第2節 化学物質の環境リスク評価

1 化学物質の環境リスク評価の推進

 環境施策上のニーズや前述の化学物質環境実態調査の結果等を踏まえ、化学物質の環境経由ばく露に関する人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれ(環境リスク)についての評価を行っています。その取組の一つとして、平成22年度に環境リスク初期評価等の第9次取りまとめを行いました。この中では、14物質について健康リスク及び生態リスクの初期評価を行い、さらに追加7物質について生態リスク初期評価を行いました。その結果、環境リスク初期評価について1物質、加えて行った生態リスク初期評価について2物質が、相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」と判定されました。

 なお、生態系に対する影響に関する知見をさらに充実させるため、経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインを踏まえて実施している藻類、ミジンコ、魚類等を用いた生態影響試験を、平成22年度は18物質について行いました。

 また、平成21年5月に化学物質審査規制法が改正されたことを受け、化学物質審査規制法に基づき環境リスクを評価する手法等について検討しました。

 さらに、ナノ材料については、その動態、有害性、環境リスクに関する知見を早急に整備する必要があることから、国内外におけるナノ材料に対する取組に関する知見の集積や、ナノ材料に係る環境上適正な管理技術の検討のための情報収集等を行いました。

2 化学物質の内分泌かく乱作用問題に係る取組

 化学物質の内分泌かく乱作用問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、環境中濃度の実態把握、試験方法の開発、生態系影響やヒト健康影響等に関する科学的知見を集積するための調査研究を、OECDにおける活動を通じた多国間協力や二国間協力など国際的に協調して実施しています。

 これまでの調査研究においては、魚類において、4物質で、環境中の濃度を考慮した濃度で内分泌かく乱作用を有することが推察されていますが、哺乳類においては、ヒト推定ばく露量を考慮した用量で、明らかな内分泌かく乱作用が認められた物質はありません。

 今年度は、環境省では、これまでの取組状況をレビューするとともに、今後の進め方の方針の検討及び重点的に実施すべき課題の抽出を進め、パリックコメントの結果も踏まえ、平成22年7月に「化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応 -EXTEND2010-」を取りまとめました。

 環境省では、今後は、このEXTEND2010に基づき、これまでに得られた知見や開発された試験法を基に、評価手法の確立と評価の実施を加速化して進めていく予定です。

 また、人に対する健康影響を調査するため、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」が取りまとめた「中間報告書追補その2」の行動計画に沿った調査研究を実施しました。さらに、水環境中の内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査及び主要な下水道における流入・放流水の水質調査を引き続き実施しました。



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