第2章 大気環境、水環境、土壌環境等の保全

第1節 大気環境の保全対策

1 大気環境の監視・観測体制の整備

 国設大気環境測定所、国設自動車交通環境測定所(及び国設酸性雨測定所)を引き続き運営していきます。また、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」等により全国の大気汚染常時監視データをリアルタイムで収集し、監視体制の充実を図ります。環境放射線等モニタリング調査については、離島等(全国10か所)において引き続き大気中の放射線等のモニタリングを実施します。特にPM2.5に関しては、国設大気環境測定所等における成分分析を実施するとともに、引き続き、自動測定機を用いた試行事業を実施します。また、地方公共団体における常時監視局の整備を促進し、その結果を広く公表します。

 また、有害大気汚染物質について、測定方法の開発を体系的かつ計画的に進めます。

 さらに、揮発性有機化合物に関して、現在の状況と今後の排出抑制効果を把握するため、全国において環境濃度の継続的なモニタリングを行います。

2 固定発生源対策

 窒素酸化物対策については、総量規制を行っている東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の地域について、引き続き総量規制の徹底を図ります。

 また、大防法対象外の群小発生源からの排出抑制のため、低NOx小規模燃焼機器の普及を推進します。

 浮遊粒子状物質については、原因物質の排出実態の把握、硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物等のガス状物質による二次粒子の生成等の発生機構の解明に努めるとともに、これらを踏まえ、環境基準の達成に向けた総合的対策の確立を図ります。

3 移動発生源対策

(1)自動車排出ガス対策

 (ア)自動車単体対策と燃料対策

 中央環境審議会の「今後の自動車排出ガス低減対策の在り方について」(第十次答申)に基づき、E10(バイオエタノール10体積%混合ガソリン)の燃料規格について「自動車の燃料の性状に関する許容限度及び自動車の燃料に含まれる物質の量の許容限度」告示の改正を行います。また、二輪自動車及び原動機付自転車について、排出ガス試験サイクルを、現行の二輪車モードから、わが国の走行実態を踏まえた過渡サイクルに変更することを検討します。その際、世界統一試験サイクルであるWMTC(Worldwide Motorcycle emissions Test Cycle)の導入についても検討するとともに、必要に応じて新たな許容限度目標値の設定についても検討します。そのほか、本答申で今後の検討課題として掲げられた事項について、窒素酸化物後処理装置を装着したディーゼル車の使用過程における排出ガスの実態、ディーゼル車から排出される粒子状物質の粒子数の実態などを調査し、その結果を踏まえ検討します。

 また、平成23年度以降順次強化する排出ガス基準に適合する公道を走行しない特殊自動車(以下「オフロード特殊自動車」という。)等への買換えが円滑に進むよう、税制の特例措置、政府系金融機関による低利融資、ハイブリッドオフロード特殊自動車を導入する際の補助を講じます。

(2)大都市地域における自動車排出ガス対策

 大都市地域における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気環境の改善に向け、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)に基づく車種規制、事業者による排出抑制のための措置、局地汚染対策及び流入車対策等の施策を円滑かつ着実に推進するとともに、中央環境審議会において制度のあり方等を検討します。同法に基づく排出基準適合車への代替促進については、低公害車の普及促進と併せ、政府系金融機関による低利融資等を講じます。

(3)低公害車の普及促進

 地方公共団体や民間事業者等が電気自動車等の低公害車を導入する際の補助、排出ガス性能や燃費性能のすぐれた環境負荷の小さい自動車に係る自動車税のグリーン化、自動車重量税・自動車取得税について時限的に免除・軽減する措置等及び政府系金融機関による低利融資等を通じて、低公害車のさらなる普及促進を図ります。低炭素社会の実現等環境政策やエネルギー政策の方向性を踏まえ、政策目標を含め政策体系を再構築します。

(4)交通流対策

 交通流の分散・円滑化施策としては、道路交通情報通信システムVICS)の情報提供エリアのさらなる拡大及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実、信号機の高度化を行います。また、違法駐車の取締り強化を始め、ハード・ソフト一体となった駐車対策を推進します。さらに、公共交通機関の利用を促進するため、公共車両優先システムPTPS)の整備を推進します。

(5)船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策

 海洋汚染等防止法に基づき、船舶に搭載される原動機や焼却炉等の設備に関する検査等による規制の実効性確保、その他国内体制の整備に引き続き努めます。また、平成22年5月の海洋汚染等防止法改正を踏まえ、規制に必要な体制の整備及び革新的な環境負荷低減技術の開発を進めます。

(6)普及啓発施策等

 低公害車の普及啓発活動や11月の「エコドライブ推進月間」を中心に、「エコドライブ10のすすめ」の普及啓発を引き続き実施します。また、12月の「大気汚染防止推進月間」におけるマイカーの使用抑制等や適切な自動車の使用等の呼び掛けを行います。

4 微小粒子状物質(PM2.5)対策

 PM2.5については、排出インベントリの作成、大気中の挙動や二次生成機構の解明等、科学的知見の集積を図り、より効果的な対策について検討を行います。また、わが国におけるPM2.5の健康影響に関するさらなる知見の充実を図っていきます。

 さらに、粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)についても、引き続き調査研究を進めます。

5 光化学オキシダント対策

 「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」により、リアルタイムで収集したデータを活用し、光化学オキシダントによる被害の未然防止に努めます。

 光化学オキシダントの原因物質である揮発性有機化合物、窒素酸化物等については、固定発生源からの排出規制を引き続き実施していくとともに、調査研究やモニタリング、国内における削減対策及び日中韓三カ国環境大臣の合意に基づく研究協力など、国際的な取組等について推進していきます。

6 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)有害大気汚染物質対策

 地方公共団体との連携の下に有害大気汚染物質による大気の汚染の状況を把握するための調査を行うとともに、有害大気汚染物質の人の健康に及ぼす影響に関する科学的知見の充実に努めます。

(2)石綿対策

 石綿(アスベスト)による大気汚染を未然に防止する観点から、大防法に基づき、吹付け石綿等が使用されている建築物等の解体等に伴う石綿の飛散防止対策の徹底を図ります。

7 越境大気汚染対策

(1)酸性雨対策

 東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET)の活動に対し、資金の拠出や技術的な助言を行うとともに、EANETの発展・拡大に向けた議論に積極的に参画・支援します。

 国内においても、酸性雨による影響の早期把握、酸性雨原因物質や光化学オキシダント等大気汚染物質の長距離輸送の実態を長期的に把握し、それらによる被害を未然に防止する観点から、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、酸性雨測定所等における大気モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリングを着実に実施します。

(2)黄砂対策

 日本、中国及び韓国の三カ国黄砂局長会合や共同研究等を通じて、国際的な黄砂モニタリングネットワークや早期警報システムの構築に向けた技術的な貢献を行う等、関係各国と密接に連携・協力しながら黄砂対策に取り組みます。

 国内においては、黄砂や黄砂とともに輸送される大気汚染物質のわが国への飛来実態を把握するための調査を実施するとともに、黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリング及び情報提供を行います。



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