事業者がMSDSの適切な交付・提供を行うよう、政令改正に伴う対象物質の変更も含め、引き続き周知を図ります。

3 ダイオキシン類問題への取組

(1)ダイオキシン法等に基づく対策

 平成17年に変更した国の削減計画等に基づき、特定施設に対する規制措置の徹底等を図るとともに、環境中のダイオキシン類の存在状況を常時的確に把握し、環境基準及び規制基準の設定・見直し等の的確な実施を図るため、都道府県等が行う常時監視結果の取りまとめ・公表を引き続き行います。

 一般国民が立ち入ることができ、かつ土壌環境基準を超過した地域に対し、対策地域の指定、対策計画の策定等の必要な措置が早急に講じられるよう、都道府県等に助言します。また、対策計画に基づき都道府県等が実施するダイオキシン類による土壌の汚染の除去等の対策について、都道府県等が負担する経費への助成、汚染土壌の浄化技術を確立するための調査等を引き続き実施します。

 このほか、臭素系ダイオキシン類についても、リスク評価実施に向けその毒性やばく露実態に関する知見の収集・整理を行います。さらに、大気、水質等の環境中濃度や、ダイオキシン類を排出する可能性のある施設からの排出実態を把握します。

(2)その他の取組

 ダイオキシン類の各種環境媒体や食物を通じたばく露等に関する最新の情報を収集し、ダイオキシン法に基づく耐容一日摂取量をはじめとした各種基準等に係る科学的知見の一層の充実を図ります。

 排出インベントリーの更新を行う等、施策の効果を把握するとともに、いまだ明らかになっていない発生源からの排出実態や発生源と環境中の濃度との関連等についての新たな科学的知見をさらに充実させ、必要な対策について検討し、さらに、平成22年度で目標年を迎えた国の削減計画の総括と、次期計画へ向けた検討を行います。

 ダイオキシン類の環境測定を伴う請負調査について、測定に係る精度管理を推進するため、受注資格審査を行います。また、ダイオキシン類の測定及び分析技術の向上を図るため、地方公共団体の公的検査機関の技術者に対する研修を進めます。

 環境、生物、人体等におけるダイオキシン類の汚染状況等について、関係府省の連携の下で実態把握を行います。

 ダイオキシン類の継続的な発生抑制のため、廃棄物等の減量化やリサイクル対策を推進するとともに、廃棄物処理の適正なあり方について一層の充実を図るため、必要な措置を講じていきます。

 国民に対して、ダイオキシン問題についての理解と協力を得るため、調査研究や技術開発の成果を公開する等、関係府省が協力して各種取組を進めます。

4 農薬のリスク対策

 農薬取締法に基づき、農薬登録保留基準及び農薬を使用する者が遵守すべき基準等について適宜設定等を行うとともに、必要な基礎的知見の集積を図り、農薬登録保留基準の充実に向け更なる検討を進めます。特に、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準について、引き続き個別農薬ごとの基準値の設定を行います。

 また、特定農薬の指定の検討及び農薬使用基準の遵守状況の確認を行っていきます。

 さらに、農薬による生態影響に関する調査、農薬の環境中への残留実態調査、農薬の飛散対策に関する調査、農薬の吸入毒性に関する調査等の各種調査研究を行います。



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